死にたがりの果実   作:calamity

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第5話「生きる理由」

紘汰は2週間に一回の定期検診のため病院に来ていた。自殺に失敗したところを叔父さんに見られてしまい、精神科のある病院に連れていかれた。今では自殺しようとも思わないが2週間に一回の定期検診には必ず来ていた。

 

「最近はどうだい紘汰君」

「先生のおかげである程度は治りましたよ」

「そう言ってくれると医者明利に尽きるよ」

 

先生とたわいもない世間話をした後、家に帰ろうとしたとき階段を下りていると廊下に蹲っている少年を見つけ俺は少年に声を掛ける。

 

「おい、大丈夫かって大丈夫じゃないよな」

 

俺は先生を呼びに行った、丁度先生が近くにおり急いで先生を連れて行きその少年を病室に運んだ。少年を運んだのは先生だったが俺には先生がそんな少年を運べるような筋力を持っているようには見えなかったのでその光景を驚きの表情で見ていた。

少年を病室に運ぶと先生は点滴の準備を始め点滴を打ち始める。少年の表情は徐々に和らいで行った。

 

「いや~、紘汰君ありがとうね」

「いえ、俺もビックリしました、廊下で蹲ってましたから心配になりますよ」

 

少年はゆっくりと口を開く。

 

「先生ありがとうございます」

「いやいや、お礼はこの子に言ってあげてね」

「ごめんねありがとう」

「気にしなくていいさ」

「それじゃあ私はとりあえず行くね、何かあったらナースコールを押してね」

 

そう言い残し先生は病室を出ていく、俺出るタイミングを逃してしまいそのまま病室に残ってしまった。

 

「そう言えば自己紹介がまだだったね、僕の名前は水瀬 歩(みなせ あゆむ)って言うんだ、君は?」

「俺か、俺は波風 紘汰って言うんだ」

 

水瀬は久しぶりに自分と近い年の人と話すことが嬉しいのか、俺にどんどん質問をしてくる。

 

「紘汰君か、紘汰君って小学6年生?」

「ああ、お前もそうなのか?」

「うん、そうだけど生まれつき心臓が弱くてだからまともに学校には行けてないんだ」

「見ればわかるよ、俺も学校には行ってないしな」

「行ってないの!?、何かあったの?」

「まあね、それでここの精神科の先生にお世話になってる」

「そうなんだ、紘汰君も大変なんだね」

「お前よりはマシさ」

 

水瀬は微笑みながら俺に言葉を返してくる。

 

「紘汰君って大人っぽく見えるね、でも何か同い年にしって感じがしないね、冷めてるっていうのかな」

「冷めてるね、そうかもね俺は生きてることの価値が分からなくなってしまったからね」

「紘汰君は少しでも長く生きたいと思わないの」

「思う必要がないからな」

「そんなの悲し過ぎるよ」

「逆に水瀬は生きたいのか、そんなに苦しい思いをしてまで」

「うん、生きたい。元気になってやりたいことがたくさんあるから」

「俺達は真逆だな、死に急ぐ者と必死に生きたい者」

「なんで死にたいと思うの?」

「生きることの意味を失ってしまったからかな」

「生きることの意味か…そうだ僕が紘汰君に生きることの楽しさを教えてあげる、だからまた僕の病室に来てよ」

「…わかった、また2週間後にまた来るさ」

 

そう言い俺は病室を出る、不思議だった俺にどうやって生きることの楽しさを教えてくれるんだろう、まあ水瀬の話に乗っかるとしましょうか騙せれたと思って。

俺は定期検診のごとに水瀬の病室を訪れた、いつも話をだらだらとして俺が時間になったら病室から出るそれが1か月続いた。その間インベスがちょくちょく出ていたがそれは全て高町達が倒していたので俺が出る幕でもなかった。水瀬の所を訪れた時に俺は聞いた。

 

「なあ、生きる楽しさを教えてくれるって言ってたけど水瀬が教えてくれようとする楽しさはどんなことだ?」

「こう言う事だよ、人と話すのって楽しくない?」

 

俺は気づかないうちに水瀬と会う日を楽しみにしていたのかもしれないな、人と触れ合うことの楽しさを俺はどこか忘れていたのかもしれない。あの日以来人を信用できなくなってまい、人と触れ合うのが怖かった。けれど水瀬のことは信用することができていた、それは水瀬の人柄から来ていたものだと思う。久しぶりに気兼ねなく話すことのできる話し相手が見つかり、普段喋らないことまで喋ってしまっていた。

 

「そうだね、楽しかったのかもな」

「でしょ!、僕もそうだったんだ。いつも病室で一人けど誰でもいいから一緒にいて欲しかった、紘汰君が話し相手になってくれる、ただそれだけで元気になった気がしたんだ」

「そう言ってくれると嬉しいよ、そうだ水瀬は元気になって何がしたいんだ?」

「僕はね学校に行ってみたい、それで皆でいっぱいサッカーとかいろいろ体を動かしたスポーツをしてみたいんだ」

「そうか、叶うといいな」

「うん、それとお父さんとお母さんにありがとうって沢山言いたい」

「何で?」

「こんな体の僕のことを愛してくれたから」

「両親は良い息子を持ったって思ってるよきっと」

「そうかな、でもそうだといいな」

 

俺と水瀬は笑顔で笑い合う、こんなに笑いのあった会話ができた人は久しぶりのことだった。俺はこの日から毎日のように病院に通うようになった、時間を忘れて水瀬と話こんでいた。自然に水瀬のことを歩と呼ぶようにもなっていった。歩の両親とも会う機会があり、歩の両親には「できるだけあの子と仲良くしてほしい」と言われたがそんなのことは言われなくても歩とは仲良くやっていくつもりだ。最近では病院内を自由に歩くことができるようになり、日当たりの良い屋上に言ったりするなど、歩の容態も次第に良くなっていっていたかのように見えた。

しかし…

 

「はぁはぁはぁ、先生!」

「紘汰君、早く来るんだ!」

 

俺は先生に急に呼び出され歩の病室に行く。歩の病室では歩の両親がおり、歩のお母さんの顔には涙がにじんでいた。俺は歩のお父さんに呼び止められた。

 

「紘汰君、歩に最後の別れをしてやってほしい」

「っ!?」

 

俺はそう言われ歩の元へと歩みよる。

 

「歩!」

「あ、紘汰君、来てくれたんだ」

 

歩は話すのもやっとだった言葉は途切れ途切れだった。顔は青白く、声は弱弱しく今も力尽きそうだった。

 

「歩どうしたんだよ、昨日まではあんなに元気だったじゃないか!」

「ごめんね紘汰君、最後にね、紘汰君に伝えたいことがあるんだ」

「最後ってなんだよ、そんなことを言うなよ!」

「あのね、紘汰君、この世界には生きる理由がもうないって言ってたけどね、生きる理由は僕が作ってあげる」

「えっ!」

「僕みたいな人を無くして、皆の命を守ってあげて、皆の夢を守ってあげて。紘汰君ならみんなのヒーローになれるから。だから紘汰君はまだ死んじゃあ駄目だよ」

「俺なんかより生きたいんだろ!、だったらもっと頑張れよ!。死にたい俺が生きて、生きたいお前が死ぬなんて不条理だ!」

 

歩は俺の手を握る。そして満面の笑みを作る。

 

「紘汰君、約束だよ、生きたくても生きれない子を、救ってあげてね。頑張れ僕たちのヒーロー」

 

そう言うと俺の手を握っていた手の力が無くなっていった。俺は必死に握りしめるが歩が握り返してくれることはなかった。

 

「歩!!」

「残念ですが…20時19分、ご臨終です」

 

横にいた歩のお母さんが床に膝をつき泣きじゃくる、それを歩のお父さんは慰めている。

 

「紘汰君これを使いなさい」

「えっ」

 

先生にハンカチを渡された、俺は気がつかなかった、自分が涙を流していることに…

俺は涙を流しながら決意する。

 

「先生、俺あの時の答えが見つかったかもしれません」

「そうか、歩君には感謝しないとな」

「はい」

 

俺は涙を拭い先生に言う。それから2日後歩の葬儀は執り行われた、参列者には歩の学校の生徒や先生が数多く出席しており、歩が学校にあまり行けていなかったのにも関わらず、これだけの人が集まるということは、歩がどれだけ皆に愛されてかがうかがえる。俺も焼香をあげに葬儀に参列した、その時に歩のお父さんに合い、言葉をかわした。

 

「やあ、紘汰君」

「歩の、あの時はありがとうございました」

「いや、君のおかげで歩は笑顔で天国に行ったさ、お礼を言うのはこっちのほうだよ」

「ありがとうございます、でも俺は歩を救えませんでした」

「歩は十分君に救われていたさ、いつも歩から聞く話は君のことばかりだった。君の話をしている時の歩の顔は本当に楽しそうだった」

「そうなんですか、俺も歩と話すのは楽しかったですから」

「君には本当に感謝している、ありがとう」

「こちらこそ、本当にありがとうございました」

 

俺は歩のお父さんに頭を下げその場を去る。家に帰る途中に歩が最後に言った言葉を思い出す。皆を守ってあげてか、歩らしい最後の言葉だったな。 歩、お前のおかげでわかったよ、生きることの大切さ、人との触れ合いの大切さが。大切なものを2度失って初めて気づけた、本当にありがとう。歩見ててくれ俺は皆を守って見せる、仮面ライダーとしてこの世界の皆をきっと。俺は手を空にかざし心に誓う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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