GANTZ Repeat'   作:マルハン2

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Part1 虚傑
5.マンツーマン


目を開けると、兵舎のいつものシミが目立った天井が写った。普段なら前回の死のビジョンが脳裏に再生され、トイレに駆け込み吐くなり漏らすなりしたが、慣れというのは恐ろしいもので、恐怖を感じる神経が摩耗したのかぼくは全く吐き気を起こさなかった。

起き上がったぼくは前回の記憶を思い出し始めた。

『目覚めたら私を見つけて。』

そうだ、マリナは確かにそう告げたのだ。そしてぼくを殺した。唐突な展開にぼくは戸惑うばかりだったが、それでもちっぽけな頭をフル回転させる。あの1回目と前回の似通った状況、ずんぐり野郎のデジャヴ、マリナの行動と不可解な言葉。それらを結びつける意味を推察する最中に、ナイジェルが

「おいタクミ、うるさいぞ。」

と文句を垂れる。

「ぼく、何もしてませんけど。」

「寝言かどうか知んねえけどさっきからブツブツうるせえんだよ、お前。明日出撃で緊張するのは分かるが、もうちっと静かにうなされろ。」

苦笑を返事にしながらも、ぼくはこの事態を打開するプロセスを練り始めていた。

 

「…私に何か用か?」

逆立したマリナが呟く。

今までのループから計算すると、彼女に近づけるのはこのときしかない。ぼくはあらかじめ決めておいたセリフを喋った。

「最初の一回が永遠に続くときってどんな気分になる?」

罰ゲーム終了後、ぼくはマリナに引き抜かれREX部隊が駐留する施設まで連れてこられた。さすが戦女神と言うべきか、部隊が共同で使う整備兼訓練場を丸々貸し与えられている。

好奇の視線にさらされながらしばらく待たされると、マリナが2つのケースを持って現れた。

「じゃあ改めて…初めてと言うのも変だが、マリナ・オーグランだ。」

「コガ・タクミ。」

戦場とは打って変わって穏やかな笑みを浮かべたマリナに対して、前回の仕打ちを覚えているぼくは慎重に返した。

「…なるほど。それで私に声をかけたわけか。」

マリナがくすりと笑う。こっちからしたら笑い事ではなかったけど、ここでもめても仕方がない。ぼくは本題に踏み込むことにした。

「じゃあ、アンタもループを経験したんだな?」

「そうだ、10年前にな。T-000、コイツに遭遇して私は半分ノイローゼになったよ。」

厳重にロックされたケースから例の機種の写真が覗く。マリナの話を要約するとこうだった。

まだぼくと同じ新米だったころ、偶然未知の機体と交戦し決死の覚悟で倒した途端、辺りが真っ白になり気がつくと出撃前日に戻っていた。その後も何度かループを繰り返したものの、変わらない現実を実感したマリナは原因を探るべくあらゆる手段を尽くし、戦場を駆け抜け、技術を磨き、敵を分析し、生き残る知恵を捻りあげた。

そしてコーヒーを飲みながら読書をしていても不意打ちをかわせるレベルにまで到達したとき、目的の個体を発見し討伐、312回目の戦闘でマリナはループからの脱出に成功。同時にループの副産物として人類最強の戦士の称号を手に入れた。

彼女が倒したターミネーターは極秘裏に軍の研究機関に接収され解剖の結果、時を超える性質を持つとされるタキオン粒子が検出された。マリナの証言やメモリに保存された戦況記録も合わせると、この個体は時間を超えて自身のデータを過去の自分に転送する機能を持ち、得られた情報から自軍に有利な戦場を演出する、伝書鳩の役割を担っているらしい。

つまり、何回勝利に近づいても時間を巻き戻され"無かったこと"になってしまい、最終的には敗北するシナリオの手伝いをしているわけだ。マリナはそれを破壊した際に放出された粒子を浴びたため、ループ能力を獲得した。それから10年以上、彼女は戦い続けている。

「要するにぼくがループを抜け出すにはそのT-000を直接叩くしかないってこと?」

「ああ。だがコイツはあくまでも記録が目的だから戦闘が終わるまで出てくることは滅多にない。だからお前はそれまでしぶとく生き残らなくてはならない。意味わかるか?」

結局やることは変わらないということじゃないか。ぼくは深々とため息をついた。

「心配するな。私がお前を鍛える。来い。」

そう言って連れてこられたのは一番広いフロアだった。

「これを着ろ。」

渡されたもう一つのケースの中身はガンツスーツだった。

「まずお前の実力を見させてもらう。アレを倒せ。」

マリナが指差した先には、5体のターミネーターが完全武装して整列していた。対してぼくの手持ちはXガン一丁のみ。素人でも勝ち目はないと分かる。正気かと目で訴えたけど彼女は何も言わなかった。

僕は仕方なく銃を構え…案の定コテンパンにされた。撃たれ、殴られ、ぶん投げられ壁に激突する。至るところから流れる血液と一緒に、機能を失ったスーツのレンズからゲルが零れ落ちる。

「出力を半分に抑えた鹵獲機を1体のみ…センスの欠片もないな。」

千切られた右腕を拾いながらマリナが嘆息する。目の前の女性を女神のようだと誇張して憚らない広報部の連中の頭はどれだけおめでたいのだろうと思う。

「まあいい。これから徹底的にシゴいてお前を一端の兵士にしてやる。お前の死に場所は私が決めてやる。」

「ご厚意はありがたいけどぼくはこれからどうやって帰ればいいんだろう? 下半身から下の感覚がさっきから分からないんだ。」

「リセットすればいい。」

言うや否やマリナが右腕の握るXガンを引きはがし、瀕死のぼくに一射した。逃げられない代わりに4文字言葉をぶつけようとしたけど、その前に体の内側から何かがぼくを圧迫する感じが広がり、すっと消えたときに何かが破裂したような音が聞こえた。

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