「待ちくたびれたよ。」
それがこの数週間ぼくらが必死に追跡した男の第一声だった。頬骨が張り出しているのが若干の歳を感じさせるが、その肌は未だ若々しく全身からも生気が満ち満ちている。しかし、そこには健康美だとか躍動感だとか有機的なものはなく、陶器のごとき人工的な様式美を感じさせる。整い過ぎて却って不気味な外見にぼくの背筋が僅かに震えた。
「猶予期間まで残り1週間を切りつつある中で、君たちの行動は中々と言えたがまだ遅い。このままでは退屈で死ぬところだった。」
「影武者まで使っておいてよく言うじゃないか、グラハム・ターナー。まさか本当に出てくるとはね。」
おかしな動きをすれば即座に引き倒せるよう、全身の1mmほどの動きも見逃さない。威嚇の意味も込めて必要最低限の殺気を向けたぼくを、ターナーはつまらなそうに鼻を鳴らしてポツリと
「…そうか。仕込みは効いてるようだな。」
「何だって?」
「君が知っておく必要はない。敢えて言うとすれば、君には少し失望したということだ。ジャップ・ザ・リッパーともあろう者が、こんな金と利権しか頭にない底の浅い連中の集いにノコノコとやって来るとはな。君がその気になればいくらでも未来を書き換えられるというのに。」
やれやれと首を振るターナーにぼくのセンサーは、これまでにないほど大きく揺れた。
「まあ仕方あるまい。半年間のガールフレンドとの同棲は君の勘を鈍らせるのに十分過ぎた。しかし、稀代の英雄をたらし込むとは末恐ろしい女性だ。」
恐らくはぼくがすでに無線で連絡を入れたことにも気づいているだろうし、それを聞いた仲間がさりげなくぼくと彼の周りを囲っているのも分かっている。なのに、そう言ってバルコニーで待機しているアキラに手を振って見せた余裕っぷりは、どうにもこの状況を楽しんでいるとしか思えない。
「しかし、この作戦をREX単独で実行したのは良い判断だ。組織的には軍法会議ものだがな。」
そこまで知っているのか。わずかに舌打ちして睨みつける。奴の言う通り、この祝勝会への潜入捜査はぼくが対策本部に打診せず、独断で仕掛けたものだった。もし幹部たちに呼びつけられたら、ぼくはこう答える自信がある。アナタたちはターナーの詳細な行動記録を提示してきたのに、何故か顔だけは影武者のものにすり替わっていた。さらにはヨセミテ・バレーに大規模な秘密施設が建造されていることも黙っていた。情報共有は作戦行動の命綱なのに、それに切れ目が入ってるものをどうやって信用しろと言うのか。
「そう言えばアンタの影武者が彼女には気を付けろって言っていたな。アレは一体どういう意味だ?」
「それについては君もすでに知っている。いや、知っていたというべきか。どのみち答えはもうすぐ出る。ところで君は宗教をお持ちかな?」
「いきなり何の話だ。」
さっきと全く関係ない話題に問い返したが、ターナーはやっぱり笑ったままだ。
「人々は古来から様々な形で神との接触を試みた。音楽、絵画、儀式…最近では科学すら一つのアプローチと言われているが、未だ誰もその一端に触れた者はいない。」
当たり前だ。そんなものがあったらぼくは今頃戦場じゃなく、悠々自適なキャンパスライフを謳歌している。
「そもそも神とはどんな姿なのか。男か女か。1人か複数なのか。それ以前に存在するのか。歴史上の偉人や賢者たちがその答えにたどり着くために無数の方法を試したが、神はその御姿を表すことはなく人々はそれぞれの想像や理想のうちに幾つもの神を生み出した。挙句には自身の神が正しいと争い合う始末だ。そして何度かの聖戦を経験した人類は経済体制の移行により、また新たな信仰の対象を造り上げた。さあ何だと思う?」
「ジェパディに出演した覚えはないぞ。」
「金だよコガ・タクミ君。冷戦が崩壊し資本主義が世界に受け入れられた時から、金という最も信頼性が高くシンプルな神が誕生した。金はいい。ただ持っているだけで力を誇示できる。」
「それは資本主義に限らずいつの時代もだろ。」
「そうとも言える。だが、よく考えてみるといい。その価値を決めているのはとどのつまり数字、情報だ。これは持論だがこの世の全ては情報に還元できると思っている。科学、経済、遺伝子…最近では戦場も情報で統制しようとする動きがある。混乱の極みとも言えるものを統制するなど荒唐無稽だと感じるがね。ただ、すでに我々はガンツという神に支配されつつある。」
ぼくにはその意味が分からなかった。その様子を察しながらターナーは
「まず君たちのガンツへの印象は、人類に味方する超技術で造られた黒い球体あたりだろう。恐らく全世界の99.9%がそう答える。しかし、これは大きな誤解だ。」
「誤解? じゃあアンタはあの玉が何か答えられるのか。」
「もちろんだとも。ガンツ、いやスカイネットは1人の人間によってこの世に生み出されたのだから。」
「う…」
嘘だ。咄嗟に出そうとした苦し紛れの拒絶反応は、突然会場に注ぎ込まれた煙幕に封じ込まれた。たちまちその中に消えたターナーを逃がすまいと腕を伸ばしたけど、虚しく空を切るばかりだった。
「先輩、奴が消えた! 早くトレースを!」
『分かってる。ちょっと待て…いたぞ! 6番テーブル付近の非常口だ。』
先程から会場に持ち込んだ超小型ネクタイ型カメラやイヤリング型カメラ、そして密かにハッキングした会場の監視カメラのレンズをサーマルに切り換え、ナイジェルが対象を追跡して知らせる。それを聞き終わる前にぼくと数人の仲間が非常口をこじ開け階段を駆け下りると、黒い影が横切り1秒後には目の前を小口径弾の突風が吹き荒れた。すぐに飛び退いて回避できたものの、一瞬反応が遅れて硬直してしまったモリソン軍曹が蜂の巣にされてしまった。
「ダニー! チクショウ、待ち伏せだ!」
「マズいな…」
目の前で血を吹き出し続ける死体を引っ張りながら1人ごちる。ガンツスーツを用意してくれば良かった。玄関まであと一歩なのに、わざわざ階段という非常に狭い空間に陣取っている障害に舌打ちしたが、同時に違和感も覚えていた。
どうにも連中がプロとは思えないのだ。さっきの襲撃といい、パーティーに前触れもなく現れたターナーといい、隠密行動を旨とする情報局員がこんな掟破りで目立った行動を取るとは俄かには信じ難い。単なる素人を連れて来たのか、それとも何か目的があるのか。
そこまで思考を巡らせていた刹那、襲撃部隊の隣のドアが轟音と共に派手に吹き飛び、立ち込める煙を裂いて1台のバイクが顕現した。
「なにチンタラやってんの! 目標はとっくに車の中だぞ!」
紅いロングドレスを破って瑞々しい太腿を露わにしたアキラが上体を起こして怒鳴る。予想外の乱入に呆然とした隊員たちの中でいち早く我に返ったぼくは、そこらで気絶している襲撃者の中からP90サブマシンガンを拾い
「どうやって玄関に行ったの?」
「アンタに付いていくのが面倒だったから、下で待機してた味方に頼んで降ろしてもらった。今はシェリーが入口でカザマたちの援護に回ってる。ったく、アイツら何考えてんだか。一般人の前で銃撃戦とかやる? フツー。」
どうやらアキラも同じ疑問に至ってるらしい。しかし、ぼくにはそれよりも気になることがあった。
「あの、アキラさん。アナタの乗ってるそれは一体…?」
流体力学と頑丈性を徹底して突き詰めたかのような重厚で滑らかなフォルム。精巧な部品で組み合わされたボディに塗装は施されておらず、冷たい鋼鉄の装甲の隙間には所狭しと配線が通っている。そして最も極め付けなのがライトの代わりに覆われたカバーの内側に覗く爛々とした赤いモノアイだ。どう見たって民生品には思えない。
「この子? まさかアンタ、ハウンドを見たことないっての?」
ハウンドとは今彼女が跨ってるモトターミネーターという二輪型ターミネーターのニックネームだ。恐ろしく追尾能力が高いことから猟犬の仇名を頂戴している。
「それは分かってるよ。ぼくが言いたいのは、何で君がこれに乗ってるのかってこと。」
スロットルを捻ると勇ましいエンジン音が聞こえ、車体がブルリと震える。
「ワグナー中佐に無理言って運んでもらった。昔帰還中に車がエンストしてね。標識もない敵陣との
こっちのセリフだと思った。イラクに居た頃にセシルとチキンレースで乗った覚えがあるけど、二度とやるものかと心に誓ったほど酷い目に遭った。
「さっきシェリーたちが撃ち合ってるって言ってたけど、敵の規模は分かる?」
「ざっと20人はいた。後ろには黒塗りのバンが5台ほど停まってたから、ターナーは多分そのどれかに乗ってるはずよ。」
「でも装備を取りに行くにはこの銃弾の嵐を突っ切ってかなきゃいけないし…弱ったな。」
「何言ってんの。装備ならあるじゃん。」
ポンポンとバイクを叩いたアキラが不敵に微笑む。その意図を悟ったぼくはゲンナリと落ち込んだ。
「一応聞いとくけど、他に足はないの?」
「
「武器の方は?」
するとスカートの裾を持ち上げた先には、先程までなかったホルスターにロングマガジン付きの
「残念だけど私はこれだけ。それに撃ちながら運転すると、この子ピーキーで拗ねちゃうから。というわけで、特別に乗せてあげる。感謝しろよ。」
よく見ると2人乗りできるように車体が拡張されており、ご立派にもレザーシートまで張られていた。
「前に職場に遅刻しそうになったとき君が運転変わったことあったけどさ、それ以来ぼくは二度と君にハンドルを握らせるべきではないとつくづく思ったんだ。」
「私のテクを疑ってんの? 心配しないでもパトカーぐらいは振り切ってあげる。」
どのみち現状は彼女を頼るしかないようだ。これから我が身に起こる事態を想像してこれ見よがしにため息を吐いたぼくは、持てるだけの弾倉を上着やズボンに突っ込んで渋々相席することにした。
向かい風で瞼を開くのも一苦労の中、大きく身を乗り出してP90を構える。人間工学に基づいて設計されたグリップはすんなりと手に馴染み、腰だめに構えて発射された5.7mm弾が並走していた敵ハウンドのタイヤに命中し、ゴムの表面が破裂すると同時にハウンドは盛大に回転して路上に置き去りにされた。
「今ので何機目!?」
「5、いや6機だと思う。」
アキラのドライブに付き合って30分は経っただろうか。色とりどりのラスベガス・ストリップを抜け、ぼくらは州間高速道路の1つに入ってかなり危なっかしいカーチェイスを繰り広げていた。
流石に一般車が走る街中でぶっ放すわけにはいかず、大人しく前方のバンの群れを追いかけたが、アキラは緊急時の特権とばかりに軽々とスピード違反を犯した。その勢いたるや折角の夜景がほんの数分で過ぎ去るほどで、追いかけてきた警察官もあまりに無茶苦茶な運転に着いていけず完全に根負けしてしまった。多分、明日のラスベガス・レビュー・ジャーナルにはデカデカと写真が掲載されることだろう。タイトルは『赤いシンデレラ、鋼鉄の馬車でストリップを狂走』。
だが、敵もただ突っ走るだけで終わらなかった。カジノ街を出た途端、どこからともなくハウンドの軍勢が現れたのだ。恐らくはアキラと同じように鹵獲したものだろう。チラッと見ただけでも10機はいた。それに前方のバンが加算されるのに対し、こちらは1機のみ。どうみても多勢に無勢だ。
しかし、アキラの操縦技術はぼくの想像を遥かに超えていた。機械の如き正確さと素早さで判断して車体を操り、神懸かり的な勘で相手の猛追を捌いている。今まで色々な乗り手を見てきたが、これほどの腕を持つ人物は未だ見たことがなかった。
お陰で便乗しているぼくはジェットコースターに乗ってるのと同じ衝撃を味わい、何度か吐きそうになった。もしこの先同じような状況に遭遇することがあるなら、三半規管を切除した方がお得かもしれない。
「タクミ、8時の方向に近づいてきた。引き付けて!」
言われた方を振り向くと3機のハウンドが密集して、こちらの様子を窺うようにジリジリと距離を詰めてきていた。そこでぼくは指示通りに散発的に弾をばら撒き、適当に牽制する。果たして目論見は成功し、ハウンドらは弾幕を巧妙に回避して接近し、トライアングルのフォーメーションでぼくらを取り囲んだ。正面には1機が器用に反対向きで走りながら、こちらに両脇のプラズマガンを照射して徐々に相対速度を落としており、連られてアキラがアクセルを緩める。
「で、ここからどうするつもりですか大尉殿? 逃げられちゃいますよ。」
「こうすんだよ!」
そう言うなりアキラはぼくからP90の弾倉を奪い取って正面にぶん投げた。想定外の飛来物に意表を突かれたハウンドは大きくバランスを崩されながらも回避運動を取る。アキラはその隙を見逃さず、バイクの片側に身を乗り出し左手でアクセルを捻るという変則的な姿勢で拳銃を抜き、ハウンドの真上の看板を撃ち落とした。的が大きい分質量も大きく、姿勢回復も間に合わないままハウンドは落ちてきた鉄板の下敷きになった。
アキラはそれだけで終わらず、あろうことかさっきのハウンドのように機体を反転させ後ろ2機と正対する。その挙動を悟ったぼくは弾倉を取り換えたP90を構え、目標に照準を重ねアキラと全く同じタイミングでトリガーを絞った。普通なら有り得ない操縦に虚を突かれた敵は対処法を探るべく思考ルーチンをフル回転させたが、必死の努力も虚しく吹き飛ばされた。
「ようやく全部ね。」
「あのさ、素晴らしい仕事を見せてくれたことには感心するけど、何かする前には一声掛けてくれないかな? 正直、今も足が震えてるんだけど。」
「今度はエアバイクにも乗ってみる? きっと忘れられない空の旅を提供できると思うよ。」
それはきっと涙が出るほど鮮やかな遊覧飛行を堪能できることだろう。想像するだけで恐ろしく、彼女の肩を叩いて、進んでくれと合図する。つまらなそうにジト目をしたものの、ペダルを踏んだアキラの腰に手を回しながら、ぼくは改めて舌を巻いていた。
本来バイクはその構造上後ろ向きに走るようには出来ていない。唯一の例外としてコンピュータ制御のハウンドは、地面スレスレの横倒しや先程のようなバック走行もやってのける。そんな常人ではまず出来ない
『隊長聞こえるか!』
聞き慣れた仲間の声が不意にスピーカーに届く。
「カザマ? 今どこなの?」
『ちょうどそっちに向かってる。奴さん、急に撤退しやがった。』
「それは良かった。損害の方は?」
『死者は1名。軽傷が4名。重傷者はなしだ。モリソンのが不意打ちだったことを考えると、被害はほとんどないと言っていい。だがタクミ…』
「ああ、逆に不自然だ。連中だって馬鹿じゃない。恐らくは全部作戦だろうね。現にぼくらは10機のハウンドに追いかけられた。」
『何だと!? 怪我はしてないか?』
「大丈夫。さっきアキラが全部破壊した。」
『…お前の心配なんてしてなかったが、アキラも十分イカレてるな。』
「同感だよ。君も彼女をドライブに誘うときは気を付けた方がいい。」
『そうしよう。そろそろトンネルだ。もうすぐオレたちも合流するからお前らも何と…にあ…して…つ…を…』
「カザマ? おいカザマ?」
「…タクミ、マズいことになったみたい。」
急に電波が悪くなった無線の感度を調整して音を拾おうとしていた最中、アキラがポツリと、けどハッキリとした言葉でつぶやいた。
「ゴメン、今手が離せないんだ。悪いけど1分ほど…」
「20秒もないかも。」
そう言ってアキラが指した先には目標のバンと1機のヘリがあった。周辺が暗闇に覆われて分かりにくいが、タンデム型のコックピットとスリムな機影から、アメリカが運用する攻撃ヘリの1つ、コブラだろう。
エアバイクが実戦配備されてから徐々に退役しかけている軍用ヘリ類の一員ではあるけど、相手が人間ならば依然として高いポテンシャルを誇る化け物だ。
「何で
「多分民間に払い下げられたのをダミー会社を通して入手したんだ。警備用とか理由を付けてね。アキラ、振り切れる?」
「無茶言うな! いくら命があっても足りるわけないだろ!」
なんて押し問答をしているうちに、そのコブラが機関銃で攻撃を仕掛けてきた。ヴヴヴ、と20mm機銃の重々しい砲撃音が大気を震わせ、コンクリートの地面を容易く抉り取っていく。アキラは微細な重心移動とハンドル捌きでその合間を潜り抜けるが、コブラの狙いは正確で一向に逃れられる気配がない。せめてもの反撃に連射するけど、揺れが激しくロクに当たらなかった。
「射程が右にずれてる。もっと寄って!」
「ふざけんな! 崖に真っ逆さまになりたいっての!?」
けたたましい騒音に負けないくらいの大声で返す彼女を見て密かに安堵する。これだけ怒鳴り返せるならまだ大丈夫だ。そんな中、ぼくはある小さな違和感に気づいた。ほんの些細だけど、大きなことを。
「アキラ、あれはコブラじゃない。ヴァイパーだ。」
「ハア? そんなんどうやって分かるの?」
「さっきからローターの回転数が微妙に多い気がしてたんだ。よく見たらブレードが2枚じゃなくて4枚になってる。コブラシリーズでプロペラが4枚なのはヴァイパーだけだ。」
「んなもん分かるわけねえだろ! それにこの距離から…アンタ、どういう視力してんだよ?」
「話は後だ。どうやらぼくらが追ってた組織は予想以上の戦力があるらしい。」
ヴァイパーはコブラの上位機種スーパーコブラの発展形に当たり、2010年の運用開始から10年以上経った今でも僅かな部署にしか配備されていない。それが得体が知れないとは言え、諜報員ばかりの集団が保有しているなんて寝耳に水だ。
そう考えると仮にヴァイパーを破壊できたとしても、奴らはまだ強力なバックアップを備えているだろう。そんなのを相手にたった2人で勝てる道理はない。
そう思ってP90をこめかみに当てた時だった。何か空気の切れる、と言うより刺さるという表現が正しいような耳慣れない音がしたかと思うと、目の前の背中がグラつき栗色の頭が胸元に倒れ込んだのだ。
「アキラ!? どうしたんだよアキラ!」
背後から手を回して必死に操縦桿を握りつつ、アキラを揺さぶるが起きる気配はない。どこか異常が出たのか体のあちこちを探ると、鎖骨に小さな注射針が刺さっているのが分かった。どうやら麻酔針のようだ。
こうなったら最早打つ手がない。一刻も早くループするために死のうとした瞬間、首筋に鋭い何かが刺さり、ぼくの意識は急速にレベルダウンしていく。バランスを崩して倒れつつ塞がる視界に最後に映ったのは、バンから半身を出して細身の発射器を構えたターナーの姿だった。