その日の夜、アキラはナイジェルらが盗んだ酒を代わりに補充してくれとエリたちに頼まれ、倉庫に向かっていた。
なんで私がこんなことを、と渋ったがエリたちオペレーターは、明日の作戦要綱の最終チェックに余念がなく、雑用に割ける時間がないのだった。大事な友人の頼みとはいえあまり乗り気のするものではない。
電燈が灯る夜道を歩きながら、昼間の騒動を思い出す。あの後、騒ぎを聞きつけた曹長が現れ事情を知ると、ドレッドヘアは治療後に営倉にぶちこまれ、タクミはその前に姿を消してしまった。
ふと立ち止まり、あの時振り向いたタクミが脳裏に浮かんだ。今まで見たことのない顔だった。無表情で物を見るような目は本物の殺気の表れであり、アキラも一瞬だが寒気を感じた。
だが、すぐにアキラだと気づくと今度は悲しげな表情になり、逃げるように現場から離れていった。あの目を意識して、思わず身震いしながら再び歩き出す。
あの気弱で自分に助けてもらってばかりのタクミが、昨日までは普通だったのに、何があったんだろう?
収まらない想像を続けながらアキラは倉庫に着くと、妙なものが映った。シャッターが開いている。とっくに利用時間は過ぎてるのになぜ?
疑問を感じつつ中に入り電気をつけると、目を疑う光景がそこにあった。謹慎処分されたはずのドレッドヘアが右手に銃を握り、立っていたのだから。
驚愕した様子なのは向こうも同じで、一拍早く我に返ったアキラはすぐに逃げようとしたが、壁に着弾した拍子に降りたシャッターが退路を断ってしまった。狂気の目で狙いを定めてアキラを奥に追い詰めたドレッドヘアは、テープで両手を縛ると柱にくくりつけた。
「…何でここに居んだよ。」
ようやく絞り出した声に
「決まってんだろ。アイツに天罰を下すためさ。大勢の前で恥かかされたんだ。当然やり返す。」
「だからって銃を使うわけ? ガタイはいいくせにやることはチャチね。」
嘲りを含んで言い返すと、躊躇なく銃口が突き付けられた。
「どうせ明日死ぬんだ。今日でも変わりゃしない。だが、お前が条件に従えばコガは見逃してやる。」
したくもなかったが、内容はほぼ予想できた。けど、タクミを守るには他に方法がない。アキラはドレッドヘアを殴り殺すのを我慢して提案を受け入れた。息を荒くしたドレッドヘアの無骨な手が、遠慮なくアキラの胸に伸びる。
虫唾が走るほど気持ち悪かったが、歯を食いしばって何とか耐えた。
「噂は聞いてたが中々の巨乳だな。ミス・ヨコスカは伊達じゃないってか。」
下卑た笑いを浮かべたドレッドヘアを精一杯の殺意を込めて睨みあげる。
「いいねぇその目。たまんねえな。」
不意に手が離れたと思ったら、シャツを剥かれブラに包まれた豊満な胸が露になり、さらにはズボンも脱がされた。恥辱のあまり唇に血が滲む。格闘術に関しては厳しい訓練で耐えた分それなりの自負があるが、拳銃相手ではあまりにも分が悪い。
「そう泣くなよ。おかげでお前の好きな幼馴染が死なずに済むんだからな。」
「殺してやる…!」
心の底からの憎悪と一緒に唾を吐いたが、頬にビンタを浴び、腹を蹴られ、激しくせき込んだ。すると、股間に冷たい感触が当たった。
視線を転じると下着越しに拳銃が触れている。
「暴れるなよ。手元が狂って撃っちまうかもしれないからな。」
念のためにセーフに指をかけているが、それもドレッドヘアの気分次第でどのみち言いなりになるしかない。
口から垂れた血を気にすることもなく、ドレッドヘアはブラを剥ぎ取ると隠すものがなくなった胸を嘗め回し始めた。ナメクジが這うような気色悪さに体中の汗が噴き出るも、アキラは忍耐を貫いた。
これでアイツが助かるなら。ただそれだけを依代にしながら、アキラは堪え続けた。すると相手の顔が急に離れた。終わったのかと視線を戻したアキラは、それがとんでもない間違いだと知る。
ドレッドヘアは空いた方の手を自分のベルトに伸ばし、バックルを外そうとしていた。その意味を悟ったアキラは必死に抵抗するが、銃床で腹を打たれ力が萎えてしまった。
こんな場所で、こんな奴に、今人生最大の屈辱が訪れようとしている。
半分あきらめて目を閉じたそのとき、シャッターが開く音がアキラの耳に届いた。