「見えますか!?」
「海面の反射でよく見えないのです!」
電と共に魚雷をを探す霧先。
しかし彼の心には焦りがあった。
「早くしないとこの艦が・・・。」
「雷跡視認なのです!」
その時、電が雷跡を視認した。
酸素魚雷も最初の数百メートルは雷跡が出るのだ。
魚雷を視認したのは柳達自衛官もだった。
魚雷の詳細を知るため尾栗は柳に聞いた。
「柳!この魚雷はどこの魚雷か分かるか!?」
「日本海軍の魚雷、九五式魚雷に違いありません!米海軍の魚雷はMk14ですから航跡は視認できます!先ほどの魚雷は二酸化炭素を排出していました!」
「航跡が見えないんだな・・・何とか角度は分からないか!」
「左130度!相対速度約5ノット!」
魚雷の説明を聞いた尾栗はすぐに指示を出した。
それは霧先も同じだった。
「面舵いっぱーい!」
「距離250なのです!」
霧先の指示と共に艦が面舵を取る。
そして電から魚雷の距離が告げられる。
角松らが乗る「みらい」のCICでは光点が艦に接近してくる。
「30!」
二発の九五式魚雷は二隻の左舷をギリギリ通過していった。
「躱した!」
「まだだ!残り二本!航跡知らせ!」
躱したことに安どする柳だったがまだ戦闘は集結していない。
まだ二本の酸素魚雷が迫って来ているのだ。
尾栗はコースを知り修正するために柳に聞いた。
霧先らが乗る「みらい」でも電から報告が来る
「雷跡真艦尾!広がりつつ接近!距離500なのです!」」
「もどーせー!」
霧先の指示で再び艦が動く。
そしてもう一隻の「みらい」CICでは光点が迫っていることを自衛官が報告していた。
「距離150ヤード!接触します!後5秒!4秒!3秒!2秒!1秒!」
残りの九五式魚雷は角松らが乗る「みらい」の艦尾で左右にわかれた。
躱すことに成功したのだ。
「魚雷全弾躱しました!遠ざかります・・・。」
両艦に安堵の空気が流れるがまだ戦闘は終了していなかった。
まだ「みらい」の放った【サジタリウスの矢】が伊168を追っていた・・・。
「アスロック、目標追尾中!」
CIC要員の報告を聞いた菊池は思案していた。
「(あの潜水艦は本艦の情報を相当収集したはず・・・魚雷を躱した運動能力など浮上したらその情報は日本海軍に報告される・・・放っておけば敵の新勢力と誤認されてどこまでも追尾して攻撃を仕掛けてくるだろう・・・本艦の安全と秘密を守るためにはこのまま・・・報告されたとしてもまだ選択肢はある・・・だが、情報通りなら相手は国のために戦う罪のない艦娘・・・沈めてしまえば・・・もう後戻りは・・・。)」
艦娘の命を取るか自分たちの安全を取るかの決断を迫られた菊池は艦内電話を手に取り艦橋に進言した。
「艦長、魚雷の自爆を、進言します。」
艦橋では菊池の進言を聞いた梅津が考えていた。
「副長。」
「はっ!」
「我々にとって艦娘たちは・・・敵なのか?」
副長である角松は少し黙った後、自分の考えを梅津に具申した。
「・・・・・・・・・・攻撃してくる脅威を敵と判断し、排除することは、正当な自衛権の行使です。」
「・・・・・よかろう、指示を頼む。」
「はっ!」
梅津の指示を受けた角松は艦内電話を使用しCICに指示を送った。
「CIC、艦橋!魚雷そのまま、指示を待て!」
「!!」
角松が出した指示。それに菊池は驚愕せざるを得なかった。
魚雷をそのままにするということは艦娘を撃沈するということだ。
仮にも艦と同じ強度を持つ艦娘にアスロックが命中すればただでは済まない。
一方、伊168は軽くパニックを起こしていた。
謎の音が自分の方へと接近してくるのだ。
「何なのよあの音!ソナー?・・・。」
しかし伊168はある音を聞く。。
「!魚雷・・・魚雷から探震音・・・!武蔵さんに報告しながら逃げないと・・・!」
それは魚雷が水中を進んでくる推進音だった。
伊168の頭にある推測が浮かんだ。
この魚雷はソナーを発し、自分を延々と追いかけてくるものだと。
伊168は即座に旗艦である武蔵に連絡した。
『こちら武蔵、どうした、イムヤ。』
「武蔵さん!あの艦は、ばばっ化け物ですよ!」
『化け物?』
「いきなり照明弾を撃ったかと思ったらへんな音を出す魚雷を撃ってきて・・・それが生き物みたいに追いかけてくるんですよ!」
『何っ!とにかくその魚雷を躱せ!』
「だから生き物みたいに追いかけてくるんですよ!」
武蔵も伊168もパニックを起こしかけていた。
無理もない。
彼女たちの時代の魚雷というものは対艦兵装であり水中の向かいところを潜航することは無い。
しかし現代の短魚雷は基本的に対潜・・・潜水艦を沈めるために使われる。
それにこのアスロックの弾頭、Mk46短魚雷が配備されたのは1967年だ。
彼女たちにとっては信じられない兵装となる。
「みらい」CICでは魚雷命中時間が報告されていた。
「魚雷命中まであと10秒!」
CICから伝えられたその情報を聞いた角松は艦橋から指示を出した。
「菊池!魚雷を自爆させろ!」
「了解!」
菊池は即座にアスロックの自爆スイッチを押す。
それと同時に伊168に接近していたアスロックは水中で爆発した。
「うわあぁぁぁぁぁ!」
その爆発の衝撃で伊168は前に吹き飛ばされる。
そして海面に水柱が上がった。
自爆を確認した角松はソナーへ無線を入れる。
「ソナー、何か音は聞こえるか?」
『聞こえませんが・・・微かに何かが浮上する音が聞こえます。』
ソナー要員からの報告を聞いた梅津は静かに話しだした。
「これが我々のとれる最善策だったと思いたい・・・だが・・・また一つ、追いつめられたことは確かだな。」
「はっ・・・。」
その言葉に角松は同意しながら艦内での指揮を執るため気を引き締めた。
そのころ第二艦隊では武蔵が必死に伊168に呼びかけていた。
「イムヤ!聞こえるか?イムヤ!」
しかし伊168は通信機器を破壊されているために通信不能なのだ。
それを知らない武蔵の無駄な掛け声が響く。
「どうします?偵察機を飛ばしましょうか?」
「頼む、それと提督に連絡と第一次攻撃隊の準備を、これから戦闘を開始する・・・。」
加賀の提案を了承した武蔵は現状を報告するために無線の周波数を変更した。
その頃、霧先はある決断を迫られていた。
これから起こるであろう出来事で「みらい」艦長として下すべき決断を。
「・・・・・。」
「艦長・・・。」
心配そうに見つめるみらいに霧先は一つの指示を出した。
「みらいさん、対空、対水上、対潜戦闘用意・・・。」
「艦長!まさか!」
「僕たち250名が横須賀にたどり着くには避けて通れません。」
「・・・了解!」
霧先が下した決断。
それは第二艦隊と交戦することだった。
それを知らない蒼龍はみらいに尋ねた。
「みらいさん、どういうことなんですか?」
「これから我々は回避不可能な戦闘をしなければなりません。」
その言葉を聞いた長門はすぐに察した。
「まさか!第二艦隊と戦うつもりか!」
「はい、その通りです。」
霧先は静かにはっきりと言った。
そのことを聞いた長門は霧先に掴みかかる。
「貴様!まさか武蔵達を殺す気か!」
「あくまで最悪の場合です!今、必死に方法を考えているんです。」
霧先からの命令があればシースパロー、トマホーク、主砲、68式短魚雷、ハープーン、この「みらい」の全イージスシステムを使い第二艦隊と交戦することはできる。
だが、これらは元々、対艦、対ミサイル用に設計された兵器だ。
第二次大戦の日本海軍の軍艦、ましてや艦娘という存在に対して設計されていない。
発射して被弾すれば死体も残らないかもしれないのだ。
「どうすれば・・・。」
「艦長・・・。」
みらいに罪悪感を覚えさせてはならないと思う霧先は必死に考える。
その時、みらいは艦娘だということに気づいた。
「そうだ!みらいさん!」
「ひゃっ!かっ艦長!?」
霧先はみらいの装備を確認した。
VLS、127mm単装速射砲、68式3連装短魚雷発射管、ハープーン対艦ミサイル4連装発射管、CIWS、チャフ発射機がきっちり完備されていた。
それを確認した霧先はある作戦を思いつく。
「みらいさん!」
「はっ、はい!」
「毒をもって毒を制すという言葉がありますよね?ならば艦娘をもって艦娘を制するんですよ!」
「へ?」
「どういうことですか?」
霧先の言葉をイマイチ理解できていないみらいは疑問符を浮かべ、赤城は霧先に尋ねた。
「みらいさんに戦ってもらいたいんです。」
「私が・・・?」
霧先の言葉にみらいは唯々驚いていた。
作戦を説明した霧先はすぐに梅津に無線連絡をした。
連絡を受け取った自衛官は梅津に報告した。
「艦長、霧先艦長から無線が。」
「分かった・・・霧先君どうかしたのかね?」
梅津はマイクを手に取り霧先との会話を始めた。
『第二艦隊との交戦の被害を最小限に抑える方法を思いつきました。』
「ふむ、聞かせてもらえるか?」
『はい、まずは・・・。』
霧先は作戦の趣旨を伝えた。
それを聞いた尾栗は即座に声をあげた。
「無茶だ!みらいさんを一人で行かせるなんて!」
尾栗がそういうが梅津は静かに霧先に聞いた。
「霧先君、本当にその作戦は成功すると思うのかね?」
『出来るか、出来ないかではなく、やるんです、責任は自分が全て負います。』
霧先の覚悟を感じた梅津は一言伝えた。
「・・・・分かった、試してみよう、良いかな?みらいさん。」
『はい、覚悟はできています。』
「よし、許可する。」
『了解!』
梅津の了解を得た霧先は早速作戦を実行するべく行動を始めた。
その頃、第二艦隊旗艦の武蔵は提督に連絡していた。
「とういうことだ、提督どうする?」
『・・・・攻撃してくるなら、相手は俺達を敵とみなしているということだ、それに深海棲艦が居る海域に堂々と居るのも不可思議だ、つまりはそういうことなんだろう。」
「攻撃は?」
『許可しよう。」
深海棲艦のいる海域にいる艦はおかしいと考えた提督は武蔵達の「みらい」への攻撃を許可した。
「分かった、戦闘が終了したらまた連絡する。」
『気をつけろよ?』
「心配する必要はない。」
武蔵はそう言った後、無線を終了した。
提督は交信が終了した後、ある単語が引っ掛かっていた。
「海上自衛隊・・・まさか・・・調べてみるか・・・大淀、少しの間頼むぞ。」
「了解しました。」
そう言って提督は大淀に作戦指揮室を任せてある単語を調べるために資料室へと向かった。
どうも、そろそろ戦闘も終わりですかね。(但しこれでこのシリーズでの戦闘が終わりとは言っていない。)
では次回予告
友成「目標、正規空母加賀、瑞鶴の飛行甲板、主砲、撃ちー方始め!」
みらい「目標、航空戦艦、伊勢、日向の飛行甲板、ハープーン発射!」
友成「最終目標、戦艦、武蔵の副砲、トマホーク発射!」
瑞鶴「動かないで。」
人は武器を突き付けられたときどのように動くのか。
次回「第捌戦目「避けられない戦い」」
それでは次回に向けて、撃ちぃ方ぁ始めぇ~!