第弐拾戦目「情報制限」
「みらいさんはすごいのです!」
「戦艦相手にあんなに攻撃できる艦娘はいないっぽい!」
「どうしたらそんなに強くなれるの~?」
ワーワーキャーキャー!!
演習終了後の1900に食堂では友成、みらい、海自の歓迎パーティーが開かれていた。
その中でみらいは駆逐艦や軽巡、重巡にもみくちゃにされていた。
「艦長~助けて下さいよ~!!」
「これも交流だから頑張りなさい。」
「そんな~!!」
みらいに助けを求められたけど交流という面の為に犠牲になって貰う。
合掌。
「ハハハ、まさか俺達の乗る艦があんな風にされているなんてな。」
その様子を見ていた尾栗さんが笑った。
「だが、流石に冷たくないか?」
「今だからできることが多い。艦だった頃では体験できないようなことが。だから艦長としては女の子としても生きて欲しいんですよ菊地三佐。」
彼女は苦難をいくつも乗り越え航海の果てに沈んだ。
だからせめて二度目の人生は楽しいことに多く触れて欲しいと思っている。
「そう言えば気になったんだがここの提督は山本長官と同じ階級だよな?意外と若く見えるんだが・・・。」
「そうだな、初対面の時は交渉の事を考えていて気にならなかったが改めてみると俺たち位に見える。」
「大体30代前半だな、それで大将とはかなりのものだぞ。」
尾栗三佐と菊地三佐、角松二佐の言う通り意外と高屋提督は若く見える。
あの年で連合艦隊司令長官と同じ階級とは普通では考えられない。
「母さんなら知っているかもしれません。」
「友成の母親がか?」
「えぇ、どうやら古参の部類に入るようで・・・。」
だけど重要なことは分からない。
僕だって明石さんから又聞きしただけだ。
「こんばんわー!那珂ちゃんだよー!」
「ダッハァ!!」
後ろから大声を出されて僕は椅子から飛び上がった。
「あれぇ?驚かせちゃった?ごめんね友君。」
「え?うん、こういうのは慣れているから・・・・。」
主に元の世界にいる義理の姉の所為だけど・・・。
「えっと・・・どちら様ですか?」
尾栗三佐が那珂叔母さんに尋ねた。
「那珂ちゃんは那珂ちゃんだよー!神通お姉ちゃんの妹だよー!」
「川内型軽巡洋艦三番艦「那珂」か、二水戦も務めた艦だったはずだが・・・。」
「「「(艦娘になるとこうも変わるもんか・・・。)」」」
菊地三佐が一言言った後に三人がそろって那珂叔母さんを冷ややかな目で見た。
「えっと、那珂叔母さん?そうだ、母さんについて教え、へぶう!」
言葉を言い終わる前に那珂叔母さんに両頬を押さえられた。
「那珂ちゃんはおばさんじゃないよ!」
「いや、友成から見れば叔母だし、進水した時から数えて見なよ。」
「・・・・セ、セーフだし!」
颯爽と現れたのは川内伯母さんだ。服装からして二人とも改二じゃないんだね。
ていうか那珂叔母さんは「叔母さん」という単語に反応したのか・・・。
「はぁ、えっと初めまして、川内型軽巡洋艦一番艦「川内」だよ。」
ため息をついた川内伯母さんが自己紹介をした。
「えー、初めまして?霧先友成です。」
「他人行事だねーもっと気楽に話しなよ。」
「え?う、うん・・・。」
なんだかぐいぐい来るな・・・。
「やっぱり神通に似てるね!特に目元!」
「あ、ありがとう川内伯母さん。」
「伯母さんかぁー・・・やっぱそういわれるのには違和感があるなぁ・・・。」
そりゃいきなり甥っ子が来てるんだもの、そうなるよね。
「じゃあ、お姉ちゃんって呼んでもらったらいいんじゃないかな?」
「それ良いね!友成、試しに言ってみて?」
那珂叔母さんの提案に川内伯母さんが賛成した。
確かに姉妹に見えなくもないけど・・・。
「えっと、川内姉さん?」
「いいね!じゃあ私と那珂はそう呼ぶように!」
「えぇ~・・・。」
少し強引な気がするけど・・・まぁ良いか。
「それはそうと・・・夜戦は好き?」
「え?いや、この世界に来るまでは唯の高校生だったから・・・。」
「じゃあ夜戦の素晴らしさについて教えてあげるよ!」
なーんだか面倒なことになったぞぉ?
「いや、夜戦h「夜戦っていうのはねぇー・・・。」・・・。」
話聞かんなこの人・・・。
「ん?なんだかコソコソしている艦娘が・・・。」
何やら挙動不審な人を発見・・・あの人は青葉だよね?・・・・まさか!?
「川内姉さんごめん!角松二佐!少しみらいに行ってきます!」
「あっ、おい!どうしたんだ!」
角松二佐が声をかけるが僕は出ていった青葉さんを追いかけた。
~工廠・ドック~
「・・・・侵入成功。さて、一体どんな秘密があるんでしょう・・・ジャーナリスト魂がくすぐられます!」
青葉型重巡洋艦「青葉」はコッソリとパーティーの為、誰もいないドック内に侵入していた。
勿論、目標は「みらい」である。
青葉の目的は一体「みらい」はどんな兵器を持っているのか?どう操作するのか?どこの所属なのかを暴くことである。
「おぉ・・・これはまたシンプルな形ですね・・・。」
青葉はサッとカメラを構えて「みらい」を写真に収めていく。
「この単装砲は駆逐艦のものに似ていますね・・・砲が一門とは寂しいですが・・・あの艦隊を負かすぐらいです、きっと霧の艦隊の様な兵器であるに違いありません!」
写真に収めていく青葉が言う霧の艦隊とは去年の冬に現れた超兵器を持った艦艇のことである。
連合艦隊でも歯が立たないぐらいに強いその艦艇に遅れをとっていた海軍は同じ霧の艦隊の「イ401」「タカオ」「ハルナ」と共同戦を張ることに成功、霧の艦隊を迎撃した。
あの演習を見ていた青葉は「みらい」も霧の艦隊と似た存在だと考えていた。
「では、細部も見てみましょう・・・。」
立ち入り禁止と書かれた看板を無視して青葉がタラップを上がろうとしたとき。
「動くな!動けば撃つ!!」
友成の声が響き、青葉は止まった。
「VLSやCICを見られる前に追いついて良かった・・・こっちを向いてください。」
青葉は冷や汗を垂らしながら友成の方を向いた。
友成は9㎜拳銃を構えていて顔は完全に怒りの表情だった。
「何をしようとしていたんです?」
「えっと、皆さんこの艦の性能や素性を知りたがっているので・・・ジャーナリストとして公表しようかと・・・。」
青葉は拳銃を突き付けられた状態で苦笑いしながら答えた。
そして友成はその言葉にこう答えた。
「良いですか?この艦はボタン一つ押すだけで確実に深海棲艦を沈められる。そんなものを公表してもし大本営に漏れれば日本海軍はどうします?」
「えっと、そりゃ見に来ますよ。」
「その通り、ただし来るのは武装した兵士でしょう、武力行使をしてでも「みらい」を拿捕するためのね。」
「あっ・・・。」
そこまで行って青葉は初めて友成の言いたいことを理解したようだった。
「みらいを公表するときには優先的に教えます、それまでは秘密にしておいてください。」
「・・・・・分かりました、約束ですよ?」
「約束は守ります、カメラをこちらに。」
友成は青葉からカメラを預かり9㎜拳銃をしまった。
「このカメラのフィルムは処分します。」
「くっ、良いです。ですが!代わりに貴方に取材をさせていただきます!!」
「え~・・・分かりました。」
友成には一瞬青葉が伝統文屋に見えたような気がしたがこういうタイプの人間が引き下がらないことを知っていた為渋々承諾した。
その後、友成は1時間ほど根掘り葉掘り質問されパーティー会場に戻ったときには疲れていてそのまま寝てしまったそうだ。
そしてパーティーが終わって数時間後に朝日が水平線から昇る。
それは、これから先、高校生艦長と自衛艦娘、そして自衛官たちが進む航路を照らしているようだった。
短いのはご勘弁を・・・。