「え~っと、貴方は扶桑型戦艦三番艦「伊勢」で間違いありませんね?」
「そうだけど?」
頭に?を浮かべる伊勢さんに僕は頭を抱えた。
伊勢さんの服装は扶桑型のそれと全く同じだった。
つまりは唯でさえここには二組の
「綾波、どうしようか・・・。」
「とりあえず案内はここで終わりだったのでこの後の行動に支障はないですが・・・。」
綾波も頭を抱える。
その様子を「やってやったぜ!」と達成感の顔でいる妖精さんが見ているためどうしようもない気持ちになる。
「ところで、貴方が提督?にしては幼いけど・・・。」
僕と綾波が頭を抱えていると伊勢さんが質問をしてきた。
どうやら僕を提督と思っているらしい。
「いえ、僕は駆逐艦の臨時艦長を務めています。霧先友成です。こっちがその駆逐艦のみらいです。」
「は、初めまして、みらいです!」
「そうだったんだ、よろしくね。それで提督は?」
僕と綾波は目を合わせた。
もう隠すべきことでは無いしすぐにばれるだろうから。
「今は執務室に居ます。案内するのでついて来て下さい。」
伊勢さんを提督に会わせることにした。
「何とか誰にも会わずに来れた・・・。」
運が良かったのか誰にも会うことなく執務室にこれた。
とりあえず身だしなみを整えてからドアをノックする。
『誰だ?』
「霧先友成、綾波、みらいです!」
『入って良いぞ。』
「伊勢さんは呼ぶまで待っていてください。」
「ほいほーい。」
伊勢さんに注意してからドアを開けて中に入る。
「執務中に失礼します。」
入ってから海軍式の敬礼をする。
提督も座りながら敬礼をした。
「それでどうしたんだ?」
「はい、実は司令官・・・。」
綾波が事の出来事を話してくれた。
「ふむ、では戦艦が建造されたんだな?」
「はい、自分も確かに確認しました。」
「その艦とは?」
「今呼びます。入って来て下さい!」
僕が声をかけると同時にドアが開けられ伊勢さんが入ってきた
「扶桑型超弩級戦艦、三番艦の伊勢です。提督、よろしくお願いします!」
「はっ?」
提督の間の抜けた声が聞こえるのも仕方がないのだろう。
「私が説明を。そもそも扶桑型は四番艦まで建造予定でしたが「伊勢」の建造が遅れ、その間に扶桑型の欠陥が発覚、急遽改修され伊勢型が建造されました。」
みらいが説明してくれた。
そういえば結構書物が入っていたっけ。
「ではその存在しない艦が出来たと?」
「そうなります・・・。」
「ふむ・・・では友成、四番艦建造の可能性も?」
「恐らくあると思います。」
「では・・・四番艦の建造を視野に入れよう。」
「伊勢さんはどうしますか?」
「上には友成たちの事と合わせて報告しておく。彼女は扶桑のところへ案内してやってくれ。今夜、歓迎会を行う。」
「了解しました。失礼します。」
「「「失礼します!」」」
僕たちは敬礼をして執務室を後にした。
「存在しない艦か・・・。」
提督は一人になった執務室で天井を眺める。
「何故そんな艦が建造された?」
「ある種の力じゃないかな?」
提督の独り言に応答する高い声が響く。
提督はその音の発せられた方を見る。
そこには身長15㎝ほどのOD色のつなぎと黄色いヘルメットを被った小さな女の子がいた。
実は彼女こそ工廠の妖精をまとめる主任妖精なのだ。
「主任妖精、入るときは・・・」
「ノックしろ。でしょ?今回位いいじゃない。」
「これで100は超えているはずだぞ?」
眉間を押さえる提督に笑いながら主任妖精が近づき彼女にとってはかなりの高さの執務机に軽々と飛び乗った。
「とにかく、彼の運はすごいね。」
「彼?友成の事か?」
「あぁ、彼はおそらくイレギュラーを引き込む力でも持っているんじゃないかな?」
「イレギュラーを引き込む力?」
「イレギュラーはイレギュラーを呼ぶ。そういうことさ。」
「よく分からんな。」
「私もわからん!」
そういって笑う主任妖精に提督は再び眉間を押さえる。
これでは提督の顔にしわが増えるのも時間の問題だろう。
「これは私の案だけど・・・。彼を工廠長にしてみたらどうだい?」
「工廠長にか?」
「そうすれば彼を技術者として海軍に編入できるし、私の仕事も減る。さらに遠征や資材の確認とかの書類仕事も彼に分担させることが出来てwin-win、一石二鳥だろ?」
提督は主任妖精の考えに一理あると考えていた。
丁度、友成や海上自衛隊の人員を等やって上に報告するか考えていた。
「みらい」の力をそのまま上に報告すれば拿捕しにやってくる。
そうなれば海上自衛隊は敵対する組織になる上、友成の母、先代神通がキレて取り返しのつかないことになる。
更には川内型三隻も敵になる可能性が出て来る。
今まで歩んできた仲間に武器を向けるような真似がしたくないと考えていた提督はどう報告するか悩んでいた。
だが、主任妖精の提案を使えばかなり楽に事は進む。
彼が工廠長となり、妖精と信頼関係を築くことが出来れば万が一の時には妖精も友成側につくだろう。
そうすれば深海棲艦に対抗する手段がなくなる。
「みらい」の技術と妖精を失うリスクを天秤にかけたとき、後者が確実に海軍、ひいては日本国にとって致命的なダメージになる可能性が高い。
これをダシに上の人間を脅せばそう簡単に「みらい」には手が出せなくなるだろう。
ついでに自分の書類仕事も減るのだ。
そこまで考え付いた提督は結論の出した。
「君も悪知恵が働くな。こんな良い状況を作り出す手立てを聞いて俺が却下すると思うか?」
「思わないねぇ~。これでも古参メンバーの一人だからね。君対しての悪知恵はよく働くのさ。」
そういって主任妖精は執務机から降りてドアの方に歩いて行った。
「友成の件は私から他の奴に話しておくよ。それじゃあ!」
そういって主任妖精は執務室から出ていった。
「全く・・・いいように事を運んでくれるな。君は。」
提督は頭をかきながら友成の証明書を書き始めた。
「ここです。伊勢さん。」
綾波を筆頭に僕、伊勢さん、みらいの単縦陣で到着したのは戦艦寮、扶桑型の部屋だ。
到着してすぐに綾波はドアの前に立ってノックする。
「扶桑さん、いますか?」
「綾波ちゃん?ちょっと待ってね。」
すぐに中から返事が聞こえ、ドアが開けられた。
中から出てきたのは扶桑型戦艦一番艦「扶桑」だった。
はっきり言ってものすごい美人です。こんな美人ばっかりとか提督も男として最高の職業についているように思える。
「扶桑さん、新しい艦娘が建造されたのでこちらの部屋に案内することになりまして。」
「あら、そうなの。そちらの方は確かみらいさんと友成君ね。それで、新しく来た人は?」
「この人です。」
「初めまして、扶桑姉さん。伊勢だよ、よろしくね!」
直後扶桑さんが固まった。
「扶桑さーん?」
とりあえず眼の前で手を振ってみるが反応がない。
完全にフリーズしてしまっている。
「扶桑さん!」
「はっ!あれ?私・・・・。」
大きな声で呼んで眼の前で手を叩いてみるとやっと戻ってきた。
「しっかりして下さいよ・・・。」
「ごめんなさい友成君。ところで伊勢はなぜこんな格好を?」
「いえ、彼女は伊勢型一番艦「伊勢」ではなく扶桑型戦艦三番艦「伊勢」なんです。」
「つまり・・・。」
「扶桑さんの実の妹さんですよ。」
僕が説明し、みらいが結論を言うと扶桑さんは再び少し止まった。
そして目尻に涙を浮かべて伊勢さんに抱き着いた。
「ふ、扶桑姉さん?」
「グズッ・・・会えた・・・会えなかった妹に・・・・。」
「扶桑姉さん・・・。」
どうやら相当嬉しかったのだろう。
扶桑さんの涙は止まらなかった。
「さーて、ここからは部外者は立ち入り禁止。撤退しよう。」
「そうですね艦長。」
「私もそれがいいと思います。」
二人と意見が一致したところで撤退することにした。
「それでは伊勢さん、夜に食堂で。」
「うん、またね友成君、みらいちゃん、綾波ちゃん。」
そして僕たちはその場を去った。
夜・食堂
二日連続の歓迎会ということもあってか昨日よりは抑えめだった。
因みに海自の皆さんは今回は出席しないとのことでこの場にはいないが順調に歓迎会は盛り上がっていた・・・・が。
「馬鹿めと言って差し上げますわ!」
「狼で何が悪いのよー!」
「どんどん飲め―!ヒャッハー!」
「夜戦だ―!」
「那珂ちゃん、歌いまーす!」
「こいつら全員を食堂から叩き出せ!」
高雄さん、足柄さん、隼鷹さん、川内姉さん、那珂姉さんが騒ぎ出したため取り押さえる事になった。
「ふぃーー。」
「お疲れさま友成君。」
「伊勢さん。扶桑さんたちと一緒にいなくていいんですか?」
窓の近くで月を眺めている時に声をかけてきたのは扶桑型の伊勢さんだった。
「大丈夫。それよりありがとうね。」
「何がです?」
「私を艦娘にしてくれて。」
「別に僕がっていうわけでもないんですけど・・・。」
「私はそうは思わないな~。友成君だったからこの世界にこれたと思っているの。」
そういって外の月を眺める伊勢さんはかなりの絵になっていた。
「そうですか・・・。」
伊勢さんの言い方に少し違和感を感じながらも気に止めないことにした。
「所で友成君は好きな人とかいるの?」
「ブフッ!!い、いきなり何聞くんですか!?」
「いいじゃんいいじゃん。どんな子が好きなの?」
悪そうな笑みを浮かべながら伊勢さんが聞いてくる。
「い、いませんよ・・・そもそも女子との関係なんて少ない方ですし・・・。」
「ふーん・・・そうなんだ。」
何か企んでないかなこの人・・・。
「とにかくお邪魔しました~。またね。」
そう言って伊勢さんはまた歓迎会に戻っていった。
明日も何かありそうだな・・・。
「艦長も食べましょうよ!」
「今行くよ。」
僕も歓迎会に戻るかな。