「・・・・・・・これで良し。みらいこの書類を確認しておいて。」
「分かりました艦長。」
現在10時56分、書類整理を行っている。
工廠長となった今、僕にも書類という仕事が回ってくる。
主な仕事内容は建造・開発要請書類の確認、建造・開発結果報告書類作成、建造された艦娘の詳細書作成、艦娘の艤装の損害とそれに伴う修復費の報告書作成、遠征で得られた資材の報告書の確認、演習許可書の確認、演習での消費資材の報告書作成、そしてそれらの書類の中から必要なものを提督へ提出。
それだけではなく艤装の管理・整備状況の把握、倉庫内の資材数の管理など仕事が満載だ。
当然一人で仕事ができるはずもなく提督と同じようにみらいに秘書艦として手伝ってもらっている。
「さて、書類はこれだけかな・・・。」
とりあえず背伸び。
朝の6時半からずっと書類と格闘していたためかなり気持ちいい。
「艦長、書類の確認終わりました。問題ありません。」
「ありがとう、僕は書類を提出してくるから遠征組が帰ってくる2000まで上がっていいよ。」
「分かりました、では間宮さんのところに行ってきます。」
そういうとみらいは敬礼した後、工廠長室を出ていった。
「以上が今日の書類です。」
「ふむ、資材も着々と進んでいるな。」
書類を読んでいく行く提督の横では長門さんが仕事をしている。
「それで友成、俺はこれから上に報告に行ってくる。」
「報告?僕達の事ですか?」
「あぁ、新鋭艦とそれを操るものが出たということを言わねばな。」
「了解です、良い結果が来ることを祈っています。」
「ありがとう、もういいぞ。」
「失礼します。」
敬礼をしてから執務室をでる。
「ふう、軍っていうのはやっぱり緊張するなぁ・・・。」
「あら、友成。」
扉の前で一息ついていると母さんに声を掛けられた。
「母さん、どうしたの?」
「実は今から買い物に行こうと思っていてて・・・友成も一緒に行く?」
「うーん・・・今日の書類作成も終わったし特にすることもないから行くよ。」
「分かったわ、お母さんは門前で待っているから準備をしてきなさい。」
「うん、準備してくるよ。」
母さんに応答した後僕は自室に向かった。
「母さん、お待たせ。」
「早かったわね。やっぱりお父さんそっくりね。」
「そうかな?」
「えぇ、さあバス停に行きましょう。」
「そうだね。守衛さん、行ってきます。」
「神通さん、工廠長、お気を付けて。」
守衛さんに挨拶した後、僕と母さんは鎮守府前のバス停に向かった。
「それで、天城さんたちはどうなの?」
「あー、どうやら赤城さんたちと仲良くしているようだよ。」
バス停に向かう途中で母さんに聞かれたことを言う。
実際会った時のリアクションがすごかったからなぁ・・・。
「確か赤城さんたちと出会ったときは・・・・。」
「えっと・・・日向さん、天城さん、土佐さんですね?」
「間違いない。」
「そうですよ。」
「ま、間違いありません!」
どうやら間違いない様だ。
土佐さんは緊張しているようだけど・・・。
にしても容姿はすごい。
日向さんは「伊勢型」の日向さんとほぼ同じ。唯一違うのは服装ぐらいだ。
天城さんは赤城さんと同じ服装、似た顔だけど飛行甲板が無いし髪の長さが赤城さんより半分短い。
土佐さんは天城さんと同じく姉の加賀さんと服装だけど飛行甲板が無いし髪を結っている方が逆。
どうやらかなり顔は似ていても多少の差で区別は出来そうだ。
「僕はこの工廠の工廠長を務めています。霧先友成です。」
「霧先艦長の艦、護衛艦みらいです。」
とりあえず自己紹介をしておく。
「それでは、提督の所へ案内するのでついてきて下さい。」
提督に説明するために案内することにした。
案内中にみらいが話しかけてきた。
「艦長、これって意外と騒動になるんじゃ・・・。」
「なるに決まっているよ・・・。」
僕も少し嫌な予感がしていた・・・。
あの時もそうだったけどたいてい嫌な予感は的中するんだよね。
「さて、みらい、僕が提督に報告するから呼んだら皆さんを入れて。」
「了解いしました。」
僕はみらいに説明した後、扉をノックする。
『誰だ?』
「工廠長の霧先です。」
『入っていいぞ。』
「失礼します。」
ちゃんと許可をもらってから入室。
ドアを開けると赤城さん、加賀さん、扶桑さんが居た。
作戦でも練っていたのだろうか。
「えっと・・・お邪魔でしたか?」
「いや、今度の出撃の編成を伝えていたところだ。それで用はなんだ?」
「はい、建造が完了したため報告に来ました。」
「そうか、高速建造材を使ったのか?」
「建造時間が馬鹿にならない数字でして・・・。」
「・・・・・いくつだった?」
「大型艦建造で99時間を記録しました。」
「99!?」
提督が叫び全員が驚いた表情をする。
「出てきた艦で納得する数字ですよ・・・。」
「因みにどの艦だ?」
「それは彼女たち自身から紹介して貰った方がいいでしょう・・・みらい、皆さんを入れて。」
僕が言うと三人がみらいの後に続いて入ってきた。
「扶桑型戦艦四番艦、日向よ。」
「天城型巡洋戦艦一番艦、天城です。提督、よろしくお願いしますね。」
「加賀型戦艦二番艦、土佐です。戦力となれるように頑張ります!」
「Oh・・・・これまたすごい艦が来たな・・・。」
「建造時間も納得でしょう?」
「あぁ・・・だが、戦力が揃うのはいいことだ・・・?どうしたんだお前たち?」
提督が三人の方を向くので僕も見てみると三人とも震えていた。
すると突然三人がそれぞれの姉妹に飛びついた。
「うわーん天城姉さん!」
「あらあら・・・こんなに泣いちゃって。」
「・・・・・土佐。」
「えっと・・・・ただいまお姉ちゃん。」
「・・・・お帰り。」
「日向ー!」
「うわっと!・・・仕方がないな。」
それぞれの姉妹があえた喜びを分かち合っているようだ。
特に扶桑さんと赤城さんが泣きじゃくっている。
「これは話しかけづらいな・・・。」
「ですね・・・。」
「だが、これで士気も向上するだろう。それに家族に会えることは何よりも癒しになる。」
「・・・それを狙って工廠長にしたんですか?」
「そうかもしれんな。だが今の状況を見れば悪くは無いだろう?」
「そうですね。むしろ、彼女たちを建造できてよかったと思っています。」
家族を失うというのはとてつもない苦痛だ。
そして家族に再会できたときの嬉しさもとてつもないものだ。
それを知っているからこそ今の状況に共感できる。
「それじゃあ邪魔者は退出します。」
「あぁ、後で長門に仕事内容を書いた紙を渡しておくから受け取って確認してくれ。」
「了解です、では。」
そう提督に言ったあとドアに向かおうとすると赤城さんと扶桑さんが前に立っていた。
「え?お二人ともどうしたんですか?」
僕が聞くと二人は予想外の行動に出た。
「ありがとう友成君!天城姉さんに会わせてくれて!」
「私も妹達に会えてうれしいわ!今、最高に幸運よ!」
「むぐぐぐ!!」
二人が抱き着いてきた。
しかも僕の頭が二人の胸に挟まれて呼吸ができないうえに二人の胸の感触がダイレクトに伝わる。
って煩悩退散煩悩退散!
今ムスコの気が高まって反応したら確実に殺される!それ以上気を高めるなぁ!
そんなことをしているうちに酸欠になり意識が遠のく。
あれ・・・?この世界に来てから死にかけてばっかだよ僕・・・・。
最後に僕に駆け寄るみらいが見えた後意識はブラックアウトした。
「おう・・・酸欠ってあんなに苦しいもんなのか・・・。」
「あっ、艦長。お気づきですか?」
「みらい?・・・ってうぉお!」
「きゃっ!」
僕は一気に意識が覚醒して飛び起きる。
なんだか頭が柔らかい感触があると思っていたらみらいが僕に膝枕をしてくれていた。
「大丈夫ですか艦長?」
「え?あ、うん大丈夫大丈夫・・・・。」
あくまで平穏を装う。
みらいが膝枕をしてくれたことに驚いたけど彼女なりに良かれと思ってやったことなのだろうからお咎めなしだ。
「それでこれは・・・。」
「ごらんの通りです・・・。」
僕の眼の前では天城さん、日向さん、長門さんによる赤城さんと扶桑さんへの説教が行われていた。
「気が付いたか友成。」
「はい提督、これは・・・。」
「見ての通り説教会だ、長門がいるだけでかなりのものだぞ。」
そういう提督の顔はかなり困っている様子なので僕が仲裁をして説教を中断させた。
長門さんは渋々といった様子だったけども・・・。
「・・・・と、こんな感じかな?」
「そう・・・もう少し説教が必要ね。」
「母さん、聞こえているよ。別に赤城さんも扶桑さんも悪気があったわけじゃないからさ。」
「・・・・そう、分かったわ。今回は見逃してあげましょう。」
「ははは・・・あっバスが来たよ。」
やってきたバスが停車すると僕と母さんは乗り込んだ。
バスに揺られること30分、着いたのは大きなショッピングモール。
ここが1962年だということを忘れそうな位に現代的な建物だ。
「それで母さん、何を買うの?」
「とりあえず日用品と川内姉さんと那珂ちゃんに頼まれたもの、お菓子類かしら。」
「そうなんだ。丁度僕もお菓子類を備蓄したいなと思っていたから丁度良かったよ。」
「それじゃあまずは日用品を買いに行きましょう。」
僕と母さんはまず二階の無○良品の店に向かった。
無印○品は79年に開業したはずだからこの世界線では17年も早く開業している。
まぁ、元の世界でも愛用していたから開業していることは嬉しいんだけどね。
「これ日用品は大丈夫ね。」
「次は川内姉さんと那珂姉さんに頼まれたものだね。」
次は頼まれたものを買いに服屋と化粧品店と本屋に立ち寄った。
那珂姉さんは服と化粧品、川内姉さんは夜戦関連の本を頼んだようだ
・・・・那珂姉さんの頼んだものは分かるけど川内姉さんの夜戦関連の本ってなんぞ?
「次はお菓子ね・・・。」
「母さん、靴屋が近くにあるから靴を買ってもいい?」
「えぇ、良いわよ。」
母さんに許可をもらって靴屋でスニーカーを買いに行く。
「これか?これか?うーん・・・こっちの方がいいかな?」
どこかのピエロみたいなキャラクターのセリフみたいなことを言いながらスニーカーを吟味する。
いっそのこと二つとも買おうかな?
「友成君?」
スニーカーを二つとも買おうかなと思ったら声を掛けられた。
聞いたことある声だと思って振り返ると翔鶴さんが居た。
服装は淡い青のVシャツの上に明るい朱色のパーカー下はデニムのハーフパンツを着ている。
素体が良いせいか翔鶴さんが余計綺麗に見えた。
「翔鶴さん?今日非番だとは聞いていましたけど・・・。」
「えっと・・・少し必要なものがあって、それを買いに来て・・・。」
「そうだったんですか。何を買いに?」
「えっと、瑞鶴のお菓子と少し靴を買いに。」
「お菓子の方はもう買い終えたんですか?」
「これから買おうかなと・・・。」
今から買いに行くのか・・・なら。
「でしたら一緒に行き来ませんか?母さんもいますので。」
「えっ?えっと友成君がいいのなら・・・。」
「じゃあ精算して母さんに合流しましょう。」
「えぇ、そうしましょう。」
精算を済ませた僕と翔鶴さんは母さんに合流するために靴屋を出た。
「あら?翔鶴さん、あなたも来ていたんですか?」
「はい神通さん。少々必要な物をと。」
「翔鶴さんもお菓子を買うそうだから一緒に行こうって誘ったんだ。別にいいでしょ母さん?」
「・・・・えぇ、私は構わないわよ。」
母さんが承諾してくれたところでお菓子を買うためにイ○ンに向かった。
「う~ん、どういうのがいいのかしら・・・。」
「この果○グミのアソートの奴なんてどうですか?量もそこそこありますし果汁○ミ
はおすすめですよ。他にもポ○キーなんかもいいですね。」
「へぇ~・・・。」
「このポテトチップスもいいですよ。おすすめはうす塩とのりしおです。」
「おいしそう・・・。」
「塩つながりならこのお○とっともいいですよ。」
「可愛いデザイン・・・食べるのが惜しいわ。」
「いろんなキャラクターがあるので探しながら食べるというのもありますよ。」
楽しそうにお菓子について会話する二人を遠目に友成の母親である神通は眺めていた。
その目は明らかに子供の恋人を査定する目だ。
「(翔鶴さんは明らかに友成に対して好意を持っている・・・様子見必須ね。)」
「母さん、飲み物も見に行こうよ。」
「えぇ、行きましょう。」
即座に目を変えることができる神通も神通だろう。
「いっぱい買っちゃったなぁ・・・・・。」
「そうね・・・友成君大丈夫?重いと思うのだけれど・・・。」
「大丈夫ですよ翔鶴さん。」
僕が翔鶴さんと話していると母さんが声を掛けてきた。
「友成?ちょっとお母さんトイレに行ってくるから少し待っててくれる?」
「別にいいよ。じゃあここで翔鶴さんと待ってるよ。」
「なるべく早く済ませるわ。」
そういって母さんはトイレの方に走っていった。
僕と翔鶴さんはベンチに座って母さんを待つことにした。
「えっと、友成君。私の服装はどうかしら・・・?」
「えっ?あっと・・・す、すごく似合っていますよ!」
「そう・・・ありがとう。」
何だか翔鶴さんにいきなり話を振られて慌てて返したけど我ながら恥ずかしい・・・。
翔鶴さんの顔が赤い気がするが気のせいだろう。
「友成君はどんな人が好みなの?」
「ブフッ!!言わないとダメですか?」
「できれば・・・。」
うっ!翔鶴さんの・・・・上目遣いだと!?
こんな顔されて断るわけにはいかないよね・・・。
「えっと・・・特出した好みは無いですけど・・・強いて言うなら頑張れる人ですかね?」
「何故?」
「なんとなく・・・・何事にもチャレンジして頑張れるような人が良いからですね。」
「な・・・成程・・・。それで・・・意中の人とかは・・・。」
「ブフッ!」
本日二度目の噴き出しです。
伊勢さんもそうだけどなんでそういうところを聞いて来るのかな・・・。
「い、いませんよ・・・元の世界でもに三人しか女の子の友達はいませんでしたし。」
「そ、そうなの・・・・あの・・・もしよかったら「お待たせ友成、翔鶴さん。」・・・・・。」
翔鶴さんが何か言いかけたけど丁度母さんが戻ってきたので立ち上がる。
「そんなに待っていないよ。ねっ、翔鶴さん。」
「はい・・・。」
何だか元気が無いけれどどうしたんだろう?
帰りに聞いてみようかな?
「それじゃあ帰りましょうか。」
「そうですね・・・。」
こうして買い物は終わったわけだけど結局帰りのバスでも翔鶴さんに聞けなかった。
なんと言うか本能が今は聞くなとセーブしてきた感じだった。
そんなこんなでバスに揺られて30分。
僕達は鎮守府に帰ってきた。
「あっ!艦長、お帰りなさい。せめて連絡してくださいよ~。」
「あぁ!すっかり忘れてた!ゴメンみらい、今度何か奢るから・・・。」
「・・・・間宮アイスを所望します!」
「え゛っ、あれって結構高い奴だった気が・・・・。」
少し前に息抜きがてら尾栗三佐と立ち寄った時に結構高く見えた気がする・・・しかも数量限定。
「それぐらい当然です。連絡しないで勝手に行って心配したんですよ?守衛さんが教えてくれたから良いものを・・・。」
「すみません守衛さん・・・。」
「いえ、これも我々の仕事なので。」
守衛さんに謝ってから財布を取り出す。
「うーん・・・提督から生活費としていくらか貰っているけども・・・。」
結構きつい。
今後の生活を考えねば・・・。
「さあ艦長!覚悟して貰いますよ!」
「うぐぐ・・・・僕も男だ、約束しよう。間宮アイスを自費で購入する・・・。」
「やったぁ!!」
「なんだか微笑ましいですね神通さん。」
「はい、翔鶴さん。友成がここまで成長しているとは考えてませんでしたから。」
この光景はかなり平和な日常に見えるだろう。
そんな光景を鎮守府の前の道路に駐車してある黒い車の中から眺める男がいた。
「神の企てか悪魔の意思か・・・・また会うことになるとはな・・・みらい」
車から眺めていた男。
少佐の階級章を付けた軍服姿の男がみらいを見てそう呟いた。
「大本営まで頼む。」
「了解しました。」
「草加少佐。」
黒い車は大本営へ走り出した。
今回もアンケートを取るので活動報告まで足を運んでいただければ幸いです。