高校生艦長と自衛艦の航海日誌   作:みたらし饅頭

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第弐拾陸戦目「下準備」

「うふふ♪」

「・・・・・・。」

 

現在2000、午後8時。

僕は川内型の部屋で母さんに抱きつかれていた。

そしてその様子を川内姉さんと神通姉さん、那珂姉さんが見ている。

何を言っているかわからないと思うが(以下略)

 

「神通・・・楽しい?」

「最っ高です!!」

 

川内姉さんの問いに満面の笑みで答える母さん。

人が変わり過ぎな気がする・・・普段の落ち着いた母さんは何処へ・・・。

 

「友成~♪」

「・・・・・・・。」

 

まぁ・・・これでもいいかな。

 

「神通お姉ちゃん、このままでも大丈夫かな?」

「姉さん、流石に友成君がこのままというのは・・・。」

「友成本人が良さそうなんだしいいんじゃない?そもそもこっちの神通より鬼な神通に勝てるわけが無いって。」

「姉さん?それは遠まわしに私が鬼だと言っているんですね?」

「アッ!」

「アーナカチャンシナライヨー。」

 

口を滑らせた川内姉さんが神通姉さんの地雷を踏んだ。

川内姉さん、南無三。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後1時間ほど愛でられ就寝することとなった。

そして現在2200、午後10時。

僕以外は全員寝ている。

因みに川内姉さんは神通姉さんによってドックに叩きこまれた。

僕はベットの中に寝ているわけだけど僕から見て左隣では母さんが僕の左腕を枕にしながら抱きついて最高の笑みで寝ている

 

「・・・・・・友成~・・・・フヒッ。」

 

・・・・・・どんな夢を見ているのかは考えないでおこう。

 

「にしても草加少佐か・・・。」

 

二日後・・・通信参謀の草加少佐がこの横須賀鎮守府に来ることになった。

流石に原爆を開発するまではしないと思うが多少警戒はしておいた方が良いだろう。

曲がりなりにも相手は情報のプロ、海大甲種卒のエリートだ。

それに「みらい」を知っているとなれば厄介になる。

もし牽制でもされたら特定しにくいだろう。

 

「・・・・艦長は二つの責務を負う・・・艦の運用そして・・・乗員の安全を守ること。」

 

僕の先任者の角松二佐の言葉を思い出す。

この台詞が今の僕にとって大切なものになるとは考えていなかったが・・・。

 

「・・・なら、僕が優先すべきことは・・・・乗員の安全だ。」

 

あの手段だけはどうしても取りたくなかったが致し方ない・・・・。

 

「『みらい』という艦が無くなれば僕達が異世界、そして未来人という痕跡は跡形もなくなる・・・証拠が無ければ追及も難しくなるはずだ。」

 

艦内の特定の場所に仕掛ける必要があるな・・・・ともかくまずは寝よう。

僕は目を閉じて明日やるべきことを考えながら眠った。

 

 

 

 

 

 

「んぅ?」

 

現在0542、午前5時42分。

友成の母、神通は偶然目を覚ましたようだ。

 

「何だかあったかい・・・。」

 

目が覚めて意識が覚醒していないのか少し呆けながら自分の目の前をよく見る。

そこは友成の胸板で神通は現在、友成に抱き締められていた。

そのことが分かった神通は一気に覚醒し顔を真っ赤に染めた。

 

「(え、えぇーーーー?!なんで抱き締められて・・・でも最高!)」

 

・・・・こうやって瞬時に切り替えられるのもある意味、神通の凄味なのだろう。

 

「・・・・母さん・・・。」

「(寝言?)」

「・・・・大好き・・・・・。」

「(ゴファ!)」

 

友成の放った神通にとって、とても甘い囁きは彼女を一撃で撃沈させた。

因みにその後、総員起こしの際に撃沈した顔が緩み切った神通が発見された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・これでよし。」

 

僕は設置したC4爆弾の確認を済ませた。

この爆弾は弾薬庫と前甲板VLSを爆破した後、機関室下部の燃料タンクに点火される。

そして誘爆で起きる秒速9200mの爆風と摂氏4500度以上の炎が気化した燃料に引火し『みらい』は完全に消し飛ぶ、僕達が異世界の未来人という痕跡と共に。

 

「さっさと退出するか・・・角松二佐たちも仕掛け終わっているだろう・・・。」

 

僕は足早に弾薬庫を後にした。

 

 

 

 

「角松二佐、遅れました!」

 

僕は埠頭にいた梅津一佐、角松二佐、尾栗三佐、菊池三佐と合流した。

 

「遅いぞ、と言っても一般人が作業しているんじゃあ仕方ないな。」

「そうだな洋介、一先ず取り付けは完了したってこった。手早く終わってよかった。」

「私と霧先三佐が持つこのトランシーバーのボタン一押しで『みらい』は跡形も無く消し飛ぶ。」

 

僕は手に持ったトランシーバーを見る。

これのボタンを押すだけで護衛艦1隻が跡形も無く消え去る。

 

「俺達が未来人という痕跡も・・・消え去るわけだ。」

「尾栗の言う通り・・・その爆風で残るものは無い。」

 

尾栗三佐も菊池三佐も覚悟を決めていた。

 

「これが我々の・・・最後の意思だ!」

 

僕か梅津一佐がもつこのトランシーバーが最後の意思か・・・。

 

「それはそうと霧先。お前、みらいには話したのか?」

 

・・・・まだ話していなかった。

角松二佐たちには「情報を使われて強要される恐れを防ぐため」という名目で爆弾を設置するように具申したがみらいには話していなかった。

 

「・・・まだ、話していません。」

「まずいんじゃないのか?バレたら。」

「分かっています尾栗三佐。ちゃんと話すつもりです・・・。」

「艦長。」

 

声をかけられて瞬発的に後ろを見る。

そこにはみらいがいた。

 

「みらい・・・。」

「艦長、御説明を。」

「・・・・・艦橋で二人で話そう。」

「了解しました。」

「梅津一佐、角松二佐、尾栗三佐、菊池三佐、失礼します。」

 

僕は敬礼をした後みらいとタラップを上がった。

 

 

 

 

 

 

「草加少佐が!?」

「間違いない、提督に貰った資料に書いてある。」

 

予想通りみらいも驚いていた。

 

「ですが同姓同名の可能性も・・・。」

「あるが用意するに越したことは無い。例え脅しが効いていても、『みらい』の存在を良く思わない者がいるかもしれない・・・。」

「・・・・。」

「僕も海軍少佐の階級を持っている。多少の権限なら使えるけど・・・僕らはこの世界では日陰者でいる必要があるんだ。」

「・・・・分かりました。艦長の意思ならば。」

「ともかく、視察中は慎重に行動するしかない、気をつけて。この日本はある意味『ジパング』だ。草加少佐の行動が読めない。」

「『ジパング』・・・・・分かりました艦長。」

 

みらいはそういって艦橋を後にした。

 

ある意味この世界は草加少佐が望んだ『ジパング』だ。

GHQがいない国体が違う独立した日本。

ある程度民主主義があってもそこには「アメリカに養われた」という経歴があまりない。

そんな国が実現した今、草加少佐が行動する予想がつかなくなる。敵に回れば危険だ。

 

「・・・・・人生何があるか分からないな。」

 

僕は艦長席に座って外を眺めながらそう呟いた。

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