「どうかな、みらい?」
「ばっちり海軍軍人ですよ。」
僕は今、綺麗に修繕された工廠長室で第二種軍装を着ていた。
それがどう見えるか部屋にいたみらいに聞いてみる。
似合っているようで何より。
「もし草加少佐に会いたくないのなら土佐さんや天城さんに頼むけど・・・。」
「大丈夫です、いつまでも過去に囚われていては前に進めません。ですから逃げるだけは出来ないんです。」
「そこまで考えているのなら僕が言う必要はない。頼むよ。」
「はい、艦長!」
僕は制帽を被って身だしなみを確認する。
その直後に誰かがドアをノックした。
「誰ですか?」
『大淀です。』
「どうぞ。」
僕が応答するとドアが開かれ大淀さんが入ってくる。
「失礼します工廠長、先ほど視察の方がいらしたので。」
「その方はどちらに?」
「現在、提督と執務室で話し合いをされています。」
執務室か・・・。
「ありがとうございます、大淀さん。みらい、行こうか。」
「はい。」
少々緊張した顔でいるみらいを連れて、僕は工廠長室を出た。
「ふぅー。」
僕は執務室前で心の準備をしてからドアをノックした。
みらいは先に艦に向かわせた。
『誰だ?』
「工廠長、霧先少佐です!」
『入ってくれ。』
「失礼します!」
部屋に入ってすぐ提督に敬礼。
「霧先、此方が俺の同期で特殊兵装艦の視察に来た通信参謀、草加拓海少佐だ。」
「初めまして、草加拓海です。」
「此方こそ初めまして、霧先友成です。」
草加少佐と敬礼を交わす。
この男が・・・かつて角松二佐と対峙し「ジパング」を夢見た男・・・。
「貴方は良い目をしている。かつて私を救ってくれた恩人と同じだ。」
恩人・・・・角松二佐の事だろう。
「・・・・・自分は軍人だと思っております。」
「17歳という異例な若さで海軍少佐になったことはすごい噂になっている。だがこうして見ると軍人らしさが出ているな。」
「ありがとうございます。」
僕がそう言った後、草加少佐は提督に向き直った。
「高屋大将閣下、早速、特殊兵装艦を見てみたいのですが。」
「・・・・分かった、霧先少佐。」
「はっ、了解しました。」
僕達は執務室を出て、みらいに向かった。
「此方が特殊兵装艦です。」
僕の案内の元、提督と草加少佐をみらいの所へ連れてきた。
「・・・・・・やはり、美しいな・・・・この艦は。」
草加少佐の言葉を提督は不思議そうに聞いていた。
「そろそろ、そのユニホームが息苦しくなってくるのでは?霧先三佐。」
海上自衛隊の階級を言った瞬間提督は驚いた表情をした。
「草加!どこでその階級を!」
「高屋、今は霧先三佐と話している。」
草加少佐はそういうと言葉を続けた。
「霧先三佐、今の日本は素晴らしい。私の考えていた『ジパング』そのままだ。だが深海棲艦によって海上を封鎖されているのは厄介だ。輸入に頼る日本がこのまま戦争を行えばいずれ破滅する。」
「つまり?我々にどうしろと?」
「深海棲艦に対して有効な攻撃が可能な『みらい』を使って日本の力を示し、深海棲艦撲滅後もアメリカに養われることなく独立した日本を形作りたい。そのために霧先三佐、貴方に協力して欲しい。」
成程、そういうことか。
「草加少佐・・・僕はこの『みらい』の艦長です。元は高校生でも今は自衛隊の護衛艦の船員。ならば自衛隊の存在意義を考えた時に日本を守るのは確実。ですが『みらい』は盾であり槍では無い、それは『みらい』を見てきた貴方なら理解できるはずです。我々は守れても侵略することはできない。それが自衛隊です。」
「やはり似ている・・・・彼も戦時下で人命を尊重する人間だった。だがこの世界は甘くはない。貴方も私も明日ここに存在するという保証はない。」
「それは私達が一番理解しています。草加少佐。」
聞こえてきた女性の声の方を提督と草加少佐は見る。
そこにはみらいが立っていた。
「まさか・・・みらいか?」
「そうです草加少佐。貴方に三式弾を食らわされたみらいです。」
「そうか・・・艦娘になっていたとはな。私に手を下すか?」
「・・・・・えぇ、この身体になった時その手も考えました。ですがそんなことを梅津艦長や角松二佐は望みませんし今の艦長である霧先艦長も望まないと思います。」
みらいは直立不動でそう言った。
「やはりみらいの様だな、二佐によく似ている。」
「伊達に護衛艦ではありませんでしたから。」
「貴方達の考えはよくわかった。だがみらいの力を諦めたわけではないが貴方達の事だ、何かしら対策は施してあるだろう。此方としても出来るだけ争い事は避けたい。」
「意外です。いつ脅しの一つ二つをされると肝を冷やしていました。」
「今、海上から・・・・あの砲がなければあったかもしれない、霧先三佐。」
草加少佐が向いた方を見ると海上から砲を此方に向けた天城さん、土佐さん、扶桑型の伊勢さん、日向さんがいた。
「あいつらは・・・・。」
「自分からも言っておきます提督。」
そのうち提督にしわが増えるかも・・・。
「愉快な仲間達だな高屋。」
「草加、今度二人で話したいが良いな?」
「もちろんだ。さて、私の視察はこれにて終了だ。霧先三佐、出来れば私は友好な関係を築きたい。必要なことがあれば情報提供をしよう。」
「貴方がですか?」
「なァに、此方としても貴方達を良く思っていない者がいて邪魔なのでね。それに、私と二佐、みらいとの戦いは既に私の負けで終わっている。」
・・・・過去は水に流すってことですか。
「では、何かあればご連絡します。」
「互いに有効な関係を築こう。」
僕と草加少佐はたがいに敬礼を交わした。
「さて、帰る前にひとつ情報を渡しておこう。」
「情報?」
「そうだ三佐殿。恐らく貴艦も巻き込まれる大規模作戦が計画されている。」
「大規模作戦?」
「まるで『あの海戦』のような作戦だ。貴艦が来たのも運命だろう。」
大規模作戦・・・・まさか!
「その大規模作戦名は『AL作戦/MI作戦』貴官なら分かるはずだ。」
「ミッドウェー海戦・・・!」
「その通りだ、気を付けて置いて損はないだろう。では私は大本営に戻る、元帥に報告しなくてはならないのでね。」
そう言って草加少佐は埠頭から去った。
「はぁ~!緊張しましたぁ~・・・。」
「全く・・・無理なら無理といえばいいのに。」
「き、緊張しただけで大丈夫ですよ!」
・・・・まぁ、そう見えてはいたけども。
「大規模作戦があるとはな・・・大変だぞ。」
提督の言う通り大変になる。・・・・・主に書類作業的な意味で。
「ですね、資材の確認を急ぎます。」
「それもそうだが・・・ミッドウエーか。」
「これは直前まで伏せますか?」
「あぁ、そうしたい。俺は草加を見送って来る。」
「了解です。」
提督は走って草加少佐を追った。
「艦長、今回の作戦は・・・。」
「もしミッドウェーと同じなら『みらい』の対空レーダーとイージスシステムは重要だ。」
「128も追尾、迎撃できますからね。」
「あぁ、でも、あくまでこれは自衛隊としての艦娘の保護活動だ。もしアメリカなんかの他国が絡んできても相手が攻撃してこない限り我々は攻撃しないこれは絶対だ。」
「分かっていますよ艦長。」
さて、これから忙しくなるぞ・・・。
一方、横須賀鎮守府とは別の鎮守府では・・・
少し太った悪人面が似合う「大佐」が特型駆逐艦の艦娘に指示を与えていた。
「以上がお前の異動の大まかな理由だ。全然使えないゴミの貴様でも多少は使えるだろう。」
「・・・・・はい。」
艦娘は生気のない声で答えた。
「『あの艦』や『あの少佐』には存在してもらっては困る。必ずあいつらを消せ、捕まっても私の名は出すな。分かったらさっさと出ていけ!」
「・・・・・了解です・・・・失礼します。」
艦娘は静かに退出した。
「ゴミを処分出来て更には『アイツ』も消える・・・・最高だな・・・ハハハハ!」
既に「みらい」と友成をよく思わない者が動き始めていた。
そして・・・・それが横須賀鎮守府を真っ二つに割ることになるとは誰も・・・・予想だにしていなかった・・・・。
次回は艦これの主人公の登場です。