高校生艦長と自衛艦の航海日誌   作:みたらし饅頭

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第弐拾玖戦目「伝説の一航戦」

「吹雪は何が良いな?」

「ふぇ?!あ、あの・・・お、お茶でお願いします・・・。」

「はいはーい、じゃあこのお菓子が良いね。」

 

そうやって出されたのは緑茶と羊羹だった。

 

「さぁ、どうぞ。」

「い、いただきます。」

 

吹雪は羊羹を一切れ口に運ぶ。

 

「ん~~~!!美味しい!」

 

どうやらお気に召したようである。

流石は間宮羊羹、艦娘のハートをがっちりつかんでいる。

 

「あっ、間宮羊羹ぽい!」

「睦月も欲しいです!」

「はいはい二人の分もあるよ。」

 

そうやって羊羹を取り出す友成の袖を土佐が掴んだ。

 

「工廠長・・・・。」

「そんなもの欲しそうな顔しなくても土佐さんの分もありますよ・・・。」

 

苦笑いする友成と満面の笑みになる土佐。

かなり面白い構図ではあるが吹雪はそんなことを気にするそぶりも無く羊羹に舌鼓を打っていた。

 

「そう言えば睦月たちはこれからどうするの?」

「えっと赤城さん達に会いに来ます。」

「そうか、ならそろそろ行った方が良いよ。」

「そうですね、お姉ちゃんたちの鍛錬はあと一時間ほどで終わるし・・・。」

「えっ大変!夕立ちゃん、吹雪ちゃん行くよ!」

「ぽ、ぽいー!」

「わわっ!あ、あの失礼しました工廠長!」

 

ドアを開けて睦月と夕立は飛び出ていき、吹雪は敬礼をして退出して行った。

騒がしいが馴染めているようで良しとする。

 

「言わなくてよかったんですか?工廠長。」

「ただ夢に吹雪が出てきてその翌日に配属が決まっただけだからねぇ・・・言う必要性は無いでしょう。」

 

僕は外の風景を窓越しに眺めながら土佐さんに答えた。

 

 

 

 

 

 

弓道場では赤城と加賀が鍛錬をしていた。

赤城が弓を構えて弦を引く。

そして狙いを定めて弓を離す。

弓がまっすぐ飛び光ったかと思うと零式艦上戦闘機に変化して的に機銃を撃つ。

そして零戦は機首を上げて空を飛ぶ。

 

「わぁ・・・綺麗・・・。」

 

吹雪は一連の出来事に感嘆を漏らす。

 

「あれが第一航空戦隊、通称「一航戦の誇り」正規空母赤城先輩だよ。」

「赤城先輩・・・・。」

 

睦月の解説をしている横で吹雪の目は赤城に釘付けになっていた。

 

「(凄い!放つ瞬間、一点に集中して微動だにしない。)」

 

吹雪は目を輝かせながら赤城の動作を見ていた。

 

「流石ね、赤城さん。」

「いえ、まだ微妙な調整が必要です。慢心しては駄目。」

「ん?」

 

赤城が自分の欠点を見出していると加賀は睦月たちに気付いた。

 

「あっ!ヤバいっぽい!」

「えぇっ!?あぁ、ちょっと!」

 

加賀に見つかった為、夕立と睦月は逃げ出し吹雪も後に続く。

が・・・

 

「あぐぅ・・・あ、あぁうぅ・・・・。」

 

松の木の襲撃(ただ枝にぶつかっただけ)にあった吹雪は可愛い声を出しながらしゃがみ込んだ。

 

「大丈夫?吹雪ちゃん!」

 

睦月が声を掛けるが時すでに遅し。

加賀と赤城が三人に近づいた。

 

「断りもなく入って来てはダメよ。」

「す、すみません!」

 

加賀からのお叱りを受ける三人。

そんな三人のところに二人の人物が来る。

 

「吹雪ちゃん。」

「う、うん。」

 

睦月が吹雪の手を取り吹雪が立ち上がる。

吹雪の名を聞いた赤城が声を掛けた。

 

「吹雪さん?」

「ふぇ?は、はい!」

 

吹雪は少々間の抜けた声を出し赤城の方を向く。

 

「やはりあなたがそうなのですね?提督から話は聞いてあります。」

「提督から・・・。」

「いつか一緒の艦隊で働きましょう。ふふっ。」

「は・・・はい!」

 

吹雪は嬉しそうな顔で敬礼をびしっと決めた。

 

 

 

 

 

 

所変わって甘味処「間宮」。

友成の財布が度々犠牲になるこの店には多数の人物が訪れる。

 

「はぁーいお待たせ。」

 

現れたのはそびえるような甘味が盛られた間宮名物「特盛あんみつ」だ。

・・・・甘味の量が多すぎて、もはやあんみつというよりはパフェに見える。

 

「いっただきまーす!」

 

流石にこれだけを食すのは常人には不可能だと思われるが夕立は颯爽と頬張る。

 

「これが間宮名物の特盛あんみつだよ。」

 

睦月が説明するが吹雪はというと・・・。

 

「いつか一緒の艦隊で戦いましょう・・・。ニコッ♪」

「ニコッ?」

「全然聞いていない・・・。」

 

妙にキラキラして上の空だった。

 

「赤城先輩カッコいいっぽいもんね~。ツンツン。」

「ふぇ?わぁ!なにこれ!?」

「今気づいたの・・・?」

「あはは、ごめん・・・。」

 

どうやら今の今まで妄想の世界に浸っていたらしく夕立に突かれて現実に戻され目の前のあんみつに驚く吹雪。

睦月からのツッコミに申し訳なさそうに頭をかく。

 

すると遠くから声がする。

重雷装艦の「北上」と「大井」だ。

 

「大井っちは心配し過ぎだよ~ちょっと席を外しただけなのに・・・。」

「いなくなる時はひと声掛けてからって約束したじゃないですかぁ~!」

「そうだっけ?」

「もうっ!」

 

北上ののほほんとした返事に大井はへそを曲げる。

そこに北上がある行為をする。

 

「分かった、悪かったよ。はい。」

 

北上は最中を差し出す。

 

「もう・・・。」

 

大井は少々顔を赤らめながらそれを食べる。

 

「あれは北上さんと大井さん。」

「二人でいるときは声を掛けない方がいいっぽいよ。」

「ふ~ん・・・。」

 

夕立が警告するのも無理はない。

万が一大井を怒らせると潜水艦に乗った状態で探信音を放つ魚雷に追いかけられるより恐ろしい。

吹雪はそんな二人を不思議そうに眺める。

そこに新たな客が来る。

 

「さぁーて、今日は何にすっかなぁ・・・。」

「尾栗、あまり食いすぎると病気になるぞ?」

「分かってるって雅行。だけどやめられないんだなぁこれが。」

「全く。お前は昔から甘いものに目がないな・・・。」

「洋介は甘いものが嫌いか?」

「嫌いじゃないが食い過ぎには気を付けろ。」

「はいはい。分かりましたよ。」

 

藍色のつなぎに182と書かれた帽子を被った三人の男たち。

みらい副長 角松洋介、砲雷長 菊池雅行、航海長 尾栗康平だ。

 

「睦月ちゃん。あの男の人たちは?」

「あの人たちは特殊兵装艦『みらい』の乗組員で幹部の角松中佐、菊池少佐、尾栗少佐だよ。」

「さ、佐官クラスの人達なの!?」

「うん、そうだよ。」

 

睦月の説明に吹雪は驚いた。

その反応に尾栗達が気付いた。

 

「おっ?見かけない顔がいるな。よう、初めまして。俺は尾栗康平三等海佐だ。」

「は、初めまして尾栗少佐!特型駆逐艦吹雪です!」

「吹雪・・・友成と提督が言っていた今日配属予定の艦娘か。俺は菊池雅行三等海佐。」

「俺は角松洋介。二等海佐だ。」

「は、初めまして菊池少佐、角松中佐!」

 

吹雪はきっちり敬礼して自己紹介を行う。

 

「まぁ、今後俺達は一緒に歩んでいく仲になるわけだ。これからよろしく頼むぞ。」

「は、はい尾栗少佐!ご期待に沿えるように一生懸命頑張ります!」

「うむ、その調子だぞ!」

 

尾栗三佐と吹雪がやり取りをしていると異変が起こる。

 

ウゥゥゥゥゥゥ!!

 

突然サイレンが鳴り始めた。

これは友成と工廠妖精が作り出した警報装置でレーダー内に深海棲艦が現れた場合に鎮守府内にサイレンを流す仕組みになっている。

つまりレーダー探知圏内に深海棲艦が現れたのだ。

 

「野郎ども・・・来やがったか!」

「最近奴らの動きが活発しているという話だったが・・・こうも早く出てくるとは。」

「尾栗!菊池!今すぐ『みらい』に戻るぞ!」

「「了解!」」

 

「私たちも行こう!」

「えっ!?う、うん!」

 

甘味処「間宮」に居た自衛官と艦娘達は外へ出る。

丁度そこに友成と土佐、みらいが合流した。

 

「角松二佐、尾栗三佐、菊池三佐!睦月たちも!」

「おい、霧先!何があった!」

「ここから100㎞先に深海棲艦を確認。軽空母とその護衛艦と思われる艦隊です尾栗三佐。」

「よし、霧先三佐。俺と菊池、尾栗は梅津艦長に報告して迎撃態勢に入る。」

「了解です、角松二佐。自分はみらいと出撃します!土佐さん。吹雪たちを連れて出撃ドックへ!」

「分かりました!皆、急いで!」

 

こうして迎撃行動が始まった。

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