鎮守府に設置された出撃ドックは出撃する面々が集合していた。
「主力の第一機動部隊、第二支援艦隊、第三水雷戦隊。稼動全艦隊の出撃準備、完了しました、提督。」
「うむ。」
提督は作戦指揮室に備え付けられている放送用マイクを手に取った。
「提督の高屋だ。第四艦隊が本日演習中、敵艦隊に接触した。その際に敵の本隊が駐屯する場所を発見した。最近活発化している深海棲艦の動きに関与していることは間違いない。並びに今回探知圏内に発見された艦隊も関与しているはずだ。この艦隊を撃破し、敵の駐屯地を叩く!」
提督の放送に全員が意気込む。
「叩く・・・いよいよ反撃ですか!」
「ここは譲れません。」
冷静に落ち着いている赤城と加賀。
「ワァーオ!鼻息が鳴るネー!」
「お姉さま間違ってる・・・。」
興奮する金剛と間違いを訂正する比叡。
『布陣は正規空母の赤城たちを主力とした第一機動部隊が敵駐屯地を強襲、第二支援艦隊はこれを援護。第三水雷戦隊はこれらの主力の前衛として警戒に当たる、以上だ。本作戦の目標は深海棲艦による日本国本土強襲の危険の排除と海域の安全確保。敵の行動の妨害にある。各自覚悟して作戦に当たって欲しい。』
全員が集中した状態で放送を聞く。
『既に霧先少佐以下、天城、土佐、伊勢、日向と海上自衛隊によって本土へ近づく艦隊の排除を行っている・・・が、慢心は禁物だ。』
「誰に言っているのかしら?」
「(姉さんじゃないかな?)」
暁が疑問に思う横で響はそう思っていた。
その向こうでは放送を聞いていた吹雪が驚いた。
「霧先少佐が!?」
「吹雪ちゃん、霧先少佐は普段は非戦闘員なんだけど本土強襲なんかの大変な時には艦に乗って戦うんだ。」
「す、凄い・・・。」
『では、第三水雷戦隊!主力に先行して進発!』
提督の言葉の後、吹雪たちの乗った昇降機と出撃ゲートがブザー音と共に動き出した。
「(ど、どうしよう・・・!)」
初の出撃がこんな形になるとは思っていなかった吹雪は不安そうな顔をして腹を押さえていた。
「頑張っていきましょう!吹雪ちゃん!」
「う、うん・・・でも。」
「?」
「あ、あのね?私、実は・・・。」
吹雪は自分が出撃未経験だということを勇気を指して言おうとした。
が・・・。
「うん!素敵なパーティにしましょう!」
能天気な夕立によってその努力は粉砕された。
『第三水雷戦隊出撃してください。』
大淀のアナウンスの後、昇降機が停止する。
「吹雪ちゃん、出撃だよ!」
「あぁ・・・。」
嬉しそうに準備する睦月と対象に吹雪は不安そうだ。
「(うぅ~ここまで来たら、やるしかないよね!)」
もはや取り返しがつかないと感じた吹雪は逆に精一杯頑張ることにした。
そして全員が定位置につくと照明が落ちて床が光り出す。
因みにこの効果をつけようと提案したのは友成で、OKを出したのは主任妖精だ。
この主犯格共曰く、『カッコいいから付けた!』とのことで艦娘からは人気である。
「第三水雷戦隊、旗艦神通、いきます!」
神通の言葉の後、床からプレートが飛び出し出撃の文字が浮かぶ。
ここまで出来る妖精さんはかなりオーバースペックだ。
「(これに乗ればいいんだよね?多分・・・。よし!)」
意を決した吹雪は駆け出す。
「吹雪、行きます!ふぇぁあ!」
吹雪は見事プレートに着地した。
そして同時に風が吹き出しプレートが変形、アームが吹雪の艤装を彼女に取り付ける。
「うぇええ!?」
その後プレートはさらに変形し吹雪はバランスを保持しようとする。
その間に夕立、睦月は慣れた様子で信号が変わると同時に水上を滑るが吹雪は半強制的に射出される。
「わあぁぁぁぁ!きゃっ!・・・プハッ!」
おかげで水にダイレクトに潜り浮き上がった。
出撃ドックの天井に備えられている名札が一昔前の反転フラップ式案内表示器のようにパタパタと変わり吹雪の名が出る。
そして鎖が巻き上げられて吹雪の艤装が海中から飛び出し吹雪に装着される。
最後は連装砲を吹雪が手に取り完了、吹雪は海に出た。
「先行艦隊出撃しました。主力第二支援艦隊、第一機動部隊出撃します!」
大淀が報告している一方では第一艦隊が出撃準備をしていた。
「一航戦赤城、出ます!」
「加賀、出撃します。」
彼女たちも艤装を付けた後、水上を滑って海に出る。
そして後から鎖に巻き上げられた空母であることを象徴する飛行甲板と矢筒が海中から出てきて装備される。
妖精さんの技術はどうなっているんだ・・・。
その頃、鎮守府から離れた海域ではライトグレーの塗装に包まれ182の番号が書かれた重巡洋艦級の艦船が旭日旗を掲げて航行している。
その艦には艦名と思しき文字が艦尾にかかれていた。
その文字は「みらい」。
この世界の人間なら「軍艦が何をのんびり航行している!」とブチ切れるがこの艦は現在戦闘中だ。
それを表すのはこの艦に装備された8つの筒。
その筒のうち右舷側の2本が空になっている。
艦橋では霧先友成と一人の少女、艦娘の「みらい」が会話していた。
「ハープーンは?」
「目標に向けて飛翔中。命中まで5秒、4、3、2、1、着弾!目標反応消滅!撃沈です!」
「よし、天城、土佐、伊勢、日向に伝達。『直ちに鎮守府に帰還し防衛せよ。』と。」
「了解です艦長。」
霧先友成とみらいが行っていたのは対水上戦闘だ。
まず、天城、土佐、伊勢、日向の四人が敵空母の護衛艦を撃沈しその空母を「みらい」の対艦ミサイル「ハープーン」で撃沈するという作戦だ。
「天城から返信です。『了解。これより霧先三佐の指揮を離れ、独自の指揮で鎮守府に帰還し防衛します。』以上です。」
「よし、これより第一機動部隊、第二支援艦隊、第三水雷戦隊の援護に向かう!面舵一杯!機関、最大戦速!」
「面舵一杯!機関、最大戦速!」
天城からの返信があった後、友成はみらいに指示をだす。
みらいは指示を復唱し面舵を取った。
友成とみらいが敵空母を撃沈した頃、吹雪の所属する第三水雷戦隊では吹雪がボロを出し始めていた。
「ふ、ふぇえ!え、えぇ!うわぁ!うぇえ!早いよぉ!!」
何とかバランスを崩さないようにと姿勢を保とうとするがその甲斐なくまるでスケートを始めたての人のような動きを取る。
「特型駆逐艦!陣形崩れてるよ!」
「す、すみません!」
川内から注意され謝る吹雪だがまだ安定しない。
「大丈夫?」
「どこか調子悪いっぽい?」
「う、うん。大丈夫・・・わぁぁぁ!」
睦月と夕立が心配して声を掛けるが少し安定したと思うとすぐにバランスを崩す。
「吹雪ちゃん・・・もしかしてあなた・・・。」
「え!?あ、あ、えっと・・・。」
流石は教官を務める神通、吹雪の動きを見て察したようだ。
「「「「実戦経験がない(っぽい)!?」」」」
海上に神通と吹雪を除く四人の声が響き渡る。
「ゼロって!じゃあ今日が初出撃!?」
「練度もゼロってこと?」
「出撃させてもらえなかったぽい?」
「もらえなかったというか・・・無理っていうか・・・。」
川内、睦月、夕立の質問に吹雪はのどを詰まらせる。
だが少し安定して航行できている。
「どうして?」
「だ、だから、私運動が・・・わぁあ!あっあぁ!わぁ!あぁぁぁぁ!!・・・・ぷはっ!」
「はぁー・・・。」
吹雪は再び体勢を崩し何度も海上を転げまわる。
またしてもスケート初心者のような行動をとった吹雪を眺めて5人は彼女が出撃させてもらえなかったのを理解したようだ。
確かにこんなによく転ぶ様では戦闘は不可能。さらには艦隊行動にも支障をきたし作戦の遅延や失敗を招く。
そんな艦娘を艦隊に入れるのは危険極まりない。
「なんで言わなかったの?」
「その・・・言い出せなくて・・・それに司令官が大丈夫、心配ないって。」
「いい加減ぽーい。」
「それよりも皆さん。そろそろ敵海域に・・・!」
川内と夕立が吹雪の話を聞いていると神通が集中するように促す。
しかし水平線の向こうから敵艦隊が現れた。
「お仕事の時間みたいだね!」
「わぁ!」
颯爽と進む那珂と夕立に続き吹雪も戦闘態勢に入る。
敵は駆逐イ級。
下級だが侮っていてはいけない。
「(これが深海棲艦・・・・こんなに大きいんだ!)」
吹雪は初めて見る敵に少し恐怖心を抱く。
「砲雷撃戦始め!川内姉さん!」
「夜じゃないのに!」
その横で経験が多い神通と川内は即座に砲を構えて砲撃を行う。
「那珂ちゃんセンター!一番の見せ場!いっけぇ~!」
ある意味で意味不明な掛け声を出しながら那珂が雷撃を行う。
酸素魚雷が二酸化炭素を出しながら敵に向かう。
そして命中した敵は盛大に爆発した。
「どっかーん!」
喜ぶ那珂だが海中から他の駆逐艦が出てきて反撃の砲撃を開始し二発が那珂と川内に命中。
「姉さん!那珂ちゃん!」
「顔は止めて―!」
「やったなー!」
神通が声を掛ける。
幸い当たり所が良かったらしく那珂は小破、川内は小破寄りの中破となった。
「大丈夫ですか?」
「アイドルはへこたれない!」
「夜になったら見てなさいよ!」
そういって那珂、川内、神通は戦闘を継続する。
「(これが・・・生身での戦い!)」
恐らく友成が感じたであろうことを吹雪も感じていた。
彼女自身、前世で戦闘を経験しているがそれは心のない鉄の塊の時。
人間と同じ体を持った今では恐怖心というものが吹雪にはある。
「見て!」
睦月が声を掛け吹雪が視線を移すとそこには多くの敵艦がいた。
恐らく増援が来たのだろう数は最初の倍はいる。
「落ち着いて、もう一度陣形を組み直しましょう。単縦陣に!」
全員が単縦陣をとり砲弾の雨の中を進む。
「(足手まといにならないようにしなきゃ!)」
既に姿勢は安定した吹雪は足手まといにならないように注意して航行する。
「撃てぇー!」
掛け声の後に一斉射。
その内の吹雪の放った一発が敵に命中する。
「やった!」
吹雪が喜ぶが黒煙の中から敵が現れ報復砲撃を行う。
そしてその砲弾は吹雪をかすめる。
つまりは初弾で夾差してきたのだ。
これは早急に移動しなければ早々に被弾することを意味する。
「ヒッ!」
そのことを瞬発的に理解した吹雪の顔は青ざめて恐怖の色に染まる。
そこに川内から注意を受ける。
「ビビっている暇はないよ!」
「はぁい!」
そう、ここは海上自衛隊や友成のいた平和な海ではなく、いつ沈められるかわからない今日も明日も生きている保証がどこにもない硝煙の臭いが立ち込める戦場の海。
ここでビビっていたらすぐに沈められる。
吹雪は即座に砲を構え直して砲撃を行う。
「第三水雷戦隊及び第二支援艦隊交戦中。主力第一艦隊、あと五分で敵射程に入ります。」
「『みらい』は?」
「『みらい』は現在30ノットで航行中、敵射程まで6分です。」
「頼むぞ・・・。」
大淀の報告を聞いた提督は拳を握り締める。
その提督の手の横には吹雪の履歴書が広がっていた。
『演習経験のみあり 優秀』と書かれた履歴書が。
「バーニングラーブ!」
「不死鳥の名は伊達じゃない。」
金剛や響が砲撃を行うが相手も砲撃を行う。
すると被弾者も出る。
「ちょっと、後ろの主砲が壊れてしまったね・・・。」
敵の砲弾が最上に被弾し、中破になった。
一方第三水雷戦隊は何とか敵を殲滅し進んでいた。
『まもなく敵駐屯地に到着します。』
大淀の通信の後、辺りが薄暗い雲に覆われた不気味な海域に突入する。
「あれが・・・敵駐屯地・・・。」
「吹雪ちゃん!」
注意力が掛けている吹雪に睦月が声を掛ける。
吹雪が目の前を見ると赤いオーラを帯びた敵駆逐艦がとびかかって来ていた。
「きゃああ!わっ!きゃっ!あっ!」
何とか躱すも敵駆逐艦が海に飛び込んだ時にできた波で吹雪は弾き飛ばされる。
「吹雪ちゃん!」
睦月が叫ぶ。
吹雪は起き上がり目を開く、そこにはさっきの敵駆逐艦が砲を向けていた。
あわや撃たれる!そんな時に一発の砲弾が命中し敵駆逐艦は沈んだ。
「吹雪ちゃん!撃って!」
吹雪を助けた那珂はそう叫ぶ。
吹雪が立ち上がると別の敵駆逐艦が迫ってくる。
「お願い!当たって下さぁい!」
しかし目をつぶってしっかり測量もしないで撃った砲弾が当たるはずもなくむなしく外れる。
そして敵駆逐艦は砲を吹雪に向けて近づく。
「あぁ!!」
「吹雪ちゃぁん!」
夕立が叫ぶが敵は近づく一方。
吹雪にはスローモーションに見える。
そして発砲音が鳴り響いた。
出撃シーンと戦闘シーンが難しいYO・・・・。
因みに吹雪の不安定さでの描写でスケート云々を使いましたがあれは実話です。
作者はガチで初めて滑った時に吹雪と同じような感じになりました。(白目)