何だか尾栗三佐がジパング勢で一番多く出てるような気がする・・・。
数日前の執務室で長門は提督から受け取った書類を眺めていた。
「いよいよ、始まるのですね。」
「あぁ、今回は霧先少佐と梅津大・・・一佐からの了解を得た。」
「と、言いますと?」
尋ねた長門に提督は応える。
「本作戦において海上自衛隊の参加は自衛隊法に定められた第九十五条と第九十五条の二に基づき現状、最高指揮官の梅津一佐が承認した。」」
ここで梅津一佐の柔軟性が発揮されたようだ。
第九十五条と第九十五条の二は友成が横須賀沖海戦で使用したものだ。
しかし、自衛隊には「専守防衛」と「日本国憲法第九条」が纏わりつく。
自衛隊であることを捨てないとする梅津一佐は深海棲艦が宣戦布告しているのを前提に第九十五条と第九十五条の二に基づき必要と判断し限度を超えない武力を行使するということで了承した。
「よって本作戦では海上自衛隊とのより密な連携が要される。そこで、君に大まかな選定を頼みたい。」
「分かりました。至急、任務にあたる部隊を選定いたします。」
そして現在、長門は訓練場で吹雪の訓練を見ている。
「ふっ、水雷魂か。良いだろう。第三水雷戦隊、旗艦神通。」
「はい。」
「6杯の編成で、このまま出撃準備に入れ!今度の作戦は・・・・・お前達に掛かっている!」
こうして第三水雷戦隊は海上自衛隊との作戦行動艦隊に選定された。
作戦室前に吹雪たちの姿はあった。
吹雪は一旦引き戸に手をかけるが離す。
そして息を飲んだ。
「どうしたの?吹雪ちゃん?」
不可解な行動をとった吹雪に疑問を抱いた睦月は尋ねる。
「作戦説明って初めてだから・・・ちょっと・・・緊張ぉしてるでごじゃる。」
「吹雪ちゃん、また口調変わってるっぽい?」
夕立が苦笑いをしながらツッコむが・・・。
「え?私、何か変?」
「気付いて無いっぽい?!」
まさかの無自覚だったようだ。
天然なところでも入っているのだろうか・・・・?
「えへへ、大丈夫だよ!さぁ、早く入ろ!」
睦月の後押しで吹雪は引き戸を開けた。
中では艦娘組の川内型の三人に加えて球磨、多摩、夕張、如月と幹部作業服に身を包んだ海自組の角松、尾栗、菊池、友成が既に待機していた。
「あっ、睦月ちゃん!」
「如月ちゃん!」
2人は駆け寄って仲良く離し始めた。
「もしかして、如月ちゃんもこの作戦に?」
「えぇ。」
「わぁあ!久し振りに一緒だね!」
「そうね。」
その様子を遠巻きに見ている者たちがいた。
「相変わらずあの二人。あたしたち姉妹の中でもべったりコンビだよなぁ。」
「工廠長室に怠けに来るよりかは大分ましだよ望月。」
「霧先の言う通りだ。少しはだらけ癖を直せ。」
「うぇ、霧先少佐に菊池少佐・・・・。」
「羨ましくなんか・・・ない。」
友成と菊池に叱られる茶髪のメガネっ子と物静かな紫髪の子を吹雪は珍しそうに見た。
「吹雪ちゃんは2人、初めてっぽい?」
夕立がそう言うと吹雪に気づいた二人が自己紹介をしてきた。
「んぁ?あぁ、望月でーす。」
「弥生です。あっ、気を使わなくて良い・・・・・です。」
「吹雪です!よろしくお願い致します。」
自己紹介を軽くする望月と控えめにする弥生に対し、吹雪は礼をしながらする。
そこに長門と陸奥が書類を携行して入ってきた。
「総員整列!」
角松の掛け声とともに全員が整列する。
「敬礼!」
そして川内の号令で全員が敬礼をする。
長門が敬礼をし、下ろした後に全員が下ろす。
「秘書官の長門だ。早速だが諸君に提督と梅津一佐からの作戦を伝える。先日の敵駐屯地の発見と殲滅により、近在の深海棲艦の拠点が消滅したことは、皆も承知の事と思う。」
「(先日の・・・。)」
長門の説明に吹雪は初出撃の時を思い出した。
「あうぅ・・・。」
自分の行動を思い出した吹雪は恥ずかしさからか少し涙目になる。
「これにより近々、大規模作戦が発令される見通しとなった。」
『『えぇー!』』
艦娘組が驚愕の声を上げた。
一方海自組は強張った顔でいたままだ。
「本作戦はその試金石ともなる作戦である。」
長門は地図を使って説明を続けた。
「目標はここ。W島だ。」
長門が差した島を見て尾栗が友成に話しかけた。
「おい、友成。あそこって・・・。」
「僕たちの時代ではウェーク島と呼ばれている場所です。柳一曹が詳しいと思いますが・・・第一次攻略戦において、駆逐艦『如月』が轟沈しています・・・・。」
友成の言葉を聞いて尾栗は驚愕した顔で如月を見た。
長門の説明は続く。
「この島を守備している敵水雷戦隊を・・・夜戦による奇襲で殲滅して貰いたい。」
「やったぁ!待ちに待った夜戦だぁー!」
「姉さん・・・!」
大声で叫ぶ川内に神通は恥ずかしさから顔を赤らめながら注意する。
「基本の作戦は、『みらい』がそれぞれの艦隊に付属。第三水雷戦隊が囮となり敵を引き付けて転進。第四水雷戦隊が展開する海域まで誘導し、2隊を挟撃する。W島を攻略できれば、哨戒線を押し上げ、更なる作戦展開が可能となる。質問は?」
長門が効くと「みらい」砲雷長の菊池が手をあげた。
「菊池三佐。」
「はっ。何故、今作戦に置いて我が艦・・・『みらい』の出撃が必要なのでしょう?」
「よく聞いてくれた。『みらい』は本作戦に置いてスムーズに作戦を成功させるのに必要不可欠だ。更に昨日、工廠の妖精さん達によって主兵装のミサイルが複製可能になった上、450㎞先を探知できるその電探能力があれば予想外の事態にも対処可能だと踏んだからだ。」
「了解しました。」
菊池は長門の説明に納得したようだ。
「他に質問はないな?」
長門が聞くが誰も手をあげない。
「覚悟は良いか!?」
『『はい!』』
全員の声の後作戦説明は終了した。
作戦説明終了後、甘味処「間宮」では三水戦トリオと尾栗、友成がいた。
「夜戦の奇襲かぁ・・・・緊張するね。」
「吹雪ちゃん、顔色悪すぎっぽい?」
「そんなに心配しなくても・・・。」
「まぁ、仕方ないな。」
「(拒絶反応なんだろうな~。)」
吹雪の調子を心配する夕立と睦月に対して尾栗と友成は歴史的観点から見て仕方ないと考える。
吹雪自身、前世は夜戦で轟沈しているため本人が知らないところで拒絶反応が出ているのだろう
と考えていたのだ。
そんな5人にお客さんが来た。
「三水戦の皆、工廠長、航海長。出撃するのね?」
「夜戦だと聞いたのです!だからこれ・・・吹雪さん達に食べて欲しいのです!」
やってきたのは第六駆逐隊だ。
電が差し出したのはザル一杯のブルーベリーだった。
「ありがとう。これって・・・。」
「ブルーベリー。」
「目に良いっていうでしょ?これで夜戦もばっちりなんだから!」
説明する響と暁。
えっへん!と、胸を張る暁を見て尾栗が友成に耳打ちをする。
「なぁ友成。『みらい』のレーダーがあれば大丈夫ってことは・・・。」
「言わない方が良いでしょうね。最悪、暁がいじけますよ。」
そんなことを言っていると他の艦娘も来た。
「吹雪ちゃぁ~ん?出撃ですって?」
「あっ、はい!」
吹雪の肩を掴んだのは愛宕、姉の高雄と共に来たようだ。
「パンパカパーン!はいこれ、良かったら貰って?」
「お守り?」
「敵の砲弾が当たらないおまじないです。・・・実は、中に愛宕ちゃんの。」
「高雄ちゃん!」
吹雪に耳打ちしようとする高雄が愛宕に止められる。
「私達からも、無事を祈らせて下さい。」
「あぁ、ありがとうございます。」
「・・・・・なぁ友成。」
「尾栗三佐、僕も知っています。ですが、ここで言えば憲兵さんのお世話になりますよ。」
「・・・・・だよなぁ。俺もこうなるんだったら嫁さんの。」
「はいストップ!」
珈琲を飲んでいた友成はカップを即座に下ろし尾栗の発言を大声で止めた。
尾栗は冗談半分で言ったようで「ハハハ」と笑っていた。
「はい!どうぞ!たくさん食べてね!」
間宮が吹雪の前に特盛あんみつを置いた。
「あ、私頼んで・・・。」
「吾輩からじゃ!悔いが無いよう、思う存分食べておけ!武運長久を祈るぞ!」
「あぁ、ありがとうございます・・・。」
どうやら利根からの物のようで吹雪はお礼を言う。
「悔いが無いよう・・・ねぇ、嫁さんともうちょっと出かけてればなぁ・・・。」
「仕事柄仕方ないですし縁起でもないこと言わないで下さい。帰って来ることだけを考えるんです。」
「それもそうだな。」
尾栗と友成が話していると、渡すものを渡した者たちは解散していた。
それを吹雪は笑顔で送り出す・・・・が。
「はぁ・・・・。」
直後疲れた表情で溜息をつく。
「吹雪ちゃん、大人気っぽい?」
「って言うか・・・。」
吹雪が言おうとしたときに別の人物の声が遮った。
「退きなさい!北上さんの邪魔よ!」
「うぇ!すみません!」
大井に言われた吹雪は即座に謝った。
「ん?あぁ、お見舞い品かぁ。」
「次の作戦で被弾する可能性が一番高いのこの子だしね。」
「はうぅ!」
「吹雪ちゃん!しっかりだよ!」
大井に指を指されて吹雪の心は大破した。
睦月の励ましの声が響く。
「まぁ今更じたばたしても仕方ないし・・・気楽にやればぁ?」
そういって北上は手をひらひらさせながら店内に入って行く。
「良いこと?北上さんが私との時間を割いてまで教えたんだから、一発くらいは当てて帰ってきなさいよねっ?」
「うぅ!あっはいぃ・・・。」
大井に額を叩かれ若干涙目になりながら頭を押さえる吹雪。
「面倒見がいいのか・・・・百合百合しいだけなのか。」
「本人に聞かないと分からないですねぇ・・・・。」
何とも言えない表情をしながら言う尾栗に対して友成は慣れた様子で受け答えをする。
実はここ最近揉め事の仲介で大抵大井と衝突することが多いのだ。
殆ど出撃で北上と一緒になれない等北上絡みの問題なのだが。
「私、訓練してくる・・・・。」
大井にきつく言われた吹雪はトボトボと店を出ようとした。
それを夕立達が引き留める。
「だめっぽい!今晩は明日に備えてゆっくり休めって言われたっぽい!」
「そうだよ吹雪、流石に訓練のし過ぎで出撃不可と言うのは・・・。」
「でも私・・・皆の足、引っ張っちゃうし・・・。」
吹雪を引き止める夕立と友成だが彼女はネガティブになっていた。
そこに睦月からの一喝が入る。
「そんなことないよ!」
「睦月ちゃん?」
睦月は吹雪の手を取った。
「大丈夫!きっと出来る!吹雪ちゃん、あんなに一生懸命、特訓したんだもん!」
「でも・・・。」
まだ自身が無い吹雪に睦月は手を一層強く握った。
「私は信じてる!自信をもって!吹雪ちゃんなら絶対大丈夫だよ!」
「睦月ちゃん・・・うん!」
吹雪はやっと自信を取り戻したようだ。
「あら?少佐たちは何も言わないんですか?」
「友情を深め合っているんだ。邪魔しちゃ悪いだろ間宮さん。」
「吹雪も自信がつけば大丈夫。それだけのポテンシャルはあるんです。」
「お二人とも信頼しているんですね。」
「俺は今度の作戦の仲間だし。」
「僕は上官で仲間ですから。」
「「信じなきゃ仲間じゃないでしょ?」」
三水戦トリオと友成、尾栗、間宮の笑い声が響く店内を如月が遠くから見ていた。
「(うふっ、睦月ちゃんに大切なお友達が出来て良かった。)」
その夜、寮では吹雪が髪の毛をブラッシングしていた。
そこに風呂上がりの夕立が声をかける。
「吹雪ちゃん、もう大丈夫っぽい?」
「うん!睦月ちゃんのおかげだよ。」
「わ、私は唯・・・昔、如月ちゃんに同じように信じてるって言われて・・・すごく、元気になれたから。」
睦月は自分の飲んでいたお茶を見ながら言った。
「如月ちゃんが?」
「あのね?私、睦月型の一番艦なんだけど・・・如月ちゃんの方がちょっとだけ就役が早いお姉さんなの。」
「へぇーなんか珍しいっぽい?」
「うん、それで、私が鎮守府に着任してすぐに実戦があって・・・何にもしない内に先輩たちが片づけてくれんだけど。私、小破しちゃったの・・・・そしたら如月ちゃんが付っきりで面倒を見てくれて・・・励ましてくれて・・・凄く、感謝しているの!」
「まるで私と睦月ちゃんみたいだね!」
吹雪は目を輝かせながら言った。
「はっ!?私なんて全然・・・。」
「そんなことないよ。睦月ちゃんがいてくれたから、私、頑張れたんだもん!」
「吹雪ちゃん・・・。」
2人で話している帆膨れている者がいた。
「むうぅぅ!夕立邪魔っぽい!?」
「あぁ!勿論夕立ちゃんも!ほんっとぉに感謝してるから!」
吹雪が何とかしようとするが・・・。
「うぅぅ・・・取って付けたっぽいぃ。」
「あぁ!本当ですぅ!!」
「嘘っぽいぃ!」
「本当ですぅ!!」
「嘘っぽいぃ!」
「五月蠅いぞ!もう寝る準備をしなさい!」
騒ぎ過ぎたようで友成からお叱りが入る。
「うぅ・・・工廠長さん!吹雪ちゃんが夕立の事、除け者にするっぽいぃ。」
「違うよぉお!!」
「はぁ・・・・幼い子供か・・・。」
自分に抱きついて泣く夕立の頭を撫でながら友成は頭を押さえた。
次回から戦闘に入ります。
新艦娘たちも次回から。