長いのでご注意を。
朝日が昇る鎮守府。
小鳥のさえずりが心地良い朝だ。
そんな朝早くに目が覚めた睦月は窓の外である人を見た。
埠頭に走っていく人、間違いなく吹雪だった。
それを見た睦月は着替えを始めた。
吹雪は朝早くから艤装をつけて訓練場にいた。
急速回頭から砲を構えて撃とうとするが足が滑ってふらつき狙えないという状態だった。
「はぁ・・・。」
何とか立て直したが実戦ではダメだと思う吹雪は溜息をついた。
そんな吹雪に声をかける者がいた。
「頑張っていますね?」
「あっ・・・。」
吹雪が声が聞こえた方を見るとそこには赤城がいた。
「あっ、赤城先輩!」
赤城は驚く吹雪に微笑みかけた。
「ちょ、ちょっとだけ、おさらいしたくって!・・・・・みんなに特訓してもらったのに、私・・・。」
「ちょっと、見ていてくれる?」
赤城は吹雪にそう言って弓を構えた。
その目は最初は的をじっと見ていたが矢を引き切ると同時に目をつぶった。
そしてそのまま矢を放つ。
矢は零式艦上戦闘機に姿を変えて機銃を打ち的を破壊した。
「わぁ・・・すごいです!」
「正射必中という言葉があります。正しい姿勢でいれば、自ずと矢は当たるということの意味ですけれど、私はきちんと訓練すれば結果は必ずついてくる。そういう意味だと思っています。」
「正射・・・必中・・・。」
「自分で十分に訓練したと思えるなら、ただ任せてみて?身体がきっと。覚えているから。」
「・・・はい!」
吹雪は赤城の言葉に元気よく答えた。
丁度その時、朝日が山を越えて辺りを照らし始めた。
吹雪は気になっていることを赤城に聞く。
「ところで・・・あの・・・赤城先輩、どうしてこんなに朝早くから・・・。」
赤城は静かに横を向く。
吹雪もその先を見ると・・・。
「あっ。」
「あっ!」
「バレちった・・・。」
物陰に隠れていた睦月と友成がいた。
「お、おはよう・・・。」
「き、気持ちの良い朝だな吹雪。」
ばれたことが気まずくなったのか二人は咄嗟に挨拶をする。
「たまたま早起きしたらドアの前でノックしようとしていた彼女達がいて・・・。」
「わ、私は!如月ちゃんだったらこうするかもって・・・そう思っただけだから!」
「あー・・・僕は睦月の提案を聞いて、こうした方が良いと思ってね。」
「睦月ちゃん・・・工廠長・・・。」
吹雪は少し暗い顔をする。
赤城は気になり尋ねた。
「どうしました?」
「私・・・睦月ちゃんや工廠長にお世話になりっぱなしで・・・如何したら恩返しできるのかなって。」
「私なんかいいよ!・・・・でも、私もおんなじこと考えてたかも。如月ちゃんや先輩たちにどうやってお礼したらいいんだろうって。」
「誰も恩返しなんて望んでいません。だから、ただ言えばいいのです。・・・ありがとうって、思っていることを、素直に。」
赤城がそういうと吹雪と友成は驚いた。
「それだけで!・・・いいんですか?」
「はい、私たち艦娘は存在したその瞬間から・・・戦うことを義務付けられています。・・・・・反攻作戦が開始されれば、戦闘は激化するでしょう。今、この鎮守府にいる艦娘達はどれだけ無事でいられるか・・・でも、それでも私は艦娘で良かったと思います。大切な人達を守ることが出来る。大好きな仲間と一緒に戦えるのだから。・・・・鋼の艤装は、戦うために。高鳴る血潮は、守るために。秘めた心は愛するために。ありがとう、大好き、素敵、嬉しい、大切な人への大切な気持ちを伝えることを恐れないで。明日、会えなくなるかもしれない私達だから。」
「・・・・はい!」
赤城の言葉を聞いた吹雪は即座に睦月の元へ向かった。
睦月も桟橋の先に向かう。
2人は手を握りあった。
「ありがとう睦月ちゃん!大好きだよ!」
「私も、大好き!」
「・・・・それから、あの・・・。」
「?」
吹雪は赤城に向かって言った。
「赤城先輩!私、先輩の事、尊敬してます!い、いつか同じ艦隊で戦いたいです!」
「ありがとう。待っていますね。」
「はい!」
吹雪は満面の笑みで答えた。
「(良い感じだし。VLSへの補充もあるからさっさと立ち去ろう。)」
友成は桟橋から「みらい」が停泊しているところに向かって歩き出した。
「工廠長?どちらへ行かれるんですか?」
「あぁ、VLSの補充だよ。時間がかかるからね。」
友成は吹雪にそう言ってその場を離れた。
「(赤城さん、僕の手足が動くうちには誰も会えなくなるなんてこと、させやしませんよ。)」
あることを決意して。
「かぁー・・・重たいぜぇ・・・・。」
「そんなこと言っても私たちがお願いしたことなんだから、しっかりしないと。」
「・・・・・もう帰りたい。」
「初雪姉さん。もう少しだから頑張ろう?」
そんなことを話しあって大きい台車を押している四人の女の子がいた。
吹雪と同じ服装をした彼女らは特型駆逐艦二番艦「白雪」、三番艦「初雪」、四番艦「深雪」、九番艦「磯波」だ。
彼らが押している台車には大きな四角形の物が丸太積みで上にOD色のカバーが被せられている。
「にしてもこの『ぶいえるえす用せる』?とかを積み込んであの墳進弾を撃てるようになるのか?」
「工廠長が言ったんだから本当では?」
「白雪姉も半分疑問形じゃん・・・。」
そんなことを言いながら押していると目的の場所についた。
「おっ着いた!おぉ~い!工廠長!」
「ん?あぁ深雪か。みんなお疲れさま。そこの君、カバーを外して。」
「了解です。」
深雪と積み荷に気付いた友成はお礼を言った後、妖精にカバーを外すように頼む。
カバーが退けられ出てきたのは細長い白い箱だ。
その箱には大きく黒い文字で「MK41VLS用 トマホーク」「MK41VLS用 SM-2」と書かれていた。
「シースパローは装填済みだしこれで最後だね・・・よし!クレーン頼む!」
友成の声に反応して妖精がクレーンを動かし上にあるVLSセルから順に持ち上げ装填していく。
「この様子だとVLS装填用クレーンは必要ないから廃止するかな・・・・そうすれば余分に積めるし・・・・。」
「深雪スペシャル!」
「痛っ!」
友成が順に手に持ったバインダーに挟んだ書類に記入していると深雪の蹴りが炸裂した。
「いったぁ・・・・なにするのさ・・・。」
「撫でるぐらいのお礼はないのかよ!」
「ただ単に深雪ちゃんが撫でて貰いたいだけじゃ・・・。」
尻をさすりながら友成が深雪に問いかけると「ぷんすか」という擬音が見えそうな様子で怒りながら答えた。
その様子を見た白雪はひっそりとツッコんだ。
「ごめんごめん・・・。ありがとう深雪。」
「・・・・・・・えへへへへ。」
友成に撫でられた深雪はさっきと打って変わって頬を赤らめながらにやけ始めた。
「白雪姉さん、深雪姉さんどうしたの?」
「・・・実は工廠に遊びに行ったときに頭をぶつけてね・・・その時工廠長に撫でて貰ってからあんな感じに・・・。」
顔を緩ませている深雪を指さして白雪は溜息をついた。
「そういえば白雪たちもご苦労様。」
「ひぇ!?」
「あっ、ダメだった?」
「あっ、いえ、大丈夫です。」
友成に頭を撫でて貰った白雪はスカート握り締めて赤らめた顔を俯かせる。
それを見た妹二人は。
「「((落ちたな)ましたね)」」
同じことを考えた。
そしてこの後、この二人も白雪と同じようにスカート握り締めて赤らめた顔を俯かせるのであった。
「「「「「「「なんと贅沢な。」」」」」」」
神盾、二航戦のはみ出る方、元二水戦、青い戦艦、違法建築戦艦、五航戦空母、黒豹がその出来事を各々の隠れ場所から見ていた。
一方出撃ドックには出撃する艦娘が集結していた。
「さぁ!夜戦だ夜戦だ!腕が鳴るぅ!」
「私も・・・身体が火照ってしまいます。」
「誘き出すのは任せてね!那珂ちゃんの魅力でみーんな誘惑しちゃうから!」
「それは不安だクマ。」
「みんな置いて行かないでね?」
「大丈夫にゃ、問題にゃい。」
出撃前から士気もばっちりな川内と神通と那珂。
そして那珂に対して冷静に突っ込む球磨。
自分の事を置いて行かれることを心配する夕張と、言う人物が人物ならフラグが乱立しているであろう魔法の言葉を放つ多摩。
それぞれの艦娘を眺めて如月は微笑む。
そこに姉である睦月が来た。
「ねぇ、如月ちゃん。」
「なぁに?」
「あのね?・・・この作戦が終わったら・・・話したいことがあるんだ!」
「あらぁ?愛の告白かしらぁ?」
「違うよぉ!」
睦月の発言に如月は頬に手を当てながら頬を赤らめる。
それに対し睦月はトマトもびっくりな赤さの顔で焦って否定した。
「って・・・あんまり違くないけど・・・でも、あの・・・。」
「・・・・分かったわ。約束、ね!」
「うん!」
そう言って約束を交わす二人を見ていた吹雪は嬉しそうに微笑んだ。
作戦指揮室では大淀が時計を凝視する。
そして予定の時刻になると提督に言った。
「作戦開始予定時刻です。」
大淀の知らせを聞いた提督は放送マイクを手に取った。
『W島攻略作戦を発動する!第三、第四水雷戦隊、出撃せよ!』
『『『『『『はい!』』』』』』
提督の言葉に全員が大きな声で答えた。
出撃から3日後、第三水雷戦隊と梅津一佐指揮の「みらい」はW島沖の岩礁で息をひそめていた。
「みーっけ!」
「気づかれてませんよね?」
「うん!今日はお忍びだもんね!」
那珂に敵が気づいていないことを確認した神通は全員に言う。
「作戦通りここで敵の動向を探り、夜まで待ちます。姉さん、零式水偵を。」
「はいよ!」
神通と川内は準備を進めた。
神通は「みらい」に連絡する。
「こちら神通。これより零式水偵を発艦します。」
『こちら角松、了解した。』
角松に連絡した神通は自分の艤装に零式水偵を乗せる。
「お願いしますね?」
神通の言葉に妖精は敬礼で答える。
「いっけぇー!」
川内の掛け声とともに二機の水偵が発艦する。
「吹雪ちゃん、夕立ちゃん、睦月ちゃん。貴方たちには交代で目視による哨戒をお願いします。いくら『みらい』の力があっても限度があります。」
「「「はい!」」」
三人は返事をした後、哨戒を行い始めた。
一方「みらい」CICでは新たな光点が映し出されていた。
「『川内』『神通』より航空機発艦!サイズは小さいですが間違いなく零式水偵です。」
「ふむ・・・あの光点が消えなければ我々が気付かれることはあるまい。」
「はい、ですが艦長。艦娘の身体健康を考えた上とは言えSPYレーダーの出力を弱めるというのはどうかと・・・。」
CIC要員の報告を聞いた梅津はCICのレーダーの表示された画面を見ながら言った。
菊池はSPYレーダーの出力を低下させることを危惧していた。
「確かに出力を弱めると範囲は狭くなる。だが最低でも200㎞あれば迎撃は可能だ。それにこの資料によればこの近海に航空勢力を持つ敵艦はいないとされている。」
梅津は「W島攻略作戦用資料」を書かれた紙束を出した。
「ですが艦長、戦争とは予想しない出来事が多いそうです。警戒を怠る訳には・・・。」
「分かっている。だからこそ、今回はいつも以上に警戒せねばならんな。」
梅津はCICの画面を見つめながら言った。
数時間後、岩礁では未だ哨戒を行っていた。
「ふぁぁぁぁぁ・・・・・。」
「ねぇ、夕立ちゃん。」
夕立も単純作業に慣れてきたのか欠伸をしていた。
睦月はそんな夕立に声を掛ける。
「ん?」
「私、夕立ちゃんの事・・・大好き。」
「んわっ!」
睦月の突然の言葉に夕立はずっこける。
「と、唐突過ぎる~!睦月ちゃん、緊張で壊れちゃったぽい~!?」
「違うよ~・・・実はね・・・今朝・・・。」
大切な友が極度の緊張で壊れ、女色に目覚めてしまったのかと心配する夕立に睦月は説明した。
その横で川内は空を睨んでいた。
「水偵が中々戻らないね・・・。」
「収録が押しているのかな?」
「少し、心配ですね。『みらい』に連絡を取ります。」
神通は「みらい」に連絡をした。
横で睦月と夕立は話し合っていた。
「で、赤城先輩が。」
「ふーん、そんなことがあったんだ。ちょっと、素敵っぽい。」
「でしょ?それで・・・思ったの。睦月、夕立ちゃんにはあんまり言えてなかったなって。」
「そ、そういうことならわ、私だって・・・睦月ちゃんたちの事・・・。」
二人がそんな事を話していると吹雪は何かを発見した。
「嘘!?」
「どうした!特型駆逐艦!」
「10時の方向!敵機です!」
敵航空機は第三水雷戦隊の上を通り過ぎていった。
CICでも異常は感知されていた。
「深海棲艦艦載機、本艦隊上空を通過!」
「何故感知できなかった!!」
「直前まで超低空飛行をしていた模様!」
「相手は我々の詳細を知っているというのか!」
CIC要員からの報告を受けた菊池は机を殴りつけた。
「敵艦載機に発見されたということは敵に我々の場所がばれたということは敵艦載機が来る!総員対空、対水上戦闘用意!」
「!本艦左舷50度のW島敵艦隊移動開始!距離30Km!」
「127㎜主砲への諸元入力完了!」
「零式水偵の反応消滅!撃墜確認!」
続々と入ってくる情報を整理して迎撃態勢を整えていく。
第三水雷戦隊も行動を起こそうとしていた。
「そんな・・・『みらい』の索敵を躱して!?」
「それよりも!偵察機に発見されたってことは・・・。」
川内がそこまで言うと那珂が言った。
「敵の艦隊が動き出したよ!」
「司令部に打電を!」
川内が叫んだ。
「馬鹿な!」
「どうしますか?三水戦が発見された時点で奇襲作戦は破綻です。四水戦と『みらい』二隻を正面対決へ持ち込ませますか?」
机をたたく提督に長門は提案をした。
「いや、三水戦を下がらせる。全速力で現海域を離脱するように指示を出してくれ!」
「了解です!」
提督の指示に従い大淀は通信を行う。
「ですが敵は軽巡2、駆逐艦4の計6隻です。二隊と『みらい』が合わされば十分に迎撃可能だと思われますが。」
「それだけならな・・・・・。」
「まさか!」
三水戦と「みらい」は最大線速で海域を離脱しようとしていた。
「姉さん!あれ!」
「みらい」の前を先行していた三水戦旗艦の神通はあるものを発見した。
それは無数の敵艦載機と軽空母ヌ級二隻だった。
ヌ級は次々艦載機を発艦していき敵艦載機は増えていく。
「嘘!」
「ヌ級が二隻も!?」
夕立と那珂が驚愕する。
「発見されたよ!来る!」
「輪形陣!対空戦闘よーい!」
神通の指示で全員が輪形陣を取り対空戦闘を行う。
「みらい」CICは騒然していた。
「敵艦載機!続々と増えていきます!数60を超過!」
「対空戦闘用!127㎜主砲と後部VLSに諸元入力!CIWS
「127㎜主砲、準備完了!」
「後部VLSへの諸元入力完了!シースパロー準備完了!」
対空レーダー要員からの報告に砲雷長の菊池は指示を下す。
そして砲撃長とミサイル要員からも準備完了と伝えられ「みらい」の攻撃態勢は整った。
「撃ち方始め!」
「対空戦闘!主砲、撃ちぃ方ぁ始め!」
神通と梅津の声が重なったとき全主砲が火を噴く。
「みらい」の主砲弾は次々と命中する。
それに続き艦娘達も砲撃する。
「(帰るんだ!絶対!皆と一緒に!)」
睦月は戦闘の中で決心した。
「トラックナンバー1985から1998、撃墜!」
「新たな目標、本艦右舷10度からさらに接近!」
青梅の指示した方向に主砲は旋回し、撃つ。
敵航空機は次々粉砕されていった。
「トラックナンバー2153、さらに接近!」
「シースパロー発射始め!Salvo!」
砲雷長の菊池の指示でミサイル要員が発射ボタンを押す。
事前に諸元を入力していたシースパローは後部VLSから噴煙を上げて飛翔。
亜音速で敵航空機に向かって飛び、撃墜していく。
そして二発ずつ命中するとまた後部VLSから二発ずつ発射される。
「空母が二隻も!?」
「やはり・・・航空機を扱うやつがいたのか。」
「このままだと三水戦と『みらい』が挟み撃ちに!」
「そうはさせん!大淀!四水戦と霧先少佐に打電!敵水雷戦隊の足止めを!」
「分かりました!」
提督は即座に判断し大淀に指示を下す。
「ですがこの後は?増援は出せません。」
「いや、まだ手はある。奇跡的にな。」
提督は念のために手を打っていた。
「敵水雷戦隊を発見したクマ!」
「砲雷撃戦よーい!」
夕張の掛け声で全員が砲を構える。
が、如月は航空機が飛び交っているところを見る。
「(睦月ちゃん・・・。)」
睦月のことを心配していたのだ。
だが敵は目の前にいる。
「みんな、ここで食い止めるから!てぇー!」
夕張の掛け声で攻撃が開始された。
「艦長!四水戦、攻撃を開始しました!」
「よし!対空目標が近づけば撃墜!それまでは主砲で敵艦に攻撃だ!」
「了解!主砲!撃ちぃ方ぁ始め!」
艦長である友成の指揮でみらいは主砲での攻撃を開始する。
「那珂ちゃんはー!みんなのものなんだからぁ!そんなに攻撃しちゃダメなんだよー!」
「ふぁああ!ブンブン五月蠅くて落とすの難しいっぽいー!」
全員が対空戦闘を行い続ける中、睦月と吹雪も必死に戦う。
「ねえ!吹雪ちゃん!絶対!絶対に一緒におうちに帰りましょう!」
「はい!」
神通が敵艦に向けて雷撃を行うが敵航空機に阻まれて魚雷は破壊される。
その時川内が睦月に指示を出した。
「睦月!魚雷!その位置からなら!」
「てぇええええ!」
魚雷は惜しい位置まで行くが破壊されてしまう。
そこに敵攻撃機が機銃攻撃を仕掛ける。
そして敵機の爆弾が睦月の目に入る。
「睦月ちゃーん!!」
夕立が叫びもう駄目だと思った瞬間、努力が実を結んだ。
「うわああああああああ!!!!」
吹雪が叫びながら睦月と敵機の間に入る。
そして即座に砲を構えて敵爆撃機を見事撃墜した。
だがそれだけではなかった。
「吹雪ちゃん!睦月ちゃん!後ろ!」
神通が叫ぶと後ろから敵爆撃機と駆逐艦が迫っていた。
だが彼女たちが攻撃されることは無かった。
何故か?答えは簡単だ。
「127㎜砲、撃ちぃ方ぁ始め!」
「酸素魚雷発射!」
敵爆撃機は砲撃で破壊。
駆逐艦は雷撃で撃沈した。
「いったい誰が・・・・!?」
川内が向いた方にはある艦影が見えた。
その艦は非常に「みらい」と酷似していた。
だがその艦の艦首には「180」と書かれていた
「新たな反応を発見!・・・・これは!」
「どうした!また敵艦か!」
「いえ!違います・・・・・・IFF反応あり!味方です識別番号は・・・・・。」
菊池を含め全員がその言葉に驚愕した。
「ゆきなみ型護衛艦一番艦「ゆきなみ」です!!!!!」
いるはずのない「ゆきなみ」があらわれたのだ。
「やっと見つけたわ・・・・・『みらい』。お姉ちゃんを置いて沈ませないわよ!」
「ゆきなみ」艦橋では艦娘のみらいに似ているが細部が違う服装の女性がいた。
和服はみらいとちがい灰色。スカートはグレー。
ハイソックスやスニーカーは同じだが髪型もショートカットだ。
「対空、対水上戦闘開始!」
「ゆきなみ姉さん!?」
「それは本当か!?」
「はい!他にも潜水艦を確認!急速浮上してきます!」
ゆきなみが現れたことを聞いた友成は驚愕するがほかの情報も入る。
「対潜戦闘用意!」
「待ってください!この特徴は!」
みらいがそこまで言うと潜水艦が浮上した。
そしてその艦影を見たみらいは叫んだ。
「やっぱり!伊152です!」
「こりゃまたえらい方が来たぞ・・・・。」
友成は突然の事に立ち尽くしていた。
「久し振りね、みらい。今度は物資輸送ではなく本当に力を貸しに来たわ。」
伊152の艦内では淡い青の着物に身を包んだ黒髪ロングヘアーの女性がそう言っていた。
突然の援軍の到着に驚いたのか深海棲艦の艦載機は旋回していた。
その隙を睦月は見逃さなかった。
「吹雪ちゃん!魚雷!正射必中だよ!」
睦月に言われ、吹雪は進み始めた。
「(自分を信じて・・・。)」
吹雪はしっかりと狙いを定めた。
「お願い!当たって下さい!」
魚雷が一斉発射され内4発が命中。
ヌ級の艦底に当たった為、ヌ級の動きが止まった。
「みんな!今!」
神通はすかさず指示を出し集合する。
「てぇええ!」
その言葉と共に全員が魚雷を放ち殆どが命中。
ヌ級は大爆発を起こし消滅した。
「やったぁ!おおっ!」
睦月は喜ぶが敵機の銃撃が夾差した。
「気を抜かないで!まだ敵は!」
川内がそこまで言うと何かが飛んできた。
全体が赤いそれは航空機の群れの真ん中で爆発し小さな球が飛び散り航空機を撃墜する。
「三式弾!?水平線の向こうから!?」
川内が気付いた通りこれは「三式弾」だ。
それを発射できる艦娘は限られてくる。
「間に合ったか・・・。」
提督は笑みを浮かべた。
提督が打っていた手、それはある艦隊を遠征に出しておいたのだ。
それは金剛型四姉妹で編成された艦隊だった。
金剛は比叡に合図をし、比叡は準備をする。
「主砲!一斉射!」
比叡の言葉の後、放たれた徹甲弾は残っていたヌ級に命中し、爆発させて撃沈した。
「すごい・・・。」
吹雪達は驚くことしかできなかった。
「そうだわ・・・やっぱり、遠征に出ていた第二艦隊です!」
神通は嬉々として報告した。
「そっかぁ・・・この海域まで戻って来てたんだ!」
「見るクマ!敵の残存艦が撤退していくクマ!」
夕張が理解した様子でいると球磨が報告する。
球磨の言う通り残存艦は皆撤退していた。
それもそうだ、こんな艦隊に勝てる訳がない。
逃げるのは賢明な判断だろう。
「・・・・・・ふぅ。」
その場で立ち止まり溜息をついた如月は爆沈したヌ級の黒煙が上がっている方を見た。
「よかった・・・これでもう大丈夫そう・・・。」
その時強い風が吹いて如月の髪が揺れた。
「ヤダ、髪の毛が痛んじゃう・・・。」
そう言って髪を押さえる如月に黒煙を上げた艦載機が近づく。
「艦長!本艦左38度より敵艦爆急降下!」
「如月を狙っている!?」
「シースパロ―で!」
「ダメだ間に合わない!主砲は!?」
「現在補給科妖精が向かっています!」
状況を聞いた友成は一つの答えを導き出した。
「補給科隊員を退却!最大戦速で如月と敵艦爆の間に入れ!」
「・・・・・了解!機関最大戦速!CIWS
「みらい」はガスタービン特有の音を響かせながら最大戦速で航行する。
『艦橋、CIC!如月、敵艦爆の射程まであと5秒!』
「艦長!目標ポイントまで7秒!」
「機関一杯!」
「機関一杯!ヨーソロ―!」
CICで補佐の役割をしている砲雷長妖精から報告が入る。
「みらい」艦橋では指示と報告が入り乱れていた。
そして5秒後、CIWSが動き、発砲する。
『艦橋、CIC!砲雷長より報告!敵爆撃機、爆弾投下後CIWSにて迎撃!敵弾、本艦の主砲に直撃するラインです!』
「総員衝撃に備え!」
そう言った後、友成はウィングに出る。
「艦長!?」
みらいが叫ぶが、もう遅かった。
「如月ー!退避しろー!」
友成が叫んだ後、敵の爆弾をCIWSが127mm主砲付近で迎撃した。
夕暮れの鎮守府に第三水雷戦隊は帰投していた。
ゲートが開くと鎮守府で待っていた艦娘達と先に帰投していた「みらい」の幹部たちが拍手で出迎えた。
「金星を取ったそうではないか!よくやったの!吹雪!」
「すごいのです!」
「その通りだよ!」
「よくやったな。」
「流石は頑張っただけある!」
利根、電、響、菊池、尾栗が吹雪を激励する。
「皆さんのおかげです!本当に、ありがとうございました!」
吹雪は深々とお辞儀をした。
その後ろで睦月は誰かを探していた。
「・・・・・四水戦の皆さんと工廠長さん達は、まだ?」
その言葉を聞いて利根を筆頭に事情を知るものたちの顔が少し暗くなる。
「あぁ、まだじゃ。」
「どうやら機関関連に問題が発生してな。遅れているんだ。」
「一応、通信は出来ていたから問題はない。」
利根と菊池、角松が事情を話した。
「分かりました!」
「睦月ちゃん?どこ行くの?」
いきなり駆け出した睦月に吹雪が尋ねる。
「岬!一番最初に、如月ちゃん達をお迎えしたいの!」
「待って!私も!」
そういうと吹雪も睦月を追って岬へと走り出した。
その様子を利根達は神妙な面持ちで見ていた。
「(それでいうんだ!大好きです、ありがとうって!きっと如月ちゃん、最初は驚くよね!でもきっとその後、すっごく照れて・・・笑ってくれるはず!そうだ!工廠長や、みらいさん達にも言ってあげよう!)」
その様子を想像した睦月は笑顔で走った。
その後姿を見ている利根と梅津、角松、尾栗、菊池、神通が話す。
「言っておらんのか?」
「まだ確定していない上に状況が分からない以上、無駄に伝えるのは良くありません。」
「梅津艦長の言う通り、変に希望を崩すのは害でしかない。」
「じゃが、その方が残酷なこともあるぞ?」
「だが、一番の問題は『みらい』と連絡が取れないことだ。」
「『みらい』の精度から考えれば問題はない。だが・・・・。」
「私も・・・信じたくないんです。友成君の乗る『みらい』が・・・・・・。」
「提督、ご報告いたします。本日1542。W島沖56㎞の海域にて、イージス護衛艦『みらい』及び駆逐艦『如月』、敵艦載機の爆撃により『みらい』は大破炎上、『如月』は爆風で岩礁に衝突、機関大破。夕張達が救助に向かうも霧先少佐が敵艦隊に襲われた場合の絶望的戦闘を回避すべく撤退命令を下し、上官指示で救助を断念。10分前に、新たにこの世界に現れたゆきなみ型護衛艦一番艦『ゆきなみ』と潜水艦『伊152』と共に当該海域を離脱しました・・・・・・・・。」
「形式上の報告は分かった。彼らの生存は?」
「目撃証言とあの近辺の深海棲艦の量から、霧先少佐以下、みらい、如月の帰還は絶望的と判断します。」
長門の報告を聞いた提督は黙り込んだ。
「提督・・・・・どうなさいますか?」
「せめて・・・せめて戻ってきてから半日は待ってやれ。それを越えたら・・・・彼女たちに報告だ。」
「了解しました。」
「少し・・・一人にしてくれ。」
「・・・・・失礼しました。」
長門が退出すると提督は「W島攻略作戦用資料」を取り出した。
それも全く同じものが二つも。
「・・・・・『みらい』達の存在を許さないからと言って・・・・・自分たちの手で堂々とやらず・・・・欺瞞をし、彼らの母国を守りたいという思いを悪用し、高みの見物を決め込むのが日本国海軍のやり口なのかぁ!!」
提督は怒りに任せて書類を投げ捨てた後、机を殴りつけた。
その投げ捨てられた書類は殆ど同じことが書かれているが、今までに深海棲艦を確認したポイントが掛かれた位置が少し違っていた。
その違っていた場所こそが梅津一佐指揮の「みらい」と三水戦が軽空母ヌ級と出会った場所だった。
みらいをアニメ基準に割り込ませるの大変です・・・。
轟沈はこの小説にはない。(断言)
次回「私たちの出番ネ!Follow me!」
彼女たちは辛い現実に目を背けないことが出来るのだろうか。