高校生艦長と自衛艦の航海日誌   作:みたらし饅頭

42 / 64
第参拾質戦目「私たちの出番ネ!Follow me! 下」

「教練対潜戦闘終了!」

 

一人の女性が海上でそう言った。

その女性は体にみらいと同じ、イージス艦を小さくした物を戦艦の様に装着していた。

その艤装には「180」と「ゆきなみ」という文字がライトグレーの艤装にに白で書かれていた。

そう、彼女はみらいの姉、ゆきなみ型護衛艦一番艦「ゆきなみ」だ。

 

「やっぱりこの体に慣れるのは時間が掛かるかなぁ?妙に肩が痛いし。」

 

腕をぐるぐる回すゆきなみ。

原因は一部の大きなモノだろう。

推定で最低Fはあるように見える。

 

「・・・・・今日もか。」

 

彼女は水平線を見たまま呟いた。

 

「まっ、待つのは慣れてるし、ゆっくりと待ちますか。」

 

そう言って陸に上がった。

その彼女に近づくものがいた。

 

「大丈夫なの?」

 

着物にミニスカ、深緑色の髪をツインテールに結った彼女は翔鶴型航空母艦二番艦「瑞鶴」だ。

彼女はやや不機嫌な表情でゆきなみを睨みつける。

 

「何がですか瑞鶴さん?」

 

ゆきなみは微笑みながら瑞鶴に聞き返した。

 

「みらいの事よ!あんた、なんとも思ってない訳?自分の妹とその上官が死んだかもしれないっていうのに!」

「なんとも思ってない訳ない!」

 

瑞鶴にゆきなみは掴みかかった。

 

「な、なによ!」

「あなたはいいですよね!自分の姉が目の前で沈んで分かるだけ!私は!・・・・・・1週間・・・1か月・・・・1年・・・・5年経っても妹は帰って来なかった!沈んだのかどうかもわからず唯々徒に時が過ぎていった・・・・・。やっと会えてすぐ戦死なんて認めたくない!」

 

ゆきなみは怒りと悲しみで顔がぐちゃぐちゃになっていた。

瑞鶴は今更地雷を踏みぬいたことを自覚したようだ。

ゆきなみが手を放しその場を去ろうとした時に瑞鶴が言った。

 

「・・・・・・・・貴方の気持ちを考えなかった私が言うべきではないけど期待すると後が痛いわよ。」

「・・・・・・・みらいは生きている。私はそう思うの。」

 

ゆきなみはそう言って去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方「みらい」ウイングにも人影はあった。

角松、尾栗、菊池の三人だ。

 

「菊池、砲雷科はどうだ?」

「短い期間とは言え、話したりすることもあったみらいと霧先の戦死判定はかなり隊員内で話題になっている。次は誰が死ぬかということもだ。」

「航海科もおんなじだ。友成の戦死が確定されてから皆自分のやりたいことをできるだけやるようにしているよ。」

 

菊池と尾栗の報告を聞いた角松はウイングの手すりに重心を掛けて考えこんだ。

 

「だが、今回の出来事は俺達にとっていい薬になったな。」

「何だと菊池!?お前は友成達が死んで良いと、本気で思っているのか!!」

「そうは言っていない!俺たちのいるここは異世界、しかも戦場だ。海上自衛隊でいられるのは自衛隊法と専守防衛に徹しているからだ。だが俺達は確実に軍人になっている。『第二艦隊』『W島攻略作戦』俺達は確実に実戦経験を積み、軍人になり始めている。だがこの世界では実戦経験だけでは生き残れない。分かったんだ、霧先の戦死がほぼ確定したのを聞いてから。俺達には仲間が死んだということを乗り越える力が必要になるんだ!」

「だからって友成達が死んだとは限らねえだろ!」

「現実を見ろ!主砲を跡形もなく消し飛ばされているんだ!ハープーンは8発、トマホークは3発、随伴艦なしの対艦攻撃手段がないイージス艦が深海棲艦の生息地を航海するなど自殺行為!戦死も妥当な判断だ!」

「だが、もしもがあるだろ!」

「戦場ではもしもは当てにならん!」

「そこまでだ!」

 

菊池と尾栗の互いに掴みあいの口論が激化しようとした時に角松が止めた。

二人は互いの服を離す。

 

「今は友成達の戦死について口論をするべきじゃあ無い。俺たちがやることは艦娘と我々の身をどうやって守り、あの日本に帰る手段を探すことだ。二人ともそのことを第一義に考えろ。」

「悪い洋介、少しヘリ甲板で頭冷やしてくる。」

「俺は資料室で今後の行動について考察してくる。」

 

尾栗と菊池は自分の頭を冷やすために角松に告げそれぞれの場所に向かった。

 

「俺達には仲間が死んだということを乗り越える力が必要になる・・・・か。」

 

角松は一人ウイングで菊池の言った言葉を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の朝、金剛型四姉妹と吹雪は出撃ドックに来ていた。

が、

 

「ムッキー!どうしてぜかましーは!いつまでたっても来ないんデスカー!!!!」

 

金剛は憤怒していた。

とっくに集合時間を過ぎているというのに一向に島風は現れないのだ。

作戦が決定して艦隊も決定している以上、急遽変更というわけにもいかない。

 

「い、今、霧島が指令室に連絡していますから・・・・。」

 

そう言ってなだめる比叡。

同じくなだめようとしている榛名と共に困った顔でいる。

 

「ブッキーは何か聞いていないデスカー!?」

「うぇ?わ、私ですか!?いえ!特別、何も・・・・・。」

 

遂に堪忍できなくなった金剛は吹雪に問う。

しかし、当の本人は島風はおろか、自分の姉妹を含め、他の駆逐艦全員と話したわけではない。

必ず何人かは哨戒に出ていたり、出撃したり、用事をしていたりするのだ。

そこに霧島が走って来た。

 

「お姉さま!大淀さんに確認しました!」

 

『間違いなく、任務を忘れていますね。何とか合流して任務に向かってください。ただ・・・以前は提督の私室のこたつに潜んでいたり・・・鳳翔さんの膝枕で眠っていたり・・・とにかく自由な艦娘なので見つかるのには少々手間取るかもしれません。提督には私から作戦の遅延の可能性を話しておきます。』

 

「とのことです。」

「島風ちゃんってばぁ・・・・。」

 

この一場面を見れば大淀が無責任と思うが彼女も通信員なので仕方ない。

 

「ウフ、フフフフ・・・・。」

 

突如笑い出した金剛は何かを思いついたようで、高らかに言った。

 

「それなら私にいい考えがありマース!」

「おぉー!」

 

どこかの某超ロボット生命体司令官が戦略立案で言えば100%失敗しそうな言葉を言い放った金剛を下の妹たちは凄いと思っているようだ。

が吹雪は心配していた。

 

「大丈夫・・・かなぁ・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「~~~~~~~♪」」」」

 

何をトチ狂ったのかいきなり運動場のど真ん中でコンサートをし始めた金剛型四姉妹。

吹雪は横でタンバリンを鳴らしている。

そこに第六駆逐隊がやって来た。

 

「あれはお祭りなのですか?」

「いや、違うと思うな。」

「楽しそうね!私たちもやらない?」

「じょ、冗談じゃないわ!一人前のレディはあんなことしないわよ!」

 

祭りと勘違いする電に響が言い、雷が姉妹を誘う。

だが長女の暁はレディのすることではないと言い、吹雪の羞恥心を煽る。

 

「もー!!これって何なんですかー!」

「Wow?分かりまセンカ、ブッキー?例えばclosedの部屋に閉じこもって出てこない人がいるとシマース。デモ、部屋の外でsing danceされたラ気になりますネー?そしてドアが開いたその瞬間。棒をねじ込んでドアをopen!外に引きずり出シマース!つまり・・・・梃の原理こそ最強デース!」

「結局ただの力づくになってますよ!?」

 

吹雪の言う通り唯の脳筋の考え方だ。

どこかの某元コマンドーの大佐並の筋肉論である。

どこかの某超ロボット生命体司令官の方が失敗しても構想がしっかりしているだけマシだろう。

 

「まぁまぁ、見つけるのが難しい以上、島風さんの方から出てきてもらう。さすがは金剛お姉さま!見事な発想の転換です!」

 

それでいいのか艦隊の頭脳といいたくなる面である。

 

「そんなにうまくいくのかなぁ?」

「Hey!ブッキー!それ以上は言葉にしなくても分かりマース!」

「えっ?」

「次はブッキーが歌いたいデスネ―?」

「「「おぉー!」」」

「全然わかってないじゃないですかー!」

 

ある意味この艦隊の常識人は吹雪だけなのだろう。

だがそう仮定すると四人が急激に残念な子に見えてくる。

 

「その通り!全然わかってないわ!」

 

普通の人ならこう思うはずだ。

「またお前か。」

至極当然だろう。

 

「黙って聞いていれば!たとえ相手が戦艦だろうと絶対に許さないんだから!」

 

現れたのは自称艦隊のアイドル那珂。

いっそのこと黙って聞いていて欲しかったが乱入したら仕方ない。

 

「那珂ちゃん・・・・。」

「この鎮守府のアイドルは!誰が何と言おうと!那珂ちゃん何だからね?」

「ですよねー・・・。」

 

吹雪は那珂に淡い期待を抱いていたがそんなものはすぐに崩れ去った。

 

「にわかアイドルになんか負けないんだから!」

 

ここで普通の人はこう思うはずだ。

「誰か止めないの?」

至極当然だろう。

だがここに集まり見ている艦娘達は殆どが飲食物をもって観戦する気満々なのである。

 

「さぁ!これを受け取りなさぁい!」

 

そう言って那珂が放り投げたのはマイクだった。

 

「聞いたことがアリマース!」

「知っているのですか?お姉さま?」

「貴族が手袋を投げるように、アイドルはマイクを投げて決闘を申し込むのデース!」

 

一体どこから手に入れて知識なのかを小一時間問いたい位だが置いておこう。

金剛はマイクを取ろうとするが颯爽と横から飛んできたものがかすめ取る。

それは霧島だった。

 

「マイク音量大丈夫?チェック、1、2、よし!問題ありません!はい、お姉さま。」

「Tha、Thankyouネー、霧島。」

 

霧島は何がしたかったのだろう。

本能が動いたのだろうか?

よくわからないがマイクを差し出す霧島になんとも言えない表情で金剛はマイクを受け取る。

 

「さぁ!これで決闘成立!アイドル頂上決戦開始よ!」

「Ye、Yes!私は逃げも隠れもシマセンヨー!那珂チャーン!」

「「「おぉー!金剛お姉さまー!」」」

「Hey!ブッキー、榛名、霧島!ここは私に任せて、先に行くデース!」

 

キリッと言う金剛。

時と場所が良いならカッコいいのだが・・・・。

 

「お姉さま・・・・。」

「ご武運を!」

 

榛名、霧島、吹雪は比叡と金剛を残してその場を去り、島風を探しに向かった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・あの・・・金剛さんたち本当に置いてきてもよかったんですか?」

「えぇ、お姉さまたちであれば何も問題はありません。」

「(この二人なら、なんか普通かも・・・・・。)」

 

榛名の対応を見て安心する吹雪だが・・・・。

 

「でも、霧島。どうやって島風ちゃんを誘い出すつもりなの?」

「榛名、ここは金剛型四姉妹の頭脳と呼ばれた私に任せてちょうだい。フッフフフフ・・・・・・。」

「うぅぅぅぅぅ・・・・・。」

 

早くも吹雪の予想は外れそうである。

 

 

 

 

 

「何かかわいい花咲いてるねぇ~。」

「そうですね。もちろん、北上さんの方がずーっと可愛いけど。」

 

花壇の前に設置された椅子に座って花を見ているのは北上と大井だ。

大井の方は「花より団子」ならぬ「花より北上」な訳だが。

 

「私の計算によれば女の子は92%の確率で女の子は甘いものが好き。」

 

そこに蝶が飛んできて北上をくすぐる。

 

「ふふっ、くすぐったいってばぁ。」

「もう、悪戯な蝶ね。・・・・・うぅ、羨ましい。」

 

大井の煩悩がダダ漏れである。

 

「ですが、それよりも好きなものがあります。それは甘い恋の話!」

 

「おぉ!大井っちも可愛いよ。」

「北上さん・・・・。」

 

大井は顔を赤らめる。

 

「さぁ!この甘い語らいに引き寄せられなさい、島風さん!」

「あの、さっきから何か?」

「お気になさらず。」

 

隠れて待つということを知らないのか霧島は正座して二人の前にいた。

当然、大井も睨んで聞く訳だ。

 

「そ、そろそろ行きましょうか北上さん。ね?」

「えぇ?」

 

二人は立ち上がってその場を去ろうとする。

 

「待ってください!場所を移動されると計算をやり直す必要が!!」

「済みません、急いでいるんです!」

 

どんな計算式で解くのか知りたいが、霧島は大井と北上を追いかけていってしまい、吹雪と榛名だけが取り残された。

 

「霧島の計算が外れるなんて!」

「えぇ!?」

「仕方ありません・・・榛名、いざ出撃します!」

 

そして出来上がったのは籠を棒で立たせて糸で結び餌に引っかかったところを糸を引いて籠に閉じ込めるという古典的な罠だった。

しかも籠が小さいうえに餌は金剛の写真集。

どこから入手したのかは分からないが引っかかるのは極々一部だろう。

吹雪と榛名は近くの建物の陰に隠れていた。

 

「お姉さま方や霧島と違い、非才な榛名にはこれが精一杯。ですが!これならきっと島風ちゃんも!」

「そうですね。」

 

棒読みで答える吹雪のハイライトがOFFになりかけているのは気のせいだと信じたい。

もはや金剛姉妹がやることに関して考えることを放棄したようだ。

その時榛名がひもを引く。

 

「掛かりました!」

「えぇ!!嘘ぉ!!!」

「ヒエェ!!」

 

うん、確かに大物がかかった。

だがしかし島風ではなく比叡だった、しかも満面の笑みで雑誌を銜えている。

 

「何しているんですか?比叡さん・・・。」

 

吹雪は冷ややかな目で比叡を見ていた。

無理もない。

職場の上司や学校の先輩がこんなことをしていればそんな目で見るようになってしまう。

 

「あぁいえ!違うの!体が、勝手に、動いて、ね?」

「分かります!」

「分かっちゃうんですか!?」

 

早口で弁解する比叡に榛名が同情する。

そこに切れのいい突っ込みを入れる吹雪。

突っ込みスキルが日々磨かれて最早突っ込み要員になってしまっている。

 

「そんなに興奮しちゃNoヨ!ブッキー。」

「あっ、ありがとうございます。」

 

吹雪は差し出されたティーカップを受け取るが。

 

「って!何してるんですか金剛さん!!」

 

優雅にティータイムを楽しむ金剛にまたしても吹雪の磨かれたつぅこみが炸裂する。

このまま吹雪が過度のストレスで禿げないか心配だ。

 

「うっかり今日のTea timeを忘れていたネー。」

「金剛姉さま、お手製のスコーンもここに。」

「大盛りでー!」

「はい!榛名、全力でいただきます!」

「あっ、いいにおい。私も食べるー!」

 

ごく自然に紛れ込む比叡と榛名、そして島風。

 

「ちょっ!こんな簡単に!?」

 

吹雪の苦労は一体何だったのだろうか。

彼女が育毛剤を手にする日もそう遠くないのかもしれない。

 

「んーおいひー!」

「美味しいです~。」

 

結局吹雪もティータイムに参加することとなり座っている。

その表情はどこか浮かない様子だ。

 

「ハーイ、ブッキー!アーンするデース!」

 

口を開け何かを言おうとした吹雪の口に金剛は無理やりスコーンを押し込む。

 

「むぐむぐ・・・・・美味しい!」

「さぁ、Tea timeの後は、深海棲艦とパーティーネ!」

 

 

 

その言葉通り、金剛たちは南西方面へ向けて出撃した。

一方、睦月は未だ埠頭で帰りを待ち続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、南西諸島に到着した吹雪たちはスコールに遭遇していた。

 

「わっ!す、すごい雨・・・・。」

「これでは確かに航空戦力の投入は無意味。速度に秀でた艦隊が編成されるわけです。」

 

霧島の言う通りこの状況下では視界も良好ではなく航空戦での勢力も落ちる。

こんなところに航空戦力を投入すれば全滅しかない。

 

「みんなおっそーい!」

 

そう言って島風は一人、速度を上げて艦隊から離れ始めた。

 

「島風ちゃん、先行しすぎです!」

「そうだ!旗艦は金剛お姉さまよー!」

「かけっこしたいの?負けないよー!」

 

比叡の論点がずれている気がするが置いといて。

榛名が注意すると島風はかけっこを始めた。

本隊から離れるのがどれだけ危険か理解しているのだろうか?

 

「人の話を聞け―!」

「フッフフ・・・。」

「やっとsmileを見せたネ、ブッキー。」

「うえ?」

「雨も滴るいい艦娘デース!」

 

金剛はそう言って島風を追いかけ始めた。

金剛たちが明るく馬鹿っぽくしていたのは吹雪を笑わせるためだったのだ。

彼女たちも仲間が戦死と聞かされて大丈夫なわけではないがそれをバネに壁を乗り越えているのだ。

深海棲艦もっと強大な、自分という敵に勝つために。

その時、艤装から警報が鳴る。

 

「水上電探に感あり。来ます!」

 

霧島の言葉の後、水平線から敵艦隊が現れた。

全員が締まった顔になり戦闘用意を行う。

 

「比叡!切り込み役は任せたネー!」

「任せてください!てぇぇい!」

 

比叡の言葉と共に爆発音が鳴り砲弾が発射される。

しかし初弾命中とはいかなかった。

 

「ル級の相手は私たちネー!」

「「「了解!」」」

「ブッキーとぜかましーは駆逐艦の足止めヨロシクネー!」

「は、はい!」

「はーい、ぜかましじゃないし・・・。」

 

金剛の適切な指示により吹雪と島風は駆逐艦の砲雷撃戦を行うことになった。

 

「撃ちマス!fire!」

 

金剛の放った砲弾は敵戦艦の向こう側と近くに命中し遠弾と至近弾判定、つまり夾差になった。

 

「初弾夾差!次は行けます!」

「OK!fire!」

 

榛名の報告を聞き、仰角を修正した金剛の放った砲弾が見事命中し敵戦艦にダメージを与える。

 

「流石金剛お姉さま。私も!行きます!」

 

 

 

「凄い・・・・。」

 

吹雪はさっきまで突っ込みどころ満載だった四姉妹の変貌ぶりと戦いぶりを見て驚いている。

その横を島風が連装砲ちゃんと駆け抜ける。

 

「連装砲ちゃん!おねがーい!」

「キュイ!」

 

泣き声を上げて応答した連装砲ちゃんは砲撃を開始する。

ピョンピョン飛び回りながら砲撃を行い敵駆逐艦が混乱しているところに島風が近づく。

 

「五連装酸素魚雷!行っちゃってー!」

 

島風から放たれた魚雷は敵駆逐艦に命中、撃沈した。

それを見た吹雪は進路を敵駆逐艦に向ける。

 

「私だって!大丈夫!この間は上手くできたんだもん!」

 

吹雪は敵の砲弾が当たらないようにジグザグ航行をしつつ砲撃を行い敵駆逐艦に近づく。

 

「いっけぇ!!!」

 

吹雪の魚雷発射管から放たれた6本の魚雷は見事敵駆逐艦に命中し撃沈した。

吹雪にとっては初の艦艇の成果である。

だが慢心とはこういうところで起きるのだ。

 

「やった!これならもっと!」

 

欲張った吹雪はさらに前に出る。

 

「吹雪ちゃん!前出過ぎ!」

「うぇ?きゃあぁ!!」

 

比叡が注意するも時すでに遅し。

吹雪に砲弾が命中。

中破状態になった、目に見えて損傷しているうえに速度も低下、足の郷も沈み始めていた。

 

「なに?あっ!」

 

吹雪は今、自分の間違いに気づいた。

そして目の前には敵戦艦が邪悪な笑みを浮かべて吹雪に狙いを定めた。

次々敵弾が夾差する。

吹雪が被弾するのも時間の問題だろう。

吹雪は走馬灯で残してきた親友を思い浮かべた。

彼女を残し自分も去ることになると思った吹雪は両膝をついた。

 

「いやだ・・・・いやだよぉ・・・・!」

 

吹雪はそう言うが敵戦艦は冷酷にも砲弾を発射する。

そして吹雪へとその砲弾が向かう。

が、突如割り込んだ金剛に殴られた事によって弾かれたその砲弾は別の方へと飛んでいった。

涙目になり金剛を見つめる吹雪に金剛は微笑みかけた。

 

「てぇぇぇい!」

「ここは、ひとまず私たちが。」

「お姉さまは吹雪ちゃんを!」

 

比叡、榛名、霧島は二人を守るため敵艦の注意を引きに行った。

 

「う、うぅぅぅわ、わたわた・・・・・・。」

 

必死に謝ろうとする吹雪を金剛は優しく抱きしめた。

 

「大丈夫、ちゃんと分かりますヨ。」

「(そうか・・・・・・そうなんだ・・・・・。)」

 

吹雪の心境を表すのかスコールも晴れ青い空が広がる。

金剛の手を取り吹雪は立ち上がった。

 

「あの、金剛さん!」

「一気に決めマース!」

 

そう言った金剛は姉妹達と合流し残存艦を殲滅しに向かう。

 

「Follow me!ついてきてくださいネー!」

「「「はい!」」」

 

金剛の言葉に妹たちは息のそろった返事をする。

 

「主砲!砲撃開始!」

 

榛名が発砲し数発命中する。

 

「比叡お姉さま、弾着修正右1,5、お願いします!」

 

霧島の指示を聞いた比叡は砲塔の向きを修正する。

 

「主砲、斉射!撃ちます!」

 

比叡の砲弾も命中し敵戦艦二隻が接触事故を起こした。

 

「「「お姉さま、止めを!」」」

 

三人が場所を開け、金剛が砲撃準備を行う。

 

「Burning Love!!」

 

金剛の砲弾が命中した敵戦艦は大きな爆発を起こし跡形もなく吹き飛んだ。

丁度島風も敵駆逐艦を殲滅した。

 

「こっちも完了だよー。」

 

「Hey!私たちの活躍、見てくれた?目を離しちゃNo!なんだからネ!」

 

そう言ってピースをする金剛に吹雪は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕暮れの鎮守府。

睦月は未だ妹たちの帰りを埠頭で座って待ち続けていた。

帰ろうかと思いその場を去ろうとした時、人の気配を感じて振り返る。

 

「如月ちゃん!?」

 

しかしそこにいたのは如月ではく吹雪だった。

 

「ただいま、睦月ちゃん。」

 

未だ中破状態のまま吹雪は微笑みかけた。

 

「おかえり、吹雪ちゃん・・・・って!大丈夫!?怪我は!?」

「ううん、全然平気だよ。」

「良かった、帰って来てくれて・・・・。ほら、早く休まないと、風邪ひいちゃうよ?」

 

そう言う睦月に耐えかねたのか吹雪は行動に出た。

 

「睦月ちゃん!」

「吹雪・・・ちゃん?」

 

吹雪は睦月を力一杯、優しく抱きしめた。

 

「急に、どうしたの?・・・・・・吹雪ちゃん、痛いよ・・・・離して、もうやめて・・・・。」

 

睦月が頼むが吹雪は離さない。

これは必ず乗り越えなければならないことなのだ。

 

「だって、痛い・・・・・すごく・・・・胸が痛いんだよ・・・・・。」

 

睦月は目に涙を浮かべながら吹雪から離れようとするができない。

次第に涙は溜まっていき・・・

 

「うぅぅうぅう・・・・・ヒグッ、如月ちゃぁぁぁぁぁぁん!」

「「うわぁぁぁぁ・・・・・・!わあぁぁぁあぁぁぁぁあ!!」」

 

感情があふれ出し二人とも泣いた。

大声で泣いた。

友成のいた平成の世の中では考えられないことが起こっている。

友や家族の戦死、それは戦争で起こり得ること。

その壁を乗り超えて彼女たちは一流の軍人へと成長するのだ。

その様子を見ている物がいた。

 

「吹雪ちゃん、睦月ちゃん・・・・貴方達は成長したのね。海自の私にはまだわからないわ。」

 

ゆきなみだ。

吹雪たちはもう踏ん切りをつけたというのに自分はできていないことを悔やんでいた。

 

「(私には友も家族もいない・・・・・このままみらいが戻らなかったら・・・・後を追うかもしれない。・・・・・・あすか、私は・・・・・なんでこの世界に来たの?)」

 

ゆきなみは自問自答をしながらその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、吹雪はいつも通り起床した。

ふと気になって睦月の寝ている段を見てみるがそこに睦月はいなかった。

(また戻ったのかな?)

そう考えた吹雪はどうしようかと考える。

その時声を掛けられた。

 

「吹雪ちゃん。」

 

吹雪が振り返るとそこには寝間着姿の睦月が立っていた。

 

「おはよ。」

「おはよ!」

 

睦月の挨拶に夕立は微笑み、吹雪は大きく返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして敵が鎮守府の索敵範囲内に侵入したことを知らせる警報が早朝の鎮守府に鳴り響いた。




次回「神の矢と神の盾」

壁を乗り越えた彼女たちは空襲を阻止できるのか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。