(第六駆逐隊に死に損ないはいかんやろ・・・。)
後、簡単に出来るカツの作り方を本文中で紹介しています。
意気揚々と出撃した第六駆逐隊であったが・・・・・。
失敗であった。
「お疲れさま。ジュースあるよ。」
丁度四人が帰投したことを聞いた霧先は四人分のジュースを持ってきて差し出した。
四人はそれを受けると少し飲んで喉の渇きを潤してから溜息を吐いた。
「そりゃまぁ・・・幻だもんね・・・・・。」
「簡単に見つかるわけないのです。」
「Вы правы」(そうだね)
雷、電、響の三人がため息をつく横で霧先がしゃがみながら疑問に思っていた事を言った。
「と言うよりボーキサイト入れたら僕は食べれるかもしれないけど提督や海自の皆さんは食べれないんじゃ・・・・参加事項でそう書かれてるよ。」
霧先の言葉に三人が驚愕した顔で固まった。
ボーキサイトは本来航空機に使われる素材で人間の食するものではない。
そんなものをバリバリ食せる艦娘基準で考えては確実に死人が出るだろう。
それを聞いた三人は振出しに戻ってしまい余計にため息が出る。
そしてついに暁が声を上げ始めた。
「もうヤダ!やってらんなーい!!!」
ジタバタとする様は完全に駄々っ子の姿だ。
「もう・・・・止めちゃおっか・・・・・。」
暁が目を潤ませながら元気のない声でつぶやいた。
霧先がどう声を掛けるべきか悩んでいると一人の女性が言った。
「努力に憾み勿かりしか!」
全員が声がした方を向いた。
「長門さん!」
暁が声をあげた。
そこに立っていたのは長門だった。
「詳しくは聞くまい。だが、諦めるのか?」
「・・・・・・。」
長門の言葉に四人は黙ったままだ。
「それもいいだろう。十分に努力したと、胸を張って言えるのならな。」
「そんなの・・・!言えるわけないじゃない!!」
暁が立ち上がった。
「そうよね!一度や二度の失敗で諦めてちゃ、遠征任務なんてできないもの!!」
「不死鳥のように立ち上がるまで!」
「幻なんかに頼ってはいけないのです!」
雷、響、電も立ち上がった。
全員の気持ちが一致団結したのだ。
「えぇ!自分たちだけの力で勝つわよ!!」
「その意気だ・・・・。」
長門は静かにそう言って第六駆逐隊を激励した。
そして数日後、鎮守府内のグラウンドでステージが用意され、カレー大会が開催される運びとなった。
櫓では司会の霧島がマイクチェックを行っていた。
「マイク音量大丈夫・・・?チェック、1、2・・・・・・。はーい!!皆さんお待ちかね!鎮守府カレー大会開幕です!!」
霧島の切り出しの言葉と共に艦娘や自衛官の歓声が響く。
海上には100余名の艦娘と200余名、総勢約400名の観客が集まった。
妖精も含めると優に600は超えているだろう。
それほどの賑わいとなっている。
「司会実況は私、金剛型4番艦『霧島』!現場実況は。」
「艦隊のアイドル!那珂ちゃんで~す!それじゃあ出場者を紹介するよ!バーニングカレー!金剛さんと比叡さん!」
「テ―トクのStmachを掴むのハ!私たちのcurryデース!!」
「気合い!入れて!作ります!!」
どうやら一番手は金剛と比叡の様だ。
二人はそれぞれ生まれた国が違うがそれがいいカレーを作り出すだろうか。
霧島が次のぺアを紹介する。
「未来の日本を守る最高技術の艦!その最高技術はカレーも!?ゆきなみ型護衛艦『ゆきなみ』と『みらい』!」
「海自のカレーを見せましょう!」
「私たちのカレーをご堪能ください!」
海上自衛隊のカレーはレシピが防衛機密とされるほどすごく美味だ。
一部例外もいるが・・・・ゆきなみ型は大丈夫だろう。
続いて那珂が紹介する。どうやら霧島と交互に紹介するようだ。
「鎮守府の功労者!問題事や緊急時には即応!友君と大淀さん!」
「本日はよろしくお願いします。」
「アシスタントと言う形ですが精一杯頑張りますね!」
何と霧先が大淀と組んでカレー大会に参戦することになった。
実は霧先も参戦したいと思い丁度手が空いていた大淀に頼んだところ大淀も去年やその前から出てみたかったらしく快諾。
本日霧先と組んででることになった。
おかげで観客席では扶桑型の伊勢を筆頭に数名が悔しそうに見ている。
続々とペアが紹介されていく。
「五航戦の力を見せつけるために来ました!瑞鶴さんと翔鶴さん!」
「あれだけ練習に練習を重ねたんだから優勝はいただきよ!!」
「皆さんが楽しめるようなカレーを作りますね。」
五航戦の瑞鶴と翔鶴も参戦するようだ。
普段仲がいいだけあって息も合うだろう。
美味しいカレーが期待される。
「ご飯も深海棲艦もお残しは許さない!一航戦、加賀さんと赤城さん!」
「五航戦のカレーとは一緒にされたくないものね。」
「一航戦、赤城!いただk・・・作ります!」
即座に言い直したが赤城のボロが出た。
このままぼろを出さずに事が済めば良いのだがどうなるやら。
「辛き事島風の如し・・・・島風さんです!」
「これ以上辛くなっても知らないから!」
島風は一人で参戦の様だ。
普段速さを追及する彼女だが一体どんなカレーを作るのか見物になってくる。
「お嫁さんにしたい艦娘ランキング第一位の羽黒さんとお嫁に行かせてあげたい艦娘ランキング第一位の足柄さん!」
那珂の超特大爆弾発言によって羽黒と霧先は顔を青ざめながら足柄の方を向いた。
当然、当の本人はブチギレており、まずい状況だった。
「那珂・・・・ちょっとこっちに来て・・・・?」
「わ、私が押さえておきますので早く逃げてください那珂ちゃん!」
「足柄さん落ち着いて!那珂姉さんもなんでこんなこと言ったの!?」
「え?青葉さんが言うと盛り上がるって・・・・。」
「アオバワレェ!!」
霧先が叫ぶ。
そしてその瞬間、青葉はばれないように姿を一瞬で隠した。
その横でお構いなしに霧島は紹介を進めていく。
「遠征のスペシャリスト、第六駆逐隊、暁さん、響さん、雷さん、電さんです!」
第六駆逐隊は全員が指に包帯を巻いていた。
それから察するに何度も練習をして指を切ったりしたのだろう。
四人の努力が垣間見られた。
「どうやら相当な鍛錬を積んできたみたいね。約束通り相手をしてあげる。」
「Yes!正々堂々勝負ネー!!」
足柄と金剛が第六駆逐隊に宣戦布告している横で霧先たちは蚊帳の外である。
「・・・・・とりあえず大淀さん、よろしくお願いします。」
「あっ、はい!お願いしますね!」
そんなやり取りをしていると審査員の紹介に移った。
「そして審査員は・・・・・鎮守府の最高責任者である提督と世界のビック7!怒れる41㎝砲!鎮守府のまとめ役の長門さん!そしてなんと!『みらい』ではグルメな乗組員である航海長、尾栗少佐も審査をします!」
「皆のカレーを楽しみにしている、ぜひ最高のカレーを食したい。」
「私も皆には期待している。」
「海自はカレーが伝統だからな。かなり厳し目で審査するぜ。」
審査員の三人が一言言った後、霧島と那珂が宣言をした。
「お料理ナンバーワンの名誉を掛けて!」
「鎮守府カレー大会スタート!!」
その言葉に反応した選手は全員調理台へ向かい早速、カレーを作成し始めた。
一方、宿舎の屋上で北上と大井の二人は観戦していた。
「おー始まった。流石賑やかだねぇ~。」
「えぇ!とても楽しそう!これ以上北上さんとの語らいを邪魔するなら九三式酸素魚雷片舷20射線をぶち込みますけど・・・・・。」
不穏な言葉を聞こえないように言うあたり大井もかなりなものである。
北上は思い出したかのように会話を続けた。
「でもカレーかぁ・・・・どっちか、ってぇーと言うと私は肉じゃが派なんだよねぇ~。」
「まぁ!私の得意料理じゃないですか!肉じゃがと言えば良妻賢母。良妻賢母と言えば私と言うくらいに・・・・。」
意味不明になりつつある言葉を言う大井に北上は少し苦い顔をしながら相槌を打った。
「まぁ~うん、大井っちは料理上手だし今度作って貰おうかなぁ。」
「分かりました!幸せにします!」
「う、うん楽しみにしてるよ・・・・・・・。」
少し影がかかった顔で言う大井に危機感を感じた北上は少し身体を大井から離しながら答えた。
「(はぁ・・・これまで姉じゃなくて親友みたいな感じで接してきたけれどそろそろブレーキが利かなくなってきてる・・・・大井っちの今後の事も考えておかないと・・・・・球磨っちと多摩っちは論外、木曾っちは・・・・末っ子だし・・・・誰か妹慣れしていて親しみやすいのは・・・・・。)」
大井のことを危惧し始めた北上は腕を組んで唸りながら頭をフル回転させた。
実際前々から大井が問題を起こす度に霧先や提督に対して大井を半ば強引に頭を下げさせるために一緒に謝罪しに行っていたが特に咎めていなかった。
しかしそろそろ危険と感じた北上も姉として一喝入れようと思ったのだ。
だが肝心の妹を叱る方法を彼女は知らない。
姉に聞こうにも姉が自由奔放過ぎて妹がしっかりしないといけない状況で上の姉である球磨と多摩は末っ子の木曾に叱られる日々。
木曾に聞こうにも末っ子で姉を叱る立場であるがゆえに妹に対してはちょっと違う。
そして北上にも親しみやすい人物とそうでない人物もいる。
誰が一番親しみやすいか考えたとき、ある人物が目に入った。
丁度、カレー大会で調理をしている霧先だ。
彼なら北上の性格的にも親しみやすいし、北上は噂で妹がいると聞いたことがあった。
「友成っちならいいかも。」
「え?何か言いました?」
「へ?あっいや何でもないよ!」
大井が聞いてきたため言葉が出ていたことに気づいた北上は霧先への弔砲を防ぐためにごまかした。
「そうですか・・・・それよりも!」
「う、うん・・・・。」
結局北上は大井の言葉に相槌を打ちながらカレー大会を観戦することになった。
その頃会場では各選手がカレー制作を着々と進めていた。
「皆で頑張って練習したのです!」
「チームワークなら負けないわ!」
電、雷、響、暁の第六駆逐隊も真剣な表情でカレーを作っていた。
それだけこのカレー大会に必死なのだ。
その時ふと暁が思ったことを口にした。
「ほかのチームはどんな感じかしら?」
そう言ってほかのチームに目を向けると金剛、比叡チームは既にカレーのルーを煮込み始めていた。
「ンー!全ての具が溶け込んだこの黄金のcurry soup、優勝はワタシタチで決まりデース!そしたら・・・・モウ!ダメダヨテ―トク!ワタシは食後のデザートデース!!」
既に妄想の世界に行ってしまっている金剛の横にいる比叡はカレーの入った鍋を覗き込んだ。
具材が溶けきっているとはいえ実に美味しそうな色合いのカレーだ。
「(ん?このカレー、具が入ってない!!・・・・お姉さまに恥はかかせません!こんなこともあろうかと!!)」
具が溶けきってしまい無いことに気づいた比叡は妄想の世界へと旅立っている姉の威厳を守るため、あるものに手を掛けた。
それはザル一杯に入った名状し難き何かだ。
いや、目に入れるのも恐ろしい位だ。
「えぇーい!」
あろうことか比叡はそれを鍋の中へぶち込んでしまった。
黄金色だったカレーは一瞬にして紫色の毒々しい色合いへと変化し何故か泡立っている。
それを見ている審査員の全員が冷や汗をかく。
「これは私とお姉さまの合作・・・ハッ!愛の共同作業!ハァー!なんちゃってー!」
手を頬に当てて喜ぶ比叡。
審査員だけでなくよく料理をする鳳翔と間宮も顔を青ざめさせ始めた。
「それでは比叡!一緒に味見デース!」
「はい!お姉さま!」
この姉妹は毒々しい色合いのカレーが目に入らないのだろうか。
自然に小皿に少しだけ盛り付けて食す。
直後、とんでもない顔になり一気に体調を崩して泡を吹きながら気絶してしまった。
「カウント1!2!3!お姉さま方!まさかまさかのノックダウンです!」
「き、霧島さん?」
ノリノリで司会をする霧島に那珂は驚きを隠せないようだった。
その横で加賀と赤城のチームも着々とカレーを作っていた。
加賀は手際よくジャガイモを切っていく。
「栄えある一航戦に小細工なんて必要ないわ。普段通りにやればいいだけ。そうよね?赤城さん。」
「ん~そのほおりよかがふぁん!」
何と赤城、加賀が切ったジャガイモをつまみ食いしていた。
しかもリスのように頬を膨らませて。
更には加賀もこれを黙認する始末。
「加賀さん見事なスルーパス!あっ、今のは赤城さんの行動をスルーした件と食材をパスした件を合わせた解説です!」
「自分で説明しちゃうの!?霧島さん何だかテンション変じゃない!?」
最早普段のキャラとは違う那珂が突っ込みに回っていくスタイルと言うカオスな状況になっている。
一方観客席では睦月が赤城の変貌ぶりを見て吹雪にフォローを入れていた。
「ふ、吹雪ちゃん!赤城先輩はちょっと補給が必要なだけだよ!」
「そうそう!戦ってるときはすごくカッコいいっぽい!」
夕立も続いてフォローする。
しかし吹雪からは意外な一言が出た。
「あの食べっぷり!はぁ~!私も赤城先輩に食べさせてあげたいよぉ~!!」
「「恋だね(っぽい)・・・・。」」
まさかの親友が匙を投げる始末である。
そんな中、ゆきなみ、みらいペアも着々と作業を進めていた。
「ゆきなみ姉さん、それとって。」
「はいはい。艦の頃は給養員の人たちの動きを見ていただけだけど意外と何とかなるね。」
そう言いつつゆきなみはみらいに指示されたものを手渡す。
みらいたちが作っているカレーは完成間近だ。
「一応レシピは知っていたけど本当に料理するのはこれが初めてなんだけどね。」
「え?その割にはかなり包丁さばきが上手いけど・・・?」
料理をするのが初めてだというみらいにゆきなみは疑問符を浮かべた。
彼女からしてみれば、みらいはかなり包丁になれているように見えた。
「えっと・・・艦長が料理するのを横で見てたから・・・。」
「あーはいはい、ご馳走様。霧先二佐に惚れてるのは分かったから進めましょう。」
「ちょっとゆきなみ姉さん!そんな風にさっさと片づけないでよ!」
「だって・・・みらいが霧先二佐のこと話し始めると吹雪ちゃんみたいな顔して延々と語るし・・・。」
微笑ましいのかそうでないかはさておき、二人は上手く作業を進めながら話し込む。
実際後は煮込むだけなのでやることが無いのだろう。
「那珂ちゃんとしてはちょっと複雑だなぁ・・・・。」
近くにいた那珂は会話の一部始終を聞いてしまい複雑そうな顔をしていた。
さて、その隣では霧先、大淀ペアがカレーを作っていた。
「大淀さん、これを鍋に入れてください。」
「これでいいんですか?」
「はい、もう計量は済ませていますので入ってる分すべて入れてください。」
分かりましたと大淀は言って具材が投入され煮だった鍋にカレー粉を入れていく。
全部投下し終えたら程よいとろみを付けつつ焦げないように煮込むため大淀はお玉でグルグルとかき混ぜ始めた。
その横で霧先は1㎏のバラ肉の塊を2個ほど取り出した。
そして豪快にそれをまな板の上にドンッと置いた。
大淀は顔をギョッとさせて驚き霧先に尋ねた。
「そ、それどうするんです?今からだと間に合いませんよ?」
今からカレーに入れると思った大淀は霧先にそう言うが霧先は首を振りながら答えた。
「違いますよ大淀さん。これを揚げてご飯の上にのせてからカレーを掛けると何になります?」
「・・・・あっ!カツカレーですか?」
「その通りです!」
実は霧先、このバラ肉の塊を一口大にカットしてカツにするというのだ。
大淀に説明した霧先は早速下準備を始める。
まずバラ肉を厚さ1㎝程に切って筋を切る。
更に全て切り終わってから肉の両面に塩コショウを振りかけてなじませる。
次にトレーを5つとボウルを1つ取り出して調理台に並べる。
トレー2つには小麦粉とパン粉を用意しボウルには卵を投入。
卵を程よくかき混ぜたら次々と肉に小麦粉を付けてから卵を潜らせてパン粉を纏わせる。
最終的に上げる寸前まで出来上がったものを残ったトレーに並べていく。
そして最後に揚げ物用の鍋にサラダ油をたっぷり注いで火にかける。
油がいい感じの温度になってから次々とカツを油の中へ投入していく。
一気に揚げ物の揚がるいい音と香りが会場に広がった。
「おぉ!友成君はカツを揚げ始めた!しかもいい匂いだ!」
「霧島さん段々キャラがおかしくなってるし!友君も上手に料理できるとか那珂ちゃんより女子力高い・・・・。」
霧島のハイテンションに引っ張りまわされつつも突っ込みをする那珂。
そこに甥の方が自分より料理が上手いというパンチが入った。
「さてと、良いころ合いかな?」
霧先は頃合いを見計らってカツを油から上げる。
するとこんがりきつね色に上がった大変美味しそうなカツが完成した。
彼は次々とカツを上げて脂取り紙を敷いたトレーに置いて行く。
そしてすべて取り終わったらまだ揚げていないカツを油に入れていく。
そして次々とカツが完成していく。
「大淀さん、一つだけ味見してくれませんか?」
「はいではいただきますね。」
大淀は最初に上げたカツを口の中へ運び食す。
その後口なのかに広がる肉汁と塩コショウの味が彼女の頬を緩ませた。
「ん~!美味しいですよ!柔らかいですし塩コショウがちゃんとついているのでこれ単体でも行けます!」
「良かった。じゃあどんどん揚げていきますね。」
そんな二人のやり取りを見ていた霧先に好意を抱いている者たちは楽しそうに会話をしている大淀への嫉妬心でハンカチを食い破っていた。
勿論、翔鶴と瑞鶴のペアも順調に進めていた。
「フフン!一航戦おそるに足らずね!」
「そんなこと言ってはダメよ瑞鶴。五航戦の私たちが慢心してはいけないわ。・・・・でも大淀さんが少し羨ましい。」
「翔鶴姉何か言った?」
「いいえ。別に何でもないわ。」
瑞鶴が調子に乗った為翔鶴がそれを諭した。
しかし小声で言ったことが少し瑞鶴の耳に届いていたらしく尋ねられたが何もなかったかの様に答えた。
だが翔鶴の方を向いた瑞鶴はあることに気づいた。
「あっ!翔鶴姉!カレー跳ねてる!」
「えっ!何処?カレーの汚れって落ちにくいのに・・・・。」
それは翔鶴の服にカレーが跳ねていることだった。
カレーの汚れは落ちにくいことで知られている為、翔鶴も焦る。
瑞鶴は場所を教えるためにその場所を引っ張った。
しかし場所が悪かった。
「ほらここ!ここ!」
「あっ!待ってスカートはあまり触らないで!あぁ!!」
瑞鶴にスカートを引っ張られ動揺した翔鶴は尻もちをついてしまった。
ドシャッ!という音と共に目をつぶってしまった瑞鶴が目を開けるとそこには。
「はっ!」
翔鶴の紐で結ぶタイプの下着が現れていた。
「えっ?・・・・・・あぁぁ!!」
呆然と立ち尽くす妹の右手に握られている物を見た翔鶴はゆでだこのように顔を赤くした。
「もう!なんで私ばっかり!!」
「あっ!待って翔鶴姉!!わざとじゃないの!!」
わざとじゃなかったにしろ翔鶴にとっては恥ずかしいことこの上ない。
翔鶴は恥ずかしさからか会場内を走り回って逃げ始めた。
瑞鶴は後を追いかける。
一方自衛官たちは全員目をそらしたり識別帽を深くかぶって視界を塞いだり周りの艦娘から見えないようにされていた。
勿論提督と尾栗もだ。
「ありがとうございます!こういうのを待ってました!」
「霧島さん!冷静だけど実はテンションMAXだよね!?」
段々と霧島が壊れていき那珂もどんどん突っ込んでいく。
そして災いはさらに加速する。
「翔鶴姉!危ない!」
「え?」
ゴチンという音が会場に響いた。
翔鶴が走り回った結果、隣の調理台で揚げ物をしていた霧先に頭同士をぶつけてしまったのだ。
突然の事でよけれなかった霧先は翔鶴と衝突するが更に不幸は続く。
「目が、目がぁあぁぁ~!」
偶然、彼が持っていた菜箸が翔鶴と衝突した際に瞼を直撃。
油の中から上げてすぐだったためかなりの高温となっており霧先は目を押さえて某大佐の台詞を言いながらふらつく。
そして、そのまま霧島のいる櫓の柱に頭を思いっきりぶつけて轟沈した。
「し、しっかりしてください!!」
すぐさま大淀が霧先を介抱するがすでにたんこぶが二つほど出来上がっていた。
そんなことが起こっている横で島風は気にする様子もなく鼻歌を歌いながら鍋の中に入れた袋を取り出して開封。
連装砲ちゃんが持ったご飯をよそった皿にかける。
そう、袋の中身はレトルトカレーだったのだ。
「でーきたー!!」
笑顔でそう言う島風に疑問符を浮かべたままの那珂が訪ねた。
「ねぇ島風ちゃん?もしかしてそれレトルトカレーじゃ・・・・。」
「ん?だって早いもん。」
「早いからってレトルトは・・・・。」
「ご馳走様ぁ~。」
「食べるのも早!!というか島風ちゃんが食べちゃダメ!!もー!突っ込みは那珂ちゃんの仕事じゃないのにぃ~~!!!」
最早自由奔放過ぎる面々とカオスな惨状と化す会場に那珂も限界が来たようだ。
その様子を暁は何とも言えない気分で見ていた。
「周りが勝手に脱落していくこのむなしさは何なのかしら・・・・。」
「それより暁お姉ちゃん。味見お願いなのです!」
自分たちのする事をしっかりやり遂げるため、電は暁にカレーの味見を頼んだ。
暁は小皿に乗ったカレーを受け取ると口に含んだ。
「どうだい?」
響が聞くと暁は即座に答えた。
「良い!今までで一番良いわ!!」
「本当!?やったね!!」
「えぇ!周りもあんな調子だし、これなら勝ったも同然よ!!」
雷も喜び全員が優勝を確信した。
しかしある人物が異を唱えた。
「それはどうかしらね!」
それは足柄だった。
「羽黒、お願い。」
「は、はい・・・どうぞ、みなさん・・・。」
足柄が言うと羽黒は第六駆逐隊の四人に小皿に小分けにしたカレーを乗せたお盆を差し出した。
四人はそれぞれ一つずつ手に取ってから口に含んだ。
直後、とてつもない辛さが四人の口を襲った。
「な、なにこれ!辛ひゅぎる!!」
「で、でも!すごく美味しいのです!」
「痺れるほどの辛さなのに!どこかまろやかでこれは後を引く味だわ!」
「美味しいとしか言いようがない!」
暁、電、雷、響の四人は足柄のカレーの美味しさに驚愕した。
「なんで!?なんで暁たちのカレーとこんなに違うの!?」
暁は困惑していた。
その奥で激辛カレーと聞いた長門が汗をかきながら見据えていた。
「提督。まさかとは思いますが・・・・。」
「あぁ、長門は辛いものが苦手でな・・・。」
「なんで審査員やったんだよ・・・・。」
尾栗が呆れた声を出しながら言う。
そして足柄は第六駆逐隊に自分の強みを語った。
「これまでの知識と経験、そして数え切れないほどの試行錯誤を繰り返して生み出された黄金配合スパイス・・・私とあなたたちとでは年季が違うのよ!」
第六駆逐隊はその言葉にショックを受ける。
確かに年季が違えばそれだけ知識と経験も違ってくる。
こればっかりはどうしようもない。
「それに何よりも!背負っている物の重さが違う!」
「どういうこと・・・?」
暁の言葉に足柄は答えた。
「次の機会こそ、確実に決めるための女子力!お料理ナンバーワンという名誉が私には必要なのよ!・・・・・・もうね、後が無いの!」
「あぁ!!会場が一気にお通夜に!!今日は皆お祭り気分なのにこの人ガチ中のガチ!大ガチだよぉ!!」
目尻に涙を浮かべながら足柄が言った言葉は会場内を一気にお通夜ムードにしてしまった。
那珂の言葉がまるで皆の気持ちを代弁しているかのようだ。
「容赦なく教え子の心を折りに行きましたね!さすがは飢えた狼!」
「ついでに僕らの気分も折れちゃったよ!」
霧島の言葉に霧先が突っ込む。
既に大淀の治療を受け復帰していたのだ。
「許してください!私はもう!ヤケ酒に沈む姉さんを見たくないんですぅ・・・ううぅう・・・・。」
「そして羽黒さんはガチ泣き!?」
那珂の実況が響き渡る。
最早カオス、地獄絵図としか言いようのない収拾のつかない状況をどうしたらいいものか。
足柄の本気に第六駆逐隊はくじけそうになる。
「くっ!」
「私たちには重すぎるわ・・・。」
「ここまでなのです・・・?」
「あんなに・・・頑張ったのに・・・!」
響、雷、電がくじけかけていく中で暁は頑張った日々を思い出していた。
特訓の成果が出せないと思うと暁は泣きそうになる。
そこに長門の声が響いた。
「
「長門さん・・・!」
「どうしてそんなに私たちを?」
「私だけではないさ。」
第六駆逐隊が周りに目を向けると観客の艦娘や自衛官、妖精が応援していた。
「なぁ~んと!会場中から第六駆逐隊コール!彼女たちの頑張りがついに会場を動かしたというのでしょうか!」
「単に足柄さんが作ったこの重い空気をどうにかして欲しいだけなんじゃ・・・・。」
那珂が言うことが大きな要因であることなのは間違いないだろう。
一方、蚊帳の外となったゆきなみ、みらいペアと霧先、大淀ペアは椅子に座ってお茶を楽しんでいた。
「一丸になるっていうのは素晴らしいね。」
「そうですね艦長。」
「あっ、大淀さんお茶のお代わりは?」
「お願いします、ゆきなみさん。」
「友君たちはなんでお茶してるの・・・・?」
「「「「暇だから」」」」
「アッハイ。」
那珂が気押されされた時、足柄が高らかに笑った。
「おーほっほっほっほ!ひよ子さんたちが私の人生の重みに耐えられて?」
「姉さん・・・・。」
最早羽黒は残念な姉に泣いているのか自分のこの境遇を憂いているのかが一目見ただけでは分からなくなってきた。
その時、響が立ち上がった。
「少し、軽くなった。」
続いて雷、電、暁も立ち上がる
「皆が呼んでくれるなら!」
「私たちは立ち上がるのです!」
「そうよ!暁たちは誓ったんだから!!皆で勝つって!」
皆の声援が第六繰躯体の心を折れさせなかったのだ。
「行くわよ皆!」
「「「おー!」」」
「くっ!ひよっこが・・・!どこからでもかかってくるといいわ!!」
こうして第六駆逐隊VS足柄の対決が始まった。
「第六駆逐隊立つ!今鎮守府の未来を掛けた運命の最終決戦が始まるのです!」
「これカレー大会だよね!?ねぇ!?」
霧島のノリノリな実況に那珂はこれがカレー大会かどうか怪しくなってきたようだ。
相変わらず霧先たちはお茶を飲んでのんびり過ごしている。
「何だかアニメの最終回みたいだよね。」
「そうですね。こっちから見たら唯のごっこ遊びに見えますけど。」
霧先とみらいがそんな事を話しているうちに最終審査へと移った。
審査員である提督、長門、尾栗の三人の前には四つのカレーが置かれている。
「さぁ!すべてのカレーが出そろいました!いよいよ最終審査の時です!」
「何だかかなり時間を取られちゃった気がするけど、とにかく審査しちゃって!」
「お、おう。じゃあまず霧先、大淀ペアのカレーからいただくとしよう。」
三人はカレーをすくってカツと共に口に入れる。
そして味わった後、次のゆきなみ、みらいペア、そして足柄、羽黒ペア、第六駆逐隊のカレーを食べて審査した。
途中、足柄、羽黒ペアのカレーを食べた長門は酷い汗をかいていたようで辛いのは苦手だということが十二分に証明されることになった。
「さ!果たして結果は!?お手元の札を上げてください!どうぞ!!」
霧島の掛け声とともに三人が札を上げる。
提督、長門、尾栗の三人がともに第六駆逐隊のカレーの札を上げていた。
「何と!本年度鎮守府カレー大会優勝は審査員の満場一致で第六駆逐隊に決定しました!!!」
「「「「やったぁ!!!」」」」
第六駆逐隊は歓喜の余り、はしゃぎまわる。
それを見た霧先、大淀、ゆきなみ、みらいの四人は拍手を繰り、足柄は相当悔しかったのか大声をあげて泣き叫び羽黒がそれを宥めていた。
「それじゃあ三人の審査員に話を聞いちゃうよ!提督はなんで第六駆逐隊のカレーにしたの?」
「そうだな。まず子供特有の簡単カレーになると思っていたが以外にも店で出されるのと同じぐらい良いカレーが出てきた。そのインパクトが一番の理由だな、インパクトで言えば霧先、大淀ペアもよかったが・・・・少し第六駆逐隊に傾いてしまったな。」
それを聞いて少し霧先と大淀は悔しそうだった。
那珂は引き続き長門に話を聞く。
「それじゃあ長門さんは?」
「ふむ、味も具材も食べやすいようによく工夫されていたし何より彼女たちはよく頑張っていた。そこも評価に入れるべきだと考え、この結果にした。」
長門はどうやらカレーだけでなく頑張りも評価に入れたようだ。
「それじゃあ最後に尾栗少佐!」
「おう、ゆきなみとみらいのカレーもよかったといえばよかったんだが・・・・なんせ横須賀カレーフェスタでゆきなみのは何度か食べたことがあるし、みらいのカレーも食べなれちまってるからな。今回のカレーはそれを足して2で割った感じだったんだ。だけども第六駆逐隊のカレーはどこか懐かしい感じの味がしてな。それを思い出したら何だか自然と札を手に取っていたよ。」
そう言った尾栗の言葉にゆきなみとみらいはもう少しアレンジを加えた方がいいということを学んだようだ。
「それではこれより!提督からの授賞式を行います!!」
霧島の司会でカレー大会は閉幕へと向かった。
無事閉幕した後は余ったカレーを皆にふるまうというものがあった、が。
「工廠長!綾波のカレー食べてください!」
「土佐のもお願いします!」
「お姉さんのもお願いしちゃおうかなぁ?」
「伊勢、この媚薬とは何だ?」
「蒼龍カレーを召し上がれ!」
「余ったものですがどうぞ艦長!」
「あの・・・スカートの件で審査には出せなかったですけど友成君が良ければ・・・・。」
「深雪スペシャルカレーだぜ!」
「如月カレー、食べて♪」
「そんなに食べきれないですよ!!」
霧先は怒涛のカレーラッシュを食らったようだ。
その後何とかカレーを食べた霧先は自室へと向かっていた。
「はぁ・・・何とか量を減らしてもらって食べきれたけど・・・ん?」
ふと霧先は食堂に寄った時に自分の母、先代神通が何かしているのを見た。
気になった霧先は声を掛ける。
「母さん?」
「ゆ、友成?」
先代神通は驚いた様子で霧先の顔を見た。
その手にはカレーが盛られた皿があった。
「母さん、それって・・・・。」
「・・・・あなたが小さいころに食べさせてあげたかったカレーよ。」
「そういえば母さんの手料理食べたこと無かったな・・・スプーン頂戴。」
「え?でもほかの皆さんのカレーを・・・。」
「大丈夫、少し胃をあけておいてあるから。」
そう言って霧先は先代神通の手からカレーを取ると席に座ってから頂きますと言ってカレーを食べ始めた。
「どう?味付けなんか工夫してみたんだけれど・・・。」
「・・・うん!美味しいよ!これが母さんの手料理か・・・・。」
何故か霧先の視界がぼやけ始める。
そして食べてるカレーがしょっぱくなっていく。
「あれ?なんでしょっぱくなるんだろう・・・・。」
「友成・・・・大丈夫?」
「大丈夫・・・美味しいよ母さん・・・・。」
霧先は泣きながらカレーを食べた。
出会った頃は17年間会えなかったという実感こそわかなかったものの。
母の気持ちが籠った料理を食べてみると本能的に実感がわいてくるのだろう。
霧先は暖かい母の気持ちが溢れたカレーをたらふく食べて完食した。
その後、母と別れた霧先は第六駆逐隊にお祝いの言葉を言いそびれた事を思い出し第六駆逐隊の部屋を訪ねた。
しかし第六駆逐隊は特訓での疲れのせいか既に夢の中だった。
「仕方ないな。」
霧先は一人ずつベットへ寝かせて布団を掛けてから優しくなでて部屋を後にしようとした。
その時、ちゃぶ台の端にある優勝トロフィーが目に入った。
霧先は持っていた綺麗な手ぬぐいでトロフィーを磨いた後、落とさないようにちゃぶ台の真ん中に飾った後、部屋を退出した。
金色の錨とその上の金色のカレーという独特な形のトロフィーは夕焼けの光で一層綺麗に輝いていた。
その夜、霧先が書類を片付けていると小さな訪問者がやって来た。
「よう工廠長、カレー大会は大盛況だったな!」
「主任妖精さん、こんばんわ。」
やって来たのは主任妖精だ。
普段と違い今は150㎝くらいの女の子の姿をしている。
手には何やら大きな紙を丸めた筒をもっていた。
「設計図、出来上がったぜ。これでいいか?」
霧先が渡された大きな紙、設計図に書かれたのは格納庫のようなものだった。
題名には「地下防空壕」と書かれていた。
「えぇ、早速建設を進めてください。」
「完成したらこっそりと資料室と提督の部屋、工廠長の部屋の書類や書籍を全部写したものとすり替えてここに保管だったな。」
「後各資材の半分も。」
「こんなに念入りにして大丈夫なのか?」
少々過剰なのではないかと危惧する主任妖精に霧先はすぐに答えた。
「むしろ足りないくらいです。出来るだけ建設を急いでください。残り時間はもう少ないんです。」
「まぁ、良いか。一週間で出来上がるから楽しみにしてな。そんじゃ私は失礼するよ。」
「お礼の間宮羊羹、きっちり用意しておきます。」
「忘れんなよー!」
普段のサイズに戻った主任妖精はそそくさと部屋を退出した。
霧先は一人、工廠長室の窓から見える海を眺めていた。
「恐らく敵もこちらの総本山を叩く気はあるだろう。未来の力があるからと言って慢心はできない。用心に越したことは無いけど・・・使わない事を願うばかりだよ。」
霧先はそう言うと椅子に座り直して再び書類との格闘を再開し始めた。
久々に一万文字超えました・・・・。
次回新艦娘登場!
後、アンケートもやるので活動報告までどうぞ。
次回「艦隊の疫病神」
友成の胃がどんどん荒れてくよ!