高校生艦長と自衛艦の航海日誌   作:みたらし饅頭

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さて、冬イベ始まりましたね。
バレンタインデー?知らない子ですね。(白目)

突然ですが初月可愛いです。
薄い本が多くでそうですね。


第肆拾睦戦目「一航戦なんて、大ッッキライ! 下」

数日間の航海を経て、「第五遊撃部隊」と「特殊第一艦隊」は珊瑚諸島海域へと差し掛かっていた。

 

「そろそろ珊瑚諸島海域ですね。工廠長に連絡します。」

 

吹雪は僚艦の皆に告げ、無線機越しに連絡する。

 

「こちら吹雪。間もなく珊瑚諸島海域です!」

『こちら霧先。対水上レーダーで確認済みだよ。現時点では敵性艦隊は確認されていない。が、島の陰や水中に潜んでいる可能性がある。十分に注意されたし。』

「了解。警戒を厳にします。」

 

短いやり取りが行われた後、両者は通信を終了し、吹雪も目の前に集中した。

一方、大井は既に妄想に片足を突っ込んでいた。

 

「綺麗な海と空。まるで、私と北上さんの行く末を祝福しているようね!」

「いや、残念だけど大井っち。今任務中だし雲行きも怪しいよ?」

 

暴走気味な大井を北上が止めるべく親指で後方を指した。

その方向には雷の音を響かせながら広がりつつある灰色の雲があった。

 

「チッ、空のくせに空気を読まないなんて・・・!」

(遂に自然に対してまで悪態突き始めたよこの子・・・・早いとこ姉離れさせないとねぇ~。)

 

悪態をつく大井に溜息をつきながら想う北上。

かなりの苦労している様子だ。

一方、「みらい」艦橋でその通信内の会話を聞いていた霧先は慣れたように聞き流してある人物に声を掛けた。

 

「航海長、これから作戦指揮に集中します。もしもの時は航海長に一任します。」

「了解です。」

 

航海長妖精だ。

先任に当たる尾栗康平三等海佐の記憶を受け継ぐ彼女に指示を出した霧先は呟くように言った。

 

「本来なら船務長に頼むべきなんですが・・・・。」

 

霧先は静かに艦橋内の真ん中あたりを見る。

他の妖精たちが各場所で仕事に励む中、そこだけぽっかりと空いている。

本来ならばそこに船務長たるものがいるはずなのだ。

それを見た航海長妖精は二人だけに聞こえる声で話し始めた。

 

「仕方ないですよ。角松二佐は戦死した訳ではなく、あの時代、あの世界に生を受けることのない・・・いわば幽霊のような存在です。この艦に該当する妖精がいなくても不思議はありません。」

「確かにその通りかもしれない・・・だけどあの人が残した意思はこの艦にある。深海棲艦だろうと艦娘だろうと助けを求めていれば助ける。流す血が白かろうが青かろうが、僕たちにとっては赤い血だ。それが『特殊艦隊』、引いては僕たちの進むべき羅針盤であるということは変わらない。」

「・・・・やっぱりあなたは艦長に適任ですよ。これからもよろしくお願いしますよ?」

「もちろん、艦長として最善を尽くしますよ。では艦橋を頼みます。」

「了解!」

 

ニヤリと笑う航海長に霧先は微笑みながら言った。

そして、霧先は艦橋内の海図を見て作戦を復習し始めた。

丁度その頃、吹雪は周囲を警戒していた。

そして自分の目だけでは不足だと思った彼女は後方の翔鶴と瑞鶴に近寄った。

 

「翔鶴さん、瑞鶴さん。索敵機を出してもらえますか?」

「え?」

 

吹雪の突然の注文に二人は同時に間の抜けた声を出しながら疑問符を浮かべる。

 

「いいけど・・・作戦海域はまだ先で、『みらい』の電探もあるし・・・風上に進路を変えないといけないから遅れが・・・。」

「夕張さんたちには先行してもらいます。あくまでも念のためですから、大丈夫だと分かれば全速で追いつきます。」

「いいの?瑞鶴。」

 

自身を持って言う吹雪に翔鶴は少々不安気で瑞鶴に尋ねた。

 

「大丈夫デース!ブッキーは自分がやることの意味をちゃんと理解してる子ネー!」

「まぁそうだよね。」

「だから旗艦にしてあげてるのよ?ほんとは北上さんの方が似合うのに・・・。」

「皆さん・・・。」

 

Vサインで自信満々に言う金剛。

そこに相槌を打つ北上とちょっとずれている大井。

少なくとも心理はされていることがうかがえる。

 

「ま、戦闘そのものは旗艦のくせに勢いで突っ込みすぎたりで、ちょっとっていうか、かなり危なっかしいけどね。」

「あうぅぅ・・・。」

(瑞鶴さん。ブーメランブーメラン。)

 

瑞鶴の指摘に顔を赤らめ恥ずかしがる吹雪。

そして通信を介して聞いていた「みらい」艦橋内の乗組員全員が瑞鶴の言葉に対して、内心同じ事を想っていた。

 

「Oh・・・それは私も同感デース。」

『あー僕もです。』

「もー!金剛さんに工廠長までぇ~!!」

 

そこに金剛が両手にサムズアップをして賛同し霧先も申し訳なさそうに無線から言った。

吹雪は顔を赤らめたまま、二人に怒った。

そんな光景を見ていた翔鶴は少し吹きだした。

 

「どうしたの翔鶴姉?」

「・・・・何でもないわ。今出すわね?」

 

翔鶴はそう言って風上に合わせて弓を番える。

そして放たれた矢は光り輝き6機の偵察機へと変貌した。

 

「ここから南へ30度ごとに。」

「分かったわ。」

 

吹雪の指示を受けた翔鶴は艦載機へと指示を下す。

艦載機たちはその指示に従って偵察へと向かった。

 

「オーBeautiful・・・。」

「流石翔鶴姉!」

「何をしているの瑞鶴。あなたもよ?」

「えっ?」

「そうでしょ?吹雪さん。」

 

金剛と共に翔鶴の発艦に感嘆を漏らす瑞鶴。

だが翔鶴は瑞鶴にも発艦するように言った。

疑問符を浮かべる瑞鶴に説明するように翔鶴が吹雪を呼ぶ。

 

「はい!二段索敵でお願いします。確実を期したいんです。」

「・・・・・了解!」

 

吹雪の言葉の意味を理解した瑞鶴は矢を放ち、それが偵察機へと変化する。

無事発艦した索敵機は高度を維持したまま索敵に向かった。

 

「でも、いきなりこんな密の索敵をするなんて・・・・。」

 

密の索敵を不審に思う瑞鶴は翔鶴に尋ねる。

 

「何かあるかもしれない・・・・のですね?吹雪さん。」

「無ければ・・・・一番なんですけど・・・。」

 

翔鶴は薄々気づいていたらしく吹雪に言う。

吹雪も真剣な顔でこれからの事を危惧していた。

一方、「みらい」の対空レーダーには12機の索敵機が確認されていた。

 

「艦長、翔鶴より6機の艦載機の発艦確認。」

「よし、対空レーダーには異常はない。現出力を維持せよ。」

「了解です。」

 

みらいの報告を聞いた霧先は海図を見る。

珊瑚諸島海域は名の通り、諸島である為、イージス艦である「みらい」「ゆきなみ」には現在衛星が無く、敵が索敵できない不利な状況だ。

更に、例え索敵機が敵艦隊を発見できても攻撃できるかどうかが怪しくなってくる。

レーダーが想う様に作用しないこの海域ではイージス艦は多少、不利になってしまうのだ。

 

「念のため、SH60の発艦用意を。」

「了解、飛行科に通達します。」

 

SH60の発艦用意を通達するため、みらいはマイクを手に取る。

その横で霧先は目の前を行く「第五遊撃部隊」をじっと見つめていた。

丁度その時、吹雪はあることを思い返していた。

 

『深海棲艦が私たちの使っている暗号を!?』

『その通り、確証はないけどね。だけど、疑念がある以上は最悪のケースを常に想定しなければならない。つまり・・・・』

 

霧先からの言葉に驚愕する吹雪。

霧先は未だ真剣な表情で吹雪を諭した。

そのことを思い出した吹雪は思案した。

 

(必要なのは・・・私たちの作戦目標や、艦隊の動向が敵に漏れている可能性を考えること。・・・だとすれば、敵の仕掛けは・・・。)

 

吹雪が作戦上で重視しなければならないことを踏まえたうえで、行動をどうするかという考えに差し掛かった時にモールス信号の無線が入る。

 

「『MO攻略本隊』の祥鳳さんが!?」

「多数の敵艦載機による急降下爆撃で大破炎上中!?」

「現在もなお攻撃は継続中・・・されど敵空母の位置は不明なり、速やかな発見と撃破を求む、か・・・。」

 

吹雪、瑞鶴、北上が文を読み上げる。

損害状況はかなり酷い様子だ。

 

「これなのね?」

「はい、司令官は予想されていました。」

 

翔鶴の問いに吹雪は答えた。

それを聞いた瑞鶴は焦りだす。

 

「っ!翔鶴姉!もっと索敵機を出そうよ!早く敵の空母を見つけなきゃ!」

「落ち着いて瑞鶴。悪戯に数を出しても意味が無いわ。索敵は根気の勝負、慌てた方が負けよ。」

「翔鶴姉・・・。」

 

慌てる妹を翔鶴は静かに諭す。

瑞鶴は、悔しく思いつつも姉の言うことを聞いた。

 

「とはいっても、待つだってやっぱヤだよね。」

「Search and strike. 先に見つけた方の勝ちデスカ・・・。」

 

北上と金剛はそう言いつつ前を見る。

 

「頑張ってください、艦載機妖精さんたち・・・。」

 

吹雪は偵察機に搭乗する妖精たちに祈った。

その時、行動で航行していた「みらい」艦橋はモールス信号から送られた情報の所為で騒然としていた。

 

「砲雷長、予測位置は?」

『距離56㎞、SPYレーダーには諸島の所為で捉えられず!対空攻撃は不可能です!』

 

CICの砲雷長妖精からの報告を聞いた霧先は海図を見る。

彼は現在位置と艦隊の損害状況、編成からある結論に達していた。

 

「まさか・・・・だがまだ決まったわけじゃない・・・。」

 

距離を計算した霧先は即座にマイクを手に取ってゆきなみに連絡を取った。

 

「こちら霧先、ゆきなみさん、応答願います。」

『此方ゆきなみ。どうしました?』

「負傷者収容の為、『MO攻略本隊』の救援に向かってください。『伊152』は現地に到着次第、曳航解除。」

『了解、負傷者の救援に向かいます。』

 

通信が終了すると、霧先は再び海図を睨み始める。

 

(・・・・『ゆきなみ』と『伊152』が離脱することで本艦隊の戦力はかなり低下する。だが現状、これ以外の方法では『MO攻略本隊』への損害を軽減する方法が無い・・・。例えECMを起動しても多少の混乱位だろう・・・。最悪、特攻を仕掛けられれば・・・。)

 

霧先は最悪のケースを考えつつ、この海戦において少しでも損害を軽減する事を考えていた。

その頃、鎮守府では作戦指揮室にいる提督の元に尾栗と柳が訪れていた。

 

「今・・・なんと?」

「ですから、柳の言う通り、この作戦は珊瑚海海戦そのままなんです!」

「まさか・・・確かに編成は似ているが・・・。」

 

尾栗の言葉に言い淀む提督。

そこに柳が言葉を出した。

 

「損害状況は把握できますか?」

「あぁ、先程、霧先二佐から連絡があった。『MO攻略本隊』の祥鳳が爆撃を受けて大破炎上しているとな。」

 

その言葉を聞いた柳は時計を見た。

時計は1100を少し過ぎた頃を指していた。

 

「・・・・尾栗三佐、日付以外は史実通りです。日本時間の午前9頃、米軍レキシントン攻撃隊は『祥鳳』を発見。この時、翔鶴型と誤認した為、祥鳳は狙われることとなります。『祥鳳』はレキシントン隊SBD 28機の急降下爆撃は全て回避したものの、空襲中に零式艦上戦闘機3機を発進させた時点でレキシントン雷撃機隊・ヨークタウン攻撃隊の雷爆同時攻撃を受けました。排水量1万3000tの小型空母に爆弾13発・魚雷7本が命中。空母『祥鳳』は炎に包まれ、日本時間の午前9時31分に沈没しました。」

「確か次の日には・・・・!」

「はい、空母『翔鶴』が大破炎上します。日本時間の午前8時30分頃、ヨークタウン攻撃隊は空母「瑞鶴」と「翔鶴」を発見、しかし米軍は戦列を組むために上空を旋回。その間に「瑞鶴」はスコールの下に入り、「翔鶴」は「瑞鶴」からの旗艦信号がないため独自行動を余儀なくされ、両空母の間は8~9kmも離れました。ヨークタウン攻撃隊はスコールに隠れた「瑞鶴」ではなく、後方の「翔鶴」に狙いを定め、米軍はSBD 2機喪失と引き換えに「翔鶴」に450kg爆弾2発命中。結果、合計3発の450kg爆弾が命中した「翔鶴」は沈没こそしませんでしたが、飛行甲板は完全に使用不能となり、戦死者76、行方不明33、戦傷者114を出しました。」

「なら・・・翔鶴の危険が!」

「迫っていると考えられます。」

 

柳の言葉を聞いた提督と尾栗は動揺し始めた。

もし史実通りなら余計危険な事態に発展しかねない。

 

「提督!今すぐ霧先との連絡を!」

「無理だ。作戦の隠密の為に無線は極力封鎖している。霧先にもそう伝えたばかりで『特殊第一艦隊』『第五遊撃部隊』と、鎮守府間は無線封鎖中だ。」

「・・・・!」

 

尾栗は歯ぎしりをするしかなかった。

その様子を見た柳は静かに言い始めた。

 

「確かに史実通りなら翔鶴の損傷は免れず、祥鳳も撃沈されます。ですが、この作戦に登場するはずの駆逐艦『有明』『夕暮』『追風』『朝凪』が存在しません。その上、重巡『妙高』『羽黒』、駆逐艦『曙』『潮』『睦月』『弥生』『望月』『漣』は出撃していませんし、史実にはいない『みらい』『ゆきなみ』『伊152』がいます。史実とは違う道を歩むことも十分に考えられます。」

「・・・・・・霧先を信じるしかないのか。」

 

尾栗はその場に立ち尽くした。

丁度、珊瑚諸島上空では翔鶴と瑞鶴の索敵隊が偵察を行っていた。

その時、妖精はあるものを発見する。

 

「天気がかなり崩れてきてる・・・これじゃ艦載機たちも・・・。」

 

瑞鶴が今後の事を心配し始めた時、通信が入る。

 

「ッ!四番機より入電!『我、敵空母機動部隊を発見す。編成は空母1、重巡1、軽巡2、駆逐2の計6隻。』。」

「翔鶴さん、瑞鶴さん!」

 

翔鶴からの報告を聞いた吹雪は二人の名を呼ぶ。

 

「いくわよ瑞鶴。」

「はい!」

 

翔鶴は瑞鶴を引き連れ即座に最大戦速まで機関を動かす。

そして矢を放ち、九九艦爆隊を発艦させた。

『みらい』でもその情報は伝わっていた。

 

「CIC、艦橋!直ちに四番機の方角を調べろ!」

『此方砲雷長!本艦左12度、距離65000の島影から深海棲艦隊出現!空母1、重巡1、軽巡2、駆逐2の計6隻、偵察機の報告通りの編成です!』

 

霧先は砲雷長の報告を受け、みらいに指示を下す。

 

「みらい!対空、対水上戦闘用意!」

「武鐘発動します!対空、対水上戦闘用意!!」

 

艦内放送で流れる鐘とみらいの声。

妖精たちは次々と戦闘配置に付き、準備を行う。

 

「艦長、空母『翔鶴』『瑞鶴』より艦爆隊が発艦しました。」

「視界でも確認。引き続き敵空母を監視、対空見張りを厳となせ!」

「了解!」

 

霧先とみらいの指示によって戦闘準備は万全。

いつでも攻撃できる状態となった。

時を同じくして九九艦爆隊は敵艦隊を補足し爆撃体勢に入っていた。

指南改正艦隊もそれに気づき、護衛の駆逐艦らが対空砲と撃つ。

しかし、数機撃墜するも、別の艦爆によって爆撃を受ける。

空母ヲ級は回避行動を取り、発艦させようと頭の艤装の口らしき部分をあける。

だが、そこに艦爆が爆弾を投下、丁度発艦させようとした敵艦載機に命中し内部爆発を起こさせた。

これによって空母ヲ級は中破し、発艦が不可能となった。

その報告はすぐに「第五遊撃部隊」に伝えられた。

 

「攻撃隊より入電!空母一隻を中破!」

「よーし!先手を打ったわ!これで敵は艦載機を出せない!」

 

翔鶴からの言葉で瑞鶴を筆頭に全員が喜ぶ。

吹雪は報告を聞いた後、指示を出した。

 

「それでは、私たちは残敵の掃討に向かいましょう。但し、空母のお二人は、このまま駐屯地MOへ向かって夕張さんたちの支援隊に追いついてください。」

「え?でも私まだ戦えるのに・・・・。」

 

自分たちだけ別行動が言い渡された瑞鶴は少々不満げに言った。

吹雪は訳を説明する。

 

「私たちの作戦目標は、あくまで駐屯地MOです。お二人には、まだたくさんお仕事をして頂かなくちゃいけませんから!」

「ソウソウ!ここからは、私たちにもFlowerをtakeさせて下サイネー!」

「・・・・分かったわ。でも直援機だけは出させて?それくらいは良いでしょ?」

「お願いします!」

 

訳を理解した瑞鶴は一応念のために直援機を出すことを提案する。

吹雪に承諾してもらってから、瑞鶴と翔鶴は矢を放ち、艦載機を発艦した。

 

「後、再度合流出来るまで、無線封鎖を徹底しましょう。」

『じゃあ後の護衛は僕たちが請け負うよ。』

「お願いします工廠長。それじゃあ、行きます!」

 

吹雪ら四人は機関を稼働させ、残党の掃討に向かった。

そして、その場には翔鶴と瑞鶴、『みらい』が残された。

その時レシプロ機の音が聞こえてきた。

翔鶴と瑞鶴がその方角を見ると、偵察機たちが帰還してきた。

 

「あの子達・・・!」

 

ゆっくりと高度を下げてきた艦載機は脚を出してから、甲板へと着陸。

ワイヤーによって急速に減速し、無事着艦した。

 

「お疲れさま。よく頑張ったわね。」

 

翔鶴は矢に戻った艦載機を労わりながら矢筒にしまった。

 

「スコールが近づいてきたわ。追いつかれないうちに行きましょう。」

「うん。」

 

スコールが近づいてきている為、翔鶴は駐屯地MOに向けて、瑞鶴、「みらい」と共に機関を始動させた。

スコールから逃げるように航行する彼女らは雑談を楽しんでいた。

 

「あぁ~あ!でも加賀に見せてやりたかったなぁ!私たち五航戦の艦載機が敵の空母を撃破したところ!」

「瑞鶴は本当に仲良しになったのね。私も嬉しいわ。」

「うぇっ!?無い!無い無い無い!無いよそんなの!私はあんなお高く留まったカッチカチ釣り目の一航戦なんて、大っ嫌いなんだから!」

 

瑞鶴が加賀の事を良く話すため、翔鶴が少し瑞鶴をからかう。

瑞鶴はこれまでないくらいに焦り、一生懸命に否定した。

 

「ふふっ、ハイハイ。」

『瑞鶴さん、そんなに否定すると余計怪しいですよ。』

「何よ友成!爆撃されたいの!?」

『おぉ怖い怖い。部屋を対爆撃仕様に加工しないと!』

『艦長殿も大変でございますな!』

 

瑞鶴の否定ぶりに霧先も便乗してからかう。

そして更に、航海長妖精の言葉で艦橋内に笑いが起こった。

だがその楽しい時間も永遠では無かった。

 

「・・・!?本艦上空に国籍不明機発見!!」

 

CICでのレーダー要員からの報告で艦内は一気に大騒ぎとなった。

 

「何故発見できなかった!?」

「分かりません!国籍不明機から小型目標分離!国籍不明機、急速上昇!翔鶴に向って爆弾を投射した模様!」

 

レーダー要員からの報告により、CICに砲雷長の怒声が響き渡る。

その後、翔鶴に機銃と爆弾の雨が降りかかった。

 

「きゃあぁぁ!!」

「翔鶴姉!!どうして?この艦載機は何処から来たの!?」

 

突然の攻撃に、翔鶴はなすすべなく攻撃を受け、瑞鶴は周囲を確認する。

その攻撃は艦橋からもよく見えており霧先はCICに怒声を上げていた。

 

「CIC、艦橋!!何故発見できなかった!!」

『こちら砲雷長!レーダー出力を弱めていた上、高高度で飛行していた為に捉えきれなかったと推測します!』

「他に報告は!?」

『本艦左23度、距離45000に敵艦隊補足!深海棲艦ヲ級を中核とする艦隊です!!』

「武鐘発動!対空戦闘用意!シースパローは!?」

『敵機が近すぎます!シースパローは難しいかと・・・・。』

「ならCIWSと主砲で迎撃!」

『了解!』

 

霧先は大声を出しながらCICへと指示を下す。

その間にもヲ級は次々と艦載機を発艦し、機銃を翔鶴と「みらい」に浴びせる。

 

「ッ!よくも!」

 

瑞鶴は弓を構えて艦載機を発艦しようとするが、敵機の銃撃や爆撃で想う様に攻撃できない。

 

(直援機も出せない・・・!)

「瑞鶴!」

 

直援機を出せないことに苛立つ瑞鶴を翔鶴が呼んだ。

 

「私を置いて逃げなさい!」

「そんなの・・・・出来る訳ない!!」

 

自分を置いて逃げろと言う翔鶴の言葉を瑞鶴は即座に否定して、翔鶴を抱えて最大戦速で離脱しようと試みた。

『みらい』もそれに追随して航行する。

だが、後ろから敵艦載機も追いかけてくる。

 

「野郎ども・・・ケツばっか狙ってくれるぜ!」

『艦橋、CIC!緊急報告!後部CIWS、残弾数ありません!!』

「機関一杯!回避行動を取り続けろ!」

『了解!機関一杯、回避行動!!』

 

敵艦載機が近くを飛行している為、回避行動を取り続ける「みらい」。

だが、後部CIWSの残弾が無くなってしまったため、後ろに銃撃痕が数多く出来始める。

同じく回避行動を取る瑞鶴はどうにかこの状況を変えられないかと考えていた。

 

(「みらい」が攻撃していないってことは何かしら異常が出ているはず・・・。なら、吹雪達に・・・・駄目だ、無線封鎖してるし他の敵まで呼び寄せかねない・・・。一瞬で良い!艦載機を出すチャンスがあれば!どうする?どうすればいい!?)

 

必死に考える瑞鶴。

ふと、その時に加賀の言葉が、彼女の脳裏をよぎる。

 

『あの絶望的な瞬間に見えた僅かな希望にかけただけ。』

「ッ!」

 

その言葉を思い出した瑞鶴の目にあるものが映る。

今にも青い空を黒々とした雲で覆わんとしているスコールだった。

 

(絶望な瞬間の・・・・僅かな希望!)

 

微かに割けた雲の割れ目から光が降り注いだ。

その様子を見た瑞鶴はある作戦を思いつく。

 

「翔鶴姉、スコールに入ろう!そしたら向こうも追って来れない。」

「でも、私たちだって発着艦が出来なくなるわ。それより、私を囮にして・・・。」

「大丈夫、最悪の場合は『みらい』を頼れる。それに、永遠に続くスコールはない。必ず切れ目がある。その一瞬があれば発着艦は可能だよ。」

「でも、やっぱり無理よ!スコールを出た瞬間に敵の餌食に!」

「きっとチャンスは来る。信じよう、翔鶴姉。」

「・・・・いきましょう!」

 

瑞鶴の事を信じることにした翔鶴は、わずかな希望にかけることにした。

作戦を決めた瑞鶴は霧先に連絡した。

 

「友成!これからスコールに入って敵の攻撃をかわすから!」

『了解!僕らはこのまま追随します!』

 

短い通信の後、瑞鶴と「みらい」は最大線速でスコールへと突入し、敵艦載機を交わすことに成功した。

 

「クッ、艦娘フゼイガ・・・・回リ込メ!」

 

ヲ級は僚艦の深海棲艦に指示を出し、瑞鶴らを追うことにした。

その頃、吹雪らは敵艦隊の残党掃討を終えて、一息ついていた。

 

「ふぅ、空母が一隻で良かったなぁ・・・司令官がおっしゃっていた最悪の事態はこれで・・・。」

 

気持ちが緩んだ吹雪だったがすぐにその気分は失せる。

吹雪に最悪の事が浮かんだのだ。

 

(最悪?これが!?敵が本当にこっちの作戦を知ってたとしたら・・・みらい先輩と作戦の重要性や!)

「まさか!」

 

最悪の事態に気づいた吹雪は即座に転身し、皆を呼びに行った。

その時、鎮守府にいる加賀は、何か感づいたのか、不安そうな面持ちでタオルのウサギを突いていた。

そして、雷が鳴り、荒れ狂う海を瑞鶴と翔鶴、「みらい」は必死に進んでいた。

 

「応急指揮所!艦内各部の損傷は!?」

『後部に多数の銃弾が命中!その際、後部CIWS、イルミネーターレーダー2機が破損!物理的損傷により修繕不能です!』

 

応急指揮所の報告を受けた霧先は拳を握り締めた。

後部CIWSとイルミネータレーダー2機が損傷した今、「みらい」の対空迎撃能力は大幅に損失したと言っていいだろう。

その現状を理解した霧先は瑞鶴に通信を行う。

 

「瑞鶴さん、『みらい』のイルミネーターレーダーの破損が確認されました・・・『みらい』の防空能力のほとんどが削がれたと言っても良いでしょう。今後、敵艦載機が大編隊で来た場合・・・・『みらい』では対処のしようがありません。」

『・・・・分かったわ。対艦戦闘は可能なのね?』

「えぇ・・・ハープーン発射管やVLS、対水上レーダーには異常が無いので対艦戦闘は可能です。」

『それじゃあ対艦攻撃と高角砲での対処をお願い。』

「了解、準備しておきます。」

 

瑞鶴との通信を終えた霧先はすぐに戦闘準備の指示を始めた。

そして数分後、スコールの切れ目が見えてきた。

 

「翔鶴姉!」

「えぇ。」

 

瑞鶴は姉と共にその切れ目へと向かった。

だがそこにはすでに敵艦隊が待ち伏せをしていた。

 

(もし無理でも・・・最後に一矢報いて見せる!!)

 

最後の最後まで抗うことを心に決めた瑞鶴は弓を構える。

そこに姉の瑞鶴が寄り添った。

 

「タガガ空母二隻ト砲ガ一門ノ重巡デ何ガ出来ル。オ前達、ヤレ。」

 

ヲ級の指示で駆逐艦や軽巡が砲を構える。

だが瑞鶴たちは構わず、そのまま敵艦隊へと向かい、スコールを抜けた。

まさに今、砲撃が行われんとした時、深海棲艦隊が銃撃を受けた。

 

「グッ!何事ダ!?」

 

ヲ級が狼狽えて空を見上げると、翔鶴航空隊所属の識別帯を身にまとった零戦隊が航空戦を繰り広げていた。

 

「あの子達!」

「翔鶴姉!」

「えぇ!」

「いっけぇ!!!!」

 

瑞鶴が弓を放ち、艦攻隊を発艦。

それが確認された「みらい」艦橋では指示が下った。

 

「対水上戦闘!CIC指示の目標!主砲、撃ちぃ方ぁ始めぇ!!」

「トラックナンバー1648、駆逐イ級、主砲、撃ちぃ方ぁ始めぇ!!」

 

艦攻が迎撃されるのを軽減するため、「みらい」は高角砲を持った駆逐艦を重点的に攻撃する。

 

「お願い!一発だけでも良い!五航戦の意地を見せて!」

 

瑞鶴は願った。

しかしその願いはかなわず、生き残った敵軽巡の対空機銃による銃撃で全ての艦爆が迎撃されてしまった。

最早、「みらい」しか攻撃手段が残っていない状況で万策尽きた時、彼女らに助けが来た。

 

「はぁああああああ!!!」

 

吹雪だ。

彼女はスコールを突き抜けて、敵艦隊に砲撃。

着弾こそしなかったものの、敵艦隊の砲撃を一時的に中断させるに至った。

そして吹雪らに付随して残っていた艦載機がヲ級に爆撃を仕掛け、被弾はしなかったが、僅かながら隙を作る。

 

「今!!」

 

訓練の成果が出た吹雪はその隙を見逃さず、砲撃を行い、ヲ級の目を潰した。

更に追撃を行おうと砲を構えるが軽巡と駆逐艦の砲撃によって、それは妨げられた。

 

「Fire!!」

「海の藻屑と!」

「なりなよ~。」

「皆!」

 

吹雪に続いて金剛、大井、北上が砲撃と雷撃を行う。

それを見た霧先は、みらいに指示を出した。

 

「みらい、ヲ級に向け砲撃!」

「了解!主砲、撃ちぃ方ぁ始めぇ!!」

 

みらいの声と共に主砲弾が発射される。

ヲ級がそれに気づいたときには大井と北上の放った魚雷も近づいてきていた。

だがそれをリ級が捨て身で防いだ。

難を逃れたヲ級は艦娘達と「みらい」を睨みつける。

 

「クッ、艦娘共メ・・・・!」

 

苦虫を食い潰したような表情をしたヲ級は勝てないと踏み、その海域を離脱するために、スコールの中へとその姿を消した。

 

「ヲ級、転進し離脱していきます。艦長、どうなさいますか?」

「・・・・・僕らは自衛隊だ。相手に明確な攻撃の意思が無いのなら無用な攻撃はしない。対水上戦闘用具収め。」

「了解、対水上戦闘用具収め!!」

 

こうしてヲ級の奇襲作戦は失敗し、吹雪らは勝利を収めた。

それは鎮守府にも報告された。

 

「『特殊第一艦隊』旗艦、『みらい』より入電!『本艦隊及び第五遊撃部隊、珊瑚諸島海域にて敵機動部隊と遭遇。空母ヲ級を一隻大破、一隻轟沈。尚、空母祥鳳は本艦隊所属「ゆきなみ」に収容し治療中、本艦隊及び第五遊撃部隊は空母翔鶴が大破、「みらい」CIWSとイルミネータ―レーダーのみの損傷、人的損失はなし。』!」

「やったか・・・・。」

「やっぱり、霧先はやってくれたぜ。」

 

一人も欠けることが無かった報告を受けた提督と尾栗は安堵した。

また、その報告は利根によって、入渠中の赤城と加賀に伝えられた。

 

「ヲ級を大破に撃沈・・・みらいの力を借りずに?」

「やりましたね、あの子達。」

「はい。でも、それほど驚くことではないのかもしれません。」

 

赤城が吹雪らを称賛すると、加賀は静かに言いだした。

 

「だって・・・・みんな優秀な子達ですから。」

 

加賀も実は五航戦の事を認めていたのだ。

ただ、それが表に出せないだけで。

 

 

 

 

その後、吹雪らは夕焼けの海を鎮守府に向けて駆け抜けていた。

その後方を行く『伊152』曳航する『ゆきなみ』。

その艦内に霧先の姿があった。

海自の作業服と救命胴衣、識別帽を身につけた彼はある部屋を目指して歩いていた。

 

「あら、司令。」

 

その途中、偶然にも霧先は伊152に出くわした。

声を掛けられた霧先は答えた。

 

「伊152さん。どうされたんです?」

「どうしたもこうしたも暇で仕方ないんですよ。今回の作戦も駆逐艦数隻沈めただけですし・・・曳航されてるのもつまらないんですよ?」

「すみません・・・・速度の関係上仕方が無いものでして・・・・。」

 

口を尖がらせて言う伊152に

霧先は申し訳なさそうに言った。

 

「まぁいいです。古いのは分かっていますから。」

 

そう自虐気味に言う伊152に霧先は言葉を掛ける。

 

「でも、経験も多いでしょう?その経験こそが、伊152さんの武器ですから自身を持ってください。では、僕は治療中の翔鶴さんと祥鳳さんを訪ねますので。」

 

霧先はそう言い残して敬礼をした後、その場を去った。

 

「・・・・・本当に司令は優しいですね。」

 

伊152はそう呟き、再び歩き始めた。

伊152と別れた霧先は、治療室にやって来た。

中に入ると、丁度翔鶴が治療を受けているところだった。

服が破損している為、翔鶴は海自の作業服を身にまとっていた。

 

「衛生士妖精さん。どうです?」

「特に大きな怪我はなく擦り傷などだけですね。」

「ごめんなさい友成君・・・・。」

「いえ、大丈夫ですよ。今回の作戦は僕の練度不足も影響しています。何かあったら僕が責任を取りますから。」

 

そう言って笑う霧先に翔鶴は見惚れた。

 

「そう言えば作業服を着ているんですね。」

「あっ、はい。服が破れてしまっているので・・・。」

「そうでしたか・・・これを被ればもっといいと思いますよ?」

 

霧先は自分の識別帽を脱ぎ、翔鶴にかぶせた。

翔鶴は突然の事で驚いている。

 

「中々似合いますね!翔鶴さんが綺麗だから余計映えるんでしょうけど。」

「綺麗・・・・・。」

 

笑いながら言う霧先に翔鶴は顔を真っ赤にし始めた。

それに気づいていない霧先は衛生士妖精に声を掛ける。

 

「衛生士妖精さん。祥鳳さんは?」

「あぁ・・・奥にいますよ。会うんでしたら、もう意識は回復しているので。」

「ありがとうございます。」

 

霧先は短く礼を言って奥の方へと向かった。

奥のベットには綺麗な黒髪の女性が横たわっていた。

その女性は目の前にいる霧先を不思議そうに見た。

 

「あなたは・・・?かなりお若いように見えますが・・・・。」

「どうも、横須賀鎮守府工廠長兼特殊艦隊司令官を務めております。霧先友成中佐です。一応、年齢は17ですので・・・・。」

 

霧先の肩書を知った女性は驚き飛びあがった。

 

「も、申し訳ありません霧先中佐殿!自分は呉鎮守府所属の軽空母『祥鳳』です!」

「あぁ!まだ安静にしておかないとダメですよ。もし、祥鳳さんに万が一のことがあったら大変ですからね。」

「あっ・・・申し訳ありませんでした・・・・。」

 

起き上がって自己紹介をする祥鳳を霧先はゆっくりと諭しながら寝かせた。

祥鳳はほんのりと顔を赤らめ、霧先の顔を見て謝りながらゆっくりと横たわる。

それを確認した霧先は話し出した。

 

「どうですか?本艦の乗り心地は?」

「すごくいいです。海の上だということが分かっていてもそんなに揺れない感覚になれてないですが・・・・。」

「そうですか。一応自分は本艦の艦長ですので何かあったら自分か本艦乗組員の妖精にお申し付けください。あなたは本艦の客人です。」

「私が・・・ですか?」

「えぇ、それでは自分は指揮に戻らねばなりませんのでこれで。」

 

霧先は祥鳳に敬礼をしてその場を後にした。

 

「海上自衛隊?」

 

彼の後姿を見た祥鳳は救命胴衣に書かれた文字に疑問符を浮かべるが特に気にしないことにした。

 

「・・・・それより中佐さん・・・・優しかった・・・・・。」

 

なぜなら既に祥鳳の頭は優しい霧先の事で一杯だったからだ。




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