無茶苦茶面白いです。
吹雪を5日で改二にする位には。
アーケード版も4月末稼働ですし劇場版の前売り券も4月末にありますね。
アニメ二期もあるので自分は今から楽しみです。
「ふぅ・・・まさに夏って感じだねぇ。」
「なんせ南の島ですから。ここで厚着はきついですよ。」
溜息をつきながら額を拭う北上に霧先が答える。
彼も暑さから作業服の袖をまくっている。
「北上さん!日差しは大丈夫ですか?よかったら、そこの茂みの中で二人で・・・。」
大井が茂みを指さすがそこから大きな蛇が木を伝って降りてきた。
「ひぃい!蛇ぃ!!」
余りにも突然の遭遇だったので大井は悲鳴を上げながら逃げ出す。
その状況を見て霧先と北上は苦笑いをせざるを得なかった。
「本当にここでいいんですよね?」
「相変わらずブッキーは心配性ネー!No problemデース!・・・・maybe。」
「めいびー?」
「たぶん、もしかしたらの意味を持つ英単語だよ。」
「ダメじゃないですか!なんでそんな不確定なんですか!!」
誰もいないことに不安感を覚える吹雪は金剛に聞く。
金剛は自信満々に言ったがボソッと英単語を呟く。
その英語の意味が分からない吹雪に霧先が補足を加えると吹雪は怒りだした。
その時、突然茂みが揺れ始めた。
霧先は警戒の為、89式を構える。
茂みから出てきたのは赤いミニスカートに白と赤を基調とした特徴的な服を纏い、小豆色の髪を後ろの高い位置で結った女性・・・「大和」だった。
「皆さん初めまして。大和型一番艦大和です。」
にこやかな笑顔で挨拶する大和を見て霧先は89式を下した。
「大和さん、せめて声はかけて下さいよ。下手したら間違って撃ってましたよ?」
「ふふっ、霧先二佐ならそのようなことは無いと思いますよ?」
「どこからそんな自信が来るんだか・・・。」
ため息交じりに鉄帽を少し持ち上げる霧先を見て大和は微笑んだ。
「それでは皆さん、これから基地にご案内しますので。」
「あっはい・・・。」
大和に手招きをされ、霧先と第五遊撃部隊は獣道を大和に案内されながら進んだ。
そして歩くこと数分、一行は開けた場所に出た。
そこには立派な洋風のレンガ建築物が出来上がっていた。
一目で頑丈に思える出来だ。
「す、すごい!」
「FS作戦遂行のために作られたとても重要な基地です。鎮守府の皆さんも、もう到着していますよ。」
「本当ですか!?」
大和の言葉に気分が盛り上がる吹雪。
そんな彼女に声がかけられた。
「吹雪ちゃん!」
「睦月ちゃん!夕立ちゃん!」
声を掛けてきたのは睦月だった。
後から夕立も続いてやってくる。
「いつ着いたの?」
「さっきだよ。赤城先輩や加賀さんたちも一緒なの!」
「本当!?」
赤城や加賀がやって来ていると聞いて吹雪は気分が盛り上がる。
「今回の作戦、吹雪ちゃんの活躍で成功したからトラック諸島への航行が楽になったぽい!」
今回の戦力派遣の成功効率向上に一役買ったことを夕立が褒めると、吹雪は顔を赤らめて否定した。
「ううん、みんなが頑張ってくれたおかげだよ。瑞鶴さんと翔鶴さんなんか特に・・・あれ?」
吹雪が振り返ってみるとさっきまで居たはずの二人がいなくなっている。
それに気づいた大和が吹雪に教えた。
「翔鶴さんと瑞鶴さんは鎮守府から指示が来ているので、一旦長門さんのところに行きましたよ。」
「そうだったんですか。」
「皆さんはまず、お食事にしましょう。こちらです。」
吹雪達は大和についていき、別の建物へと案内された。
そこもかなり頑丈なつくりで安心感が持てる建物だった。
「さぁ、どうぞ。」
大和が扉を開けて皆を中に招き入れる。
部屋の中には長いテーブルが置かれ、高級そうな椅子も置かれていた。
テーブルの上にはろうそくや皿、ナフキンなどが置かれていて、更に高級感を出していた。
その数多く置かれた椅子のうちの一つを使って食事をする者がいた。
吹雪のあこがれの赤城だ。
「赤城先輩!」
「吹雪さん。元気そうですね。」
「はい!」
赤城は元気そうな吹雪を見ると再び手を動かし大きなステーキを食べる。
いったい何キロあるのだろう。
見てるだけで胸焼けしそうなステーキを赤城はおいしそうに口に運ぶ。
その横には大盛りのご飯が準備されている。
「はぁ~さすが赤城先輩だなぁ~食事する姿も凛々しいぃ~~。」
「そう?」
「いっぱい食べる人は素敵だけど・・・流石にこれは。」
「珍しく大井っちと友成っちの意見が一致したね~。」
赤城の食事風景を見てキラキラとかかやくような顔になる吹雪だが、大井と霧先はそうは思えなかった。
言葉は違えど意見は一致していることに北上は少し驚いた様子だ。
「さぁ、私たちもdinner timeの時間ネ!」
「時間を二回も言う必要性は・・・・。」
霧先は金剛の言葉に戸惑った。
そんな霧先を見て少し噴出した大和は準備していたものを教えることにした。
「今日は皆さんのために、腕によりをかけたコース料理をご用意しました。」
「コース?」
「西洋料理の正餐で供される一連の料理のこと。前菜、スープ、魚料理、肉料理、ソルベ、ローストの肉料理、生野菜、甘味、果物、コーヒーの順で出されるんだ。前菜やソルベを省いたり、肉料理を一種にする場合もあるけどね。」
「へぇ~物知りですね!」
「実は一度だけコースを食べたことがあって教えてもらったんだよ。」
大和の言うコース料理を理解できなかった吹雪に霧先が教え、彼女は感嘆を漏らす。
霧先は苦笑いをしながら理由を説明した。
「流石は霧先二佐ですね。前菜までは時間があるので、まずは飲み物はどうですか?」
大和がテーブルに置かれたベルを鳴らすと、メイド服姿の妖精が備え付けの冷蔵庫を開けた。
冷たい冷気が白くなって冷蔵庫から漏れ出す。
その中にあるのは大和ラムネと書かれた、大量の瓶だった。
「おぉ~!」
全員が声を上げる。
これだけ大量のラムネはそうそう見れないからだろう。
「すごい・・・これ、ラムネですか?」
「はい、大和特製ラムネですよ。どうぞ。」
吹雪が尋ねると大和は答えた。
そして大和に勧められて、全員がラムネを手に取る。
「冷たくて気持ちいいわ・・・まるで・・・。」
何かを言う大井に北上と霧先が引いたのは言うまでもない。
大井から少し離れた霧先は、慣れた手つきで中のビー玉を押し込んでからラムネを飲む。
吹雪と金剛も見よう見まねでビー玉を押し込んでラムネを飲む。
「プハー!美味しいデース!」
「甘みの中にある酸味が炭酸とマッチしていいですね。こりゃ柿崎が羨むな。」
おっさんのような飲み干し方をする金剛。
その隣で霧先は味を楽しみつつ、元の世界で艦艇&艦これオタクだった友人が羨ましがるだろうと思い、微笑んだ。
「では皆さん、食事にしましょう。」
大和が再び手に持っていたベルを鳴らすと、別のメイド服の妖精さんが布で覆われた何かから布をとる。
現れたのは銀色の入れ物で、大和が蓋を取ると中には金色色のコンソメスープが大量に入っていた。
「コンソメスープになります。」
「おぉ・・・本格的ネー!」
「とても基地とは思えないね~。」
「むしろ、ホテル?」
「ホ、ホテル!?ホテルに北上さんと二人~?」
「・・・・。」
基地とは思えない様子を北上は声に出す。
すると、次の吹雪の発言から大井が妄想の世界にダイブ。
北上はこっそりと大井から身を遠ざけた。
「ブッキーも大井も発音が違うネーホテルではなくhotel・・・。」
「金剛さん、あの・・・。」
発音が違うと、金剛が教えなおすためにホテルを連呼。
流石にまずいと思った霧先が、止めに入ろうとしたが遅すぎた。
「ホテルじゃありません!!」
大和の大声に全員がびっくりして大和のほうを見る。
唯一、霧先だけが申し訳なさそうな顔をしていた。
「あっ・・・い、いえ、ごめんなさい。では、ごゆっくり・・・。あっ、霧先二佐は作戦指揮室に来てほしいと長門さんが言っていましたよ。それでは・・・・・」
大和はそう言い残すと食堂を去っていった。
残された4人は茫然としていた。
「・・・吹雪、僕はちょっと着替えてくるよ。」
「えっ、わかりました工廠長。」
霧先は吹雪に着替えてくることを言うと、持っていた89式を負い紐で担いで食堂を出て行った。
用意されていた部屋に到着すると、すぐに運び込まれていた荷物の中からいつも通りの服を取り出して着替えた霧先は、腰にベルトを巻いて、9mm拳銃をホルスターに入れる。
「さて、さっさと行かないと長門さんから説教だ。」
霧先は自分の持つものを確認した後、急いで部屋を飛び出した。
霧先が作戦指揮室に向かっている頃、翔鶴と瑞鶴は入浴施設で露天風呂を楽しんでいた。
「はぁ~ぁ、作戦が終わったからこれで翔鶴姉とはまた別々の部隊か・・・。」
「仕方ないわ、それぞれの部隊で五航戦の誇りをもって戦いましょ?」
「うん。」
姉と別々になるという通知を提督から言い渡された瑞鶴は気分が落ち込んでいた。
励ましても調子が戻らない瑞鶴に、翔鶴はある話題を話した。
「そういえば、赤城さんと加賀さんも、修理が完了して『ゆきなみ』に乗ってこの島にいらっしゃってるって聞いたけど・・・。」
「ふぅ~ん、そうなんだ。」
瑞鶴はそういうと再び黙り込む。
翔鶴はどうしたら妹が元気になるのかを考え続けることとなった。
一方、霧先は道中に妖精さんに道を聞きながら作戦指揮室にたどり着き、長門に航海の際に起こった出来事を報告していた。
本来、長門は霧先にとって部下に当たる存在なのだが、提督がトラック諸島内では最高指揮権を長門に委ねているため、霧先は彼女の指示に従う立場となる。
「報告は以上です。」
霧先の報告を聞いた長門はため息をついた。
「やはり、こちらの動きは読まれていたか。」
「或いは偶然か・・・どちらにせよ、今回の戦闘。更には前回の逃亡したヲ級。これらによって少なからず、本艦の情報は流出したでしょう。『みらい』の存在が知られた以上、何らかの対策は取ってくるはずです。」
霧先の言葉に長門は悩む。
最高指揮権を託されている以上、彼女の裁量で勝敗は決まる。
「翔鶴は先の戦闘での疲労もあるから・・・今後の戦闘にはできるだけ参加させないで休養を取らせたほうがいいわね。」
「自分も同意見です。」
「戦術的勝利、戦略的敗北か・・・。」
陸奥と霧先の言葉を受けて、長門は海図をにらむ。
「どうするつもり?MOを確保して補給路を確保。この前線基地へ戦力を結集し、FS作戦を進める・・・・・という目論見だったはずだけど?」
「補給路が伸び切っている以上、拠点MO攻略は必須だ。態勢が整い次第、再度攻略に向かうことを提督に進言する。」
「そうなるわね・・・。」
陸奥と長門は最善であるだろう作戦を出す。
補給線が伸びている以上、長期戦は難しくなる。
それを「歴史」として知っている霧先は、「歴史」を軍人として体験していた。
「でも、それまではしばし、この南の島で休息。ちょうどよかったかもしれないわね、皆には。」
「陸奥さんの言う通り、ガス抜きは大切です。現にみらいも、少しだけ疲労の色が見え始めていました。」
「ならちょうどいいな・・・みらいとゆきなみは今回の作戦に重要だからな。」
長門らが作戦指揮室で話し合っている頃、艦娘たちは食堂で豪勢な料理を堪能したところだった。
食堂から出て、艦娘寮に向かう吹雪は満足げな表情だった。
「はぁ~お腹一杯。」
「でしょ?睦月も美味しくていっぱいお替りしちゃった。」
食事の感想をお互いに述べる吹雪と睦月。
その時、前を歩いていた赤城と加賀の会話が聞こえてきた。
「ふぅ、上々ね。明日の朝ごはんも楽しみです。」
「そうですね赤城さん。」
それを聞いた睦月は小さな声で吹雪に話しかける。
「赤城先輩もおいしかったって。」
「部屋も食事に負けないくらいすごいっぽい!ベットフカフカっぽいよ!」
「本当?」
興奮気味で言う夕立に答える吹雪だったが、彼女にはある疑問があった。
「でも、どうしてこんなに至れり尽くせりなんだろう。というか大和さんって何者?」
吹雪が疑問を口にしたのを聞いていた加賀は立ち止まって三人のほうを見る。
そして吹雪の疑問に答えた。
「一言でいうのであれば、史上最強だった艦娘。」
「えぇ!?そうだったんですか!?」
加賀の言葉に吹雪は驚愕した。
赤城が話を続ける。
「私は実物を近くで見たことはありませんが・・・46㎝三連装砲を装備しています。」
「46!?」
「そんな装備なら、深海悽艦なんてぽいぽいぽ~い!」
「そうですね。」
睦月が驚きの声をあげて、夕立が手を使って表現しながら言う。
赤城も夕立の言葉に賛同する。
そこに加賀が付け加えた。
「ただ。」
「ただ?」
吹雪は言葉を繰り返して言葉を待つ。
その次に出た加賀と赤城の言葉は三人を驚愕させた。
「妹の武蔵もですが実戦には一度しか出たことがありません。」
「それどころか存在が重要であるがゆえに、その一度を抜いて艦娘と海に出たことはありません。」
「一度しか海に・・・?」
「そんなことが・・・・。」
三人が大和のことを聞いていると、睦月が思い出したように言い出した。
「そういえば加賀さん、さっき大和さんが存在が史上最強『だった』艦娘って言ってましたけど・・・その上が?」
「えぇ・・・あなたたちがより身近に感じている人物。彼女たちが大和より強い可能性がある。」
「彼女たちって誰ですか?」
吹雪が聞くと赤城が答えた。
「日本国海上自衛隊、横須賀基地所属、ゆきなみ型護衛艦三番艦『みらい』。そして、その艦長、霧先友成中佐よ。」
「みらい先輩と工廠長がですか!?」
吹雪は驚きのあまり大声を上げた。
赤城と加賀は静かに頷いた。
「大和さんの妹に当たる武蔵さんを中破に追い込み、加賀さんも大破まで追い込みました。」
「正直、あの時は悔しかったわ。たかだか巡洋艦一隻と高校生に負けたという敗北感がね。」
「工廠長さんってすごい人だったんだ。」
赤城と加賀の言葉に睦月は驚くしかなかった。
吹雪と夕立もあっけにとられている。
「それに・・・・みらいさんと大和さんは知り合いのようです。」
「知り合い?お二人って生まれた時代が違うんじゃ?」
吹雪がつじつまが合わないことに疑問符を浮かべる。
赤城も同じように思っていた。
「そうです。ですがどうも聞く気になれないんです。」
「なら工廠長に・・・・。」
吹雪が意見を述べようとした時、入浴を終えた瑞鶴と翔鶴が現れた。
夕食が何であるかを話し合っていた二人だが、瑞鶴と加賀の仲が悪いのは周知の事実。
そのためここにいるほとんどの者がこの後に起こることを察知した。
「うぐっ!」
「あら、赤城さん。皆さんも。」
加賀を目にした瑞鶴は見るからに嫌な表情になり、翔鶴は皆に声をかけた。
「入浴、済んだのかしら?」
「はい、これから夕食です。」
そこまで聞いた赤城は、一航戦の片割れである加賀が瑞鶴と言い合いを始めないようにするため、先ほど長門から聞いた話題を振った。
「長門さんから聞きました。ここ最近の活躍がすごいと。」
「そ、そうなんです!」
吹雪もそれを感じ取ったのか、翔鶴の活躍をほめる。
「吹雪さんだって頑張ったわよ。恐れずに立ち向かって。」
「いや、それほどでも・・・。」
どうも吹雪は褒められ慣れていないようで、顔を赤らめながら頭をかいた。
そこに瑞鶴が悪い笑い声を出して加賀の方を向いた。
「つまり、一航戦なんかがいなくても十分戦えるってわけ!」
瑞鶴の誇らしげに言う姿が気に食わなかったのだろう。
加賀は冷たい声で言い返した。
「もし、私たちだったら『みらい』の力なしでもMOは攻略していた。」
「うぐっ!!」
「か、加賀さん。」
痛いところを突かれ、少し引き下がる瑞鶴。
赤城もまずいと思い、加賀にブレーキをかけようとしたが、加賀は続けた。
「慢心しないで、作戦そのものの目的は果たされていないわ。」
「慢心しているのはどっちよ!戦ってもいないくせに、なに偉そうなこと!」
瑞鶴も歯止めが利かなくなり、言いたいことをぶちまける。
だが話している途中、加賀が近づいてきた。
瑞鶴は話すのをやめて身構えた。
だがそれは杞憂に終わった。
加賀は瑞鶴の頭を撫でたのだ。
そこにいる全員が奇跡を見るかのような目で見ている中、加賀は瑞鶴に言う。
「でも、頑張ったわ。」
目線をそらしながらそういった加賀は、その場を立ち去った。
「へ、変なことしないでよねっ!」
瑞鶴は我に返り、去っていく加賀の背に言葉を投げかけた。
吹雪らはそれを見て、少しづつではあるが、二人の距離が縮まっていることを喜んだ。
赤城は吹雪らに別れを言うと、加賀を追いかけた。
加賀は少し離れた林の中にいた。
立ち尽くしている加賀の隣に駆け寄った赤城は声をかける。
「ちゃんと褒めてあげるなんて、流石加賀さんね。」
「別に・・・。」
少し意地悪な言い方でいう赤城に加賀は簡素に答えて寮へと足を進めた。
赤城はその姿を見て、嬉しく感じた。
一方、吹雪ら三人は用意された部屋に心躍らせていた。
「うわっはー!フカフカだ~!」
「でしょ?」
「本当にホテルっぽーい!」
布団に飛び込む吹雪の姿はさながら修学旅行の宿泊先で興奮する学生だろう。
夕立の言う通り、化粧台やソファ、豪華な床や壁紙、本当にホテルのような内装だ。
「一流ホテルだね。」
「ホテル・・・・か。」
睦月の言葉で吹雪は思い出した。
「ホテルじゃありません!」と大声で否定していた大和の姿を。
あの時、本当に嫌がっていた大和の表情が、吹雪の頭に焼き付いて消えない。
「海に・・・出たくないのかな?」
「?」
吹雪の突然の言葉に、友人である二人は疑問符を浮かべる。
吹雪は寝返りを打って、天井を見上げつつ言葉を繋げた。
「私、砲撃も航行も苦手だったでしょ?だから、今の鎮守府に来る前は、ほとんど実戦に出してもらえなくて・・・でも・・・だから、皆と海に出たいって・・・・毎日思ってた・・・。」
吹雪は自分が前の鎮守府にいたときのことを思い出していた。
上官には怒鳴り声をあげられ、埃をかぶった艤装を磨き、いつか上官を見返して皆と海に出ることを考える日々。
そんな記憶を思い出していた。
「大和さんもそう思ってるっぽい?」
「分からないけど・・・艦娘だったらみんなそう思うんじゃないかな?」
吹雪は天井を見上げたままそう答えた。
その頃、大和は基地から離れた海岸で月に照らされた海を眺めていた。
大和の髪が潮風に吹かれている場にある者が近づいた。
「こんな時間に一人でいると危ないですよ?」
「霧先二佐・・・。」
霧先だった。
彼は流れるような動きで大和の横に立った。
「海に・・・出たいんですね?」
「・・・軍艦の性でしょうか。意思を持ってからは海に出たくなるんです。」
「最後が最後なだけに・・・・ですか?」
霧先の問いに大和は黙り込んだ。
少し間をおいて、今度は大和が質問してきた。
「二佐は・・・何故、私やみらいの過去を知っているんですか?」
大和が思っていた疑問、それは霧先が自分の過去を知っているということだ。
そのことを聞かれた霧先は苦い顔をしつつ、腹をくくった。
「僕がなぜ知っているか・・・・それはあなた方の出来事がすべて、僕の世界では娯楽の一つにしか過ぎなかったからです。」
「私たちに・・・・起こったことが・・・?」
「はい、あなたが原爆を搭載して撃沈されたことも、みらいが元の世界に帰ることができなかったことも、僕の世界では漫画の中のワンシーンにしか過ぎませんでした。」
霧先が言い終わると大和は彼に掴みかかった。
本来であれば軍法会議ものだが、怒りが最高点まで達している大和はそんなことを気にしていなかった。
大和は今にも喉元を食いちぎらんというような表情で霧先を睨み付けた。
「だったら・・・あなたは今まで漫画のことだと思っていて、みらいの艦長をしていたというんですか!!彼女の船員が死んだことも!!」
「別にそうは言ってはいません。僕だって彼女が数多くの戦いを潜り抜け、家族同然の隊員が死んだことは知っています。・・・・僕も父さんを8歳の時に亡くしました。だからこそ、誰かを失う気持ちを理解しているつもりです。『みらい』艦長を務める以上、梅津一佐や尾栗三佐達の犠牲があったことは忘れる気はありません。」
霧先の過去と思いをを聞いた大和は自然と手を放していた。
「・・・・申し訳ありませんでした。ついカッとなって・・・。」
「いえ、僕の言い方も悪かったですから。このことは内密に、もし長門さんあたりにばれたら軍法会議ものですし。」
「・・・・はい。」
未だしょぼくれている大和を見て、霧先は言った。
「・・・あなたがみらいのことを思っていることはわかりました。だからあえて言いましょう。僕らはこの世界のものではない。それは大きな歪みを生むでしょう。もしそんな時が来たとき・・・。あなたが正しいと思った行動をとって下さい。」
「私が・・・・正しいと思った行動?」
「えぇ、出来れば普段からあなたが思ったことを言って、行動してください。あなたはもう鉄の塊ではない。意思を持った人ですから。」
霧先はそう言って浜辺を後にした。
残された大和は霧先の言葉が焼き付いて離れなかった。