吹雪は夢を見ていた。
夢の中で吹雪は必死に果ての無い水面を走っていた。
後ろから赤城が艤装をつけて水面をかけていき、吹雪を追い越していく。
「まって!先輩!赤城先輩!」
吹雪は赤城の名前を呼ぶが赤城はそのまま先へといく。
「ぽい~。」
次は夕立が吹雪を追い抜いていった。
夕立の挙げた波でずぶぬれになる吹雪はいまだ二人を追いかける。
だが距離は一向に縮まらない。
次はみらいが吹雪を追い越した。
「みらい先輩!」
吹雪の声は三人には聞こえていないのか、三人は速力を上げてそのまま吹雪から離れていった。
「待って!!」
叫び声をあげた吹雪はベッドから飛び起きた。
夢のせいで完全に寝起きが悪い上に、汗で寝間着はずぶ濡れになっていた。
服を着替えた吹雪はおぼつかない足取りで湾内へとやってきた。
朝日が昇ってすがすがしい気分になれそうな光景が広がっていたが、吹雪の気分は晴れなかった。
(ダメだなぁ・・・・あんな夢見るなんて。)
吹雪は今までの事を思い出していた。
短期間ではあったものの、吹雪は見事成長し、旗艦を務めあげた。
近海深海駐屯地破壊作戦、W島攻略作戦、MO攻略戦。
数々の戦いの中で吹雪は自分を磨き上げてきたつもりだった。
(結構・・・頑張ってきたんだけどなぁ。)
自分の運命が決まってしまったのかと思う吹雪はあきらめかけていた。
その時、何かが水をけるような音が聞こえた。
吹雪が顔を上げると、そこでは夕立が艤装をつけて早朝から訓練をしていた。
まだ総員起こしもかかっていない朝からだ。
「夕立ちゃん?」
気になった吹雪は、夕立と並走する形で堤防の上を走って夕立を追いかける。
「ハンモック張ってでも戦うよ!」
夕立は複雑な動きをした後、連装砲を構えて砲撃を行う。
全弾が的に命中すると再び動き始め、監督をしていた神通と霧先の元へと戻る。
「うん、良くなりました。」
「本当っぽい!?」
「命中率と回避率、艤装の操作性も上昇している。総合的に見れば、かなり扱いに慣れているよ。」
「そういうわけなので、今度はもう少しスピードを上げてやってみましょう?」
「はい!」
「よし・・・始め!!」
神通と霧先からいい評価を受けた夕立は、神通に言われた通りスピードを速めて訓練を行うことにした。
霧先の号令とともに再び機関を始動させると、回避行動をとりながら砲撃を行っていく。
吹雪はその光景を遠巻きに見ていた。
「ここに来るずいぶん前・・・。」
「川内さん!?」
「吹雪が第五遊撃部隊の旗艦になったころから、あの子『練度上げたい!』って、朝に演習するようになってさ。」
「えっ?夕立ちゃんが?」
「頑張ってる姿を見て、自分も努力しなきゃって思ったんだって。『同じ駆逐艦として、水雷魂を忘れちゃ駄目だ。』って。」
「水雷魂・・・。」
突然やってきた川内に夕立が陰で努力していることを伝えられた吹雪は、自分以外にも努力している人物がいたことに驚いた。
川内はそれに付け加えるように言葉をつづけた。
「それに、友成もだよ。」
「工廠長も?」
「うん。いつも夜遅くまで見回りとか書類作業とかしてるくせにさ。見回りが終わったら、自室で私たちが戦った戦闘なんかを綴った本を何度も読み返したり、艤装の分解図を眺めたり、果てには海図の上に駒をおいて戦略を練るほどかっこつけてさ。・・・・・・・・・・あの戦争から70年。友成はどこにでもいる学生だったんだ。それが70年前と同じ状況に引きずり込まれて、自分の命の危険があっても私たちと歩こうとしてるんだよ。」
二人の努力を聞いた吹雪は自分が小さく思えた。
夕立は、吹雪を見習って今まで異様に努力した結果が改二だった。
霧先も、普段から命の危険がある職務での戦闘艦の艦長をしているのに、自分たちのために必死になってくれる。
そんな努力をしている人物がいるのに、自分と来たら旗艦を外された程度で落ち込んでいる。
その事に吹雪自身、怒りが湧いて来た。
「バカだな・・・私。みんな頑張ってる。みんな、みんな頑張ってる!自分のために、皆のために。」
自分の間違っている所を見出し、進む進路を見つけた吹雪は、にこやかな顔で夕立に向かって声をかけた。
それに気づいた夕立も大声で呼びかけに応じた。
訓練中であるにもかかわらず怒られないのは、霧先と神通がほほえみながら見ているからであろう。
そうしていくうちに日は高く上り、帰還艦隊の出航時間となった。
港では先行隊としていくことが決定された最上、吹雪、睦月が長門と霧先から指示を受けていた。
後ろには角松も控えている。
「梅津一佐、霧先二佐と話し合った結果、『みらい』と『ゆきなみ』に帰還隊の一部を搭乗させることになった。その先行隊として偵察と護衛を頼んだぞ。」
「理由はレーダーも千里眼じゃないからだ。少々危険なことは承知の上だが、君たちの目を借りたい。」
「了解しました!」
長門が概要を説明し、角松が補足を加えた。
今回先行隊が編成されたのは霧先の提案からだった。
現代の戦闘艦に搭載されているレーダーは広範囲をとらえることができる。
だが、肉眼で見る細かな情報とは違ってしまうことは避けられない。
その為、先行隊の艦娘に監視してもらうことで、より精度の高い戦闘と情報収集を行おうと画策したのだった。
長門と霧先の指示と言葉を受け取った三人は、声を揃えて敬礼をした。
そのすぐ後で、吹雪が睦月に問う。
「本当にいいの?一緒に来てもらっちゃって。」
「うん。」
吹雪の言葉に即答する睦月を見て、最上は微笑んだ。
「睦月ちゃんは本当に吹雪ちゃんが好きなんだね。自分から志願するなんて。」
睦月は吹雪が帰ることを聞いてからどうにかできないか考え続けていた。
その時、尾栗が長門と霧先、梅津と角松の四人で帰還編成を考えているということを呟いているのを聞いた。
そしてギリギリ滑り込みで四人に土下座までして編成に加えるように具申。
結果、編成責任者を担当する霧先の許可によって睦月も帰還艦隊先行隊へ加わることができたのだった。
それを聞いた最上も、二人の友情に感心していた。
「最上さんは睦月ちゃんと同じ艦隊にいたんですよね?よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
初めて一緒の艦隊になる最上に吹雪が頭を下げると、最上も笑って答える。
そして、出航時刻となった。
「それじゃあ、三人には本艦隊の先行隊として出向してもらう。通信は渡した特殊通信機で頼むよ。」
「はい!出航します!」
三人が声を揃えて、機関を始動させたのを確認した霧先と角松は被っていた識別帽を脱ぐと、頭の上で振った。
そしてある程度距離が離れたのを確認すると、出航準備が整った己の乗るべき艦へと急ぎ足で向った。
そして二人が乗艦すると、間もなく三隻の護衛艦も機関を始動させ、先行隊の三人の後を追うように港を出航した。
それを眺めていた陸奥は静かに言った。
「大丈夫そうね。」
「ああ。これ以上何かが起こることはないと願いたいな。」
長門がそういって海を見ていると、大淀が大慌てで駆けてきた。
肩で息をするほどに急いで走ってきた彼女の手には一枚の紙が握られていた。
「どうした大淀?」
「た、大変です長門さん!提督から、MO攻略作戦は中止の通達が!」
「中止!?」
突然の中止命令に長門は絶句した。
今まで攻めの大勢だった提督があっさりと方向転換したのだから無理もないだろう。
基地に戻る過程で長門は大淀に確認をした。
「間違いないんだな?」
「はい、全MO攻略関連の作戦を中止し、鎮守府へ帰投せよと。」
「分かった。だがもう一度提督に今ならMOを攻略できることを伝える。それでも命令が変わらなければ全艦帰投する。」
長門は陸奥と大淀に伝え、足早に通信室へと向かった。
そんなことがトラック諸島で起こっているとは露知らず、帰投艦隊は順調に航海を進めていた。
航海開始から数日後の「みらい」艦橋では霧先が作業台で海図に線を引きながら計算をしたりと作業をこなしていた。
その近くでは伊勢型戦艦一番艦「伊勢」が艦隊司令官用の席で深めに座り込んでいた。
だらけきって姉の威厳など全くない伊勢に、みらいは渋い顔をするしかなかった。
「はぁ・・・未来の軍艦はいいねぇ~極楽極楽・・・・空調は神様だよ。」
満面の笑みで空調が効いた艦橋での休息を楽しむ伊勢に、みらいは冷たい視線を向ける。
だが当の本人は気付いておらず未だにだらけ切っている。
溜息を吐き出したみらいは霧先に近づいて小さな声で尋ねた。
「・・・・・艦長、いいんですか?」
「まあ、特段業務の邪魔になってるわけでもないし。僕は艦長席だから問題ないでしょ?」
「でも艦橋でだらけ切るのは士気にも・・・。」
「いいんじゃない?適当に緩んでおくのが僕の運用方針だからね。」
「ええ・・・・・?」
昼行燈と称される梅津が艦長だったみらいでも、流石に霧先の緩さ加減には微妙な顔をするしかなかった。
その時、艦橋と通路を繋ぐドアが開け放たれ、伊勢型戦艦二番艦「日向」が艦橋に入り込んできた。
そのことに気付いたみらいは舵の元へ、霧先は識別帽を深めにかぶりなおして作業へと戻った。
そして案の定、だらけ切っている伊勢の脳天に日向の怒りの鉄拳が炸裂した。
相当な痛みだったのだろう、伊勢は瞬く間に艦隊司令官用の席から転がり落ちて床で頭を押さえながら転がり始めた。
「ったぁ・・・・何すんのよ日向!」
「馬鹿者!それでも航空戦艦か!?艦橋内でだらける奴があるか!」
「いいじゃん迷惑かけてないし!ね?友成?」
「えっ?・・・迷惑ではないですけど・・・・。」
突然振りかけられた言葉に霧先は驚きつつも本心を日向に伝えた。
それを聞いた伊勢は水を得た魚の如く、ドヤ顔を披露する。
「ほら!艦長からOK出てるんだし、だらけてもいいでしょ?」
「まったくこの姉は・・・・・。」
あまりの開き直りに、怒る気も失せた日向は頭を抱えて目の前の愚姉に溜息をついた。
それを見ていた霧先は、苦笑いをしつつも日向に声をかけた。
「ま、まあこの航海自体は自衛隊で行われている体験航海を長くしたものですし・・・・伊勢さんがあきるのも仕方ないですから。基本的に自分や乗員の迷惑にならなければ大丈夫ですので。」
霧先が日向に説明すると、伊勢が泣き顔で友成に抱き付いてきた。
霧先は驚きつつも伊勢を受け止める。
「うぅ・・・友成だけが味方だよ・・・。あんな堅物な妹より友成みたいな弟が欲しかった・・・・。」
「聞こえてるぞ・・・・。」
伊勢の言葉が耳に届いていた日向は明らかに怒りを込めている表情を露わにしながら伊勢をにらみつけた。
姉妹喧嘩勃発の兆しが見えた霧先は何とか日向をなだめようとした。
「と、とりあえず日向さん、伊勢さんのことは僕らが注意したりするので・・・・。」
「・・・・・はぁ、すまないがその愚姉を頼む。」
「りょ、了解しました・・・・。」
あまりのことで霧先は思わず敬礼をして日向を見送った。
去り際に伊勢に悪態をついていたのを聞いた霧先は、後で日向を訪ねることを考えた。
姉妹喧嘩一歩手前の事態を回避した霧先は作業を終え、艦橋内の指揮権をみらいに委託した後、日向のいる居住区を訪ねていた。
道中、複数名の艦娘と敬礼をかわしつつ、やってきた居住区前で霧先は息を整える。
「さて・・・・。日向さん、霧先です。いますか?」
「いるぞ。入るなら入ってくれ。」
「失礼します。」
ノックをして日向がいるかを確認すると、中から本人の声が聞こえてきた。
本人からの許可が下りたため、霧先は一言断ってから士官室に入室する。
中ではベットに腰かけた状態で日本刀の手入れをしていた。
それを見た霧先は静かに対面のベッドに腰かけた。
日向は手入れを済ませると日本刀を鞘に戻して脇に置いた。
霧先はそれを確認したうえで口を開いた。
「日向さん、先ほどのことは流石に伊勢さんに贔屓しすぎたとは思っています。それをお詫びします。それと、伊勢さん自身も言い過ぎたことは自覚しているようでした。」
霧先が頭を下げると日向は首を振った。
「別に艦の長である君が頭を下げる必要はない。私も伊勢もよく喧嘩するからな。今回ばかりは私も熱がこもってしまったんだ。久しぶりに出撃があるかと思ったら帰還でな。」
「そうでしたか・・・・それについては自分から提督に日向さんたちを編成に加えるように伝えます。」
「さて、君が言うことが終わったのならすぐに・・・。」
出撃が出来ない事で鬱憤が溜まっている事を聞いた霧先は、提督に編成に加えてもらえるように申し出ることを日向に伝えた。
それを聞いた日向は立ち上がって言葉を述べる。
だが、その途中で艦内に武鐘が鳴り響いた。
その音を聞いて霧先もすぐにベッドから立ち上がった。
『対空戦闘用意!』
「対空戦闘!?何が・・・。」
「艦長がここにいるわけにもいかないだろう!?早くいくんだ!」
「分かりました!日向さんは他の人に救命胴衣とテッパチの配給を!」
「ああ!」
霧先は日向に緊急時に備えて救命胴衣と88式鉄帽を配給するように伝えてから居住区を飛び出て駆け出した。
居住区から艦橋に向かうよりもCICが近いと考えた霧先はCICに駆け込んだ。
CICのドアを開けると中では既にCIC所属の妖精たちによって戦闘態勢が築かれていた。
霧先はその合間に入ると砲雷長を呼んだ。
「砲雷長、どうなってる!?」
「艦長!航空機が本艦上空を通過、鎮守府へと進行中!」
「レーダーには引っ掛からなかったのか!?」
「対水上レーダーには何も!」
砲雷長妖精から聞かされた情報を聞いた霧先はこぶしを握りしめた。
遂に相手方が反攻作戦に出た上に対みらい戦術を取り始めていたのだ。
その現実に苦汁を舐めさせられるがどうこう言っている場合ではないと心を切り替えて霧先は戦闘に臨むことにした。
ヘッドフォンを装着すると霧先は艦橋へと連絡を入れる。
「みらい、僕は今CICにいる!進路270度を維持したまま最大戦速で横須賀を目指せ!」
『了解、進路270度!最大戦速!』
霧先が指示すると「みらい」は速力を上げて横須賀を目指す。
最初の指示を終えた霧先はレーダーを見ていた。
「Enemy 深海棲艦艦爆機」と表示されている光点は霧先たち護衛艦に目もくれず横須賀へと向かう。
そのことを知らせるとともに指示を出す為に霧先は無線機に手をかけた。
その頃、先行隊の三人も感知していた。
最上の艤装から警報が鳴り、それに気づいたときは遅かった。
「対空電探に感あり!・・・・何っ!?」
最上が霧先からの無線に応答していると三人の上を航空機が飛んでいく。
それを見て吹雪が咄嗟に主砲を構えるが、睦月が止めた。
「無理だよ!届かない!」
「航空機はみらいたちが対処するらしい。僕たちは鎮守府に!」
「最上さん、鎮守府とトラックに打電を!」
「分かった、友成に伝える。」
吹雪の言葉を受けて最上は無線機に手を伸ばした。
だが、睦月の言葉によってその手は止められてしまう。
「みんな!あれ!」
「鎮守府が!」
睦月が指差した方向には燃え上がる鎮守府と工廠が広がっていた。
黒煙が立ち上り炎が炎々と燃えており明らかな打撃を受けていることが伺えた。
そのことはトラック島基地の通信室にいた長門にも対空戦闘中の「みらい」から伝えられていた。
「何だって!?」
「報告時間から見て1215より爆撃を受けた模様で・・・・壊滅的な被害だと・・・・。」
「手薄になった防衛線を突破されたか・・・・深海棲艦の機動部隊がそこまでするとは・・・・。」
大淀の報告を受けて長門は険しい表情になる。
だが、その時に提督が帰投するように命令した意味を理解した。
「まさか提督は・・・この動きを察知して戻れと・・・!?」
「定かではありませんが・・・・現在、残党航空機の排除活動が帰投艦隊の三隻によって行われています。」
「くっ・・・・・全員を招集!直ちに帰還するぞ!!」
長門は早急に退却することを決意し、大淀に招集を命じる。
一方その頃、残党航空機を対空兵装で排除した帰投艦隊は、運よく無事だった港に接舷して停泊作業を終えたところだった。
搭乗していた艦娘の人数を数え終えた自衛官妖精たちは88式鉄帽をかぶり、医療器具やバールなどといった物品をそろえて港に整列していた。
霧先はその前に立つと、大声で言った。
「現在、鎮守府では火災と崩落が発生している!早急なる人員把握と搬送を命ずる!第一分隊は艦に残って対空、対水上警戒!第二、第三分隊は早急なる人員把握と搬送!第四分隊は運動場での宿舎と医療施設の設置を急げ!第五分隊はロクマルによる火災鎮火と海鳥での被害状況の把握!総員全力で任務に当たれ!以上、解散!」
霧先が早口で指示を出した後、全員が敬礼をしてから道具をもって各々の任務についた。
霧先も持ち合わせた道具を手に取ると先行隊の三人に声をかけた。
「最上さんは他の人たちを率いて、第四分隊と共に設営の手伝いをお願いします。吹雪と睦月は、僕と被害状況の確認に向ってもらいたい。」
「了解!」
三人は霧先の言葉を受けて行動を開始した。
霧先と吹雪、睦月が最初に向ったのは甘味処「間宮」だった。
主要な柱が折れて屋根が落ちてしまい、中に入れない状況の店を見て溜息をつく間宮を見て、霧先たちは声をかけた。
「間宮さん!」
「あなたたち!戻ってきたのね。」
「はい。みんなは?」
霧先たちの姿を見て安堵の表情を浮かべる間宮。
間宮が無事であることが分かった吹雪は、皆の状況を聞いた。
「えぇ、多少の負傷者はいるけど無事よ。間一髪だったけど、提督がみんなを避難させてね。」
「よかった・・・・司令官は?」
仲間たちが無事であることに安堵した吹雪は提督の行方を聞いた。
すると間宮は安堵の表情から一転、暗い顔になって説明し始めた。
「うん・・・・提督は司令室に残っていたの。『避難が終わるまで自分が尻尾を巻いて逃げるわけにはいかない』って・・・。それで残っていて、逃げる時に瓦礫で頭を打って・・・・今は横須賀海軍病院に搬送されているの・・・。」
霧先たちは突然の指揮官の損失に驚きを隠せなかった。
だが、こうしている間にも深海棲艦の機動部隊は動き回っている。
その現状ここまで崩壊していては早急な復旧が必要だった。
その為、当日中に人数の把握と負傷者の処置が完了してから体を動かせる者は復旧に力を入れていた。
勿論、角松ら海上自衛官達も作業に積極的に参加していた。
「吾輩は何度もいっとるぞー!工廠とドック、友成の奴が配備した地下倉庫の入り口の開放が最優先じゃとー!」
「はい!」
工廠、ドック区画の責任者に任命された利根は自衛官や艦娘たちにせかすように言葉を飛ばす。
無事だった資材保管庫では、破損したシャッターの代わりに第六駆逐隊が板をはっていた。
「どう?私に任せておけばこんなもんよ!」
「なんだか釘が・・・・ってうわぁぁあ!!?」
「はわわわ!工廠長さんが下敷きになってしまったのです!!」
乱雑な釘の打ち方に鎮守府復旧総合責任者の霧先は微妙そうな顔をする。
だが、そのあとで立てつけが悪かった板が霧先の方に倒れて下敷きになり、電が慌てふためくことになった。
また、損傷がひどかった部屋の掃除はその部屋に住んでいた艦娘が担当することになり、北上と大井は自分達の部屋だった場所を片づけていた。
そして、瓦礫から北上と大井が写った写真を拾い上げた大井は怒りが有頂天になっていた。
「深海棲艦の機動部隊め・・・私と北上さんの思い出を・・・!」
「大井っち、今はそれどころじゃなくて復旧だよー。」
「くっ!」
その眼力で、戦艦を沈められるのではないかという程にまで、怒りをこめた眼をする大井に、北上は流すように諭す。
とにかくあふれる怒りを地面にぶつける大井の姿はある意味恐怖といえる。
夕日が現れる頃になると、間宮を筆頭に担当の艦娘や自衛官が炊き出しを行った。
「豚汁でーす!」
「お疲れ様でした、まだありますよ!はい、響ちゃん。」
「感謝する。」
睦月や吹雪も率先して手伝いをしていた。
そして数日後に瓦礫の撤去は大方済んでおり、トラック諸島から帰還した艦娘たちも集結していた。
皆が尽力して慈愛の収集にあたり、復旧の目途が見えてきた。
その復旧の目途が見えてきた日の夜、長門と霧先は所属艦娘と海自隊員を招集していた。
全員が集まったことを確認すると、長門は皆に言葉を向けた。
「幸い皆の協力もあり、鎮守府復旧の目途はたった。この後、工廠、ドックなどが使用可能になり次第、敵機動部隊への攻撃を開始する!」
「反攻作戦ですね・・・。」
「ですが、提督が!」
長門の宣言に加賀は険しい表情になり、赤城は指揮官がいないことを述べる。
それを聞いていた長門は予期していたのか、対策を話し始めた。
「ああ、残念ながら提督は今も意識不明で回復する時も分からぬまま。しかし、ここに提督の残した作戦指示書が見つかった。作戦とともにここに提督がもしも指揮できない状況に陥った際の対応策も書かれいている。それによれば『もし臨時で指揮が必要であるとされる場合、全指揮権を霧先友成海軍中佐に委託する』とある。つまり霧先が臨時で提督の代役を務めるということだ。」
長門が対策を述べると皆が騒めきだした。
中佐とはいえ軍人になってから数か月の霧先に代役は重いと判断したものもいる。
そんな中で霧先は皆の前に出た。
「長門さんの言う通り、提督の代役を務めることになりました。中佐程度が満足にできるかどうかはやってみなければ分かりませんが・・・・お願いいたします。」
霧先が頭を下げると少しづつ拍手が起こった。
中には不安げな顔をしたり認め切れていないものがいるが、大多数が霧先を迎え入れてくれた。
それを確認した霧先はもう一度頭を下げた。
そして拍手が終わると、長門が再び口を開いた。
「霧先が臨時提督になるということで決定したわけだが・・・早速最初の指示を出す。駆逐艦吹雪!」
「は、はい!」
長門に名前を呼ばれた吹雪は、緊張で声が裏返りそうになりながらも答えた。
半分の緊張と半分の怯えに身を震わせながらも吹雪は次の言葉を待つ。
次に長門が述べた言葉は彼女を困惑させるものだった。
「貴官を含めた未改装者に大規模改装を実施する!!」
突然の大規模改装の通達に、吹雪は呆然と立ち尽くしていた。
最近書くのがつらいですね~。
楽しいからやめられないんですけどねww
次回「頑張っていきましょー!」
一つのことに集中しすぎると重要なものを見失ってしまう。