高校生艦長と自衛艦の航海日誌   作:みたらし饅頭

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流石に用語集投下だけはいけないと思い、突貫工事でネタはあったけど一話にするには短すぎる三本の短編を作り上げました。
データ復旧までの間は何本か投稿する予定ではあります。
それではどうぞ。


第一特別戦目「普通の日常」

~如月の誘惑~

 

「ウフフ、おはようございます工廠長。」

「お、おはよう如月。」

 

朝早い鎮守府の工廠長室。

その部屋に用意されているソファで夜の巡回を終えた霧先は睡眠をとっていたが、巡回が長かった為、既に起床ラッパが鳴る10分前になっていた。

その事に関しては特に異常はなく、霧先本人も分かりきっていた。

だが一番の予想外の出来事が目の前で起きていた。

目の前には腹部に馬乗りになっている如月が妖艶な雰囲気を醸し出していた。

起きたばかりということもあって霧先の主砲は最大仰角であり、これは非常にまずい状況であった。

 

(お、落ち着け!こんな状況にはどうすればいい!?今までの戦略で培った頭脳を活用するのだ!!)

 

霧先が短時間で脳をフル回転させて対策を講じるが、そんなことはお構いなしに如月は胸に顔を摺り寄せる。

良い香りが霧先の鼻をくすぐり、思考を弱らせる。

 

「ウフフ・・・工廠長も男の人ですものね?」

「ま、まぁね・・・・・。」

 

何とか理性を保ち続け逃げる言葉を考える。

普通の人間ならここで突き飛ばしてでも逃げ出すべきではあるのだが、如月に怪我を負わせる可能性を考えた霧先は下手に動けなかった。

更には余計なことを言って如月を傷付けることも割けることを考えていた。

しかし、如月のような女性に免疫がないがゆえに逃げ道を失い、理性が崩されそうになっていく。

 

「ねぇ、工廠長?如月と楽しい事、しましょう?」

 

霧先は静かに息を飲んだ。

如月から放たれる良い香りと甘い言葉によって理性は解けきっていた。

ここで止めの言葉を言われたら霧先も一線を超えてしまう状況であった。

 

「さぁ、私を・・・・・。」

「おはようございまー!・・・・す。」

 

如月が最後の言葉を述べようとしたとき、元気よく扉を開けた蒼龍が現れた。

蒼龍は目の前で起きている状況を見ると今まで持っていた明るさを無くし、一気に暗いオーラを出し始めていた。

それを悟った霧先は冷や汗を滝のように流し始める。

 

「・・・・友成。」

「は、はい。」

「覚悟、できてるよね?」

「えっ?」

「攻撃隊、発艦はじめっ!」

 

その日、朝から霧先と如月はドッグへと叩きこまれた。

その後に霧先はみらいと先代神通から、如月はほかの霧先に好意を寄せる艦娘と睦月から説教を受け、蒼龍は提督から罰として、航海長である尾栗監視の元、一日霧先乗艦の「みらい」の甲板掃除を課せられたのであった。

 

 

 

 

 

 

~扶桑型戦艦日向の憂鬱~

 

横須賀鎮守府内にはいくつかの休憩所がある。

小さな物には第○休憩室と番号が振られるが、本館にあるものは大休憩室と言われている。

中には「みらい」艦内にあった自動販売機を複製されたものが複数設置されており、一段上がった畳敷きのスペースやベンチ、ソファにテレビが用意されていた。

さながら温泉施設の休憩スペースではあるが、多くの艦娘がここを利用する。

そんな休憩室で一人、暗い雰囲気を漂わせながら頭を抱える人物がいた。

皆その人物を避けるように座ったり休息を取ったりするが、目を離せないでいた。

 

「はぁ・・・・・。」

 

重い溜息を吐きながら暗い雰囲気を漂わせる人物の正体は扶桑型戦艦四番艦「日向」。

霧先によって建造された艦娘であった。

しかし彼女にはその霧先に関して深い悩みがあった。

 

「何故、あの馬鹿姉は事あるごとに上官に卑猥な行為を取るのか・・・・・私の苦労も考えろ!」

 

怒りに身を任せ机にこぶしを下す。

その行為と突然の怒声と音に休憩室にいた艦娘の数名は驚きながら視線を逸らす。

その事に気づかない日向は溜息を吐くと再び頭を抱え始めた。

そんな時、ふと休憩室を訪れる人物がいた。

 

「む?なんだこのただならない雰囲気は?」

「あぁ、日向か・・・・。」

 

伊勢型戦艦二番艦「日向」だった。

目線をそらしていた先が入り口だった木曾がいち早く気づき、声を漏らした。

名前を呼ばれた日向は丁度良いと思い、木曾に尋ねた。

 

「木曾、いったい何事だ?」

「あぁ、あれ。もう一人のお前だよ。」

 

木曾が目線で指した方へ顔を向けると、そこには明らかに暗く重い空気が漂う場所があり、その中心部にもう一人の日向がいた。

その姿を見た日向はスタスタと躊躇することなく近づいていった。

そして近くにあった椅子を引くともう一人の自分に声をかけた。

 

「おいどうしたんだ?私らしくないぞ?」

「私らしくないか・・・・あの馬鹿の所為でこっちは何度工廠長に頭を下げねばらないのか!これでは扶桑型戦艦の恥だ・・・・。」

「何があったんだ?」

「実は・・・・。」

 

日向は今まで心の内に潜めていた恨みをもう一人の自分に洗いざらい話した。

それに対して相槌を打ちながら真剣に聞く日向。

そこはすでにお悩み相談所のようになっていた。

 

「その上、扶桑は『仕方ないわ。』で済ませるし山城は扶桑以外に眼中にない・・・・。」

「そうか、それは大変だったな。だが、彼が伊勢に対して文句を言っているところを聞いたか?」

「いや?」

「だろう?第一、彼は司令官用の席でだらけるようなうちの伊勢を許すくらいには緩い男さ。そんなことでネチネチするような器じゃない。」

「・・・・それもそうだな。」

「それに、何か度を過ぎたことをしでかせば彼も怒るさ。」

「そんな場面想像できないな。」

「まったくだ。」

 

先ほどまでの雰囲気はどこへやら、二人はとっくに世間話へと移行して盛り上がっていた。

同一に近い人物同士だから成せるのか、はたまた同じような姉をもっているからこそ意気投合できるのか。

それは誰にもわからないが、二人の仲が深まったのはその場にいた全員が感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

~犯人は・・・~

 

「ふい~疲れた。」

 

霧先は自身の仕事場でもある工廠長室での作業を終え、体を伸ばしながら一息つく。

意外と早く終わった為、時刻はまだ昼前。

体を十分に伸ばし終えて、書き終えた書類を仕分けながら午後からの巡回などに備えようとするが、あることを思い出した。

 

「あ、昨日風呂入り損ねたんだった。」

 

昨晩は、霧先の伯母である川内が「夜戦だー!」と騒ぎ立てて艦娘たちから反感を買い、霧先もその騒ぎの鎮圧に赴くことになった。

何とか川内をなだめ、皆に謝罪をして場を収めることはできたものの、霧先は風呂に入るタイミングを完全に失っていた。

それ故、今現在は非常に汚い状況でもある。

 

「・・・・・偶には昼風呂もいいな。」

 

霧先はすぐに着替えやバスタオル、ナイロンタオルを袋に入れて浴場へと向かった。

 

 

 

浴場はとても広いが、この時間は誰もいない為に余計に広く感じる。

霧先は服を籠に投げ込んで、一般的なタオルとナイロンタオルを手に浴場に入る。

 

「何度見ても思うけど広いなぁ。温泉施設張りだよ。」

 

そういいつつ、霧先は真っ先にかけ湯をかけてから大きめの風呂に入る。

普段の疲れを癒しながらオッサンのような低い溜め息を吐きながら肩までつかる。

 

「まだ17なのにオッサンみたいだなぁ。」

 

頭にタオルを載せて、オッサンへと近づく自分を感じながら、暖かさによって取れていく疲れを感じる。

そんな至福のひと時を楽しんでいると、とても聞きたくない音が響き渡った。

浴場と更衣室を隔てる引き戸が開かれた音だった。

 

「久しぶりに昼湯と行きましょー!」

「朝湯をしたばかりだったんだがな。」

「たまにはいいですねぇ。」

「あー眠い・・・。」

「もう!起きて加古!昨日もお風呂入ってないでしょ!」

 

霧先には声だけですぐに誰か分かった。

伊勢型の伊勢、日向、綾波、加古、古鷹の五名、さらにはまだ複数の足音や話し声が聞こえる為、ほかにもいることは明確だった。

 

(名札ひっかけたよな?無視して異性、ましてや上官がいる風呂に入ってくるわけないよな!?いや、現在進行形で入ってきてるけども!)

 

突然の事態に頭がショートしかけるが、何とか保ちつつも打開策を講じる霧先。

だがそれは次に響き渡る声で水の泡と化す。

 

「あれ?誰かいる?」

(終わった・・・・・。)

 

先頭にいた伊勢が浴場内に誰かいることに気づいたのだ。

湯気の所為で見えてなかったが近づくにつれて後姿がはっきりしてきた。

そしてその人物が誰であるかということを理解した伊勢は、顔をゆでだこよりも赤らめながらその人物の名を呼んだ。

 

「ゆ、友成?」

「ど、どうも・・・あっ。」

 

名前を呼ばれ振り向いた霧先は大きな間違いをしていた。

大方タオルで隠していると思ったのだろう。

だが目の前の伊勢は生まれたまの状態で、大人らしい体つきの体をさらしていた。

 

「ッ!」

「あっ!ごめんな・・・アッー!!!」

 

完全に顔を赤一色に染めた伊勢は、躊躇なく霧先の顔面に戦艦級の拳をお見舞いした。

 

 

 

殴り飛ばされた霧先は水風呂で顔を冷やした後、浴場の地面で土下座の姿勢をとっていた。

 

「本当に申し訳ありません!!」

 

湯船につかっている艦娘たちは全員、戸惑いながらタオル一丁で土下座をする上官の姿を見ていた。

 

「まぁ、気にするな。伊勢の馬鹿も気が動転してたしな。」

「そうそう、私も別に見られて困る訳じゃあるまいし。見たいなら好きなだけ見ればいいよ。」

「加古!」

 

土下座で謝る霧先に日向と加古が気にしなくてもいいと言う。

しかし加古のとんでもない発言で古鷹が怒り出す。

そんな姉に臆することもなく、加古は湯船でのんびりし始めた。

 

「できればせめて、体を洗わせてほしいなと思い・・・・。」

「別に構わんぞ?そもそも先客なのは君だ。」

「わ、私も大丈びっ!」

「綾波姉、舌噛みましたな?」

 

体を洗う許可を求める霧先に日向は何の抵抗もなく応え、綾波も顔を赤らめ、ガチガチになりながらも応える。

しかし緊張していた為、勢い余って舌を噛んでしまい、妹である漣がニヤニヤしながらいじり出す。

 

「ありがとうございます!顔はむけないのでご安心を!」

 

そういって立ち上がった霧先は目をつぶりながら歩き出す。

だが視界がなければ当然足元がおぼつかない訳で、歩き出して早々に盛大に転んで頭を打ち、その場でもだえ苦しむ。

また立ち上がって歩き出すが、今度はルートを誤って風呂へと落下してしまった。

 

「はぁ・・・私たちはタオルで隠しておくから目を開いて歩け。」

「すみません・・・・。」

 

未だにゆでだこ状態で「もうお嫁にいけない」と繰り返す呟く姉の横で、日向は目の前の上官に呆れかえっていた。

 

(全く、真面目な癖して何故こういうところは抜けているのか・・・・・。)

 

おそらくこの場にいる殆どの者が思うであろうことを心の中で呟いた日向は、やっとシャワーの前にたどりついた霧先を眺めていた。

すると、霧先に近づくものが視線の中に入ってきた。

さっきまで古鷹にガミガミ言われていた加古だった。

日向が古鷹の方を見ると、当の本人もぽかんと見ているだけだった。

霧先に近づいた加古はおもむろに彼が手に持っていたナイロンタオルを奪い取り、思いもよらない発言を言い出した。

 

「普段からの礼ってことで私が体洗ってやるよ!」

「ファ!?」

 

霧先も予想だにしなかったのか、変な声が口から飛び出す。

当然その場にいた全員がその行為に愕然とし、開いた口がふさがらなかった。

 

「ほれほれ、チャチャっと済ませてやるから。」

「いやあの、自分でできるので・・・。」

「いいからいいから。私に任せておけって!」

「いえあの・・・・・・ワカリマシタ。」

 

決して譲らない加古に対して折れてしまった霧先は、必死に自分の主砲が反応しないように耐えることとなった。

その後に加古は古鷹から、霧先はみらいとゆきなみ、那珂から説教を受けることとなる。

尚、この日以来、霧先に対して好意を持つ艦娘の間で加古は要注意人物に認定されたという。

 

「偶にはこんな刺激もいいっしょ。」

 

そして、この騒動の原因は悪戯心で名札を外した北上であったことは誰も分かっていなかった。

北上はニタニタと笑いながら悪戯が成功した事を喜び、霧先へのお詫びの品を選ぶために酒保へと向かった。

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