IS 空を翔る白き翼【更新停止】   作:カンチラ

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12 侵略者との対決

「なっ……!?」

 

 突然の出来事に、明はついていくことができなかった。いきなり天井が爆発し、そこから全身装甲のISが現れた。ソイツは美香に強力なビーム攻撃を放つが、翔くんが間一髪で助ける。だが、その際に高威力すぎるビームがアリーナの中まで穴を開けてしまう。そこに全身装甲はチャンスと思ったのか、翔くんと美香を殴り、もう一体の全身装甲のいるアリーナ内部へと吹き飛ばしていった。

 

「翔くんっ! 美香!!」

 

 私はとっさに音時雨を展開し、翔くんと美香を助けようとした。だが、進入する途中でアリーナのバリアーが再生され、内部に侵入することが難しくなってしまった。

 

「先生っ! バリアを解除してください! 二人を助けないと…!」

 

「そうですわ! わたくしにISの使用許可を! すぐに出撃できますわ!」

 

「そうしたいところだが…これを見ろ」

 

 織斑先生は携帯型端末を持ち、そのデータを私たちに見せてくる。

 

「遮断シールドがレベル4に設定……!? しかも、扉が全てロックされて―――あのISの仕業ですの!?」

 

「そのようだ。これでは避難することも救援に向かうこともできない」

 

 マジかよ、こっちから助けることも向こうから逃げることもできないとは……翔くん、美香、頼むから無事でいてくれ……!

 

 

 

 

「えっ…翔!?」

 

 突然の爆発、そしてアリーナの中に現れたのは翔と美香、そしてもう一体の全身装甲。最初に現れた全身装甲と戦っている最中に起きた出来事であり、想定していない状況であった為、一夏は驚き、動きを止めてしまった。

 

「くっ、増援ってワケ…!? あぁ、もう! これ以上手間を増やさないでほしいわね! アンタ達! 止まってると的にされるだけだから動き続けなさいよ!」

 

「は、はいっ!」

 

「わかりました!」

 

 美香は鈴の言葉を聞き、その場から動き回った。翔も動き回るが、敵機からどこか違和感を感じていた。

 

「とりあえず、コイツは私たちが片付けておくからそっちは頼んだわよ!」

 

「分かりましたっ!」

 

 翔は鈴に対して返事をする。そして翔と美香をアリーナ内へと投げ入れた全身装甲のISへと向かっていく。

 

「そうだ、武器……!」

 

 天翔の武器は白雪だけでなく、新たに射撃武器が追加されていたことを翔は思い出す。そして翔は新たに生成された武器、土神を展開した。

 

「ロックオンは確か、敵を狙えば勝手に出してくれる…!」

 

 翔は取り出した銃を敵に向け、構えた。すると天翔は敵に向けて自動的に腕が動いた。これがロックオンしている状況なんだ…!翔は躊躇わずに引き金を引いた。だが、全身装甲のISは発射された銃弾を巨大な腕で防御した。その大きな腕自体が巨大な盾となっているらしく、与えたダメージは無いに等しかった。

 

「そんな!?」

 

「翔くん、ここは私に任せて!」

 

 美香は戦女・弐型の武装である装甲のミサイルハッチを開かせミサイルを発射した。

 

「さぁ、逃れるものなら逃れなさいっ!」

 

 戦女・弐型の一部から緑色のワイヤーフレームのミサイルが発射される。70もの数を放ち、それらは一気に全身装甲のISへと向かっていくが、全身装甲のISはそれらのミサイルを腕で『叩き落した』。

 

「嘘っ!?」

 

 その行動に美香と翔はかなり驚いていた。なぜなら、実体を持たないミサイルがただの腕で落とされたのだから。

 

「くっ…雨霰があんな腕に落とされるなんて、屈辱的だなぁっ…」

 

 美香は視界を少しだけ下に向け、とても悔しそうに言う。雨霰の中では最高傑作で、思い出の武装であることを翔に語っていた。

 

「…私たちだけの装備じゃあ、遠距離装備でこの相手をするのは無理ね…なら!」

 

 と、敵ISに向けて瞬時加速(イグニッション・ブースト)を試してみる。巨大で愚鈍な相手ならば近づいて少しダメージを与えては離れていく戦法が有効だと感じていた。だが、瞬時加速で近づいた途端に相手は両手両足のブースターを使い、美香が近づこうと思っていた場所から即座に移動してしまった。

 

「なっ!?」

 

 愚鈍そうな外見で、瞬時に動くことのできる敵に美香は驚きを隠せなかった。

 

「翔! 大丈夫か!?」

 

「ちょっと一夏! アンタ人の心配をしてる場合!?」

 

 一夏はこんな状況でも翔を心配し、逆に鈴に心配されてしまった。そんな状況の中で一夏と翔は敵である全身装甲の相手に違和感を感じた。

 

「……なぁ、こいつらの動きって何かに似てるんじゃないか?」

 

 と、一夏はこの場にいる全員に声をかけ、敵が何かに似ていると言い出す。

 

「何かって何よ? コマとかいうんじゃないでしょうね」

 

「こっちはただ殴ったりビームを撃つだけ…近づこうとすれば逃げられるし、瞬時加速で近づいても、結局は避けられてしまいますし……」

 

「あー、なんていうかな、昔自動車メーカーが造ってた人型ロボットいたろ?」

 

「……そんなのいたの?」

 

「あ、翔は知らないか……なんつーか、あいつら機械じみてないか?」

 

「ISは機械よ」

 

「いや、そう言うんじゃなくてだな。えーと…あれ、本当に人が乗ってるのか?」

 

「う、うん…ボクも何となく感じてたけど、もしかしてロボットじゃないのかな?」

 

「……そんなこと、ありえない。ISは人がいなくちゃ動かないのよ。でも、あのISの動きは人が乗っているような動きじゃないわよね……」

 

 二人はあのISが機械であるということを薄々感じていた。

 

「それに、ボクたちが話してると何もしてこないよ?」

 

「…ううん、でも無人機なんてありえない。ISは人が乗らないと絶対に動かない。そういうものだもの」

 

 鈴と美香は目の前の敵が無人機だということに信じられない様子であった。ISは人が動かさないと動かない、彼女たちにとってそれは当たり前のことであったが、彼ら二人はISの知識が浅く、それでいて無知だからか相手の事を知ることが出来たのだろうか。

 

「一夏ぁっ!」

 

「翔くんっ!」

 

 四人で敵の情報を探っていると、放送室から二人の声がアリーナ内へと響き渡る。放送室の方から聞こえたのは、箒の必死な声と明の激励する声。

 

「男なら…男なら、そのくらいの敵に勝てなくてどうする!」

 

「この程度の敵で何立ち止まってるんだ! 天翔の為に負けられないんじゃないのかっ!」

 

 まずい! とっさに翔は敵の様子を見る。二体の全身装甲は放送室へと視線を向けた。このままビームが発射されれば、明と箒は無事じゃ済まされない――――!

 

 二人を助けるにはここで一気に倒してしまうのが一番だろう。だが、全身装甲を一撃で倒す方法は一夏の零落白夜しかない。どうしたら、あの敵を倒すことができるのだろうか――――

 

 

 

 

 

 

無段階移行(シームレス・シフト)起動。

 

所有者の危険を感知、新規武装を生成します・・・・・

 

敵ISを解析中・・・・・完了、名称『ゴーレム・技の一号』『ゴーレム・力の二号』。

 

解析したISの武装を解析中・・・・・・完了。

 

現在の状況に最も適した武装を生成中・・・・・・・・・・・・完了。

 

新装備『ウィング・フェザース』生成完了。

 

 

 

 

 突然、天翔から新武装の生成を終了したと表示されたウィンドウが現れる。それと同時に新武装『ウィング・フェザース』の使い方が頭の中に流れ込んでくる。これは、セシリアさんのブルー・ティアーズと同じBT兵器だ……!とっさにボクはウィング・フェザースを展開する。その武装は白い羽のようで、とても綺麗なものだった。

 

「行って! 『ウィング・フェザース』!」

 

 ボクは背中に展開されたウィング・フェザースを六機全てを全身装甲へと向ける。ウィング・フェザースは『ビームウィング』、『ガトリングウィング』、『ミサイルウィング』と三種類あり、それが二機ずつあった。一斉にボクたちが相手をしていた全身装甲へ向けて一斉射撃の体勢をする。だが、敵はそれに気づいたのか両手足にあるスラスターを使って回避しようとしていた。

 

「逃がしは…させません!」

 

 回避しようとする敵に対して美香お姉さんは再びミサイルを発射させた。だけど、そのミサイルは先ほどまで使っていたのとは違い、色が緑色から青色に変わっていた。全身装甲はそれを気にすることなく普通に叩き落そうとするけれども、先ほどとは威力が違い、全身装甲はその衝撃で地面に叩きつけられた。

 

「翔くん! お願いっ!」

 

 敵が動けなくなったその瞬間、待機させていたウィング・フェザースで一斉に攻撃をする。

 

「たああああっ!!」

 

 一斉射撃を続けながらボクは白雪を展開して敵に向かって突撃し、白雪を振りかざした。巨大な右腕で防御されて、白雪での攻撃はあまり効いてはいなかった。

 

(もっと、もっとっ!)

 

それでも白雪で攻撃するのを止めずに、そのまま斬り続ける。

自然と腕に力を入れ、無理矢理にでも刃で押し込むようにしていた。

 

「はあああああっ!!」

 

 すると、白雪の刃である白いエネルギーは大きさと輝きを増しす。少しの間だったけれども、その影響なのか、敵の巨大な右腕は切断されていた。

 

「やっ、た………」

 

 敵ISのシールドエネルギーが0になり、ウィング・フェザースの弾も切れた。先ほど輝きを増していた白雪も、エネルギーが切れたのか白い刃がなくなる。そのことを認識すると同時に、ボクの身体に疲れが物凄い勢いで流れ込んできて、ISで浮いているどころか立っていることすらできなくなって、その場に倒れこんだ。

 

 

 

 

「…これで、終わったのね……」

 

 突如現れた無人機二機の内、こっちに引き付けた一機をなんとか倒すことができた。全ては翔くんと、その専用機の天翔のお陰と言っても過言ではないだろう。なぜなら、私はほとんど何もしていないのだから。した事と言ったら足止めのみ。

 

「翔くん……は、きっと疲れちゃっているのね」

 

 新たに生成された武装『ウィング・フェザース』はBT兵器、ブルー・ティアーズを元に天翔がコピーし、自己流に改造した武装なのだろう。だが、本人が動きながらBT兵器も同時に操ると精神的に疲れてしまうという欠点がある。天翔もその弱点は拭いきれなかったようで、翔くんもそれで眠ってしまったのだろう。BT兵器を無理矢理使って疲れてしまっても、特に後遺症がでるワケでも無い。だから翔くんが無事だという事実を確認して、とりあえず安心しきっていた。

 

「「一夏っ!」」

 

 突如響き渡る篠ノ之さんと鈴さんの声、悲鳴じみた声を聞いてふと我に返った。

 

 ―――そうだ、早く二人を助けに行かないと!

 

 無人機は右腕が切り落とされているが、それでも攻撃の手を休める様子を見せない。急いで応援に向かおうとするも、織斑くんは無人機とかなり近く、ここで雨霰を撃とうものなら織斑くんもろとも巻き込んでしまう。加速して織斑くんを射線から弾き飛ばすことも戦女・弐型の機動力では不可能―――こうしている間にも、少しずつ時間は流れっていって、今にもビームが放たれようとした。……だが、その瞬間に客席からブルー・ティアーズが四機、無人機に向けて狙撃した。その全ての攻撃は敵に命中し、ボンッと小さな爆発を起こして落下していった。これで私たちは二機の無人機を相手に勝利した事になる。

……と、今の瞬間まではそう思い込んでいた。――敵ISの再起動を確認! 警告! ロックされています!――と、私たちが倒した無人機が今にも起き上がり、私に向けビームを放とうとしていた。無人機だから、シールドエネルギーが0になっても攻撃を続ける気だ……!

 

「こうなったら……!」

 

 私は戦女・弐型に入れていた武装の内の一つ、通称盾殺し(シールド・ピアース)と呼ばれるパイルバンカー『瓦割(かわらわり)』。一撃しか打つことは出来ないが、当たればシールドエネルギーの大半は持っていくだろう。そんな威力のあるこの武装でシールドエネルギーが0の相手に打ったらどうなるか?

当然だが、装甲を貫いて搭乗者を殺めてしまうだろう。それは勿論普通のISの話だが。相手は無人機、完全に機能停止にさせるには原型と留めなくするかコアを破壊するのみ。普通なら世界に数個しかないコアを破壊するだなんてバカな真似はしないだろう。……だが、私にとって今の状況はとても都合がよいものだった。私は右腕に展開された『瓦割』の杭は三メートルもあり、貫通させるには十分な長さがある。その先端をコアがあると思われる背部へと貫通するように向け、躊躇いも無く打ち込んだ――

 


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