IS 空を翔る白き翼【更新停止】   作:カンチラ

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実はちょっと書き溜めてました。
まだちょっとあるのでしばらく投稿が続くと思います。


13 戦いが終わって

ふと気がつくと、目の前にボクの部屋の天井があった。

目を覚ますと左右から明お姉ちゃんと美香お姉さんがボクの顔を除いていた。

 

「目が覚めたんだね、翔くん。それにしても今日は大活躍だったね~」

 

「あれ? ボク、どうなったんだっけ……」

 

「敵を倒した瞬間に翔くんが倒れちゃって、そのままぐっすり眠っちゃったのよ」

 

…そういえば、天翔の新しい武装『ウィング・フェザース』で、

あの全身装甲のISを倒したんだっけか? 最後の方は意識が曖昧でよく思い出せない。

 

「一夏お兄ちゃんは大丈夫なの……?」

 

「えぇ、1時間くらい前に目が覚めたって織斑先生が言ってたわよ」

 

美香お姉さんが一夏お兄ちゃんが無事だと伝える。

よかった……とりあえずホッと一安心した。

 

「それでね、翔くんが倒れちゃった理由なんだけれども、

 BT兵器はすっごく集中しなきゃ扱うことができないのよ。

 翔くんはさっきの戦いで集中しすぎちゃって倒れちゃったの。

 だから、全部を動かすには訓練しなくちゃいけないの。わかった?」

 

「うん」

 

あのときは無我夢中でボク自身でもよく分からなかった。

けれども、一斉に使えば敵ISを倒すことができると天翔から教えてもらった。

 

それだけじゃない、白雪の刃が輝きを増して大きくなったのも、

まるで天翔がボクに力を貸してくれるような感じだった。

 

「さてと…翔くんが無事に目を覚ました事を織斑先生に伝えなきゃならないから、

 戻るのが遅くなるかもしれないけれど、ちょっと行ってくるね」

 

「ついでに私も一旦部屋に戻るわ。パソコンつけっぱだから消さなきゃならないし」

 

「あ、うん。わかった~」

 

美香お姉さんと明お姉ちゃんはそう言って部屋を出て行った。

これから特にすることもないし、もう一回寝よう。

身体に疲れが溜まってるときは寝るのが一番だと一夏お兄ちゃんも言ってたし。

ボクはベッドに横になって、眠る為に目を閉じた。

 

 

―――――コンコン。

 

ドアがノックされる音で目が覚める。

ノックの音は小さかったけれども、ボクの眠りも浅かったから小さい音で目が覚めた。

 

「はいはーい、どなたですか~?」

 

お布団で横になっていたボクは身体を起こして、ドアへと向かう。

起き上がるときに少しだけクラクラとしたけれども、多分問題は無いと思う。

ボクからしたら少し高いドアを開けて、その先にいたのは……

 

「…鈴さん?」

 

「ちょっといいかしら? 今日の事で話がしたいんだけど」

 

「あ、はい。大丈夫ですよ」

 

「…その、今日はありがと。アンタ達がいたおかげで何とか一体を倒せたんだしね」

 

鈴さんはなんだか照れくさそうに言う。

ボクだけで倒したわけじゃないけれども、それでもお礼を言われると嬉しい。

 

「……でも、一夏お兄ちゃんと鈴さんがいなかったら、

 ボクたちもやられてたかもしれないから…こちらこそありがとうございました」

 

鈴さんにぺこり、とお辞儀をしてボクからもお礼を言った。

 

「うりゃっ」

 

「ふにゃっ!?」

 

頭を上げた瞬間、鈴さんは何を思ったのかボクの頬っぺたを両手でつねった。

 

「お~、やっぱ結構柔らかいわね」

 

「ふぁ、はにふるんれふか~っ」

 

何するんですか、と言おうとしたけれども頬っぺたを引っ張られて上手く喋れなかった。

ボクが講義の声を出したからか、鈴さんはボクの頬っぺたから手を離した。

 

「い、いきなり何するんですか?」

 

「ガキンチョの癖して生意気にも敬語なんて使ってるからつねった。

 あとついでに柔らかそうだから引っ張ってみた。文句ある?」

 

「…えっと、普通逆じゃないですか? 敬語使わないで生意気っていうのは解りますけども」

 

「だ~か~らっ、そういうトコが生意気だって言ってんのよ!」

 

再び鈴さんはボクの頬っぺたを引っ張ってグリグリと弄った。

さっきから鈴さんはボクのどこが生意気だって言ってるけど、思い当たるフシが無い。

 

「ら、らはらふぁっひはらあにほひっへぇぇ」

 

「アンタさ、もっと甘えたっていいんじゃないの?

 変に気を使わないで子供らしく無邪気になってもいいんじゃない?」

 

鈴さんは再びボクの頬っぺたから手を離す。

 

「あう…その、ごめんなさい……ボク、そんな…」

 

再びごめんなさい、と鈴さんに謝ろうとすると、

鈴さんはボクの頭を撫でながらこう言ってくれた。

 

「アンタさ、自信が無いからそんな弱気になっちゃうのよ。

 だからいつまでたっても人に気を使っちゃうってワケ。

 実力はあるみたいだし、もっと堂々としたらどうなの?」

 

「で、でもボク、皆さんと比べると実力なんて……」

 

「それじゃ、自信がつくまで練習したらいいだけの話じゃない。

 な、何なら一夏のついでにアンタも一緒に教えてあげてもいいけど?」

 

「え…? いいんですか?」

 

「言っておくけど、一夏のついでなんだからね!

 べ、別にアンタを鍛えるのはオマケ! 本命は一夏なんだから!」

 

鈴さんは腕を組んでぷいっと顔を逸らしてしまった。

普段のボクなら怒らせてまたゴメンなさいって言うかもしれない。

けれども、今の鈴さんの行動は照れ隠しにしか思えなかった。

 

「ありがとう! 鈴お姉ちゃんっ!」

 

ボクはそれが嬉しくて、鈴お姉ちゃんにお礼を言った。

 

「…っ、じゃ、じゃあこれからちゃんと毎日来なさいよ!」

 

鈴さんは顔を真っ赤にして逃げるように去っていった。

それと入れ替わるように明お姉ちゃんと美香お姉さんが来る。

 

「翔くん、お待たせ~」

 

明お姉ちゃんの手にはなぜか昔のゲーム機が持ってあった。

 

 

 

 

それから夕食を食べ終え、ボク達は三人でゲームをやっていた。

どうして64なのか、しかも初代のマ○パなのかはよくわからないけど…

 

「よっしゃー! 美香のスターは頂いたー!」

 

「フフフ、テレサでスターを奪うなんていい度胸してるじゃない」

 

相変わらず、明お姉ちゃんはゲームがすっごい上手だ。

だからボクも美香お姉さんも明お姉ちゃんにやられっぱなしだった。

 

「おっ、大砲でスターのマスのすぐ目の前に飛んだよ。めずらしー」

 

「でもコイン無いんでしょう?」

 

「…さっきミニゲームで明お姉ちゃんに勝ってたらなぁ」

 

さっきから明お姉ちゃんが強すぎて敵わない。

こんな風にスターを入手しようにもミニゲームはほとんど明お姉ちゃんが勝ってしまう。

ボク達のコイン入手経路は青いマスか一人ミニゲームだけだ。

 

「こりゃあ今回も私の圧勝ですかなぁ~?」

 

ワザとらしく明お姉ちゃんはボク達に挑発してくる。

実際に孤児院でもサバゲだろうが対戦するゲームだろうが事があるごとに勝ってた気がする。

 

「翔くんと稗田さん、いますかー?」

 

玄関から山田先生の声が聞こえるが、ミニゲームが開始する直前の画面に映り、

ボク達は移動するにしてもまだ移動できない状態だった。

 

「このミニゲームで負けたら出るってのはどうかな?」

 

「それじゃあそれにしよっか」

 

「オイこら待てよお前らこれ3対1のミニゲームだし、

 私がフルボッコにされる大魔王の役割の虐めミニゲームじゃねぇかよ

 それにどうやって勝敗つけるんだよ二人で先生を出迎えるつもりかよ」

 

「明が行けって言ってるのよ、言わせないでよ恥ずかしい」

 

「今酷い虐めを垣間見た」

 

「いるんですかー? 入りますよー」

 

山田先生も山田先生で勝手にマスターキーを使って部屋に入らないでください。

 

「山田先生、どうしたんですか?」

 

「はい。お引越しです」

 

「私が?」

 

「いえ、稗田さんがですよ」

 

明お姉ちゃんはどうしたらそんなリアクションがとれるんだろう。

まぁ、今のは素で天然な発言だったかもしれないけれど。

 

「そう、ですか……」

 

美香お姉さんは少しだけ悲しそうな表情をしていた。

…ボクもできれば美香お姉さんと一緒の部屋がいいなぁ……

でも、美香お姉さんが引っ越すなら、ボクはどうなっちゃうんだろう?

 

「あれ? 山田先生、ボクは一夏兄ちゃんと同じ部屋じゃないんですか?」

 

「あ、はい。それは今後に……」

 

「……そうなんですか、それじゃあ早くしましょうか」

 

と、美香お姉さんは言い、64の電源を消した。

 

「ムワァァァァァァァ! 私の勝っていたプレイデータが……」

 

「どっちにしろ完全クリアしてたんだし、別にいいでしょ?」

 

「我が黄色の貴公子は戦場に散った……じゃあ、美香の引越しを手伝うとしますか」

 

「切り替えが早いわね。明のそういう所が私は好きよ(弄りやすくて)」

 

「そっかー、私も美香のことが好きだぞー(弄りやすくて)」

 

何だか二人が思っていることが重なっているように見える。

一夏兄ちゃんにも言えることだけど、心が悟られやすいのかな?

 

「それで、私はどこの部屋に引っ越すんですか?」

 

「はい、えーっと……1089号室です!」

 

山田先生はなぜか自身満々に答えた。

それに一番過剰に反応したのは明お姉ちゃんだった。

 

「あれ、そこ私の部屋じゃん! 最近一人部屋は寂しいと思ってたんだー」

 

「……ここからが本当の地獄ね」

 

美香お姉さんは『これから地獄に行ってきます』って感じの表情だった。

でも、二人とも仲がいいんだし、大丈夫だよね……?

……あれ、美香お姉さんがちょっと心配になってきた。

 

 

 

 

さっきまで隣のベッドで美香お姉さんが寝ていたのに、今は誰もいない。

そのせいか部屋は二人でいたときより広く感じていた。

でも、逆に広すぎて一人で寝ているのがとても寂しい……

布団に横になって頑張って寝ようとすると、玄関からノックをする音が聞こえる。

 

「誰だろ……?」

 

ボクは起き上がり、玄関に向かって扉を開ける。

ドアをノックしていたのはさっきまで同室だった美香お姉さんだった。

 

「ねぇ、翔くん。最後に一緒に寝ていいかな…?

 もう既に寮長とは話がついてるし、許可は出てるから……」

 

「う、うん……」

 

美香お姉さんは部屋に入って、ボクのお布団に入ってくる。

……え、一緒に寝るってそういうことなの…?

 

「あ、あの、美香お姉さん…?」

 

「なぁに?」

 

「その……一緒に寝るっていっても、一緒のお布団で…?」

 

「そうよ。……それとも、嫌?」

 

「う、ううん。嫌じゃないけど…なんでだろう、って思って……」

 

「ふふふ……ちょっとだけ思い出を作ろうと思ってね」

 

美香お姉さんはクスクスと笑った。

それの笑いはなんだか怖いんだけれども、それと同時に惹きつけられるような感じだった。

 

「ねぇ、翔くん。美奈ちゃんのことは好き?」

 

「え…? うん、好きだよ」

 

いきなり、美香お姉ちゃんは美奈ちゃんのことが好きかどうかを聞いてきた。

もちろん、その答えは好きだって答えた。

だって、一緒に遊んでくれるし、いっつも一緒だし……

 

「それでね、翔くん……来月にさ、学年個人別トーナメントがあるんだ…

 もしもの話なんだけれども、私がそれに優勝したらとしたら――――」

 

美香お姉さんは息を呑んでボクに決心をするように言った。

 

 

 

 

「―――私のことをお義姉さんと呼んでくれないかしら?」

 

 

 

 

 


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