IS 空を翔る白き翼【更新停止】   作:カンチラ

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03 セシリアさんにごめんなさい

「ちょっと、よろしくて?」

 

「へ?」

 

「はい?」

 

突然話しかけられて、ボクと一夏お兄ちゃんは頓狂な声を出した。

 

「まぁ! それが人に何かを聞く態度ですの?

 わたくしに話しかけられるのですから、それ相応の態度もあるのではなくって?」

 

「………」

 

この金髪のお姉さんは、なぜかボク達に対して上から目線だった。

多分、この人はお母さんが言ってた女尊男卑を意識している人なんだろう。

 

「悪いな、俺、君が誰だか知らないし」

 

「わたくしを知らない? このセシリア・オルコットを?

 イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」

 

多分、このセシリアさんが言うのはISで偉いほうの人らしい。

なにやら難しいことを言ってて何がなんだか分からなかった。

 

「あ、ちょっと質問していいか?」

 

「ふん。下々の者の要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

「代表候補生って何?」

 

一夏お兄ちゃんがとてつもない事をセシリアさんに聞いてくる。

その言葉を聞いていたクラスのお姉さんのほとんどがドタドタとずっこけた。

 

「あ、あ、あ……あなたっ! 本気でおっしゃってますの!?」

 

「おう。知らん。っていうか翔、なんでずっこけてるんだ?」

 

一夏お兄ちゃんは素直にセシリアさんに知らないものは知らないと言った。

でも、いくらなんでも代表候補生が何か聞くのはどうかと…流石にボクでも知ってる。

 

「信じられない。信じられませんわ……極東の島国というのは、

 こうまで未開の地なのかしら。常識ですわよ。常識……テレビが無いのかしら…?」

 

セシリアさんはさっきまでボクと一夏お兄ちゃんに怒ってたけれども、

一夏お兄ちゃんによるまさかの発言によってか、逆に冷静になっていた。

 

「一夏お兄ちゃん、代表候補生っていうのは、国の代表になりそうな凄い人なんだよ」

 

「そう! その子の言うとおり、国の凄いエリートなのですわ!

 全く、まだあなたよりもこの子の方が可愛げがありましてよ!」

 

ボクが説明すると、さっきまで落ち込みそうだったセシリアさんは、

急にピーンと背筋を伸ばして、さっきまでの偉そうな態度になった。

そして一夏お兄ちゃんに人差し指をピンッと指しながら言った。

 

「本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、

 クラスを同じくすることだけでも奇跡、幸運なのよ! それを理解して頂ける?」

 

「そっか。それはラッキーだ」

 

「…馬鹿にしてるのですの?」

 

なぜかセシリアさんは馬鹿にされていると思っていた。

自分で幸運だと言っていたのに、なんだかよく分からない。

 

「大体、あなた方はISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。

 世界で二人しかいない男でISを操縦できると聞きましたから、

 少しくらい知性さを感じさせるかと思っていましたけど、期待はずれですわね」

 

「俺に何かを期待されても困るんだが」

 

「ふん。まぁでも? わたくしは優秀ですから、

 あなたのような人間にも優しくしてあげますわよ」

 

全然優しくない態度ですよー…なんて言ったら怒られるに違いない。

だからボクは何も言わずに黙っていた。

 

「ISのことで分からないことがあれば、まあ……

 泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。

 何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

なぜかセシリアさんは唯一の部分を強調して言った。

入試で唯一という部分が一夏お兄ちゃんは気になったのか、セシリアさんに言う。

 

「入試って、あれか? IS動かして戦うってやつ?」

 

「それ以外に入試などありませんわ」

 

「あれ? 俺も倒したぞ、教官」

 

「は……?」

 

セシリアさんは信じられないような声を上げる。

実際、ボクも一夏お兄ちゃんが教官を倒したなんてちょっと信じられない。

ボクもやったけれども、ISを宙に浮かせるのに精一杯で、

その間に色々されて……浮いてるだけで負けてしまったから。

 

「わ、わたくしだけだと聞きましたが?」

 

「女子ではってオチじゃないのか?」

 

すると、セシリアさんからピシッと氷の割れたような音が聞こえた。

幻聴であればよかったのに、なぜか今日はセシリアさんの心の音が聞こえてしまったようだ。

 

「つ、つまりわたくしだけではないと…?」

 

「いや、知らないけど」

 

「あなた! あたなも教官を倒したって言うの!?

 それとこの子はなんでさっきから何も喋りませんの!?」

 

急にボクに話題を振ってくる。

怒っているし、何を言っても怒るかもしれない。

 

「うぅ……ごめんなさい……」

 

ボクは無意識に謝ってしまった。

セシリアさんはボクの態度にムッと怒ったように見えた…

 

「あぁ、多分倒したと思うぞ」

 

「多分!? 多分ってどういうことかしら!?

 それと謝らないでくださいな! 私が聞きたいのは―――」

 

「えーと、落ち着けよ。な?」

 

「これが落ち着いていられ―――」

 

しかし、ここで学校のチャイムが流れる。

これから三時間目が始まるため、席に座っていなければならない。

 

「っ……! また後で来ますわ! 逃げないことね! よくって!?」

 

セシリアさんは納得できないようで、また一夏お兄ちゃんに来ると言っていた。

一夏お兄ちゃんもめんどくさそうだったけれども、

ここで断るとまためんどくさいことになりそうだったので、黙って頷いていた。

 

 

 

 

 

 

「お前ら、席に着け。授業を始めるぞ」

 

織斑先生が教室に入り、三時間目の授業が始まった。

 

「さて、授業を始める前に再来週に行われるクラス対抗戦の代表者を決めなければな」

 

と、織斑先生は授業を始める前に何か代表を選ぶらしい。

その代表者とは何かを織斑先生は説明を始める。

 

「クラス代表とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、

 生徒会の開く会議や委員会への出席……まぁ、クラス長だな。

 ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。

 今の時点で大した差はないが、競争は向上心を生む。

 一度決まると一年間変更はないから、そのつもりでな」

 

織斑先生が説明を終えると、教室がざわつき始めた。

そして、クラスのお姉さんたちが挙手をし、推薦する。

 

「はいっ。織斑くんを推薦します!」

 

「私もそれがいいと思います!」

 

「折角だから、私はこの翔くんを推薦するぜ!」

 

「私も翔くんを推薦しま~す」

 

ボクと一夏お兄ちゃんの名前が次々と挙がっていく、勘弁して……

一夏お兄ちゃんを見てみると、最初は他人事のような顔をしてたが、

次々と名前が挙がっていくと、自分の事だと自覚したのか…

 

「お、俺!?」

 

「織斑、席に着け、邪魔だ。さて、他にはいないのか? いないのなら――」

 

「待ってください! 納得がいきませんわ!」

 

机をバンッと叩いてセシリアさんが立ち上がる。

もしかすると、クラス代表になってくれるかもしれない。

 

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!

 わたくし、セシリア・オルコットにそんな屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

クラス代表になってくれるかもしれないと言ったけれども、

なんていうか…セシリアさんは男の人が嫌いなんだろうか?女尊男卑ってだけで?

 

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。

 それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!

 わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、

 サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

…なんていうか、物凄い悪口を言っている気がする。

それと、後で聞いたけれどもイギリスも島国らしい。こんなの絶対おかしいよ。

 

「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

 

確かに、クラスの中で代表候補生はセシリアさんだけだけども……

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、

 私にとっては耐え難い苦痛で―――」

 

ここで、一夏お兄ちゃんから氷を叩いたような、カチンという音が聞こえる。

今日は心の効果音がよく聞こえる日だなー…なーんて思う暇もなく、

一夏お兄ちゃんはセシリアさんに対して喧嘩を売ってしまっていた。

 

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

 

「なっ……!?」

 

一夏お兄ちゃんは『つい言っちまったぜ!』みたいな顔をしていた。そんなに余裕は無いけど。

おそるおそる後ろを振り向くと、そこには怒り爆発なセシリアさんがいた。

 

「あっ、あっ、あなたねえ! わたくしの祖国を侮辱してますの!?」

 

当然、セシリアさんは一夏お兄ちゃんに対してかなり怒っている。

 

「決闘ですわ!」

 

バンッと机を叩くセシリアさん。

後で聞いた話、決闘をするには手袋を投げなければならないらしい。

 

「おう。いいぜ。四の五のいうよりわかりやすい」

 

「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い……

 いえ、奴隷にしますわよ」

 

「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

 

「そう? 何にせよ丁度いいですわ。イギリス代表候補生の

 このわたく、セシリア・オルコットの実力を示すいい機会ですわね!」

 

「ハンデはどのくらいつける?」

 

「あら、早速お願いかしら?」

 

「いや、俺がどのくらいハンデをつけたらいいのかなーと」

 

すると、一夏お兄ちゃんが言うとクラスのほとんどの人がドッと笑い始める。

……よく見て見ると、明お姉ちゃんと美香お姉さんは笑っていない。

むしろ、この光景に呆れているようにみえる。

 

「お、織斑くん、それ本気で言ってるの?」

 

「男が女より強かったのは昔の話、今は違うよ」

 

「織斑くんは、それは確かにIS使えるかもしれないけど、

 流石に代表候補生相手にそれは言いすぎだよ」

 

確かに、ISに乗りなれた人に対してISの素人がハンデをつけるのはおかしい。

一夏お兄ちゃんもそれで納得したみたいだ。

 

「…じゃあ、ハンデはいい」

 

「ええ、そうでしょうそうでしょう。むしろ、

 わたくしがハンデを付けなくていいか迷うくらいですわ。

 ふふっ、男が女よりも強いだなんて、日本の男子はジョークセンスがありますのね」

 

なぜかセシリアさんはご機嫌なようで、

今にも鼻歌でも歌いそうにご機嫌であった。

 

「ねー、織斑くん。今からでも遅くないよ?

 セシリアに言ってハンデ付けてもらったら?」

 

一夏お兄ちゃんの斜め下の女の人が話しかけてくる。

 

「男が一度言い出したことを覆せるか。ハンデは無くていい」

 

「えー?それは代表候補生を舐めすぎだよ。それとも、知らないの?」

 

「あ、そうだそうだ! はいはーい! ちょっとセシリアさんにお頼み申す!

 クラス代表を決めるのは決闘で翔くんも参加するんスよね!

 そん時に翔にハンデ与えてやってくんないかね。大丈夫かな?」

 

突然、明お姉ちゃんが席を立って大声でセシリアさんに言い始める。

やっぱり、セシリアさんも突然すぎて驚いているようだった。

 

「なっ……あなた、いきなりなんですの!?」

 

「あっ、ゴメンね。とりあえず自己紹介しとく!

 私は野々原 明! 翔くんと一緒の孤児院出身で私は姉!」

 

すると、周りのお姉さんたちはざわつき始める。

 

「え…? 翔くんって孤児院にいたの?」

 

「翔くんが弟かぁー…いいなー」

 

「あの子、テンションおかしくない?」

 

ざわつき始める教室を沈めるように織斑先生が言う。

 

「あー…コホン。それでだ、野々原が言うにも一理ある。どうだ? オルコット」

 

「えぇ、構いませんわ」

 

セシリアさんはボクに対してハンデを付けることを許可してくれた。

……でも、明お姉ちゃんがいうハンデはなんだろう?

 

「…それで、ハンデの内容はなんですの? 主力武器の使用制限でしょうか?」

 

「いーや、翔くんに加えてもう一人追加して戦ってほしいんだけど」

 

「えぇ、相手が一人増えても問題ありませんわよ」

 

「それじゃあ、織斑くんと一緒に戦ってくれね?」

 

明お姉ちゃんが突然、突拍子もなく突然な事を言い出した。

いきなり、本当にいきなり何を言っているのだろうか?

 

「なっ!? ちょっと待……」

 

「黙れ、馬鹿者」

 

一夏お兄ちゃんも驚いて席から立ち上がった。

しかし、立った瞬間に織斑先生が一夏お兄ちゃんの頭を叩いた。

 

「さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜日。放課後、

 第三アリーナで行う。織斑と天野とオルコットは用意をしておくように。

 それでは、授業を始める―――」

 

そして、織斑先生は何事もなかったかのように授業を始めた。

……なんで明お姉ちゃんはボクを一夏お兄ちゃんと組むようにしたのかな…?

 


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