IS 空を翔る白き翼【更新停止】   作:カンチラ

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04 気になる同居人

放課後になり、ボクは美香お姉さんに勉強を教えてもらっていた。

 

美香お姉さんの説明は、少なくとも山田先生よりも分かりやすかった。

だけど、解りやすい説明であっても、ボクには少ししか理解できなかった。

 

ISは元々は宇宙開発用だったとか、兵器としての性能が凄いって事は分かった。

一夏お兄ちゃんは山田先生と一緒に勉強していたけど、何が何やらと言った感じだった。

 

今日の勉強はもうこの辺りで終わって、美香お姉さんと山田先生は先に帰っていった。

ボクと一夏お兄ちゃんは勉強で疲れてしまって、しばらく座ったまま動けなかった。

教室の周りには、放課後にも関わらずにボクと一夏お兄ちゃんの姿を一目見ようと、

別の学年の人たちが大量に押し寄せていて、あまり出たくない状況だった。

 

「うう……意味が分からん…。何でこんなにややこしいんだ……?」

 

一夏お兄ちゃんは勉強が全く分からくって机にグッタリとしていた。

ボクも一夏お兄ちゃんと一緒の体勢でぐでーっとしていた。

 

「ね、ねぇ…一夏お兄ちゃん……」

 

「ん? どうした?」

 

「ボクたち、セシリアさんに勝てるのかな?」

 

ボクは正直に思うと、とてもじゃないが勝てるとは思えない。

実力がどのくらいあるのかは分からないけど、唯一入試で教官を倒したって言ってるた。

ボクの時は倒せなかった。それどころか浮くことで精一杯だった。

最も、一夏お兄ちゃんは倒していたらしいけれども……

弱気なボクの反応に対して一夏お兄ちゃんは強気な姿勢を見せる。

 

「あと一週間はあるんだ。それまでに出来る事を出来るだけやって、

 それで当日になったらとにかく足掻けるまで足掻いて見るしかないさ」

 

一夏お兄ちゃんの言葉も、あまり勝算があるような事は言っていない。

…だけど、どうしてだか。一夏お兄ちゃんはセシリアさんに勝てる気がする。

なんとなく、ボクが勝手にそう思っているだけだけど。

 

「ああ、織斑くんに天野くん。まだ教室にいたんですね。よかったです」

 

教室で一夏お兄ちゃんとぐでぐでしていると、

山田先生がボクと一夏お兄ちゃんを探していたようで、ボクたちに話しかけてくる。

 

「二人の寮の部屋が決定しました」

 

山田先生はボクと一夏兄ちゃんに番号が書かれた鍵を渡してきた。

ボクが貰った鍵の番号は1011と書かれてあってボクの部屋の番号を示していた。

 

「俺の部屋、決まってないんじゃなかったですか?

 前に聞いた話だと、一週間は自宅から通学してもらうって話でしたけど?」

 

「えっと、たしかボクもそんな感じでしたけれど……」

 

普通なら女子高の寮を、男子二名を女子寮に入れるのはかなりの問題がある気がするけど…

IS学園は色々安全だって聞いてるし、寮だと何かと便利なんだろう。

 

「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理矢理に

 変更したみたいなんです。……二人とも、政府から聞いてますか?

 

すると、山田先生はボク達の耳元でこっそりと耳打ちしてくる。

ぼそぼそと耳元で喋っているから、凄いくすぐったい。

 

「そう言うわけで、政府特命もあって、とにかく寮に入れるのを最優先したみたいです。

 一ヶ月もすれば個室のほうができますから、しばらく相部屋で我慢してください」

 

「…あの、山田先生、耳に息がかかってくずぐったいのですが……」

 

一夏お兄ちゃんがボクが言いたかったことを言う。

それに対して山田先生はなぜか顔を赤くして過剰に反応した。

 

「あっ、いやっ、これはそのっ、別にわざとではなくてですねっ……」

 

「いや、わかってますけど……。それで、部屋はわかりましたけど、

 荷物は一回持ち帰らないと準備できないですし、今日はもう帰っていいですか?」

 

「ボクも荷物持ってこなきゃいけないんですけれども……」

 

ボクはIS学園に入学する前に、あらかじめ荷物はある程度はまとめていて、

旅行用のかばんに入れてるのを持ってこれば自分の最小限の物は大丈夫のはず。

 

「あ、いえ、荷物なら――」

 

「私が手配しておいてやった。ありがたく思え。

 天野は母親が既に用意していたようだぞ、感謝しておくんだな」

 

「ど、どうもありがとうございます……」

 

「まぁ、生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器があればいいだろう」

 

織斑先生、随分と大雑把ですね。

一夏お兄ちゃんは他にも色々と必要なモノはないのだろうか?

 

「じゃあ、時間を見て部屋に言ってくださいね。

 夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂で取ってください。

 ちなみに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。

 学年ごとに使える時間が違いますけど……

 えっと、その、織斑くんと天野くんは今のところ使えません」

 

「え、なんでですか?」

 

「アホかお前は」

 

「一夏お兄ちゃん、女の人と一緒に入りたいの?」

 

「あー……」

 

そうだった、と言わんばかりに思い出したような声を出す一夏お兄ちゃん。

ボクと織斑先生はそれに突っ込んで、山田先生はなぜか慌てていた。

 

「おっ、織斑くんっ、女子とお風呂に入りたいんですか!? だっ、ダメですよ!」

 

「えっ? 一夏お兄ちゃん、やっぱり女の人と一緒にお風呂に入りたいの?」

 

「い、いや。入りたくないです。ってか翔、やっぱりってなんだ、やっぱりって」

 

「ええっ? 女の子に興味が無いんですか? そ、それはそれで問題のような……」

 

一夏お兄ちゃんがそういうと、なぜか山田先生はそんな風に反応した。

その言葉を聞いていたお姉さんたちは何かぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた。

 

「織斑くん、男にしか興味ないのかしら…?」

 

「それはそれで…いいわね」

 

「織斑くん攻め×翔くん受けの薄い本はよ」

 

「言いだしっぺの法則というものがあってだな」

 

やっぱり、このお姉さんたちが何を言っているのかわからない。

お姉さんたちと同じ歳になれば分かるのかな?

 

「えっと、それじゃあ私たちは会議があるので、これで。

 織斑くん、天野くん。ちゃんと寮に戻っていてくださいね」

 

そう言って織斑先生と山田先生は教室を出て行く。

教室に残っているのはボクと一夏お兄ちゃんだけ。

最も、教室の周りにはたくさんのお姉さんたちがいるのだけど。

 

「なぁ、翔は何号室なんだ?」

 

「うんっとね…1011って書いてあるよ」

「そうなんだ。俺は1025号室だし、途中までは一緒だな。一緒に行こうぜ」

 

「うん」

 

一夏お兄ちゃんはボクに対して手を握れるように手を出してくれた。

ボクは一夏お兄ちゃんの手を握って部屋へ行った。

 

 

 

 

 

 

一夏お兄ちゃんと手を繋いで歩いていくと、

ボクの部屋である1011と書かれていた部屋の扉の前に来ていた。

 

「あ、ボクの部屋はここみたい」

 

「そっか、俺の部屋と近いな。

 この距離なら俺か翔が遊びに来ても大丈夫だな」

 

一夏お兄ちゃんはまた遊ぼうと誘ってくれた。

ボクはそれが嬉しくって、喜んでさよならをした。

 

「う、うん! それじゃあ、またね! 一夏お兄ちゃんっ!」

 

「おう、それじゃあなー」

 

ボクは一夏お兄ちゃんに手を振って別れた。

ドアに貰った鍵を入れて、部屋の中に入った。

 

部屋の中は凄く豪華な造りだった。

小学生の頃に行った修学旅行のときに止まった部屋と同じようなものだった。

ベッドは凄く大きいし、テレビも大きいし、色々と大きかった。

 

「…あら、同室の人かしら?」

 

部屋に入って、シャワールームの方から聞こえる声。

その声はボクにとってとても聞き覚えのある声で……

 

「ごめんなさい。シャワーを浴びてたの。

 私、稗田美香。よろしくね……あら、翔くん?」

 

シャワーを浴びていたからか、バスタオルを体に巻いて体は濡れていた。

そして、バスタオルが体を隠し切れてないのか……胸がとても大きかった。

 

「あ、あの、美香お姉さん、その……」

 

「…! ご、ごめんねっ! すぐ着替えてくるから!」

 

ボクが美香お姉さんに言おうとしたら、

美香お姉さんが顔を真っ赤にしてシャワールームへと急いで入っていった。

シャワールームからゴソゴソと着替える音がして、美香お姉さんが着替えてきた。

ちらり、とドアから少し顔を出してボクを見てくる美香お姉さん。

 

「さ、さっきはゴメンね。私はてっきり同室の人は女の子だと思って……」

 

「う…ボクの方こそゴメンなさい…その、あの……」

 

ボクは美香お姉さんに謝ろうとしたけど、

美香お姉さんはボクの唇に人差し指をそっと触っていた。

 

「翔くんが謝る必要はないのよ? ねっ?」

 

相変わらず、美香お姉さんは本当に『お姉さん』って感じがした。

明お姉ちゃんは孤児院にいるときからずっとお姉ちゃんだけれども、

なんていうか…明お姉ちゃんはお姉ちゃんというよりも、

ちょっと年上の仲のいい親友って感じだったからなぁ……

 

「これからよろしくね、翔くん」

 

美香お姉さんはぺこり、とお辞儀をした。

ボクもそれにつられてぺこり、とお辞儀を返した。

 

一緒に暮らす人が知ってる人でよかった。

知らない人だと色々と遠慮しちゃうし、凄く気まずくて仕方ない。

でも、知っている人で仲のいい人で本当によかったと心底思う。

美香お姉さんは優しいし、同じ部屋だと勉強も教えてくれるかもしれない。

 

「えへへ…よろしくお願いします」

 

ボクはつい笑いながら美香お姉さんに挨拶をする。

美香お姉さんは微笑んでボクの頭を撫でてくれた。

その手つきは優しくて、とても気持ちがいいものだった。

 

撫でられ続けていると、安心して眠たくなってくる。

このまま眠ってしまったら美香お姉さんに迷惑かけてしまうかもしれない。

だから一度は撫でるのを止めて欲しいと言おうとしたけれども、

美香お姉さんは全てを見透かしているようで、撫で続けるのをやめなかった。

 

今日はもう疲れたみたいだから、今日はもう眠りなさい。

着替えとか、衣服を畳んでおいたりするのは私が全部しておくから。

と、美香お姉さんは優しく言っているように感じた。

 

本当はこのまま起きて、荷物を片付けなきゃならないのだけど、

結局、ボクは睡眠欲に負けてしまい、片付けなどを美香お姉さんに押し付けてしまった。

 


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