IS 空を翔る白き翼【更新停止】   作:カンチラ

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誤爆して先に8話目を投稿してしまいました。
感想でそのことを指摘してくれた人がいたのですが、
なぜか自分は勘違いしてタイトルの数字を間違えてるだけだと勘違いしてしまいました。

申し訳ございませんでした。


07 セシリアさんとの決着

 

―――フォーマットとフィッチングが終了しました。確認ボタンを押してください。

 

(え…? な、何?)

 

ボクの頭の中に直接、データが送り込まれてくる。

それと同時に目の前に現れたウィンドウ。

ウィンドウの真ん中には確認と書かれたボタンがあった。

 

ボクはそのまま確認のボタンを押す。

そうしたらボクの中に入ってきたデータが整理整頓されていた。

 

金属を擦るような高い音が頭の中に響く。

でもその音はうるさくなくって、むしろ居心地がいいように感じた。

すると、ボクが使っていた天翔は光の粒子になって消え、

光はボクの体を包み込むように集まり、そして新たな姿を現した。

 

「これは……」

 

「本当の、姿…?」

 

一夏お兄ちゃんも同時に似たようなことが起こっているらしい。

 

新しくなったからか、さっきまで受けていた傷も無くなっていた。

さっきまで無かった部分などが現れ、その変化を形として表していた。

 

「ま、まさか……一次移行!? 

 あなた方は今まで初期設定だけの機体で戦っていたんですの!?」

 

そっか、今のセシリアさんの発言でこの状態が何なのかは分かった。

これで天翔はボク専用のISになったって事だ。

今、ボクは初めて自分自身の翼を得ることができたんだ。

これ以上に嬉しいことはほかに無いだろう。

けれども、それと同じくらいにボクの天翔には嬉しい変化が起こっていた。

 

(一つだけだけど、武器がある……!)

 

さっきまで無かった武器の一覧表に、一つだけ武器がある。

白雪(しらゆき)』と名前のついている刀の装備を右手に展開した。

 

その刀は柄の部分しかなかったが、柄から白い光の刃が現れる。

ビームで作られた刀は白く輝き、雪のように美しかった。

 

「俺は世界で最高の姉さんを持ったよ」

 

「ありがとう、天翔……ボクをパートナーとして選んでくれて……」

 

過去に辛いときがあったとき、ボクは空を眺めていた。

自由に空を飛んでいる鳥類が羨ましくて、鳥になりたいって思ったこともある。

でも、これでボクは自由に空を飛ぶことができる『翼』を手に入れたんだ。

 

「俺も、俺の家族を守る」

 

「ボクは選んでくれた天翔の為にも……」

 

「……はぁ? 何を仰って……」

 

「とりあえずは、千冬姉の名前を守るさ!」

 

「僕は選んでくれた天翔の為にも負けられない!」

 

ボクはまだ小学生だし、クラスの誰よりも未熟な存在だ。

けれども、天翔はボクの専用機でも、立派なISだ。

意思を持っているISに見っとも無いことをする分けにはいかない。

 

……というか、今になってボクの専用機の名前について疑問を持った。

ボクの名前そっくりで、なんだか自分の名前を呼んでいるようで恥ずかしい。

 

「というか、逆に笑われるだろ」

 

「あはは…ちょっと恥ずかしいかな」

 

「だからさっきから何の話を…あぁ、もう! 面倒ですわ!」

 

セシリアさんは腰部にあるビットにミサイルを再装填した。

そのビットは一機ずつボクたちの方向へと襲い掛かってくる。

 

(動きが見える……!)

 

ボクに襲い掛かってくるビットを手に持った白雪で切断する。

真っ二つになったビットは爆発し、粉々になって消えた。

 

セシリアさんに向かおうとするが、セシリアさんも後方に下がって距離をとる。

もっと、速く近づかないと、ボクの攻撃は避けられちゃうだろう。

 

――――瞬間的に、一気に加速する感覚!

 

ボクの体は一瞬でセシリアさんの前に移動した。

右手に持っていた白雪を使ってブルー・ティアーズの装甲を切り裂く。

 

「なっ……!?」

 

一瞬、ボクがセシリアさんの目の前に現れたこと。

そしてボクに攻撃を受けられたことに怯んで動きを止めていた。

 

一夏お兄ちゃんが後方から迫ってくる。

右手に持っている白い刀は大きな力強い光を放っていた。

 

「おおおおおおっ!!」

 

ボクは一夏お兄ちゃんが攻撃できるように、左側へと移動する。

そしてさっきまでボクがいた場所には一夏お兄ちゃんの姿があった。

右手に持っていた白い刀で思いっきりセシリアさんに斬りかかる!

 

攻撃は少し装甲を切り裂いただけだったが、その攻撃力は凄まじく、

ほとんど満タンだったブルー・ティアーズのエネルギーを削っていった。

威力はまさに一撃必殺、そして試合の終了を告げるブザーが鳴り響き―――

 

『試合終了。勝者――織斑一夏、天野翔』

 

ボクと一夏お兄ちゃんの勝利が決まった。

 

「やったな、翔!」

 

「やったね、一夏お兄ちゃん!」

 

ボクと一夏お兄ちゃんはセシリアさんに勝ったことを喜んでハイタッチした。

その瞬間、第三アリーナから歓声の声がワーッと聞こえた。

 

こうして、ボクと一夏お兄ちゃんの初戦闘は見事に勝利で決まった。

 

 

 

 

「おぉ~、やったなぁ…翔くん!」

 

アリーナの内部を写していたモニターを見て、明は喜びの声を上げた。

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)か~……かつてブリュンヒルデが愛用してた技術だね」

 

その言葉に千冬はムッとした表情をし、明に威圧的なように話した。

 

「それは皮肉か? 野々原」

 

「いえいえ、そんな気で言ったんじゃないんですよ。

 それより美香、いつの間に瞬時加速(イグニッション・ブースト)なんて教えたの?」

 

美香は黙ってモニターを見てのだが、その言葉を聴いて明の方へと視線を向けた。

 

「え…明が教えたんじゃないの?」

 

「えっ」

 

翔のIS訓練をしたのは明と美香のみ。他の人に教わったことは無いと本人は言っていた。

だが、誰にも教えられていない技術をぶっつけ本番で使用していた。

 

(…私たちが一切教えてもない操縦技術を本番で使うだなんて…翔くんなぜは使えたんだ?)

 

 

 

 

「あんな勝利で勝ったと思うなよ、お前らは機体性能で勝ったに過ぎない」

 

帰還した瞬間に織斑先生に怒られるボクたち、

せっかく代表候補生に勝ったのに、もうちょっと褒めてくれてもいいのにな……

 

ちなみに、ボクの専用機となった天翔は待機状態と呼ばれる状態になっていて、

ISの専用機は小さなアクセサリーになって携帯できるようになっている。

ボクの天翔の待機状態は白いハートマークに白い羽が生えたペンダントだった。

なんだか、女の子がつけるようなアクセサリーでちょっと恥ずかしい……

 

「えっと、ISは今待機状態になってますけど、

 二人が呼び出せばすぐに展開できます。

 ただし、規則があるのでちゃんと読んでくださいね。はい、これ」

 

山田先生はどさっと音がするとてつもなく分厚い本をボクと一夏お兄ちゃんに渡してくる。

ちょっと中身を開いてみると、薄いページがぎっりしりと詰まっていた。

……本当に暇になったときに読んでおこう。

 

「結果はどうにしろ今日はこれでお終いだ。帰って休め」

 

「それじゃ、帰ろうか。翔くん」

 

「うん。またね、一夏お兄ちゃん」

 

「おう、じゃあな」

 

ボクは一夏お兄ちゃんと手を振って別れた。

明お姉ちゃんと美香お姉さんと並んで歩いていた。

 

「ねぇ、翔くん。さっきの戦いで瞬時加速(イグニッション・ブースト)…いや、

 凄く加速した技術を使ってたけれども、あれってどうやったのかな?」

 

さっきの戦いの最後辺りで一瞬でセシリアさんの前に加速したあれ……

瞬時加速(イグニッション・ブースト)っていう結構カッコイイ名前がついてるんだ。

 

「えっとね、一気に近づこう! って思ったら、なんか出来ちゃって…」

 

あの時はISに身を任せて操縦したら出来た、といった感じだった。

ボク自身、なんで加速したのかはよくわからない。むしろそういう物かと思ってた。

 

「…そんな急に出来るものだったかしら? 加速にしても操縦者の技術と……」

 

美香お姉さんはブツブツと独り言を言い始めた。

ポケットからメガネケースを取り出し、中に入っているメガネをかけた。

 

「あー…美香ったら、研究モードに入っちゃって…

 ま、部屋まで無意識に歩いていくし、問題ないよね」

 

明お姉ちゃんはボクの隣を歩きながら、ため息をつくように言った。

 

 

 

 

「では、一年一組代表は織斑一夏くんと天野翔くんに決定です。

 あっ、一夏くんと1繋がりでいい感じですね!」

 

山田先生は嬉しそうに喋っている。その理由はわからない。

ただ、そんなことよりも聞きたい事がいくつかある。

 

「先生、質問です」

 

先に質問したのは一夏兄ちゃんだ。

多分、今回も質問の内容は一緒だろうな。

 

「はい、織斑くん」

 

「なんで代表が二人もいるんですか?」

 

やっぱり、質問の内容は一緒だった。

 

「誰もクラス代表が一人とは言っていないぞ。

 それに織斑、お前に何かあったときは天野に対応してもらう事になる。

 言うならば、天野はクラス副代表と言ったところだな」

 

「それじゃあ、翔を代表に――」

 

バンッ!と鋭い音が一夏お兄ちゃんの頭から聞こえた。

何気なく一夏お兄ちゃんはボクにクラス代表を押し付けようとしてたけども…

 

「織斑、小学生相手にクラス代表を押し付けるな

 それにお前らはオルコットに勝った。それを忘れるな」

 

一夏お兄ちゃんは頭を手で押さえ、何で勝っちゃったんだ…と、後悔している。

ボク自身も、この結果にはちょっと納得がいかない部分があるし、

副代表みたいなことはセシリアさんの方が適任な気がする。

 

…それに、ボクがクラス代表をやれるなんて思えないし……

ボクは織斑先生に叩かれる覚悟で言ってみた。

叩かれるのが怖くて小声だったけれども……

 

「あ、あの…ボクよりもセシリアさんの方が適任だと思うんですけれども」

 

「そんな事はありませんわ!」

 

セシリアさんはがたん、と席を立った。

相変わらず腰に手を当てているポーズが様になっている…けど、いつもそのポーズだなぁ…

しかし、セシリアさんの態度はどこか嬉しそうに見えた。

 

「お二人の実力は素人とは言えわたくしには敵わなかったものですわ。

 ですから、クラス代表になるべきなのは一夏さんと翔さんですわ!」

 

…どうも、クラス代表を辞退しますと言っても受け入れてくれなさそうだった。

 

「いやあ、セシリアは分かってるね!」

 

「そうだよねー。せっかく世界で二人だけの男子がいるんだから、

 同じクラスになった以上は持ち上げなきゃいけないねー」

 

「私たちは貴重な経験を積める。

 他のクラスの子に情報が売れる。一石二鳥だね、織斑くんと天野くんは」

 

……そんな簡単に情報を売っちゃっていいのかな……?

 

「そ、それでですわね」

 

コホンと咳払いして、セシリアさんはあごに手をあてた。

相変わらず、何をしてもポーズをとっているように見える。

 

「わたくしのように優秀かつエレガント、華麗にしてパーフェクトな人間が

 ISの操縦を教えて差し上げれば、それはもうみるみるうちに成長を―――」

 

バンッと机をおもいっきり叩く大きな音が聞こえて、体をビクッと振るわせた。

その音を出したのは篠ノ之さんで、セシリアさんに対して怒っているようだった。

 

「あいにくだが、一夏の教官は足りている。私が、直接頼まれたからな。

 ISの操縦を教えるのならば、天野にでも教えているんだな」

 

篠ノ之さんはやけに『私が』というところを強調した。

やたらと主張したけど、その部分が大事だったりするのかな?

ギラリと物凄い目でセシリアさんを睨んでいたけども、

セシリアさんはそれに怯まずに、むしろ誇らしげに言った。

 

「あら、あなたはISランクCの篠ノ之さん。Aのわたくしに何か御用ですか?」

 

「ら、ランクは関係ない! 頼まれたのは私だ。い、一夏がどうしてもと懇願するからだ」

 

どうしても一夏お兄ちゃんは篠ノ之さんに訓練してほしいらしい。

なぜか篠ノ之さんが必死に言っているだけだけれども。

 

「え、箒ってランクCなのか……?」

 

「だ、だからランクは関係ないと言っている!」

 

「座れ、馬鹿ども」

 

織斑先生は篠ノ之さんとセシリアさんの頭をバシッと叩いた。

いつ聞いてもその音は痛そうな音を出し、殴られた人の表情も凄く痛そうだった。

 

「お前たちのランクなどゴミだ。私からしたらどれも平等にひよっこだ。

 まだ殻も破れていない段階で優劣をつけようとするな」

 

流石の偉そうなセシリアさんも、織斑先生の前では黙っていた。

何かを言いたそうな顔をしていたけれども、結局は何も言わなかった。

 

「クラス代表は織斑一夏と天野翔。異存は無いな」

 

クラス全員が一丸となって答える。ボクと一夏お兄ちゃん以外は……

 


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