「好きです!」
部活帰り、さつきや大輝君達と帰っている時のことである。突然、校門で愛の告白を受けた。さつきではなく、私だ。物好きもいたものである。
染めていない黒髪に穏やかな雰囲気をしたその子は同じクラスの男子で、確か帰宅部だった。身長は黒子君より少し高いくらいだろうか。文学少年、といった感じだった。
バスケ部の練習終了は遅い。こんな時間まで私のために待っててくれたのかと思うと、ちょっとキュンときた。
さつきはワクワクといった顔で、対する大輝君は何故か不機嫌そうだ。
「返事はいつでもいいから!」
「じゃあ!」と走り去っていく男子こと、田中君。引き留める間もなく行ってしまった。青春だ。精神年齢は凄い事になっている私は「若い子っていいわね」なんて微笑ましく思いながら、田中君の背中を眺めていた。
「雪乃っち、アイツに何て返事するんスか?」
後ろを黒子君と歩いていた黄瀬君も、面白くなさそうな顔をしている。謎だ。
私の返答を黒子君以外、食い入るように待っていた。そんなにガン見されると言い辛いんだが。
「断るよ」
そうキッパリ言うと大輝君と黄瀬君は顔を明るくした。さつきは「なーんだ」と残念そうな顔である。
「ついに雪乃に春が来たと思ったのになあ」
「雪乃にはまだ早ぇだろ」
「そうっスよ! 大体、雪乃っちにアイツは合わないッス!」
「僕は村瀬さんの好きにしたらいいと思いますけど」
三者三様、いや、四者四様の意見だった。私は多分、困った顔をしているんだろう。
「私には、人を好きになる資格がないんだよ」
「えー、資格っていらないんじゃないかな」
さつきの台詞に、私は曖昧に笑った。
「ううん、私はその人を絶対に悲しませるから」
だから、好きな人は作らない。そう誓いを立てる私に、皆は戸惑ったように顔を見合わせた。
何度も何度もループする世界。何をやっても変わらない現実に、私は疲れていた。諦めたように笑う私に、唐突に、黒子君が「諦めないで下さい」と私の制服の袖を握った。
「え、黒子君……?」
「村瀬さんは、すごく大きな悩みを抱えているように見えます。僕にはそれが何なのか分かりませんが、でも諦めないで下さい」
真っ直ぐにそう言う黒子君。もし、ここで秘密を打ち明けたら彼らは信じてくれるだろうか。いや、私にはまだそんな勇気がない。
私は緩く首を縦に振って、それから……少しだけ泣いた。黄瀬君が場の空気を変えるように、わざと「あー、黒子っちが雪乃っち泣かせた!」と言ってみせる。
それが何だか可笑しくて、私は声を上げて笑った。
私を取り巻く世界は厳しくて、でも、こんなにも優しい。