エンドロールのその先で   作:藤吉郎

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2-04 思春期と私

 

 放課後、同じクラスの田中君に呼び止められて、私は裏庭へ向かった。田中君は廊下を歩く間終始赤い顔で、裏庭に着いたら着いたで赤い顔を更に赤くしてずっと私を見つめている。

 

「返事、聞きたいんだけど……」

 

 予想通りの台詞だった。覚悟はしていたけれど、改めて言われると罪悪感が募る。私は勢いよく頭を下げた。

 

「ごめんなさい」

 

 断りの言葉を口にすると、田中君は傷ついた顔をする。けれど仕方ない。私は、誰とも付き合う気がないのだ。

 

「やっぱり青峰と付き合ってるの?」

 

 何故そこで大輝君が出てくる。

 

「違うよ」

「じゃあ、好きとか?青峰は村瀬さんのこと、かなり気にしてるけど」

「大輝君はただの幼馴染みだよ」

 

 キッパリとそう言う。勘違いだ。それに大輝君は、さつきが好きなんだろうと思う。

 何だかんだ言いつつ、さつきには優しいし甘いし。幼馴染みの贔屓目もあるが二人共、美男美女でお似合いなのだ。私も仲の良い二人を見ていると微笑ましくて、温かい気分になる。おっと、話が脱線した。

 

「好きって言ってくれて嬉しかった。ありがとう」

 

 心から礼を言う。すると田中君は泣きそうな顔で笑って、それから「こちらこそ、ありがとう」と言って去っていった。折角好きと言ってくれたのにキッパリと断ってしまって、罪の意識を感じる。

 でも好きでもないのに付き合ったりしたら、それはそれで失礼だ。これでよかったんだろう、多分。

 

……さて。

 

「盗み聞きは良くないよ」

 

 茂みに向かって声をかけると、ガサガサッという音と共に黄瀬君と大輝君と、更にさつきまで転がり出てきた。

 三人共、非常に驚いた顔をしている。まさか私が気付いているとは思わなかったんだろう。

 

「な、何で分かったんスか!?」

「いや、制服の裾が見えてたし」

 

 黄瀬君に至っては、ひょこっと金髪が見え隠れしていた。ちょっと笑ってしまう。肝心なところで抜けてる子だ。

 

「あ、あのねっ、本当に、たまたまなの! 青峰君ときーちゃんが罰掃除で私はサボってないか見に来て……。えっと、だから、先に私達がいたところに雪乃と、この間校門で雪乃に告白した男子が来て驚いちゃって! それで、慌てて茂みに隠れちゃったの……ごめんなさい」

 

 しどろもどろに説明して最後に謝るさつきに、私は笑って「怒ってないよ」と告げる。確かに今日の数学の課題を出していない生徒は、クラスに関わらず裏庭の掃除を言い付けられていた。納得する。対する大輝君は何故か不機嫌そうな顔だった。

 

「どうしたの、大輝君?」

「別に、俺はただの幼馴染みだし」

「はあ」

 

 そこが気に食わなかったのか。よくわからない人だ。この時期の大輝君の扱いには毎回困る。

 

「大輝君は大事な幼馴染みだよ」

「幼馴染みから出てねえじゃん」

「まあまあ、青峰っちも心配してたんスよ」

 

 不貞腐れる大輝君に、黄瀬君が助け船を出した。

 

「大事な雪乃っちに悪い虫がつかないか」

「黙ってろ、黄瀬!」

「痛いっスよ、もう!」

 

 黄瀬君の頭に拳骨を落とす大輝君。「大丈夫?」と黄瀬君の頭を撫でると、大輝君は更に不機嫌になっていく。難しい年頃になったものだ。

 首を傾げる私に黄瀬君は「雪乃っちはそのままでいいんスよ」と笑って言った。

 

 このままでいたいけれど、皆はもうすぐ変わっていってしまう。歯車は止められない、止まらない。

 大輝君の変化を皮切りに皆、変わっていく。ちょっとずつ擦れ違って、最後にはバラバラになってしまうのだ。それが悲しくて、切ない。

 

 何度もループする世界で、それは変えることの出来ない運命みたいなものだった。だから今回も変わらない。繋ぎ止めようとしても、徒労に終わる。

 何度も、何度も、私は変わっていく大輝君を見なければいけない。バスケへの情熱を失った大輝君をただ見守るだけ。高校に入って、大輝君がそれを取り戻したかどうかも分からないまま、私はこの世界から消えていく。

 

 それが、寂しい。

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