何度も何度も繰り返しシュート練習をする緑間君を私はただ脇で眺めていた。ボールは綺麗な放物線を描きながらリングを通り抜けていく。何度も、かする事なくゴールへと吸い込まれていくボールを見ていると、知らず気分が高揚してきた。
すごいなあ、と心の底から思う。私は手に持ったタオルを知らず握り締めていた。才能に溺れる事なく努力する緑間君の姿は眩しくて、尊敬する。
キセキの世代、そう呼ばれる彼らはいつの間にかバラバラになってしまった。今では大輝君も敦君も練習に顔を出さなくなってしまったし、黄瀬君もモデルの仕事を増やして部活に出る事が少なくなった。緑間君はそんな彼らに苛立っているみたいだ。
何度経験しても、皆の顔から笑顔が少なくなっていくこの時期が辛い。繋ぎ止めようとしても私には無理だった。
誰が悪いと言うわけではないのだろう。最初は小さな歪みだった。それがいつしか取り返しのつかない大きさになってしまったのだ。仕方ないと諦められるほど私は大人でもなくて、けれども躍起になって修復しようと行動する勇気なんてものもなかった。
それでも彼らを見放す事なんて出来ない。先の事を知っているのに私は未だにマネージャーの仕事にしがみついていた。
黒子君にはこれから辛い出来事が待っている。励ましてくれた黒子君に私は何も返せない。それが辛かった。
「どうした?」
声を掛けられて我に返る。手の甲で汗を拭いながら緑間君がこちらを怪訝そうに見ていた。
「お疲れ様!」
汗を流す緑間君に、私はタオルとスポーツドリンクを手渡した。それから散らばったバスケットボールを籠に入れる。黙々とマネージャーの仕事をしていると気が紛れた。
「もう八時半か……。村瀬、お前までこんな時間まで残らなくてもいいのだよ」
「気にしないで。選手を支えるのがマネージャーだからね」
笑ってそう言うと緑間君は「そうか」と小さく笑う。いつもムスッとして無愛想な緑間君の貴重な笑顔に、少しドキッとした。イケメンの片鱗を見たぞ。
「着替えたら家まで送っていく」
「いいよいいよ。緑間君も疲れてるだろうし」
「暗いから危ないだろう」
意外に緑間君は紳士的だ。「それじゃあお願いします」と言うと、緑間くんはタオルで汗を拭いながら「着替えるから待っていろ」と背中を向ける。
そして、ふいに振り返った。眼鏡の奥の目と目が合ってドキリとする。
「ずっと前に小説の話をしていただろう」
「う、うん……」
「あれは……、」
言いにくそうに言葉を区切る緑間くん。
「あれは、実話じゃないのか?」
わたしの眼球の動きが止まった。
口の端は笑顔を作ろうと不器用に動く。まさか、そんなわけないよ、と言わなくてはいけない。けれど喉はヒュッと鳴るだけだった。
「……違うよ、非現実的だよ、そんなの」
やっと出た台詞に緑間くんは「そうか」と私から視線を逸らした。会話はそれっきり。緑間くんは部室へと入っていく。
そうして私はまた嘘を吐くのだ。