村瀬の葬式は、よく晴れた日だった。連日続いた雪や雨が嘘のように晴れ渡った空の下、式はしめやかに行われる。
式場には帝光中の制服を着た生徒も多く、その中には一軍や二軍、三軍など関係なくバスケ部の部員も沢山いた。式場を眺めていると老若男女問わず大勢の人間でごった返していて、世話焼きで交友関係の広い村瀬らしさが伺える。
例に漏れず俺達、キセキの世代も全員が揃った。しかし皆、口数は少なく、ただボンヤリと沢山の花で彩られた祭壇を見ているだけだ。中心には花で囲まれた村瀬の写真が、朗らかに笑っていた。
ハンカチで涙を拭う女生徒の集団とすれ違い、そういえば村瀬は誰にでも好かれていたと思い返す。目線を祭壇から逸らすと、しばらく学校に来ていなかった黒子の姿もあった。
「雪乃……っ!!」
「桃っち……」
泣き崩れる桃井の肩を黄瀬が支える。赤司は無言で何を考えているか窺い知れず、紫原はその長身を丸めて涙をこらえていた。村瀬は確実に俺達にとって大事な存在だったのだ。
俺はまだ村瀬がいなくなった実感なんて湧かなくて、ただ綺麗に磨かれた床だけを見ていた。今にも「緑間君」と自分を呼ぶ村瀬の声が聞こえてきそうで、拳を握る。青峰はというと一人離れて最前列の席、彼女に一番近い場所に静かに座っていた。
不幸な事故だったそうだ。村瀬は青峰の目の前で、工事中のビルの屋上から落下した鉄骨の下敷きになったらしい。誰一人、青峰を責めはしなかった。青峰を殴ったところで村瀬は帰って来たりはしないし、それこそ村瀬は喜びはしないと分かっている。
逆に村瀬の親族の女性が「大変だったわね」と青峰を労わるように声を掛けていたが、青峰は何も答えなかった。青峰が何を思っているか俺には分からない。青峰はただ無言で首を横に振るだけで、一言も口を開かなかった。
青峰は村瀬に特別な好意を寄せていたんだろうと思う。きっと俺もそうだった。俺は多分、誰よりも優しくて聡明な村瀬に恋をしていたんだろうと今になって思う。気付くのが遅すぎた。
思い出すのは書いているという『小説』の話をした時の、彼女の諦めたような笑顔。村瀬が何を隠していたかは今となっては分からない。
村瀬雪乃は不思議な少女だった。容姿端麗で成績も優秀、それなのに親しみやすい。普通の女子中学生に見えるのに、よくよく見ると澄んだ目や纏う空気が同い年のそれとは思えなかった。
ただ――もう一度、村瀬の笑顔が見たいと願った。