「だからね、雪乃もマネージャーやろうよ!」
「う、うん……考えとく」
ニコニコ笑いながらそう言うさつきに、私は曖昧に頷いた。私の煮え切らない態度に、さつきは「もうっ、雪乃ってば、ちゃんと真面目に聞いてる?」と可愛らしく頬を膨らませる。
春、私は大輝君とさつきと一緒に帝光中へと入学した。真新しい制服を着て、幼馴染み三人で帰り道を歩く。
以前には私立の女子中に進学した事もあるのだが、どこへ入学しようが結果的に最期は変わらないので抵抗は止めた。どうせなら大輝君とさつきと一緒の方が安心する。
大輝君はやっぱりバスケ部に入るらしく、さつきもマネージャーをやると決めたらしい。
まだ部活は仮入部期間中で、運動部各種はマネージャーも募集しているようだ。帝光中はバスケ部を始めとして、サッカー部や野球部など運動部が強いらしい。よほど力を入れているのだろう。
私はどうしようかと迷う。どうしても嫌だというわけでもなく、やるならやってもいいくらいの考えだ。現に何度か別の時間軸で、私もマネージャーになった事があった。
けれどバスケ部に入ろうと入るまいと私が死ぬ運命は変わらなかったのだから、これといって大事な分岐点でもないのだろうと思う。一体、どこで私の生死は分かれるのだろうか。未だに謎だ。
「雪乃が入りたいなら入ればいいじゃん。俺がバスケしてるとこ間近で見れるぜ!」
前を歩いていた大輝君が振り返って笑う。確かに大輝君のバスケしている姿は好きだ。それは昔から変わらず、だから彼が変わってしまう事が悲しいと思う。
顔を曇らせる私に、さつきが「どうしたの?」と首を傾げた。それに「何でもないよ」と緩い笑みを返す。
「そうだね、やろうかな。バスケしてる大輝君、好きだし」
「バスケしてる時だけかよ……」
「まさか。普通の大輝君も好きだよ」
笑ってそう言うと大輝君は顔を真っ赤にして、そっぽを向いた。照れ屋だ。
私にとっては通い慣れた通学路を、三人で歩く。通りの桜も随分と散ってしまった。
葉桜になった木の下を歩きながら、少し前を歩く二人を眺める。眩しい、と思った。
「雪乃?」
「腹でも痛ぇのか?」
立ち止まる私に、二人は不思議そうに歩みを止める。私は無言で首を横に振り、笑ってみせた。
「……大輝君も、さつきも、大好き」
笑って告げると、二人は照れたように笑う。
「どうしたの、いきなり!」
「お前、何か変なもん食ったんじゃねーの」
「何でもないよ。言いたかっただけ」
何度、世界を繰り返しても二人は変わらずに優しい。それだけが私の救いだった。