中学三年生になった。相変わらず私は命の期限に追われながら、中学生として日常を送っている。
大輝君はバスケへの情熱が薄くなってしまったらしく、部活へ行く事が少なくなった。昔は放課後になると体育館に直行していたのに、こうなると分かっていても残念だ。
「大輝君。私、部活に行くけど大輝君は?」
「あー……今日はパス」
さつきに頼まれて部活前に大輝君を訪ねると、やる気のない返事が返ってきた。案の定というか何というか、予想は出来ていたので特に落胆もない。さつきなら食い下がるだろうけど、私はさっさと部活へ向かう事にする。
「そう、じゃあ気を付けて帰ってね」
「オイ、待て」
去ろうとすると呼び止められた。駄々っ子か。
「……雪乃は、さつきみてえに部活行けとか言わねえのかよ」
「さつきも心配してるんだよ。私は心配してないから、言わないだけ」
大輝君がムスッとした顔をする。扱い辛い年頃になったものだ。
「大輝君がバスケしてようがしてなかろうが、私が大輝君を好きな事に変わりはないんだよ」
「バッ、何言って……!」
素直に告げると、真っ赤になる大輝君。そんなところは可愛いなあと思う。
「私は大輝君とさつきが健やかに生きててくれれば、それだけで幸せだよ」
「お前は俺らの母ちゃんか」
緩く笑う私に、大輝君は呆れたように溜め息を吐いた。
「雪乃、お前さ……」
「何?」
「いや、何でもねえ」
言いかけて、止められる。何だそれ、気になるじゃないか。
「途中で止められたら気になるよ」
そう言うと大輝君は面倒そうに頭を掻いた。それから言い辛そうに口を開く。
「……お前さ」
「うん」
「大丈夫か?」
ドキリ、とした。
「な、何が?」
「なんか元気ねえし、悩みでもあるんじゃねーの?」
さすが幼馴染みというべきか、沈んでいたのに気付いたらしい。私は「何もないよ」と笑ってみせる。
私はもうすぐ死ぬのだと、そう告げたところで大輝君を困らせるだけだ。だから私は、ただ笑って誤魔化す。何でもないよ、と。平気だから気にするな、と。私の問題だからと黙って線を引くのだ。
大輝君は一瞬何か言いたそうな顔をしたけれど、「そうか」とだけ言って私の頭を軽く叩いた。
「何かあったら言えよ」
そう言って、大輝君は教室から出ていく。私は、小さく息を吐いた。
大輝君は……いや大輝君だけじゃなくて、さつきも、私が隠し事をしているのを知っているのだろう。私が二人に対して緩やかに拒絶している事を、多分、知っている。
優しい二人は踏み込んで来ない。私が自分から話すのを、助けを求めるのを待っていてくれている。それでも私は決して話さない、話せない。近い内に死ぬ、だなんて――。
「信じられるわけないよ」
いや、それは言い訳だ。二人に頭のおかしいヤツだと思われたくない。関わり合いになりたくないと、二人が私から離れていってしまうのが堪らなく嫌なのだ。
ループする世界で、私を受け入れてくれる光を手放したくない。二人がいるから、私は踏み留まっていられる。壊れずに、訪れる最期の日まで生きていられるのだ。
私は、二人に拒絶されるのが何よりも恐い。