魔法のあくせられーた   作:sfilo

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そんなに進みません


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「さっさと積み込め、こちとてボランティアじゃねェンだよ」

 

 

市民を物資同様に見なす黒夜の態度は甚だしいものだったが、今はそんなことを言っている場合ではない。優先された市民らが軍用ヘリへと運び込まれる。乗員限界を迎えたヘリは即座に浮上する。上空の敵のことなど一切気にしない。何故ならもう1機の六枚羽が護衛としてついているからである。

六枚羽を見送った黒夜は突然自身の右腕を雫に向ける。そこには揺らいだ空間が存在するが一高生徒らは何があるかわからない。

 

 

「ヘェー、逃げないンだ。私がテメェを助けに来たって言う証拠は何処にも無いのに信じるのか......つまらねェの」

 

 

窒素爆槍を雫の顔から退けつまらなそうに瓦礫の上に座る黒夜、彼女は学園都市側の状況をアッサリと話し始める。

 

 

「北山雫?だっけ、今最も危険な人物としてマークされてるよ。理由を聞きたい?」

 

 

膝の上にイルカのぬいぐるみを乗せながらニタニタと健康的な歯を見せる黒夜はとても楽しそうである。

対する雫はこくりと首を縦に振る。が、周りからは少し非難があった。

 

 

「ねえ雫、本当に信じていいの?ヘリのこととか今の貴女のこととか色々複雑なんじゃない?」

 

 

深雪の思いやりのある言葉、雫はヘリに関することは全面的に信用している。一方通行の関わることで嘘がないとわかっているからである。だが最も危険な立ち位置にいるということがどういうことか知りたい。そんな感情が今の雫を動かす。

 

 

「第一位のことは知ってる?まァこの世界じゃ一位って言ってもわからないか。一方通行のことだよ、一方通行。アイツを動かすためにはアンタが必要なンだよ」

 

 

一方通行の名前が出てきた瞬間、雫の顔にはなんとも言えない汗が浮かび上がる。

そして事件の前の一方通行の姿が雫の頭に描かれた。

 

 

***

 

 

アイネブリーゼ、達也らがよく利用する喫茶店。論文コンペで忙しくなる前、最後にといつもの8人はお茶を楽しもうとしていた。いつもの四人掛け席二続きが空いていないらしくカウンターでコーヒーを飲もうとしていた。

 

 

「いらっしゃい、あれ?カウンター席なんだ、てっきり先に一方通行君が来てたから一緒に飲むものだと」

 

 

先に一方通行が来ている、こんなことはこの喫茶店に通い始めてから誰1人として経験したことのなかったことだった。こちらからはその席を覗くことが出来ない。

 

 

「マスター、一方通行もよくここに来るんですか?」

 

 

純粋な疑問を投げつける美月に顎髭を慣れた手つきで触りながら質問に答える。

 

 

「いや、ここ最近だよ。初めは全身真っ白でちょっと怖かったけど慣れたね。君達が結構会話に出してる一方通行君だとすぐにわかったよ」

 

 

蒸らした豆を専用の容器に入れながら無駄話は続く。そうしているうちに一番奥の四人席からスーツ姿の女性と彼女のペットらしいゴールデンレトリバーが出てくる。この店は基本ペットの入店を禁止している店ではない。それにマナーのなっている者を追い出すのはいかがなものだろう、その飼い主である女性はカウンター席の制服姿の8人にチラリと目をやる。そうしてすぐにカランと音をたてて店から出ていった。

 

 

「マスター、この店ってペット入店ありなんですね。さっきこっちにお辞儀してくれた犬がいましたよ」

 

 

多少興奮気味のほのかは手元のカップで両手を温めながら話しかける。マスターは8人全員にコーヒーを出して結構暇なのだろうかいつもより饒舌に先程の客のことを話し始める。

 

 

「あまりにも酷い時は無理だけどさっきのお客さんのゴールデンレトリバーは特に礼儀正しいからね。ここだけの話、あの犬はコーヒーを好んで飲むんだ。あんな姿初めて見たよ」

 

 

へえー、と関心するように頷いていると先程女性が出てきた席から一方通行が退出する。カウンター席のいつものメンバーを気にすることなく紙幣をテーブルの上に置く。流れるように喫茶店から出て行ったため誰も話しかけることは出来なかった。無論雫もである。

 

 

「ありゃりゃ、また行っちゃったよ」

 

 

マスターはテーブルに置かれた千円札をレジに仕舞いながら残念そうにとりあえずレシートを吐き出させる。

 

 

「呼び止めてきましょうか?」

 

 

この一言は一方通行の介護人の様な雫ではなく司波達也の口から出てきた一言だった。それに対しマスターは首を横に振りながら軽く拒否した。

 

 

「いやそこまで大事じゃない、と言ったら嘘なんだけど別にいいかな」

 

 

***

 

 

「オイ、聞いてンのか?話続けるぞ、でだ、今学園都市のこの世界に来ている勢力は大きく分けて2つある。1つはオマエ、北山雫を殺して第一位とこの世界との関わりを無くし強制的に元の世界へ連れ出す奴ら。これに対抗してるのは第一位の暴走を恐れ取り敢えずはオマエを殺さないで経過を観察する組織。まァ元々一方通行回収が大元にあったンだがどういう理由か分断した。それでも学園都市の真の狙いは他にあるだろうと私は睨ンでいる」

 

 

重要なポジションにいることをいまいち頭で理解しきれない雫の表情を見て黒夜はウンザリした顔付きになる。

 

 

「なンで私が説明役しなきゃならねェンだよ。こういう役割は他の奴に任しちまえばいいのによォ」

 

 

一部だけ金色に染まった髪の毛を弄りながら話を続ける。

 

 

「つまりだ、学園都市の連中は最初からテロリストを壊滅させることなンて眼中にねェンだよ。北山雫を生かすか殺すか、これしか考えてねェ。私らが一般市民を助けたはあくまでクリーンな学園都市を演じるためにすぎねェ。鍵はテメェだ」

 

 

話し疲れたのか黒夜は立ち上がりぐぐっと腕を伸ばす。12歳という若々しい肉体がパンクな服装の合間合間から覗いて見える。

周りで聞いていた深雪らは戸惑うことしか出来なかった。たった1人の少女のために制空権を確保し地上戦であまりにも有利な場面を作り上げる。一般生徒らには考えもつかない。

 

 

「それでアンタはどっちの味方なのよ」

 

 

エリカの低い声が周囲に響く。ヘラヘラと笑いながら黒夜は彼女に近づいていく。

 

 

「どっちだと思う?まァここに降りてきてすぐに殺さない時点でわかってると思うけどにゃーん。さてさてやることやりますか」

 

 

彼女は口元に手を当て大声で叫ぶ。

 

 

「シルバークロース!!出番だぜ!!」

 

 

周りの人間はその叫び声よりも次に起きた出来事に目を疑った。瓦礫の山に異なる力が働いた空間が出来上がる。学園都市の簡易世界転移装置の仕業である。異質な穴から出てきた物はバイクに乗った機械、駆動鎧だった。

HsSSV-01『ドラゴンライダー』いかなる環境下でも即時な部隊展開と敵勢力の排除を目的とするために作られた第三次大戦に投入される筈だった駆動鎧。しかしあまりにも早く終結してしまったため表舞台に出ることは無かったが、シルバークロースを追い詰めるために浜面仕上が乗りこなした機体。それを今はやられた側、シルバークロースが着こなしている。

異空間から飛び出してきた機体は広場を一周して速度を落とし黒夜の眼前で停止する。カチャリと機体とスーツが離れ搭乗者がドラゴンライダーを放置し降りてくる。

 

 

『ハロー、一高諸君』

 

 

黒いライダースーツにゴテゴテとした機材を付随しているのにも関わらず不思議と違和感を感じさせない。同系の駆動鎧とは多少異なる装置を設けているのだろうか、完全に外部との接触を絶っているそのスーツは黒夜の頭に手を乗せる。

 

 

『しっかしいつまで経ってもガキのまんまなんだな、女の子は成長期が男子よりも少し早いとあるがお前の場合は成長期がなさそうだ』

 

 

なにおう!と窒素爆槍を発動させ殴りかかる黒夜を華麗に回避し足を引っ掛け転ばせる。

 

 

『黒夜に大体の話は聞いたのか?』

 

 

元仲間で現在も共に行動する少女を置き去りにし相手のリーダー格の人間、七草真由美に尋ねる。

 

 

「え、ええ」

 

 

『ならすぐにでも行動しようか。乗れよ北山雫、安全が確保できるまで死なせない』

 

 

ドラゴンライダーの後部ハッチからシルバークロースが着用している駆動鎧よりも一回り小さい駆動鎧を出す。このドラゴンライダーは二人乗りが可能な構造であった。このスーツを出されたが雫は彼女の頼んだヘリがそろそろ来るということを知っていたし、それに仲間を見捨てて1人だけ安全な場所にいることを許せないでいた。

 

 

「私はみんなと一緒に脱出します。すみません」

 

 

そう言って黒夜らから離れて深雪や仲間の元へ移動した。

強制することは出来た、新型の脚部が異常に太い駆動鎧の素体確保のように無理やり中身に閉じ込めて機能することが可能だった。だがシルバークロースはそれをしなかった。何故なら彼の体を覆っているセンサーや多角カメラがそれを捉えていた。

司波深雪、彼女のいつでもシルバークロースを殺せるような瞳を機械を通してはっきりとわかっていた。ドラゴンライダーに乗った状態なら振り切れるかもしれなかったが、降りている以上この駆動鎧の性能は逃げ切るのにはあまりに貧弱。

 

 

『そうか、だが我々も君の命を守ることが仕事なわけだし、黒夜お前が彼らの護衛についてくれ』

 

 

「はァ?この世界のクズ共の掃除がしたいのに、なンで」

 

 

不満そうに瓦礫で遊びながらシルバークロースに当たる。

 

 

『ゴミ共の掃除なら護衛してても余裕だろ。ドラゴンライダーじゃ護衛なんて無理、それとも殲滅に特化したお前の能力じゃ守ることが出来ないのか?』

 

 

煽りを入れながらシルバークロースはドラゴンライダーに跨る。スロットを回しエンジンを温める。

 

 

『というわけでこの餓鬼が君を守ってくれる。君達よりも年齢も背も小さいが戦闘力は馬鹿にしない方がいい』

 

 

ロシア用に改造されたドラゴンライダーは市街地バージョンに変更されたので、最高速度は制限されているが小回りが効くようになっている。ビル間を滑るように抜けていき目に見えなくなる。

残された大勢はもうすぐやってくるヘリが来るまで場を繋ぐ。場を繋ぐと言ってもテロリスト集団の兵器は見当たらない。幹比古の探知魔法や美月の眼にも映らない。

周囲を警戒しているうちに雫のハウスキーパー、黒沢が操縦する輸送ヘリが近くまでやってくる。途端黒い雲、よく見ると蝗の大群が空中を漂う。エンジンやローターに絡むと着陸に失敗する恐れがあるため迂闊に広場に近づけない。

雫が自分のポーチからCADを取り出し除去する魔法を発動しようとしたが、暇つぶしの道具を見つけた黒夜は彼女の肩に手をやる。

 

 

「黙って見てな、この世界に来てから調子も確かめたいし」

 

 

彼女の持っていたイルカのぬいぐるみが内側から食い潰される。そこから大量の腕が伸び黒夜の上半身に接続されていく。ギチギチと音をたてながらビニールのような表面は肌色で覆われた金属が隠されている。

数にして約数百、だが今回はこれで十分。

ヘリコプターが接近してくる前に蝗の大群に向けて腕を広げ大気を操る。空気の四分の三を占めている窒素、これを操るということは空気全体を操ることに等しい。

窒素爆槍が黒い雲を引き裂く。

 

 

「吹っ飛べ!!」

 

 

空気の槍同士が混ざり合い一つの塊と化した能力の結晶は黒雲を上空から引き剥がした。




彼岸強いし楽しいんじゃ
EMEmは氏ね
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