魔法のあくせられーた   作:sfilo

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新キャラ?


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その頃、一緒に行動していた一方通行を見失ったフレーラは1人殲滅にあたっていた。彼にとって敵かどうかは必要なことではない。学園都市に有益な人間は敵であっても生かすしそれに反していればどれだけ乞うてきても無慈悲に殺戮する。

今回全駆動鎧の指揮をとっているのは彼ではない。上層部の運用専門の人間が指示を出している。故に今回は膨大な戦力の塊である彼ですらコマの一つに過ぎない。その役割はこの世界の軍事力そのものを削ぐこと。

他の指示されている駆動鎧はなるべく人員を生かし正義の味方学園都市を演じるようにされている。しかし単独で行動できる大戦力のフレーラは汚れ役のような、取り敢えず戦闘意思を持つものに対しては容赦しない。

戦場の様子を生身の体で味わうためテロリストの攻撃でボロボロになった市街地を歩き回る。逃げる人々も隠れる人々もいない。ただテロリストの猛攻に対し市民兵らが後退するのが見える。

戦闘開始

脳内であらゆる演算を行い最適な戦闘スタイルを実行に移す。弾き出された結果、彼は己の影から3mは余裕で超えるメイスを取り出す。そして足裏に魔術を発動させ高速移動を可能にし爆心地へ飛び込む。

否、フレーラが飛び込むから爆心地となる。ビル群は倒壊し義勇兵とテロリスト、両者を巻き沿いにし破壊の限りを尽くす。メイスを一度振るうだけで機械の兵器共は壁に叩き付けられる。

まずは大型の機械をメインターゲットとする。これだけ大きい敵であれば容易に薙ぎ倒すことが出来るだろう。

 

 

「ふん、無様だな」

 

化成体を形成して攻撃する大陸側の古式魔法や東ヨーロッパで使用された旧式の直立戦車はフレーラの敵ではない。アスカロンを使用するまでもなくテロリスト側をいとも容易く制圧する。

この光景を目の前で繰り広げられ日本の義勇兵とそれを指揮する十文字克人は思いもよらぬ支援に感謝する。

だが現実は違った。あまりにも無慈悲である。初めから無抵抗な姿をフレーラに見せていれば一般市民として認識され見逃したかもしれない。しかし抵抗するために魔法を使用し戦闘行為を行っていたことは事実、フレーラの猛進は止まらない。

価値の見い出せない魔法に用はない。

棍棒を体の回転に合わせて勢いよく振るう。安堵しきった市民は事態を脳で確認する前に生を失う。一瞬で異変を感じることが出来た十文字は多重障壁魔法、ファランクスを発動させ衝撃を小さくする。勿論完全に止められる訳では無い、勢いを殺し後は肉体に負担をかけメイスを体で受け止める。

 

 

「ほう、なかなかやる人間がいるな」

 

 

止められたメイスを手放し軽くなった身体で手放されたメイスを叩き割る。これに体重をかけていた十文字は一瞬重心が崩れる。その隙を突いてフレーラは魔術による高速移動で懐に深く入り込み拳を突き上げる。

だが入った感触はしない。すぐ様フレーラのメイスを止めた者から離れ状況を確かめる。ガードされている、これは事実。

 

 

「障壁魔法か?この異質な感覚」

 

 

この時十文字は焦っていた。敵の動きに完全に合わせることが出来ていない、いくら何でも速過ぎる。先程ファランクスを発動できたのも偶然に近い。まともにやりあったら確実にこちらが負ける。

思考は一瞬にして停止させられた。

フレーラは己の拳をコンクリートで覆われた舗装道に叩きつける。地震に似た振動が十文字を初め義勇兵に届く。

そして改めて敵の姿を確認すると先ほどとは異なる、背後に透明な物体を従えながら一歩一歩近付いて来る。

 

 

「肉弾戦など本来戦場では起こり得ない、何故なら接近する前に全てが決着するからである。だが超能力や魔術、それに魔法が蔓延った世界ではこんな常識は通用しない。何が言いたいのか、それは......遠距離攻撃が得意でない戦闘員はほぼいないという事だ」

 

 

透明な物質、水道管から引き上げてきた水が凶器と来て飛散する。目標は義勇兵と十文字。

 

 

***

 

 

北山家のヘリが着陸出来るほど大気は綺麗にかき消された。魔法が何だろうが窒素を操り消してしまえば問題は無い。窒素爆槍というレベル4程度の能力を持つ黒夜は能力向上のために接続されたビニール質の義腕を取り外し、持ち運びできるサイズにまで小さくする。元々イルカのぬいぐるみに包まれて存在するレベルで小さくなるので無理矢理押し込むような感じではない。

気流が一瞬乱れたがヘリが墜落する程大きな乱れは発生しなかった。

黒夜自身この世界に来てからの能力の調整がこれで完成したようなので、暴走も何も気にすることなく操ることが出来る。

この巨大な力、魔法師の卵である一高の生徒らにはあまりにも強大な印象を植え付けた。彼女が窒素を操って空気の槍で掃除をした事実を認識できない今、不可解な機械を体に接続し大規模な爆撃を行ったとしか理解出来ない。

そして力を行使した当の本人はヘラヘラと口元を緩め笑っている。暗闇の五月計画で脳に移植された一方通行の攻撃性の由来、その残虐性や破壊の快感をも受け継いでいる。

満足したような黒夜にレオが近づいて不格好な質問をする。

 

 

「オイ、黒夜?だったか、今の魔法どうやったんだよ」

 

 

小さな子供を扱うように接してきたことに対し腹が立った彼女は己の拳をレオの鳩尾に沈み込ませる。両腕で腹を抱えながら地面に倒れ込む男の姿に侮蔑した眼差しを向ける。

 

 

「テメェ今私のことをガキだと思っただろ。人を見た目で判断する甘ちゃンに教えることなンざ何もねェよ」

 

 

すると彼女は空の様子に気がつく。駆動鎧よりも薄い多機能型のスーツを着込んだ人間がこの広場を囲っている。彼らは日本の軍隊らしい。だが黒夜からしてみれば暗部の匂いが辺りを漂っている。非人道的な実験や倫理観を無視した兵器の運用というような極悪の道を突き進んでいるような暗部の香りではない。フラットな匂い、表に出てこない戦闘部隊のようなスパイ映画に出てくる隠された部隊のような感覚である。

比較的浅い、学園都市の暗部を経験している黒夜にはディナーにおける料理のような重量感はない。香り付けのバジルのような薄い暗部の感覚。

これがこの世界と学園都市の違い。

人道的な魔法関係の研究に勤しむこの世界と科学の力をすべて利用し尽くし世界を知ろうとした学園都市の違い。

だが今はそんなことを気にしている必要は無い。上空の円陣が見方のものとわかればすぐ様ヘリに残った市民らを搭乗させる。これで市民は全員乗った、六枚羽に向かわせた場所へ同じく向かわせる。しかし上昇し始めたヘリはすぐに地上へ引き返すこととなる。上空の状況が芳しくない。

戦闘が始まっていた。独立魔装大隊の相手はテロリストのような比較的安易な敵ではない、本格的かつこの世界において未知なる技術を用いて戦闘を行う集団、学園都市。この北山雫回収強行組が広場の場所を認知したのだ。

しかし戦況をリアルタイムで確認できるようなハイテク技術を確保しているのにも関わらず、何故脚部の異常な駆動鎧の襲撃から時間がかかったのか。それは強行組が学園都市のサポートを十分に受けていなかったからである。上層部の大半は一方通行の暴走を恐れ慎重になりつつある。そのため衛星からの情報を彼らは手にすることが出来なかった。

それで仕方なくくまなく潰していくという機械が最も得意とする分野で敵を探すことになる。これでとうとう見つかってしまった。

彼らが確認したヘリに対しては攻撃は行わない、それよりも対象はムーバルスーツを纏った魔法師部隊。

世界の音をかき消す程の爆撃の応酬が始まる。先手を打ったのは学園都市のレールガン群だった。細かに狙う必要は無い、ビルごと他の建物ごと大隊を消しされば良いこと。破壊の嵐が独立魔装大隊を襲う、特に魔法力が高位でない隊員は毎分4000発も発射できるレールガンに蜂の巣にされた。

この部隊の特徴は司波達也の魔法による無限とも言える残機であったがこの特徴をうまく潰しているのが学園都市だった。もしレールガンを直撃した兵士を彼が魔法により蘇生させようとするならば彼を喰らい、彼が兵器群を攻撃しようとするものなら他のレールガンが彼の仲間を食い尽くす。勿論自力でこの爆撃を耐えうる力を持つ者もいるが、音速に近い砲弾をどうにかする力は皆にはない。

だがこれを大黒竜也は力押しで解決する。味方を信じ学園都市の兵器の破壊を最優先とする。状況が好転したら仲間を救出しに行く。

だが学園都市もこの動きは既に予測済みだった。ある程度レールガンが削がれたらすぐに退却していく。カマキリの羽のようなパーツがうねりを上げ彼方へと飛行していく。あまりにも素早い退却行為に不信感を拭えなかった司波だったが、今はそんなことより部隊の治癒に行かなければならない。

仲間達を治癒しているところに柳が彼に近づく。

 

 

「特尉、してやられたな。敵部隊の損害とこちらを比べればあちらの方が大きいが大小よりも厳しいものをやられた」

 

 

「そのようですね」

 

 

特筆する感情を有さない達也には仲間を失った悲しみは理解出来るが自身はそれを持つことは無い。

損害の大小、傍から見れば機械兵を三分の一ほど削いだ独立魔装大隊の方が有利に思えるがこちらは2名死亡している。この部隊は不死身とも言える達也の魔法のおかげで非常識な制圧力と戦闘力を誇る。この部隊の稼働根幹が直撃されたのだ。即死の攻撃から蘇生させる手段は今のところ存在しない。

対して上空での戦闘をヘリの中で過ごした真由美らは嵐が収まったのを確認し空を見上げる。即座に隊を整えた柳らの力量は素晴らしく護衛体制は既に整っていた。

雫、黒夜と一般市民を乗せた北山家のヘリ、一般市民だけを乗せた七草家のヘリ、そして一高の戦闘を得意とする者が乗り込んだ七草家の戦闘ヘリ、それぞれ避難場所を目指し飛び立つ。

安堵の表情が輸送ヘリ内を埋め尽くす。頬の筋肉が緩み泣き出す者までいたが雫は未だに安心していない。安全域まで到達するまで襲撃が終わるとは限らない。

空から横浜の街を眺めてみた雫はそのおぞましさに声を失った。ビル群は壊滅的な被害を受けている、それに現代的な建物は尽く破壊されていた。復興にどのくらいかかるのだろうか、そんなふうに思案しているといつの間にか地上は降りていた。

 

 

***

 

 

東京郊外、学園都市にも存在する窓の無いビル。この世界では一方通行の代理演算や仲介人であるフードを被った空間移動者の補助演算を行う樹形図の設計者が設置されている。周りをコンピュータで囲まれた空間の中に1人の人間は能力を起動していた。

あの一方通行を輸送した時のように、学園都市の兵器や人員を大量に輸送した時のように、そして北山雫を特定の座標に配置するように。

学園都市の生命線の一つといえるフレーラよりも命令コードが優先される学園都市最高の空間移動能力者、亜空転移(トランスポート)はアレイスターからのパズルを確実に埋めていく。彼女にしか知らないピースは着実に嵌っていく。




とりあえず横浜編は完結させます。
ステイツ編は考え中です。

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