魔法のあくせられーた   作:sfilo

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明けましておめでとうございます
横浜編終了です
暇だったらパラサイト編もやりたいと思います


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減速したとはいえ初速度が大きいため慣性の法則に従い一方通行の体はフレーラの元にまで地面に擦り付けられながら進んでいった。彼の身体からベクトル操作の防御膜が無くなったため土や血の跡が滲み出している。そしてゴロゴロと転がっていくうちにフレーラの足元でようやく止まった。

それを見ていた黒夜は理解した。彼のチョーカー型電極の残量がなくなった。一方通行を無効化するのに最も有効な手段の一つとして考えられるものだった。周囲の真由美や摩利は何が起こったのか分からない様な表情をしている。だが同時に彼女らを取り囲む反射膜が無くなったことを理解したのか、正気を取り戻したレオを中心にCADをフレーラの方に構える。

 

 

「逃げるぞ」

 

 

CADを構えている魔法師達に黒夜は口を開いた。戦う気が十分な深雪には理解出来なかった。対する最初からフレーラと対峙していた組はその言葉に理解を示すがCADを降ろしはしなかった。

 

 

「一方通行がこの有様だと言うのに貴様らは戦うというのか?」

 

 

半身の皮膚が溶けだし金属を露出させたフレーラは魔術を発動させる。自らの影から彼の最大の武器、アスカロンを取り出す。その鋭利な先端を一方通行の首筋に突きつけCADを構えた魔法師達の動きを止める。キラリと光るギザギザした龍の肉片を粉砕する部分や糸鋸が一方通行の周りを囲んでいく。

 

 

「手を出したら一方通行を殺す」

 

 

背中の天使の力の水翼はフレーラの背後で唸っている。深雪の魔法で動きを止めることが出来るがそれだけでは恐らく決定打にはならないだろう。狼狽える内にフレーラは一方通行との約束を果たす。

 

 

「これが成果だ、と言っても聞こえないと思うがな」

 

 

アスカロンを取り出した穴とは別、シルバークロースが使っていたような穴からある人物を連れる。1人は一方通行が助け出したかった少女である北山雫、もう1人はフレーラの圧倒的戦力の前に抵抗することが出来なかった十文字克人。ロープで縛られたりすることも無く2人は異様な空間から出てくる。

 

 

「ここは、ぬ...真由美か」

 

 

周りの状況を把握し捕虜の取引と判断したのか克人は大人しく従った。共に雫も彼と同様従う。

フレーラは彼らを小突き仲間の元へと移動するように促す。

 

 

「感謝するなら一方通行にするんだな」

 

 

息をしているのかよく分からなくなっている白い残骸がフレーラの肩に積まれる。軽々しく持ち上げられるのを見ると平均的な体重よりもだいぶ軽いのかもしれない。一方通行が守っていた集団との距離をじりじりと離していくフレーラは任務の遂行を確信した。いくら天使の力を止める魔法使いがあの場にいようとも一方通行の身柄という担保を手にした時点で向こうから仕掛けることは出来ない。次のステップを考えた途端、コンピュータの回路が沈んだ。既存の回路で状況を判断した所原因がはっきりとわかった。

フレーラの体を支えている胴体部分が白翼で貫かれていた。

思考するだけのコンピュータは機能しているが事態を好転させるだけの力は既に失っていた。自らの腹を抱えながら崩れるフレーラに対し肩から降りた一方通行は電極のスイッチを切り収縮させていた杖を伸ばす。

 

 

「な...なぜ......なぜ能力が使える?貴サマのチカラはそノチョーカーにイ存してイたハズ?それガな...ぜ...」

 

 

電子音が鳴り響くフレーラの体に見向きもせず一方通行は答える。

 

 

「俺の弱点を知っている人間に対して何の策も講じないアホなンざいねェよ。エラー音吐き出したからって勝手に残量0と勘違いしてくれるヤロォに言うことはねェ」

 

 

そう言う一方通行は再び電極に指を近づけ能力使用モードに設定する。そして地面に伏していたフレーラの体に触れ彼の体を粉々に砕く。学園都市から再生されないように、こちらの世界の魔法に解析されないように。

灰に近い状態となったフレーラの残骸は風に乗り宙を舞った。キラキラとした金属の粉が吹き飛んでいく。一方通行の指に付着した最後の欠片が吹き飛んだのを確認すると彼はくるりと振り返った。そこにはどこか懐かしい思いが留まっていた。

一高の生徒会を中心とする魔法協会を守ろうとした者達。一方通行が被害を出さないためにホールに閉じ込めておいたが容易く突破されてしまい意味をなさなかった。彼は体を完全にフレーラと別し雫の方を見る。

電池残量は通常モードで残り30分弱、能力を使おうものなら一瞬で行動不能になる。最後の言葉を伝えようと傷ついた体を動かす。ザッザッと瓦礫を踏み越え一方通行は深雪の目の前に来る。周囲の人間が美少女というくらい素晴らしい顔つきらしいが、美的感覚や性ホルモンの分泌以上を伴った彼にはその事が客観的にしか分からない。若干の恐れを抱く彼女を無視して彼は力強く咳き込む。その勢いで彼の口内から真紅の宝石が地面に飛び出る。異常な程の光量を六角形の立体的な構造から放出し、直視できないぐらいの眩い光は次第に薄くなり一方通行が手に取る時には光は失われていた。

 

 

「司波深雪、テメェにこれをやる。三高の吉祥寺に渡しておけ」

 

 

突然手渡された宝石を凝視する深雪に一方通行は説明を付け足す。

 

 

「それは俺が吉祥寺に調査を頼んでいた品物の一種だ。名前は賢者の石、効力は俺の使った限り能力のベースアップ、魔法関連だと処理速度の向上と......後は忘れたが取り敢えずまだ研究段階だ。それと」

 

 

口ごもり自らの頬を軽く指先で掻き真っ白いまま語る。

 

 

「雫とほのかを頼む」

 

 

それだけ口にするとふらりと体の向きを変え彼らと反対方向に進んでいく。止めようとした真由美や雫が彼を追うが杖をついている一方通行に何故か追いつくことが出来ない。走っているのに追いつかない、それどころか逆に離れていっているようなそんな感覚に襲われる。

突如あの異空間への扉が一方通行の目の前に現れる。開かれたその先にはホログラム化されたアレイスターの姿が映っていた。

 

 

『お疲れ様、一方通行。君の後ろにいる学園都市の人間は既に帰しておいたよ』

 

 

一方通行が振り返って見ると集団の中には黒夜とシルバークロースは既にいなかった。恐らく空間転移などで移動させたのだろう。

 

 

『木原脳幹と君が交わした契約内容に変わりはない。規定事項のまま全てが進む。引き返せない道を進むことに後悔は無いかね?』

 

 

男にも女にも老人にも若者にも見えるその姿から発せられる。それに答える必要は一方通行にはない。

扉の奥へと進み最後に後ろを振り返る。一年近く共にいた初めての同級生や先輩と呼べる人間が沢山いる。学校生活を多少なりとも楽しめた一方通行は唇を歪め最後に一息ついた。

 

 

「まァ悪い人生では無かったなァ」

 

 

首元のチョーカーの電極に触れ残量をゼロにする指は微かに震えていた。

 

 

***

 

 

『灼熱のハロウィン』

魔法師が歩む道の新世代の始まりとも言われる歴史的用語、機械兵器よりも魔法師の有用性を示したこの出来事は後世まで語り継がれることとなる。しかしこの歴史的出来事の場に出会した人間はこう思う者は少なかった。

学園都市、彼等が魔法の世界へ台頭してきたからである。圧倒的な科学力と超能力という魔法とは異なる技術を用いて侵略を始めたこの一大勢力は留まることを知らなかった。さらに一般的には被害を受けた横浜の修復作業を一手に担い短期間の工務期間で作業を終了させた超優良企業グループとして認められていた。これにより外部からも内部からも手出しすることが出来ず自由気ままに学園都市が活動できるようになったのだ。

そしてその魔の手は日本だけではなく各国へと飛散する。

北アメリカ合衆国、太平洋を超えて学園都市が動き出す。

 

 

***

 

 

とある学生寮、上条当麻はミニサイズの魔神オティヌスと暴飲暴食シスター、インデックスと共に冬の定番である鍋をつついていた。熱々の白菜が口の中を襲うがそれでも美味である。

 

 

 

「だぁあああああああ!!インデックス!肉ばっかり食べるなって何度言ったらわかるんでしょーか!?」

 

 

彼の箸では肉片を掴むことが出来ない。曖昧な箸の使い方のインデックスに負けるのである。ミニサイズのオティヌスは盛り付けられた自分用の鍋を食べながらそんなふざけた光景を眺める。

 

 

「お肉が私の元へとやって来るんだよ、とうま!」

 

 

ワーワーと騒がしい中夜のバラエティ番組をやっていたテレビに突然ピロリンと鳴り出す。どうやら緊急ニュースが画面を流れるらしい。当麻もインデックスも一旦肉戦争を休戦しテレビに目を向ける。そこに上条当麻は新たな騒乱を予測する。

 

 

『番組の途中ですが失礼します。ただ今入りました情報によりますと先ほど学園都市第1位の能力者、通称一方通行の死亡が確認されました。死因は能力の暴走による脳出血とされています』

 

 

あるマンションの一室、何気なく見ていたテレビに映った一方通行の顔写真に番外個体と芳川桔梗はテレビ画面に食いつく。幸いなことに打ち止めは黄泉川愛穂と共に浴室にいた。

 

 

『学園都市統括理事会の説明によりますと能力測定に失敗し暴走した模様です。これにより学園都市の能力降順が変更される見込みとなりこれに対し学園都市側は一刻も早い能力測定が必要とのコメントを発表しています』

 

 

学舎の園にある高級そうな学生寮の一室、御坂美琴と白井黒子の2人もテレビ画面に夢中になっていた。

 

 

『学園都市が被る影響は非常に大きく急速な事態に未だに今後の予測がつきません。こちらには学園都市能力開発の専門家、木原唯一さんに来ていただきました。木原さん、学園都市は今後どのような対応を取っていくのでしょうか』

 

 

『そうですね、お預かりしている大切なお子様の命が関わるを危ぶむ保護者の方も多いと思いますが今回は配慮が足りなかったと思いますね。そのためこれからは能力開発には保護者の是非が必要ではないでしょうか。今回のケースは異常であるため具体例として上げることは出来ませんが、学園都市はもう少し透明性を持った説明をしていくことが求められると思います』

 

 

白衣を着た女性のテキパキとしたコメントがスタジオ内を緊張させる。

 

 

『ありがとうございます、続報が入り次第お伝えしていきます』

 

 

そこで緊急番組は終了し先程までやっていたバラエティ番組が再開される。

そのテレビを見ていたとある病院の患者、御坂妹と呼ばれる御坂美琴のクローン体は静かに息をするように一言口ずさむ。

 

 

「上位個体が暴れだしますね、とミサカは落ち着きのないこの街に少し嫌気がさします」




バーっと駆け抜けていった感じもありますが一応終わりということで
クソエンドにしかなってませんがすみません

*追記
完結というかパラサイト編の読み込みと禁書のキャラクター確認をしたいので完結ではなく一旦終わりという感じです

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