魔法のあくせられーた   作:sfilo

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まだ導入です。


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アメリカ、自由の国として名高いこの国は如何なる敵国にも勇敢に戦う強い国である。大陸東西の海岸線には多大な軍力を設置し他の軍は近づくことすら出来ないと言われている。では空からならどうだろうか。航空権を持つのはアメリカの厳しい審査に受かった会社とその機体だけであり疑わしいと判断された場合には即刻航空権は剥奪される。

なら異空間からの侵入はどうだろう。

ワープホールをこの世界で駆使する学園都市はアメリカと非公式ながらも同盟関係にある。灼熱のハロウィンの後学園都市は有名になった。だが彼らと接触を果たそうとする国は多いにも関わらず学園都市は一切を無視し自分からアメリカに接触してきた。

ホテルのある一室、学園都市のエージェントである大能力者はシャワーを浴び終わりベッドに横になっている。そして呼び鈴が鳴りある人物と共に部屋の一室へ向かう。

アンジェリーナ・シリウス少佐、同胞を殺し終えて憂鬱な気分に浸されていた彼女の元にスターズのナンバー2であるベンジャミン・カノープスが訪れた。リモコンで扉の鍵を開けると彼ともう1人知らない人間がスッと立っていた。髪は真っ黒で肩には届かないくらい短く、服装もほぼ全身黒いが隙間隙間に見える肌は対照的に白く映える。東洋人に似た髪質であり眼球は深い漆黒で沈んだような暗さを表している。

 

 

「ベン、そちらは?」

 

 

疑問を隠せないシリウス少佐はハニー・ミルクを用意していたカノープス少佐に少年の所在を確かめる。

 

 

「取り敢えずこちらを。では紹介します、総隊長と共に日本への潜入捜査を致します学園都市の人間です」

 

 

そう言われた黒髪の少年はお辞儀をした後自分から自己紹介をする。

 

 

「学園都市大能力者No.2(セカンド)です。よろしくお願いします」

 

 

差し出された右手にシリウス少佐は応えると通行は個体を認証したのかすぐに手放し自らの端末を取り出して手に入れた情報を入力する。

差し出されたハニー・ミルクを口に含みながらシリウス少佐は謎の行動に少し悩まされる。目の前のカノープス少佐はそんな少女の態度に自ら行動していく。

 

 

「総隊長、彼は非常に優秀だと聞かされています。貴女と共に行動するに何不自由ありませんので。向こうでゆっくりと羽を伸ばしてきてください」

 

 

「はぁ...羽を伸ばすと言っても特別任務なので休暇ではないですよ」

 

 

呆れたように呟くシリウス少佐を前にセカンドは割り込むように詳しい紹介を始める。

 

 

「少佐、私の能力をご存知でしょうか」

 

 

「いえ、知らないわ。それにこれから潜入任務に入るので少佐ではなくリーナ、と呼んで下さい」

 

 

「分かりましたリーナ。私の能力はメインストレージに肉体変化(メタモルフォーゼ)サイドストレージに亜空転移を有しております。肉体変化とは」

 

 

そう言ったセカンドは実演するために能力を発動させる。体の繊維がギチギチと音を立てて肉体が変化していく。そして数秒も経つと服装も髪型も姿形まるっきりリーナと同じになっていた。突然自分と瓜二つの人間が目の前に現れ驚くリーナと能力の素晴らしさに困惑と疑念を抱くカノープスがいる。

 

 

「このように私に触れた人間の姿をコピーすることが出来ます」

 

 

このように話す声もリーナそっくりだった。

 

 

「そして対象人物の観察に3日程頂ければその人間に成りすますことも可能です。リーナへの変装の場合は既に情報を頂いているので、1日行動を共にさせていただければ全てをコピーすることができます」

 

 

「た、頼もしいわね。でも自分と話すのは奇妙だから今はやめてもらって欲しいわ」

 

 

分かりました、と言った直後彼の体は元々の漆黒へと戻っていった。そして2つ目のストレージに入っている能力を伝える。

 

 

「亜空転移は学園都市専用のトランスポーターを1日に2度だけ使用することが可能です。発動タイミングはいつでも構いません。ご要望があれば私にお伝えください。あと、日本へ行くのにこの能力を使いますので飛行機は全てキャンセルしておいて下さい。同時に訪日するサポート部隊の方々も一緒に来てもらいます」

 

 

早口ながらも全て伝えたセカンドは一息つく。彼自身この任務に関して思うところはない。何故なら記憶が無いためである。気が付いたら調査書を渡され変装できるよう命じられ、学習装置で知識を植え付けられそしてこの任務。しかし逆らうわけにもいかない。自分の正体を掴むためには現時点で学園都市の言うことを聞かなければならない。

すると突然リーナに声をかけられる。

 

 

「これから共に学校へ潜入するから敬語はなしにしてくれないかしら。私の方も貴方には友人のように振る舞うわ。それとその肉体変化?随分出来がいいのね、魔法ではないように思えるけどそれが学園都市流の魔法なの?」

 

 

「了解したリーナ、これは魔法ではない。学園都市は超能力を開発しているんだ」

 

 

超能力?と指を顎に当て疑問に思う彼女に静かに答えていく。

 

 

「一人一つ持つことが出来る特殊能力のことで魔法とは違い汎用性は限りなく薄い。だが以前日本に潜入していたとある人物は魔法と超能力を噛み合わせ能力自体を昇華させたらしい。学園都市の狙いはこの繋がりの詳細を調べることらしい」

 

 

「へぇー、超能力の事はBS魔法と呼ぶのが一般的だと思っていたけれど学園都市はよく分からないわね」

 

 

深く追求してこないリーナに少しの疲れが見えたのでセカンドは早めに退出することにした。

 

 

「では日本へ向かう日時は後ほど。情報端末に私のアドレスを打ち込んでおいて欲しい。連絡はこれで頼む」

 

 

そう言うとセカンドは扉から自室へ向かう。扉を占める際に深い黒の髪の毛は光が反射し白く映えた。

ガチャリと音を立てて鍵が閉まった自室を確認したリーナはカノープスに飲み物のお代わりを頼む。

 

 

「いや〜それにしてもあのセカンドと言う人間、とても奇妙でしたね。変装の達人かと思いきやトランスポーターも使えるなんて、学園都市の技術は遥かに進んでいるんですね」

 

 

最後のハニー・ミルクをカップに注ぎながらカノープスはセカンドと言う人間を判断する。

 

 

「ベンはどう思う?彼と背後にある学園都市について」

 

 

「実のところ学園都市の動きを予測できる人間は今のアメリカにはいません。オーストラリアが彼らに統治されて3日後にようやく本国が実態を把握したことや、灼熱のハロウィンに学園都市の駆動鎧とやらが侵攻制圧した事も誰も事前に知らなかったんです。言わば実態が不明な科学組織なのです。我々と同盟関係にあると言っていますけれど十分注意した方がいいかと」

 

 

カノープスの提言は断片的な情報を得られる軍人という立場ではなかなかの鋭いものだった。本部がどこにあるかも分からない謎の組織、信じるのには未だに足りない。

翌々日、出発の準備が出来た訪日チームは軍の空軍基地に集まっていた。第1弾は総数30人近くで通信車や様々な支援物資や軍用装置が積まれた軍用車が見られる。そこで待機の指示があってから10分後、12月ということで肌寒い季節の中虚空に一人の青年が突如として現れるセカンド。

リーナは彼の現れ方が以前会った時とは異なるように思えた。一昨日はホールのような空間に入っていったのだが今回は肉体だけがこの世界に現れる。複雑なシステムがあるのだろうと思っていた所にセカンドからアメリカのチームに指示が出される。

 

 

「これだけの大人数で移動は初めてだが問題は無い。車のエンジンをかけろ。すぐに出発する」

 

 

そう言った彼は滑走路近くにワープホールを形成させる。高さは約5m、幅も5m近くのサイズで中身を覗くと真っ黒な闇に包まれている。支援部隊の多くの人間は初めて見た光景に驚きを隠せない。リーナに関しては特段の驚きはないが改めて科学力の違いを思い知らされる。

準備が出来たのを確認したセカンドは自ら先頭に立ち誘導する。その隣にはリーナがいて詳しい話を伺う。

 

 

「すまないが私の能力ではないため精度が足りない。徒歩で1km程歩いてもらう」

 

 

真っ黒だった空間はセカンドが足を踏み込むのと同時に足場と上部に白い炎のような明かりが灯る。

隣で歩いているリーナは謎の空間に少し興奮しながらセカンドへ話しかける。

 

 

「そう言えばサイドストレージに亜空転移があるって言ってたわね。あなた自身の能力じゃないって言うのと何か関係があるの?」

 

 

「ああ、そもそも学園都市の能力は一人一つと言ったが私の場合肉体変化が生まれ持った能力で亜空転移の方は他人から借りている状態にある。使用時に脳波を元の持ち主に合わせることで使えるんだがやり過ぎると脳味噌が壊れるらしい。詳しくは知らないが担当者が言っていた」

 

 

「ふ〜ん、魔法と違って超能力も難しいのね。それで日本にいる時はどんな身分で行くの?私は第一魔法科高校に留学という形で潜入する予定だけど貴方の事は心配いらないの?」

 

 

「姿形を自由自在に変えられるこの肉体があるからな。学園都市の指示通りに動くことにする。リーナは気にしなくていい、勿論君達の作戦のサポートはするが私の目的は学園都市の指示通りに動くことにある」

 

 

目を一切リーナに向けないで進むセカンドは無駄話をしている内に指定された場所にたどり着く。そして右手を突き出し縦に裂くような手振りをすると明るい光が入ってきた。薄暗く証明は小さな白い炎しか無かったこの空間から見るととてつもなく眩しく思える。初めに出ていったセカンドは周囲の安全を確認し亜空間にいるチームメンバーに許可を出す。

 

 

「ここは操業中の食品工場だ。我々は彼らと同じ従業員に見えている。だがその効果も長くは続かないので早々にこの建物から出て作戦拠点への移動をするように。これ以上移動の手助けは出来ない」

 

 

そう言うセカンドは端末を手に取りある人物へ連絡を取る。その間にサポートスタッフは軍に指示された通りの場所へ向かうこととなった。慌ただしく動く中セカンドはリーナを呼び止める。

 

 

「君とシルヴィアはマンションへ向かうのだろう?」

 

 

「ええ、持ってきた荷物の整理や通信状況を確認しなくてはならないわ。もしかして貴方も同じ部屋に住むの?」

 

 

予想が的中してしまった。セカンドの顔は全く動かないが世間から見れば10代後半の男女が共同生活を送るのは些か問題視させる。しかし今回の作戦上セカンドの肉体変化は学校での彼女の立場を危なっかしいものにしなくて済む重要な能力であり、即座に対応するためには一緒に暮らした方がいいという軍と学園都市の決定だった。それがリーナには届いておらずシルヴィアは知っていた。

 

 

「まあ作戦が終わるまでだ、何も問題はないだろう。シルヴィア、よろしく頼む」

 

 

リーナの傍にいたシルヴィアはセカンドの握手に応じ挨拶する。これで彼は彼女にまで肉体変化出来ることになった。

 

 

「では新居に向かおうか」

 

 

本日2度目の亜空転移によって彼ら3人は日本政府、十師族両方に気づかれることなく日本に潜入し作戦が始動した。専門家のサポートチームは四葉の謎の力により発見されるのはこの二日後である。




オリキャラ2人目、フレーラに続いてですが学園都市側の人間ですね。文中で彼の特徴の通り誰だかわかると思いますが多分その人じゃないです。
USNAをアメリカと表記しています。英字使うの面倒なだけなんでUSNAがいいという方がいれば直します。
一方通行が消えた世界でこのタイトルというのも悪くないと思いますので許してください。

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