魔法のあくせられーた   作:sfilo

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投稿再開します


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「衣服のコピーは人間の体に比べてやはり少し難しいな。現状これ以上レベルを上げることは不可能らしいし制服を着ていくか?いや、コピーできる以上勝手がいいのは当然だし...いや...」

 

 

自室のクローゼットを独り言を言いながら漁っているセカンドは本日魔法科高校に転入する手はずになっている。名目は一方通行の代理ということでの移籍となるのでリーナと同じAクラスにつくことになる。

朝食を終えた彼女は既に準備を終えているらしい。当のセカンドは結局制服を着用することに決めた。能力を知らない間に見られるのは困るし面倒だ。

 

 

「ではいってらっしゃい、リーナ、セカンド。くれぐれも問題は起こさないで下さいね。それとセカンド、リーナのことを頼みますよ」

 

 

玄関でシルヴィアの挨拶を受け2人はドアを開ける。

まずは一高の職員室に向かうわけだがリーナは自分と異なる手荷物を手にしたセカンドに気づいた。鞄ではなくアタッシュケースと手錠で繋ぎ合わされたセカンドの左手は何か不気味なものを感じさせる。

コミューターに乗り込み彼らはこれから過ごす学校へ向かうこととなった。

Aクラスの担任へ挨拶が終わり朝のホームルームで自己紹介をするとのことで職員室へ待機する2人に会話はない。少し馴染みがある程度の関係に留めて置かなければ周囲に怪しまれるためである。

数分経つと担任がやって来て一緒に教室へ行くこととなった。他の教室は廊下から中が見えないようになっていて覗くことは出来ない。あちこち目を配らせるリーナと対極でセカンドは担任の背中しか見ていない。

 

 

「ではここで待っていて下さい。呼んだら入って来てください」

 

 

教室内は雫の代わりやって来る留学生を待ち遠しく思う雰囲気が漂っていた。ガラリと開いた扉から担任が入ってきてその雰囲気が崩れたのは言うまでもない。しかしその口から留学生の紹介が始まると高揚する。

 

 

「では留学生のアンジェリーナ・クドウ・シールズさん、入って来てください」

 

 

現れた美少女に男子一同興奮を隠しきれなかった。美しい金色の髪にスラッとしたスタイル、蒼い瞳は日本人と離れて素晴らしい美しさをより際立たせる。

 

 

「ご紹介に預かりましたアンジェリーナ・クドウ・シールズです。三ヶ月の間みなさんと仲良く出来たら嬉しく思います。気安くリーナ、と呼んで下さい」

 

 

大きな拍手が彼女を向かい入れ雫が元いた席に案内され座る。これで終わりだと思った大半の生徒が次の授業の準備をしようとした瞬間、担任はもう1人の転入生を紹介した。

 

 

「もう1人紹介しなければなりません。入って来てください」

 

 

深い黒の髪の毛に瞳、対する一科の制服は白いため黒さが周囲よりもより目立つ。左手につけた手錠付きのアタッシュケースにも興味をそそられるが、バランスの整った顔立ちに白い肌の人間味の薄い感じに不思議なオーラを感じさせる。

 

 

「一方通行の代理としてこの学校に通わせて頂くこととなったセカンド、という者です。彼も学園都市の人間なのは周知の事実だと思うのですが私もそちら側の人間です。期間はどれ程になるかわかりませんが仲良くしていただけると幸いです」

 

 

紹介を終えたセカンドは一方通行の元いた席である最前列の席にゆっくりと歩いていく。そこに座るのを担任が確認すると彼らの世話を司波深雪に頼みホームルームを終えた。

 

 

***

 

 

昼食時、午前の授業は全て座学で実習がなかったせいか昼休みはリーナとセカンドを取り囲む2つの塊が出来ていた。リーナら深雪のいるグループは早速食堂に行くようで、セカンドは囲まれたA組の男女から飛んでくる質問に淡々と答えていた。その中で彼が最も親しくなったのが森崎駿という男子生徒だった。彼は一方通行とも周りよりは仲が良かったのでセカンドの不思議な感じにもすぐに慣れ校舎を案内してくれるという。

集団を解散させ森崎とセカンドは廊下を下り校舎の外に出た。寒いこの季節にも関わらずベンチで昼食を食べる男女や部活の自主錬に勤しむ集団が見られる。そんな光景を珍しく見ていると森崎から声がかかる。

 

 

「一方通行は元気なのか?」

 

 

「詳しくは知らないな。何せその代理だし前任が務まらなくなったから来ただけだからね。それよりも食堂に行かないか?そろそろ混み時も過ぎた頃だし丁度いいんじゃないか」

 

 

外の寒さに耐えられなくなったセカンドは腕を組み寒さを和らげさせ食堂へと足を向ける。

メニューは随分と多いように感じた。一般的な学食という物を知らないせいか見るもの全てが新鮮に感じられる。金髪美少女のリーナとは違い黒髪で日本人風の彼が食堂へ来たところでそれほど騒がれない、と思ったのだが大きな間違いだった。あれよあれよとあちこちで話し声が大きくなる。それもそのはずだろう。左手にアタッシュケースを握っている生徒など一高には彼しかいないし、気づいていないようだが顔面の肉体変化のモデルが結構なイケメンだったのでそれも理由になる。

注文した定食セットを運んであるテーブルに2人は着席する。昼休みも終わり時に近いため今から食事をする人より食器を片付け始める人の方が多かった。そのため食べ始めるにはなかなか居心地のいい時間帯でセカンドは気に入った。

 

 

「左手使えるのか?」

 

 

アタッシュケースに繋がれた左手は下げられたままの状態を心配した森崎は尋ねるがセカンドは何不自由なく問題ないという。胸ポケットからボールペンのような棒状の物を取り出し彼は味噌汁にそれを向けた。すると一口大に切り取られた水球が浮かび上がり彼の口の中に飛び込む。それと同時に何かの薬なのだろうか、錠剤を数個口に含める。

 

 

「これがあるからね。念動力(サイコキネシス)の応用に近い。詳しくは説明しないけどある程度のものなら動かすことが出来る代物だと思ってくれればいいよ」

 

 

そう言って浮いた一口サイズの食物を食べる姿はそれはそれで奇妙だった。だがそれ程大事な物がアタッシュケースに入っているのだろうと思った森崎はそれ以上追求することはなく当たり障りのない話題で昼を終わらせた。

彼らが学校に通うになってから数日、セカンドは学園都市から緊急の任務を与えられた。緊急と言っても自体はそれ程大事ではないらしい。出来ることならやって欲しいと言うぐらいだろう。それを受けたセカンドはリーナよりも少し遅く学校へ向かうことにした。準備が大切なのである。

その日の実習、一高の美少女同士の魔法対決をしていた頃セカンド1人実習室の見学室に向かっていた。担当の教師がいない個人での実習だったため何も文句は言われない。

リーナの負けが決まると見学室にいた自由登校の3年達はドッと深い息を吐いた。深雪に近い魔法力を持つ生徒が少ないためその珍しさと、アメリカの留学生の実力も測れた事に満足した半数の見学生徒は教室を後にする。その行為とは逆にセカンドはその部屋に入っていきある人物に接触する。

 

 

「隣、空いてますか?」

 

 

摩利と深雪について話していた真由美はいきなり話しかけられたが、営業スマイルのような態度で丁寧に了承した。話しかけてきたのは今現在話題沸騰中の転入生のセカンドという人間だった。

 

 

「司波深雪さんを筆頭に優れた魔法師が多い学校なのですね」

 

 

気付かなかったが左手には何やら荷物を持ってるのも確認できる。

真由美よりも先にセカンドに応えたのは摩利の方だった。

 

 

「君も実習の時間じゃないのか?転入早々サボりとはいい度胸だな」

 

 

「サボりと言うか貴方に用事があった理由で時間をとってくれるのなら普通に授業に出てますよ。それより七草さん」

 

 

呼ばれた真由美は不意を付かれたように若干慌てるがセカンドの方を振り向くと態勢を立て直す。

彼の口から二人が思いもしなかった事が発言される。

 

 

「あまり人様の領域(フィールド)に手を出さないで頂きたい。十師族としても学園都市と事を構えるのは避けたいでしょう?」

 

 

ゾッとした。威圧感では無い。一方通行が入学して生徒会室で荷物を受け取り以降何も話さなかったような、それに似ている。圧迫して恐怖心を植え付けるのではなく、あくまでも対等に。

 

 

「まぁこれ以上荒らされる様であればこちらも正式に対応します。今は互いにスルーし合うのが最良かと思いますよ。それにただでとは言いません。相応の対価を出しますよ」

 

 

「わ、分かったわ。父にそう伝えておくわ」

 

 

今の七草家は学園都市と対峙する程の力はない。と言うより学園都市の戦力の規模がどのくらいか判断がついていない。そのための調査をやっていた訳だがどうやら泳がされていたようだ。

深く考え込む真由美にセカンドは対価を早速渡す。

 

 

「では取り敢えず渡しておきます」

 

 

そう言ってフロッピーディスクのような薄い記憶媒体を彼女に手渡す。

 

 

「貴方達に重要かどうかは分かりませんが貴方の好きなものではあるでしょうね」

 

 

真由美が中身を尋ねる。すると彼は椅子から立ち上がり下の実習室へ向かう足を止め中身を教える。中身を他人に聞いてしまえばワクワク感がなくなると思っていた彼だったが、どうやらそのような問題ではないらしい。

 

 

「中身は学園都市で生活していた一方通行に関する情報の一部です」

 

 

では、とセカンドが空いている右手を差し出す。握手を求めていることが真由美にも分かり、それに応答し軽くタッチするような握手をする。隣にいた摩利にも同じように握手をし彼は見学室から退場していった。

 

 

「ああ、そうだ、そう上手くいった。七草真由美、渡辺摩利この2人の肉体変化は調整すれば今夜にも変身することは可能だが危ない。やるなら明日以降にしろ」

 

 

セカンドの電話の相手はこの世界の学園都市の動きの総指揮を執る上層部の一人。その人物はセカンドの担当であった。この担当というのはこの世界に渡ってきた能力者一人一人に付いて作戦を与えたりサポートをしたりする役目を持つ。

 

 

『三矢に監視させておいた甲斐があったな。次は司波兄弟とその周りにいる人間に接触しろ。出来れば肉体変化のサンプルにしておけ』

 

 

「あいあい、でだ、今亜空転移の奴はまだ窓の無いビルに籠ってるのか?」

 

 

亜空転移、学園都市がこの世界で生きていく上で最も大切な能力者だが些か性格に問題がある。

 

 

『心配しなくていい。それよりも司波兄弟には十分な注意を払え。能力がバレることは最悪仕方ないとしても我々の目的は悟られてはならない。自己暗示をかけても限度がある。餌をちらつかせても構わない』

 

 

セカンドは通話終了ボタンを右手で押し実習室の扉を開ける。授業はそろそろ終わる時間になり本日の第2戦場となる昼休みが幕を開けようとしていた。




追記:すべての話の見直しをしています。
更新はもうしばらく遅れると思います。すみません

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