魔法のあくせられーた   作:sfilo

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大変遅くなりました。
すみません


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昼時、リーナと隣に並ぶある男子生徒の姿を2科生のエリカ達は目に映った。深雪やほのかも同席しているため1科の生徒だろうと推測し昼食を持って彼らのテーブルに近づく。するとリーナが男性を指し紹介してくれた。

男の名はセカンドと言い学園都市の留学生みたいなものらしい。

 

 

「よろしく、名前は...エリカに幹比古にレオ、達也、柴田でいいのかな?」

 

 

握手を求められた彼らは素直に応じてその後座り始めるが達也は疑問に思っていた。

 

 

「どうして俺達の名前を知っているんだ?」

 

 

「どうしてってそりゃ引継書に報告されてたから。そこには北山雫っていう名前も載ってるけど今はリーナと入れ替えで留学してるらしいね」

 

 

達也の質問に答えたセカンドは何も不思議には感じてないがどうやら相手方はそうではないらしい。一方通行という監督者がいなくなった理由も知らされてないしあまりに急な出来事のため状況を判断することは難しい。

魔法の杖でパクパク食事をしている姿は奇妙だが彼自身握手ができて満足であるため以降はリーナに進行を任せた。

 

 

「ところでリーナ、君はこの学校に来て何か面白いことでも見つけたかい?」

 

 

「そうね、ステイツでは負け知らずだったけどミユキには勝ち越せないし流石は魔法技術大国日本ね。興味が湧いてくるわ」

 

 

そうか、と尋ねたセカンドはそのまま食事を続けるが達也は引継書という単語に注目していた。

 

 

「セカンドは引継書において一方通行のことを何か知らないか?そして学園都市は一体どういった組織なんだ?」

 

 

「先日同じ事を聞いてきた青年がいたな、彼にも言ったことを繰り返すが直接会ったわけじゃないし詳しくは知らない。学園都市についてはそうだな...」

 

 

テーブルに置かれたボトルを軽く回しながら思案するセカンドに周りの興味は注がれる。この世界の住民からすれば学園都市という突然現れた科学力の優れた集団は異質も異質、情報を集める集団にとって今は学園都市の話題で盛っている。千葉や吉田と言った旧家の組織でさえ学園都市を無視出来なくなっている。

ストローから中身を吸い終えたセカンドが発した言葉は驚くべきものだった。

 

 

「模擬戦で勝ったら教えようかな。どう達也?」

 

 

ニッコリとした笑顔を見せるセカンドは冗談冗談と言う。

テーブルに飲み干したカップを置きトレーごと片付けようと立ち上がった彼にレオはちらりと見えた左腕に繋がれたケースに疑問を覚える。

 

 

「なぁ、そのアタッシュケースは何が入ってるんだ?」

 

 

「これ?君達にも見覚えがあるはずなんだけどな」

 

 

レオはその言葉を頼りに記憶を探すが覚えがなかった。

 

 

「正解は組立式CADの完成版。去年の九校戦に一方通行が使用したのはあくまで試作モデル、でその研究成果を利用して造られたのがこのCADってわけ」

 

 

その場にいた達也はこれに興味を抱く。技術者としてあれほど素晴らしい技術を完成形として世の中に出した頭脳が計り知れない。

あの時のことを思い出したのか幹比古は純粋な気持ちでセカンドにあることを尋ねた。

 

 

「でもCADなら学校に預けておかなけゃいけないんじゃないの?」

 

 

「詳しい説明するの面倒臭いから省くけど近々このCADは一般販売するんだ。そのためのモデリングとして自分が役割を担ってるから特別に許可が下りてるらしい。多分ね」

 

 

夏の一方通行がスピードシューティングで見せた複数のCADを組み合わせ高性能なCADへと変貌させた仕組みを利用した最新作のCAD。それが近日発売されるなど誰も知らない。

時間が差し迫ったのかセカンドは急ぐようにして食堂を出ていった。その機会を見計らったかのようにリーナに美雪はある質問を投げかける。

 

 

「セカンドと貴女は知り合いなの?」

 

 

「そ、そうね、同じ時期の留学生として何度か同じ説明会を受けたし顔見知りではあるわ」

 

 

機転の良さはピカイチなのか上手く理由をつけて誤魔化す。そんなことを気にしないレオはやはりさっきの彼の言動に心を惹かれていた。

 

 

「それにしてもよ、やっぱり学園都市って奇妙な組織だよな。一方通行の時もそうだったけどいい奴らなのか悪い奴らなのかわかんねえ。だってオーストラリアを占拠したのは認めてるんだよな、なのになんで他の国は何も言わねえのかな」

 

 

「オーストラリア政府も公式に条約を結んだって言ってるしその辺はなにか特別な事情があったんじゃないかな」

 

 

幹比古の公式的な見解はレオにも十分にわかっていた。しかし一般人からして見れば学園都市の飛躍は明らかにおかしい。突然現れたのにも関わらず幾多もの国や地域と次々と交易を結び、高い技術力で新たなCADまで販売を始めようとしている。

事前に来ることを察していたかのようにスムーズな対応。

ここから先の予想は完全に個人的なものとなるのでレオは慎み昼食会は解散となった。

 

 

***

 

 

その日の帰り、セカンドは奇遇なことにある人物と街中で出会った。

 

 

「なんで貴方がここにいるんですかね、亜空転移さん。最近仕事で忙しいって言ってたじゃないですか」

 

 

そう?と首をかしげる身長の足りない女性の煌めく銀髪が宙に舞う。155cm程の低い身長にこの髪の量は明らかに周囲より目立つ。地面に付くのではないかと言うぐらいの銀の束は粒子を纏っているのか丁寧な鮮やかさだった。

 

 

「亜空転移でもいいけど私にはちゃんとした須藤華恋って言う名前があるんだけれど。まあいいわ、私貴方に一つお願いがあってきたの」

 

 

セカンドの隣に並ぶと身長差が随分とはっきりとなる。

 

 

「リーナを私に紹介してくれないかしら。すっごい可愛いのね、綺麗な金髪にナイスなツインテール、自重したかのように制服では自ら目立とうとしないあの胸、ヘッヘッヘッ......」

 

 

変態性が顕になったところでセカンドは取り敢えず近場の喫茶店に移動しようと提案した。口から涎を垂れ流しそうな彼女を強引に連れ込みコーヒーを飲ませ安定させる。

須藤華恋、通称亜空転移は純なレズビアンでありかつ学園都市とこの世界の輸送関係の仕事を一手に担う転移系能力者である。異空間と異空間を繋ぐ能力は学園都市において彼女一人しか存在しておらず、大量の物資を輸送する際必ず彼女の能力が必要となってくる。少量の輸送なら学園都市の開発したトランスポーターがあるのだが基本的に使うことは無い。何故なら彼女の能力の方が遥かに便利であり緊急時にしか使う機会が無いからである。

ブラックを飲まされた彼女は気分が安らいだのか追加注文したショートケーキをゆっくりと食べていた。

セカンドはと言うと最初に頼んだ華恋と同じコーヒーをちょっとずつ飲んでいる。空になりそうなカップを覗き華恋に先程の誘いの返事をする。

 

 

「紹介って言ったってどうすればいいんですか。そもそも貴女、単独行動禁止のはずじゃないですか?一方通行がいた頃の貴女はしっかり規則に則って行動してたじゃないですか。自分が担当し始めてから問題ばっかり起こすと怒られるの俺なんですよ?」

 

 

「んあ?待って待って、この苺食べてからにしてよ。そもそも私、そんなに問題起こしてないよ?担当からも何も言われないし」

 

 

周りのクリームを綺麗に除き最後の苺を口に運び体をクネクネする姿はある種の人間からして見れば可愛らしく映るのかもしれない。しかし彼の目にはレズビアンで空間系能力で変人気質の持ち主としか思えない。

腹を括ったのかセカンドはコーヒーを飲み干し華恋に提言する。

 

 

「わかりました、紹介しましょう。ですが代わりに貴女はこれから学園都市の進行通りに動くと約束してください。貴女の後始末は私達下部組織がやっているんでその手間を省かせて下さいよ」

 

 

セカンドら学園都市の連中でさえ今のこの世界における須藤華恋には頭が上がらない。物資輸送という大動脈を断ち切られればすぐさま学園都市は存続が難しくなる。協力機関がこの世界では数少ないため今の彼女は事実上アレイスターよりも権力が上にある。

そんな様子を微塵も感じさせない小さな美少女は銀髪に似合わない茶色な瞳をパチパチさせこう言う。

 

 

「しっかたないなー、この天才美少女須藤華恋さんが本気を出してあげよう。バンバン運んじゃうよー今までの倍は運んじゃうよー」

 

 

そういう問題なのか?と疑ってならないセカンドだったがこれを機に意識改善を図れたらいいと思いそれで了承した。

 

 

「んじゃ早速君の...セカンド?の家だかに行こうか。同棲してさらにお姉さん的な存在の人もいるなんて羨ましい!私も窓の無いビルから出てどっかのお姉さんに匿ってもらおうかしら」

 

 

「冗談よしてくださいよ。さっき俺とちゃんとするって約束したじゃないですか、それぐらい守ってください」

 

 

「わかってるよー」

 

 

本当に不安な彼だが心配しても今は意味がない。取り敢えずレジにて会計を済ませ自分の家へと向かおうとした彼だったが華恋はちょいちょいと肩を叩く。

 

 

「もう暗いしさ私の能力使おうぜ。な?いいだろー?」

 

 

確かに少し暗くなってきた感じはあり、歩くのが面倒なダルイ系男子セカンドはその提案に乗った。ちょっとした小道に入り監視カメラの存在を確認しながら条件の整った環境を探す。するとすぐに監視カメラのない人気の少ない場所を探し当てられた。

 

 

「ほいじゃー行くよー。あっ、室内入るから靴脱いだほうがいいね」

 

 

そう言って靴を脱ぎながら謎の空間を作り出す。一時期セカンドに分け与えていた能力で作られたものとは異なり全体的に白く、優しい色をしていた。能力使用者によって特性が異なるのだろうかと疑問に思うのだが、ぴょんと入口に入っていく華恋の後を追って彼も足を踏み入れる。

 

 

***

 

 

ミアと呼ばれる女性がリーナ宅を訪ね女性3人で仕事の話が終わり、女子会的な雰囲気のマンションの一室。そのリビングルームに突如リーナの見覚えのある異空間が出来上がった。即座に臨時体勢に入るリーナとシルヴィ、ミアに対しその空間から現れたある少女はぺたりと素足でテーブルの上に乗り目前の少女を発見する。

 

 

「マジで生リーナだ!生リーナ、生リーナじゃん!すっごい可愛い、つーかアメリカ軍のレベル高い。やっぱりこの仕事選んで正解だったわ!」

 

 

常人の域を越えた勢いでテンションを上げる華恋に対しCADを構えるリーナに後ろからやって来たセカンドが静止の構えをとる。

同時に登場した彼の姿に困惑し始めるアメリカ側に彼は話し始める。

 

 

「邪魔したか?まぁ取り敢えず両方落ち着け。コイツは敵じゃないしそこは保証する」

 

 

取り下げたリーナのCADを見て華恋はレズビアンな瞳を真っ赤に燃やそうとしていた。


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