魔法のあくせられーた   作:sfilo

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何ヶ月振りでしょうか、お久しぶりです。
仕事が忙しくて手がつきませんでしたが何とか、何とか仕上げました。一段落着いたのでこれ以上遅れることは無いと思いますが、すぐには速度を回復することができません。ゆっくり待っていただけるとありがたいです。


37

学校へ向かうセカンドだがリーナは一緒に登校しない。常日頃一緒に登校しないのではなく今日はたまたま違っただけであり、その理由も彼は知っている。恐らく吸血鬼のことで何か本部と話し合ってから家を出るのだろう。アメリカと学園都市は同盟関係にあるのだが、最近影が見えるようになっているのは彼の猜疑心の仕業ではない。

実際学園都市からの物的、人的支援は徐々に打ち切られ始めている。同盟解消というレベルではないのだが学園都市にも事情がある。

それは『魔神殺し』のためであった。

科学技術と20世紀最高峰を極めた魔術を利用した融合体である戦闘兵器、フレーラが一方通行に破壊されたことにより防衛能力が著しく低下した。木原脳幹などは攻めの戦力は十分に整っているが、戦争の基本となる防衛における戦力は本来の半分ほどになってしまう。圧倒的な火力で敵を殲滅する能力は守りに向いていない。相手の技術や力に対抗し時間を稼いでバランスを保つ防衛力こそ今の学園都市には必要なのである。

そのためアメリカよりも自組織の活力を戻す必要があった。

セカンド本人は学校へ行く途中の電話ボックスのような個室でタブレットに映っていた滞空回線の情報をまとめている。しかしこれが最後の情報収集となる事を予期していた。なぜなら閉鎖的な環境にある学園都市とは違い、周りを取り囲む壁もなく補充することが出来ないこの環境では滞空回線は次第に互いに離れていき、遂には通信可能な距離を超えてしまう。今でも最初に解き放った数ある滞空回線のうち1割ほどは砂嵐の画面に覆われている。そこには昨日の逃走劇と同時刻に起きた吸血鬼の事件に巻き込まれた人物のその後が記録されている。そのうちの1人は一高の1年E組の西条レオンハルトであることが判明していた。都内の病院に担ぎ込まれ今は安静にしているらしい。

今すぐにでも会って確かめたいことがあったが学校を休めば怪しまれることは間違いない。特に司波達也、彼には注意しなくてはならない。学園都市からの指令書や一方通行から得られた情報を基にすると、あの男には独自のコネクションがあったり一般的な魔法とは異なる系統の魔法を利用するらしい。更に情報通ということで一定の警戒を敷いた方が身のためである。

放課後の時間に行くと決めたセカンドはタブレットをしまい常時使用していた薬を服用する。精神安定剤と一方通行の能力研究から編み出されたこの世界にいるための薬である。

この所不愉快な夢に悩まされていた彼は何時もよりも多くの錠剤を手のひらに乗せる。その夢とはこういうものだった。

セカンド自身の体が肉体変化の能力に飲み込まれ元の姿を忘れてしまうという内容だった。最終的に体が端から霧散していき自分というものがなくなっていく。

多くの人間を傷つけた直後の夢だからこうなったのかはわからないが、なるべくストレスを溜めないようにするセカンドは不安要素を消し去る。

学校に着くとやはりE組の司波達也周辺は騒がしそうにしていた。たまたま目に入っただけだがレオが病院へ担ぎ込まれたという事実は彼らにも伝わっているらしい。

学校自体はいつもより早く終わり部活も停止されていた。原因はセカンドが起こした先日のテロ行為にある。しかし彼はその行為に罪の意識はない、と言うより行った事は認知できるが罪を感じる根幹の部分を学習装置により消し去ったというのが正しい。

急な事態に好都合と感じた彼はレオが運ばれたという病院へと足を向ける。監視カメラなど特に意識することなく受付窓口で尋ねてみたが思うような回答は得られなかった。恐らく情報隠蔽のために伏せてあるのだろう。ならば全ての病室を見て回るだけである。

女子トイレに入っていく看護師の後を追い個室に入ったところで一気に首を絞める。事前に一般女性のような姿に肉体変化させていたため背後を付く事は怪しまれていなかった。口から泡を吐き気絶した看護師を清掃用具に詰め込まれたホースで縛り付け、病院内専用の携帯と彼女の身分証を奪い取る。

流石に個室に監視カメラがある事はなく誰にも気づかれない。しかし変身元に親しい人間に話を振られた場合気づかれるかもしれないので、早めにレオの居場所を突き止めることにした。

一室一室点検のような形で侵入し入院している患者の中からレオの姿を探し出す。だが思ったよりも早く見つけることに成功した。集団部屋ではなく個人室を先に探したのが大きかった。ナース姿のセカンドは周りに一切怪しまれることなく部屋内に入ることが出来、検査のためと言い彼の姉を部屋から追い出す。

眠っていたレオの隣で1本の注射器を取り出す。ある程度の血液があれば研究機関に送り検査することが可能なため検査と名のつく血液採取は一瞬で終わった。彼の姉も何も気づくことなく採血は終了する。

 

 

「それでは失礼します」

 

 

彼の姉に一礼した後すぐに病室を出る。手に入れた血液をポケットに仕舞い拘束した女看護師の元へと急ぐ。幸いなことに途中で誰に見られることなく事は過ぎ去った。懐の血液容器を片手に持ち病院外へ出る。女看護師はトイレで縄を解き放置してきた。気がついた先がトイレで体に異変がなければそのままにしてしまうだろうし、仮にも何かに気づき通報なり他の手段をとったとしても手がかりはつかめないだろう。

 

 

「パラサイトに寄生されそうになった奴の血液採取に成功した。と言うかあの衰弱様じゃ何かやられたんじゃないか?」

 

 

セカンドが個人的な観測によって得られた情報を伝えながらワイヤレスマイクから返ってくる相手の反応を伺う。通話相手は学園都市の暗部の中心に位置する『電話の声』

 

 

正体不明(アンノウン)が非人間である事はこちらも想定済みだ。問題はそれをこちらの誘導で自由に操作出来るか否か、だが即座に予算が下りないのがな。魔神問題は非常に頭を悩ませる』

 

 

オティヌスの問題を処理した場合と同じようにはいかない。それに上条当麻、幻想殺しがこの世界に存在する限り学園都市のカウンターとしての機能が働かない。一刻も早く上条当麻を元の世界に戻すか魔神に対抗する術を開発するか、この二つを中心に現在の学園都市は動いているためパラサイトなどという小さな障害に構っていられないのである。

須藤華恋が本気を出せば即座に幻想殺しを元の世界に戻せるのだが彼女には彼女なりの理由があってかそれを実行しようとはしない。彼女の目的はこの世界の掌握。アレイスターに邪魔されない世界で自由になりたいようだがそんな事すらも彼の掌の上で踊らされているだけ。

電話を切ったセカンドはある地点へと向かった。そこは昨日戦闘を激しく行い通行止めになっていた主要道路であった。コンクリートで埋め直す作業が未だに続き復旧作業がなお続く。

なぜここに来たのかというと亜空転移を利用した残存情報を誰かに解析されていないかどうか確かめる必要があった。本来ならば朝早くに来るべきだったが、犯人は現場に戻るという格言の元、時間を遅らせてやってきた。その分疑いの目を避けられるが解析されているかどうかの判断は曖昧となる。

現場には作業員が中心で解析されている様子はなかった。

自宅(リーナとシルヴィも同居中)に戻ったセカンドはキッチンに入り二人の帰りを待ちながら軽い夕食をつくる。

先に帰ってきたのはシルヴィの方だった。自宅の鍵をかけたまま夕食を作っていた彼を見るなりびっくりした様子だった。

 

 

「いたのですか、セカンド。居るなら鍵をかける必要は無いのではないですか?」

 

 

彼女も夕食を作る予定だったのだろう、買い物袋に入れられた食材達が明日の朝食のために冷蔵庫へ仕舞われる。本来ならば全自動で機械達に作らせてもいいのだがシルヴィはそんな事はしない。対するセカンドの方はこちら側の機械の操作には疎く学習装置で調理法を脳に書き込み手作りした方が早い。

 

 

「まあそういうことを言わずに。実は話したいこともあったしリーナが来てから夕食にしようか」

 

 

現時刻は17時過ぎ、手早く学園都市の仕事を終えたセカンドだが料理の方は未だに一品程しか出来ていない。

 

 

「じゃあリーナが来るまでシルヴィにも手伝ってもらうか」

 

 

***

 

 

帰宅途中に部活動が停止されているというのにも関わらず勧誘の声が絶えなかったため遅れて帰宅したリーナ、彼女が玄関を開けるとそこに広がっていた匂いに空腹感が誘われる。リビングに向かってみるとそこにはエプロン姿のシルヴィといつも左手に付けているCADを外したセカンドが忙しなく動いていた。帰ってきたリーナに気づいたのかシルヴィは出迎えの挨拶をする。

 

 

「おかえりなさい、夕食までもうすぐですので手を洗って待っていてください」

 

 

「今日は暇だったんでな、ちと豪華だが自腹だから許せ」

 

 

いい匂いが鼻腔を刺激し手洗いが早くなっていることをリーナ自身気付いていない。

夕食が完成しテーブルには色とりどりの料理が並ぶ。食べ始めた3人、美味しい食事に満足しながら時間を過ごしていたリーナにセカンドの言葉が刺さる。

 

 

「昨日の夜から吸血鬼(ヴァンパイア)の捜索を始めているだろ。アレに俺も参加させろ」

 

 

突然の出来事で頭が回らなかったのか暫く口内の食べ物を咀嚼し考えていたリーナの隣でシルヴィが呟く。

 

 

「どうしていきなり参加しようと考えたのですか?こちらから要請しない限り極力協力してこない姿勢では無かったではないですか」

 

 

「こっちにも事情が出来てな、この問題を早く片付けて本部へ帰らなけりゃいけなくなったんだよ。そのために須藤華恋を動かす事も可能になった。まあ本人次第だがね」

 

 

アメリカ側の両人の頭に思い浮かべた須藤華恋という女性。亜空転移という魔法では考えられない能力を使う女性で学園都市のこちらの世界の代表。そんなトップ層の人間を動かしてまで早く日本に侵入した吸血鬼を捕まえる必要性があるのか、そんなことを考えながらスターズの総隊長としてリーナは決断を下す。

 

 

「いいわ、これからの私たちの出撃に同行しなさい。それとカレンという人間も出来れば協力して欲しいわね。あの能力があればどこへ逃げようと追い詰めることが出来るわ」

 

 

成程、と自分の食器をシンクに持っていくセカンドはリーナ達にある事実を伝える。

 

 

「あと昨日の吸血鬼と接触した人間の血液サンプルを採取することに成功した。こっちで解析してデータを後程渡す。ついでに今度学園都市主催のCAD先行販売会と展示会をやる。暇だったら見て来い、俺が使っているCAD以上のモノが見れるぞ」




仕事>遊戯王>>>アクセラ
不甲斐ない決闘者ですまねぇ

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