魔法のあくせられーた   作:sfilo

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凄い数のお気に入り、PVありがとうございます。
魔法科高校の優等生ネタ入ります。


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ほのかは涙目になっており雫に慰められていた。しかしそれではいけないと思い2科生で自分たちを庇ってくれた人達に近づき礼を言う。

 

 

「あの、さっきはありがとうございました。お兄さんのおかげです」

 

 

「お兄さんはよしてくれ、同じ1年生じゃないか」

 

 

達也は謝りに来た二人の生徒に対して頭を上げるよう言う。深雪もほのかの魔法の事情を知っているのか彼女を責めはしなかった。

 

 

「よかったら駅まで一緒にどう?」

 

 

1科生と2科生の垣根を越え交流が深まっていく。

帰り道は大所帯になり様々な話が沸き上がる。エリカのCADの事や、深雪のデバイスのメンテナンスを行っているのが達也という事など驚くことが多々ある。

そんな中達也は先程のある生徒の疑問をほのかと雫に投げかける。

 

 

「それはそうと二人の隣にいて生徒会長に連れていかれた生徒は大丈夫なのか?」

 

 

「一方通行なら多分大丈夫。後で連絡するし」

 

 

雫が即答する。達也達には一方通行という名前は全く馴染まない。外国人のような名前でなく何か文字を弄った読み方のように聞こえる。

 

 

「ねえ、そのアクセラレータって人は雫とほのかとどういう関係なの?」

 

 

エリカのちょっかいをかけるような口調で話しかける。ほのかは顔を真っ青にし俯き、雫は表情を変えず答える。

 

 

「従兄弟」

 

 

即答である。レオや美月らはそのことに疑問を持つ。

 

 

「それにしてもよお、アイツの格好なんかすごくねーか?制服も来てねぇし足悪いのか分かんねえけど杖ついてるし、いろいろと規格外だぜ」

 

 

「でも彼の使った魔法凄かったですよね、あの速度のサイオンを弾くような式を一瞬で組み上げる技量は流石です」

 

 

美月の一方通行を褒めるような言動に達也から見た出来事を彼らに話す。

 

 

「いや、あれは魔法かどうかわからないよ。CADを必要としない魔法であってもサイオンは体から必然的に漏れる。それでも彼からはそれが感じられなかった。仕組みはわからないが随分と珍しい技術のようだった」

 

 

その辺りで駅に着き7人は解散しそれぞれの家に向かっていった。

 

 

***

 

 

自宅に戻った一方通行は自分のベッドに寝転がり首元の電源を外し充電しようとする。その間彼は一般人よりも遥かに劣る運動能力と判断力がある状態になるため仮眠することにした。予定起床時間にアラームをかけ、機械に夕食を作るよう設定し瞳を閉じる。今日あった出来事を思い出そうとするが上手くいかない。魔法演算領域を代替するが本物の前頭葉の機能には敵わない。

30分後彼は目覚め充電途中の電源を首にはめバスルームへと足を運ぶ。能力で汚れや雑菌を全て弾くことができるが、シャワーを浴びるという精神的爽快感は得られない。そのため彼はなるべく風呂に入ったりシャワーを浴びるようにしている。

 

 

(雫には連絡した。生徒会からの邪魔ももうねェ。今日がいい機会だな)

 

 

熱めのシャワーを頭上から流しながら考える。

それは窓の無いビルの調査のことだった。潮に頼んでも未だに進展がなくそろそろ自らが行って正体を見定める必要があると思っていた。

風呂から上がり肌や髪に付着する余分な水分をバスタオルで拭き取り、用意してあった着替えを身に纏う。マンションに鍵をかけエレベーターで1階まで降りる。現在の時刻は23時30分でコンビニはまだ開いている。

彼は缶コーヒーを買うために一番近くにあったコンビニへと移動する。

コーヒーを買い終え飲みながら徒歩で移動する。もうしばらくして周囲の人間が寝静まったら能力を使って飛行する予定である。

 

 

(あのビルに何があるってンだ?エイワスがいるとは思えねェし、そもそも学園都市特有の虚数学区を媒介として出現してるわけだから無理だな。となると...)

 

 

思考途中に一方通行の端末に一報が入る。内容は住所で宛先は不明である。彼にとって全く知らない場所であったため今は窓のないビルが最優先と考える。

周囲の音が響かなくなり深夜0:30となる。彼は首元のチョーカーに触れ自らの背中に白い翼を生成する。

 

 

(この翼出す度にあのメルヘンヤロォを思い出すな)

 

 

彼は一瞬のうちに上空へと駆け抜ける。

窓のないビルは大きな私有地の中にぽつんと立つ不可解な立地をしていた。人工林や整備された芝などはなく無造作に生い茂る雑草が一面に染まっている。

窓のないビルの手前に着陸した一方通行は杖をつき空を見上げる。先程までは地上の光が多く見上げても明かりが多少あったが、ここでは人工光がほとんどなく夜空には星が浮かび上がる。

彼がビルに向かって歩いていくと雑草が彼に絡みついてくる。侵入者対策の一つだろう、と彼は考え再度電源を入れ一気に駆け抜ける。

ビル手前まで来たが案の定入口はない。学園都市と同じ構造のビルであれば彼に侵入する手立てはない。

周囲を見渡すと一つの石碑が見えた。その石碑に書いてあることに彼は驚き、悲しい現実に直面する。

 

 

『アレイスター・クロウリーここに眠る』

 

 

学園都市統括理事長の名が刻んであり、既に死亡していると見える。

 

 

(オイオイ嘘だろ?学園都市の存在を誰も知らねェクセにコイツだけは一丁前に生きた証を残してやがる。ならこのビルは何なンだ、ミサカネットワークとは異なる物を未だに発し続けてるぞ)

 

 

世界移動は一方通行が経験している事件とは別次元の問題であり、あまりにも異質過ぎて彼に計算の余地を与えない。元の世界へと戻る手段を考察するための参考になるものが1つ崩壊する。今日の衝撃が大きすぎて彼は今夜一睡もすることが出来なかった。

 

 

***

 

 

入学式が終わり一週間程経つと部活への勧誘が始まる。九校戦という一大イベントがあるため、どの部活も新入生を一人でも多く獲得しようと様々な手段を企てる。

そんな時でも一方通行の心持ちは全く変わらない。昼休みの周りの生徒が慌ただしい。そんな様子を重い瞼を釣り上げながら観察する。

すると雫が一方通行に話しかけてくる。彼のたいそう嫌な顔を気にせず言葉をぶつける。

 

 

「今日の放課後から部活の勧誘あるけど一方通行は何の部活に入るか決めた?」

 

 

「別に強制じゃねェだろ、それに二人のお守りしなきゃならンのにどうしろってンだよ」

 

 

興味がなさそうに答える一方通行はそう言うと自分の席を立ち外へと出かける。何処へ行くのかと雫に聞かれるも彼は曖昧に答えるだけだった。

昼休みに入ってすぐ話しかけられ、一人で考え事が出来ない今の彼にとって安息の地を求めるのは必然であった。食堂では人が多く誰も座ってない室外のベンチに座る。

思い出すのは昨日の事。元の世界へと帰るヒントを失った彼は新しく帰る方法を模索する気力が無くなっていた。なにしろアレイスターがこの世界にも実在していた証拠があるので彼が干渉しようと思えば出来るのだろう。しかしそれが半年以上も行われない様子を見ると、彼が一方通行に手を出す事が出来ない状況にあるのをすぐに察せる。

 

 

「隣いいか?」

 

 

思考に耽っていた彼の耳に男子生徒の言葉が響く。声の主は先日の魔法騒動を大きくしなかった第一人者の男だった。

 

 

「勝手にしろ」

 

 

一方通行は自分の手元にある缶コーヒーを適当に振りながら答える。隣にすとんと座る生徒は一方通行に自己紹介をする。

 

 

「俺の名前は司波達也、1-E在籍だ。この前はすまなかった。どうしても嘘がつけなくてな、生徒会長には俺から弁明しておくよ」

 

 

「別にいい、あの後生徒会には説明して何もなかったからな。それより本題があンだろ?言ってみろよ」

 

 

一方通行は達也の心を見透かしたかのように流れるように話す。それを聞いた達也は驚く様な表情はせず、そうか、と頷き話し始める。

 

 

「お前は一体何者なんだ?知り合いに素性を調べさせた、しかしそこから出てくる情報は何一つない」

 

 

険しい顔の達也に比べ一方通行は笑っていた。この質問が来ることを予め知っていたかのように、遂には顔を手のひらで抑えながら質問に答える。

 

 

「ッたく、随分笑わせてくれるな。お前の中じゃァ俺はブラックボックスで何が悪い?世の中には知る必要のないものもあるンだぜ」

 

 

「答える気はないか、別に今はいいが深雪に危害を加えるような事があれば俺はお前を殺す。不穏な言葉だが忠告はさせてもらうぞ」

 

 

そう言うとベンチから立ち上がり校舎の方へ戻っていく達也に一方通行は背後から口元を歪ませる。

 

 

「お前今までで何人殺してきた?俺の予想だと大体50人ってとこか、あンま無茶するもンじゃ無いぜ」

 

 

***

 

 

放課後、いつもの学校の通りには多くのテントが並び新2,3年生が帰宅しようとする1年生を待ち構えている。放課のチャイムがなる前から準備が始まっていたためほとんどの生徒は強引な勧誘を避けることは出来ない。それは1科生であっても2科生であっても変わらない。

雫とほのかは深雪が生徒会の事情が忙しい話を聞くと机で校庭を眺めている一方通行の所へやって来る。

 

 

「私達、部活を見て回るので先に帰ってもらっていいですよ。じゃ雫、行こう」

 

 

元気がいいと思いつつ自分のこれからを想像する。勧誘の様子を見る限り相当激しい。こんな中では能力を使わなければまともに歩く事もできないだろう。しかし先日の魔法の出来事を思い返すと安易に能力を使うのは得策ではない。

そう思うと勧誘が終わる最終帰宅時間まで時間を潰すことが最もいいと判断する。魔法理論関係の書籍を端末で開いて知識を蓄えながら昼休みの出来事を振り返る。司波達也の司波深雪へ危害を加えたら殺すという文句。その目には絶対にやるという意志より、そう決まっているからそうしてるという義務感を感じられた。

そんな時外の一団が小爆発を起こした。小爆発といっても取り囲んでいた中心人物に強引に突破されたようだ。興味が無い一方通行の瞳に火が宿る。

ほのかと雫が2人の何者かに捕まり高速で舗装された通りへ移動していく。その状況に彼がいたわけではないがどう見ても任意ではない。

彼は潮との契約で動いたわけではない。未だに自分と付き合ってくれている雫とほのかに対し、ほんのちょっとの善意が彼の心に芽生えていた。

窓の格子に手をかけ能力を開放する。まだ1-Aに残って雑談していた生徒達は一方通行が何をするのか分からない。ガラスの窓と格子があらぬ方向へと曲がっていく。ガラスは一切割れていない。

人が通れるほどの大きさの穴を一瞬で開け、そこから飛び降りる。能力による補正を受け身体へのダメージは一切ない。それどころか着陸した時の位置エネルギーのベクトルを反転させ自らを上昇させるためのエネルギーへと活用する。

空へと活動範囲を広げた一方通行は雫たちの場所の捜索を始める。同じ1-Aの生徒が一方通行の飛び出た窓から彼を見ている。そんなことを知りもせず一方通行は上空を飛び回る。

すると2人のスポーツウェアを着用しスケートボードに乗った人間を発見した。彼らの腕には雫とほのかが抱えられており、その後ろを渡辺摩利が追いかける様子も見える。

 

 

「ヒャハハッ!見つけたぜ、鬼ごっこでも始めるかァ!!」


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