-side 龍聖-
「イリーナ・イェラビッチと申します♪」
俺は、教壇で自己紹介するこの女を快く思っていなかった。
「本格的な英会話に触れさせたいとの学校の意向だ。英語の授業の半分は彼女の受け持ちで構わないな?」
「仕方ありませんねぇ」
そう言う殺せんせーは普通にデレデレしていた。目線はイリーナ・イェラビッチの胸元をガン見である。
殺せんせーの弱点⑥
おっぱい
昼休み、食事会以降女子に弁当の出来映えを採点するように頼まれるようになり、一人一人細かくチェックしている。昼飯を終えた後は、烏間さん考案の暗殺バトミントンでみんなと遊ぶ。最近の日課になっていた。たまに暗殺を織り混ぜたサッカーを殺せんせーとやるときもある。今日はサッカーの方だ。
すると、
「殺せんせー♪」
校舎の方からあの女が走ってきた。
「烏間先生に聞きました。すごく足がお速いんですって?」
「いやぁ、それほどでも♪」
今日はあの緩んだ顔を何回見たか……
「一度本場のベトナムコーヒーを飲んでみたかったんです。午後の授業の合間に買ってきてくださらないかしら」
「御安いご用です。ベトナムにいい店を知っていますから」
殺せんせーはあっという間にベトナムへ飛び立っていった。
「あのイリーナ……先生、チャイムなりましたし、教室戻ります?」
「ああ、ガキどもは各自自習でもしてなさい」
殺せんせーが飛び立った直後、態度を豹変させるイリーナ。
「あのタコの前以外では教師を演じるつもりはないし、気安くファーストネームで呼ぶんじゃないわよ。イェラビッチお姉様とでも呼びなさい」
あまりの変わりように、みんなが戸惑い黙ってしまう。そんな中、
「で、どうすんの~ビッチ姉さん?」
「略すな!!」
カルマは通常運転だった。
「あんた殺し屋なんでしょ?俺ら全員でも殺れないのに一人で殺れると思ってんの?」
「ホントにガキね。大人には大人のやり方があるのよ。潮田渚ってあんたね?」
イリーナが渚に近づいたと思ったらいきなりディープキスされる。みんなが唖然とする中、骨抜きにされた渚は殺せんせーの情報を寄越すように迫られていた。
「他にも、有力な情報を持ってたら私のところに来なさい!!いいことして上げるわ。女子には男だって貸して上げるわよ。あと、私の暗殺の邪魔したら……殺すわよ」
最後にドスを聞かせて言い放つイリーナ。所詮は小物か、こっちも軽く威圧しとくか。
「
「!?」
いきなり聞こえてきた俺の英会話に、驚いてこちらを見るイリーナ。みんなも俺を見ている。
「
「
イリーナがデリンジャーを抜いたと同時に、瞬動で急接近し、引き金に指をかける前に寸止めを顔面に叩き込む。イリーナはヘナヘナと座り込んでしまった。
「あんまり、俺たちを舐めんなよ」
俺は、そう吐き捨てて校舎に歩みを進めた。
-side 桃花-
「今、何が起きたの……?」
一瞬、葵君が消えたと思ったら、いきなり女の人の目の前に現れて寸止めのパンチを繰り出していた。
「カッコいい……」
「桃花、どうしたの?」
隣にいたひなたちゃんが顔を覗き込んでいた。
「へっ?な、何でもないよ?」
「桃花ちゃん、この間の訓練の時と同じ顔してるよ?」
陽菜乃にまで指摘されてしまった。
「桃花、葵のこと好きなんでしょ?」
凛香ちゃんが優しく聞いてくる。
「……うん、訓練の時からずっと気になってて、キリッとした顔を見てたら胸がキュンってなるんだ……」
私は観念して今の気持ちを話した。
「私は、桃花のこと応援するよ!!」
「みんな、ありがとう♪」
みんな優しくて、ホロリと涙が出る。
「あのね、さっきの葵君の動きを見て決めたんだ。葵君から護身術を教えてもらおうと思ってるの。桃花も一緒に行かない?」
すると、ひなたちゃんが私に嬉しい提案をしてくれた。
「うん、一緒に頑張ろうね♪」
断る理由もなく、私はその提案を受けた。すぐさま、葵君に許可をもらいに行く。
「葵君!!」
「ん?矢田さんと岡野さん、どうしたの?」
「私たちに、護身術や葵君の拳法を教えてほしいの」
「えっ?」
「私たち、暗殺のこと少し甘く見てたの。ただ、今日あの女の人とかを見てて、プロの人たちが出てきたら何も出来なくなっちゃうのが怖いんだ。だから少しでも強くなりたいの」
「……二人の気持ちはよくわかったよ。1つだけテストをしてもいいかな?」
テスト?と考えてる最中に、葵君が目を閉じる。そして、目を開いた次の瞬間……
「えっ……?」
葵君から発せられる言い知れぬ謎の恐怖が襲ってきた。ひなたちゃんも足を震わせて怯えている。
「これが、テスト……?」
もしそうなら、ここで引いちゃいけない!!
私はすくむ足に喝を入れ、葵君の目をしっかりと見据える。ひなたちゃんも少し立ち直ったようだ。
「……驚いた。まさか正気を保ってられるとは思わなかったよ」
葵君が口を開くと、さっきの恐怖が嘘のように霧散した。緊張の糸が切れたのか私は立ってられなくなり、葵君に抱きついてしまった。
「や、矢田さん!?」
「うえぇぇぇん!!怖かったよ~!!」
ホッとしたことで涙が止まらなかった。
「……ごめんね、怖がらせちゃって。岡野さんも大丈夫?」
私を抱き締めながら優しく髪を撫でる葵君。
「私はもう大丈夫だよ。それよりも……」
軽く涙目ながらもしっかりと足を地につけて立っているひなたちゃん。そして、改めて今の私の状況に気づいた。
「ご、ごめん//」
「う、うん。大丈夫//」
私も葵君も顔が真っ赤だ。
「んん、さて。テストの結果だけど文句なし合格だよ」
「やったね、桃花♪」
「ありがとう、ひなたちゃん♪」
こうして、今週末から私の修行が始まることが決定したのです。
-side 龍聖-
翌朝、俺は朝飯を作りながら烏間さんと話をしていた。
「全く、君は無茶をする」
「それについては否定はしません。ただ、俺たちを見下すあの目が気に入らなかったんです」
「確かに、彼女にも否はある。だが、1日で全ての準備を整える辺りは、流石はプロだと俺は思う」
「そうですね。ですが、失敗して逆上した状態で生徒に突っかかって学級崩壊寸前……っていうシナリオが見えそうです」
「えらく具体的だな……それが的中しなければいいが」
その予想が的中することをこの時点で俺たちは知らない……
「それはそうと、岡野さんと矢田さんを弟子に取ったそうだな」
それを聞いた瞬間、矢田さんを抱き締めた感覚が蘇ってきた。いい匂いしたし、柔らかい二つの感触も……ダメだ、思い出すな!!彼女に失礼だ!!
「え、ええ。二人に頼まれまして。ただ、驚きましたよ。俺の殺気を耐え抜いたんです」
「何?」
「メンタルの強さがずば抜けていますね」
「まあ、君が決めたことだから何も言うまい。無茶だけはしないようにな」
「心得てます」
俺と烏間さんは食事を終えて、登校の準備をするのだった。
「おはよう、葵君」
登校途中で、弟子にとった二人に遭遇した。
「昨日はごめんね」
「ううん、大丈夫だよ。それに昨日はいいものも見れたしね」
ニヤニヤしながら、俺と矢田さんを見る岡野さん。昨日のことを思いだして、赤面する。
「もう付き合っちゃえば?」
「ねえ、葵君……」
矢田さんが俺の方を見る。その眼差しは真剣だ。
「私と、お付き合いしてほしいの!!もちろん、葵君がOKならの話だけど」
俺は一瞬迷った。彼女をこの血に染め上げた手で触れていいものかと……。だけど、俺は決心した。血塗られたこの手でも彼女を守ることはできる。この子のためなら修羅にでも何でもなろう、と……
「……ありがとう、矢田さん。その話、喜んで受けさせてください」
「ありがとう、葵君!!」
笑顔で俺に抱きつく矢田さん。ああ、また柔らかい二つの感触が……
「これからは桃花って呼んでね、龍聖」
「わかったよ、桃花」
「ほーら、いちゃついてないで。早くしないと遅刻するよ~!!」
俺たちは、照れ笑いしながら登校した。
そして、一部の生徒から嫉妬の眼差しをひしひしと受けながら、5限の訓練の射撃練習を受けていた。
「おい、殺せんせーと倉庫にしけこんでくぜ」
「なんかがっかりだなぁ。あんな見え見えの罠に引っ掛かって……」
「まあ、気持ちはわからなくもないけど、これだけ早く準備を整える手際は正しくプロだな」
「烏間先生、私たちあの人のこと好きになれません」
「すまない、上から当人に任せろとの命令でな」
烏間さんもホントに申し訳なさそうだった。すると、突如として銃声が鳴り響き、その後にあの女の悲鳴とヌルヌル音、さらには喘ぎ声まで聞こえてきた。
「めっちゃ執拗にヌルヌルされてるぞ!?」
「行ってみようぜ!!」
数人で倉庫に向かう。そして、倉庫からつぎはぎだらけのアカデミックドレスを着た殺せんせーが出てきた。顔はやたらにやけている。
「いや~、もう少し楽しみたかったですが、君たちとの授業の方が楽しいですからね」
そう言う殺せんせーの言葉の後に、倉庫から何故かブルマ姿のイリーナが出てきた。そして何かぶつぶつ言いながら崩れ落ちた。
「何したの、殺せんせー?」
「さあね、大人には大人の手入れがありますから」
薄い真顔で渚の質問に答える殺せんせー。悪い顔してんな……
殺せんせーはみんなを引き連れて教室に向かっていった。
5限の英語の授業、黒板に書かれた自習の文字。女はイライラしながらタブレットを操作していた。
「あーもう!!なんでWi-Fi入んないのよこのボロ校舎!!」
「あの、先生……授業してくれないなら殺せんせーと変わってくれませんか?」
この状況を見かねた磯貝がイリーナに進言する。
「あんたたち、あのタコに教わりたいの?それに聞けば、あんたたち落ちこぼれらしいじゃない。なら、私の暗殺の手伝いでもしなさい。そうすれば、1人500万上げるわ。だから協力……」
コツン……
「言いたいことは終わったか……?」
俺は、いつも通りの威圧をする。その後に、誰かが投げた消しゴムがイリーナの顔のすぐ横を通る。
それと同時に野次と罵声と色んなモノが飛び交う。イリーナはたまらず教室を出ていった。
放課後、烏間さんに晩御飯の要望を聞こうと思い、教員室に向かった。そこでは、烏間さんがイリーナに説教していた。
「私は教師なんてやったことないのよ!?暗殺だけに集中させてよ!!」
「
「……何しに来たのよ」
「保護者に晩飯の要望聞きに来ただけだ」
「カラスマ、そういえばこいつの保護者だったわね」
「ああ、いつもすまないな。今日は簡単なもので構わない」
「わかりました。あと、烏間さんの言葉の意味をちゃんと理解しておくことだ」
そう言い残し、俺は教員室を後にした。
翌日、始業のベルと同時に少し顔つきの変わったイリーナが入ってきた。
「You are incredible in bed. Repeat!」
突然、黒板にこの文章を書き、読めと言ってきた。みんな渋々読む。つーか、中学生にこんな文章読ますな!!
「私が教えてあげられるのは、実践的な会話術だけ。これさえ身に付ければ、外国人に会ったときに必ず役に立つわ。受験で必要な英語は、あのタコに教わりなさい。あと……色々悪かったわよ」
そう言うと、クラスに笑い声が響いた。それから、呼び方がビッチ先生になり、その呼び方で呼ばれまくってヒスったのを見て、俺も自然と笑みがこぼれた。
こうして、新たにクラスに心強い協力者が増えた。
いかがでしたか?早々に二人くっつけちゃいました(爆)
一応、弟子にとった二人は魔改造予定です。さらに増えるかもしれないです。
次回は全校集会&修行の予定です。
感想・評価あればよろしくお願いいたしますm(__)m