彼女達とのカラフルな未来を   作:てつのかたまり

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連載的な感じで今回はやろうと思いました。

週一で出せるように頑張ります。


第2話

比企谷八幡

 

 

 

「俺は別にいい」

 

「なんでですか。楽しそうじゃないですか」

 

2限目が終わり、一色と一緒に学食を食べている。学食は一年前にリニューアルしたばかりで清潔感があり、真っ白な内装は汚れがなく、一人で過ごすにもよい。

 

一色とは木製の机に向かい合って座っている。お互いに食事は済ませ、今は空いた時間で食事後ティータイムだ。

 

「一色、ラーメンなんてな自分達で作るもんじゃない。お店に行って食べることが常識だ」

 

「なんでですか。自分達で理想のラーメンを作りましょうよ。先輩、好きじゃないですか」

 

ラーメンを手作りしようと、一色が言い出したのは後期が始まってすぐだ。先輩、暇ですよね。ならラーメン、一から作りましょうよ、と言い出したときは何を言ってるんだ、と思った。

 

「ラーメンはそんな簡単なものじゃないって何回言えば分かんだよ」

 

「ラーメンなんて、適当にちゃちゃっと骨とか煮込んで、ぱぱっと、やれば出来るんじゃないですか」

 

何だよ、ちゃちゃっととかぱぱっとってお前は擬音の魔術師か。すべらない話でもしとけよ。

 

てか、ラーメンなんてとはなんだ。ラーメンはな、職人が汗水垂らして、あれじゃない、これじゃないと、配分を変えながら、四苦八苦して生み出すものだ。なりたけだって、一風堂だってそうだろう。あの、濃厚な一度食べると箸が止まらなくなる至高の逸品を俺達がちょっとかじっただけで出来るわけがない。

 

「先輩、何自分の世界に入ってるんですか。正直、気持ち悪いです」

 

ジト目で凝視をしてくる。

 

「気持ち悪いって言うな。少しなラーメンの奥深さを再確認してたんだ」

 

「頭のなかでやらずに喋りましょうよ。………いや、やっぱいいです。どーせ、長々とうんちくとか語りだしますよね」

 

「はぁ、どーゆう認識方されてんだよ」

 

思わず、ため息を吐く。

 

「それよりも、ラーメン作りましょうよ。今度の休みにでも」

 

そして、振り出しに戻る。さっきから、この繰り返しだ。双六なら、投げ捨てて一生やらないレベル。

 

「だから、やらねーよ。てか、休みの日は食べる、寝る」

 

一色がぷくーと頬を膨らまし始める。ふぐ一色の完成だ。

 

「もう!何回この茶番をやるんですか。いい加減、折れてください」

 

何回も繰り返してるっていう認識はあったのね。八幡ちょっと安心。

 

まぁ、それでも折れないのが八幡メンタル。本当に嫌なものは嫌と言える俺ってやっぱ社畜には向いてない。専業主夫になれる自信が湧くね。

 

「あー、それなら雪ノ下と一緒に作れよ。あいつなら、予備知識が無くても1日で集められそうだし。そこそこのレベルなら作れるだろ」

 

「雪ノ下先輩なら、確かにそうですね。でも、私は先輩と作りたいんです」

 

少し、身を乗りだしこちらに迫ってくる。もちろん、一色に標準装備されている、上目遣い状態だ。

 

「俺が首縦に振るまで続ける気かよ」

 

「当たり前です。断り続けるならどーぞかまいませんが、永遠に誘い続けます」

 

え、何それ。最早、ラーメンを造ることが目的になってなくない。永遠に誘い続けるってそれが今のスタンダードな方法なの。て、ことはヤンデレが主流になってきているってことか。つまりは人類が滅びる。

 

人類が滅びるから俺がヒーローにならなきゃ。そんな使命感ははなから無いが、一色の場合は本当にこちらが折れるまで誘ってきそうな気がする。俺に得の無い我慢大会をするぐらいなら、早い段階で折れるのが利口なのかもしれない。

 

「はぁ、しょうがないな」

 

一色が顔をぱぁっと輝かせる。それじゃ、と言ったその時。

 

「あれ、いろはじゃない。おーい」

 

学食の入口から、大きく手を振っている女性がいる。一色はそれに気付くと、同じく手を振る。ん、誰だ。

 

知らない女性、知ら女はズカズカと学食の机の間を歩き、こちらに来る。近くに来てみると、実は知り合いなんてこともなく、全く分からない。まぁ、この大学で俺の友達なんてゼロだから、確認するまでもないが。

 

「いろは!何、彼氏!?そのひと!」

 

知ら女は俺たちの座る机まで来ると、一色の背中をバンバンと叩きながら訊ねる。

 

「ちょ、部長。痛いですって!てか、彼氏じゃないですよ。部長、ちょっとやめて」

 

一色は背中をバンバンと叩かれながらも一生懸命、問いに答える。何かこんなふうに誰かにいじられてる一色も珍しく眺めていた。

 

「あれ?違うの。いろはちゃんって結構ナンパとかされても全部断ってるから、彼氏いるのかと思ったよ」

 

知ら女は叩くのを辞め、一色の顔を覗きこんだかと思うと、今度は俺の顔をジッと見てきた。

 

「あ、ごめんね。私、料理サークルの部長の西園寺です」

 

知ら女、改め、料理サークル部長、改め、西園寺さんは一色の話し方や部長ということを加えて考えると三年生だろうと推測できる。俺の一つ上の学年にあたる。

 

正にサバサバ系という風貌で中学の時にはソフトボールやってましたなんて言われても何ら違和感がない、ショートカットの女性だ。

 

「あ、比企谷八幡です」

 

たぶん、これからの大学生活で関わることもないだろうし、そうなればお互いの情報なんていらないから必要最低限の会話をしようとここに誓いました。

 

「部長とは、大学の飲み会の時に知り合ったんです」

 

「あ、そうなの」

 

反応に困ることは言わないでほしい。ここで変にがっついても、どうせ一色は何ですか先輩、部長のこと狙ってるんですか。なんてこと言ってくるだろうから動くことができない。そもそも、俺のコミュ力ではがっつくことも出来ないのは不問にしてください。

 

「ねぇねぇ、比企谷くんとはどんな関係なの」

 

溢れんばかりのニタニタ笑顔で一色に訊ねる。はぁ、こういう人種は苦手だ。大体、こういう人は恋愛経験が豊富で、こういうデリケートな質問もズバズバと訊ねれる。それを聞かれてる人は嫌な気持ちでもだ。

 

「私と先輩ですか?そーですね、どーいう関係ですかね?先輩」

 

え、ここで俺にパス出すの。キラーパス過ぎませんか。適当にはぐらかすなり、真実を言うなり、何でもできるのにここで来ちゃうの。絶対に答えられない質問がここにあるの。

 

「あー、そうだな。只の先輩と後輩だな」

 

「酷くないですか!どこの世界に只の先輩と後輩が一緒に住んでるんですか」

 

「えっー!!一緒に住んでるの君たち!!」

 

「おいおい、誤解を生むようなこと言うなよ。シェアハウスだろ」

 

「合ってるじゃないですか。シェアハウスとはいえ一つ屋根の下に男女が住んでるじゃないですか」

 

「その言い回しなんだよ」

 

正しいと言えば正しいのか?いや、正しくはないだろ。日本語って難しい。

 

「はは!君たちって相性ピッタリじゃん。付き合っちゃえよ」

 

何だ。このお節介ウーマンは。知ら女、改め、料理サークル部長、改め、さ、さ、何だっけ、改め、お節介ウーマンだな。

 

「ちょっと、辞めましょうよ。そーいうの。なぁ一色」

 

一色の方をチラッと向く。なぜか一色は顔を下にして、赤くなっている。俺の言葉が届いたのかバッと顔をあげる。

 

「は!!な、な、何ですか!先輩!こっち向いて!もしかして今の部長の発言で意識して見ちゃったんですかそれなら嬉しいですけど今はちょっと無理です」

 

一息で言い切ると、顔を背ける。

 

「え、なんでそうなんだ」

何日ぶり、何度目かの理不尽振られである。何処かの名門高校の通算甲子園出場記録みたい。

 

ニタニタ笑顔を崩さずに一色の方を見ていた部長。

 

「いろは、ちょっとこっちにきてよ」

 

そう言い、一色の腕を掴むと2つ隣の机のあるとこまで連れていった。

 

きゃー、と叫びながら連れていかれる一色。ええじゃないか、ええじゃないかと悪代官並のニタニタで引っ張っていく部長。なんだこれ。

 

部長が一色の耳元で何かを囁く。それをぼっーと眺めていた。うーむ、こういう感じに友達の友達と話す友達を見ているのは何かこう不安になるな。高校の時に戸塚と喋っていて、途中でテニス部の友達が現れ戸塚をつれていったことがあった。重要な案件があったのか割かし強引に連れていかれる戸塚を見たときには、守りたい、戸塚を。と、熱い気持ちが湧いてきた。俺って束縛したいんだな、

 

話が終わったようで、部長の方はバイバーイと学食の出口に向かった。一色はとことこと戻ってくる。

 

「先輩、部長とラーメン作りますね。なので、先輩はいいです」

 

突然の解雇宣告。ドラフト指名された翌日にクビにされるぐらいの早さ。まぁ、いいんだけどね。

 

「そういえば、一色3限始まるぞ。教室、遠いだろ確か」

 

一色はスマホで時間を確認すると、焦った表情になる。出していた荷物をバッグに忙しなく積める。

 

「それじゃあ、先輩行ってきますね」

 

そう言うと、無駄のないスムーズな動きでリュックを背負い出口に向かった。

 

ふぅ~、一色と昼飯を食べると疲れる。結局、何も実りがなかった。それでも、どこかそれに楽しさを見いだしている。

 

財布をバッグに入れ、席を立ち上がる。周りには3限の講義に向かうのか、同じく席から離れている人が多い。

 

さて、俺も講義のある教室に行こう。机から歩き出そうとしたときに一色の座っていた椅子に何かあるのに気づく。忘れ物かと、拾い上げると小さいノートだと分かる。表紙には先輩の好きな食べ物と、書いてある。胸がぎゅっと高鳴る。

 

ラーメン………俺のために作ってくれてんのかな。淡い期待が込み上げてくる。今までは大概、こういう期待をすると、それが違って自己嫌悪に陥る。期待をする自分に腹が立って。

 

ノートをバッグに積める。後でばれないように返しておこう。ばれると何かめんどそうだし。

 

一色との昼食後ティータイムはいつも何もないふわふわ時間だが、今日は何か気持ちがふわふわしてんな。

 

そんな気持ち悪い事を心で呟きながら教室に向かった。

 

 

 

はぁ、疲れた。

 

4限が終わり、今日の大学は終わり。帰宅するのみだ。一色は3限で終わりのため先に帰っている。

 

電車を乗り継ぎ家に帰った。靴を脱ぎ、バッグを自分の部屋に置き、リビングへ向かう。

 

リビングに入ると、テレビの前にあるソファーに由比ヶ浜がいた。眉間にシワを寄せ何かを悩んでいる素振りを見せる。テレビを見ると、簡単な計算問題が出ていた。街にいる、一般人を何組か集め問題を出し、それが答えられれば何か景品が貰える。そんな趣旨の番組だろう。

 

「由比ヶ浜、簡単な問題だぞ」

 

由比ヶ浜は突然、話しかけられたことに驚いたのか肩を上下させ、こちらに振り向いた。

 

「あ、ヒッキー。お帰り。てか、あたしにもこれぐらい分かるよ」

 

由比ヶ浜は首をこちらに向け、唇をつきだしている。

 

「いや、何か悩んでたし、由比ヶ浜だし」

 

「いや、バカにしすぎだから!!」

 

体全体を上下に揺らし、怒りを表現する由比ヶ浜。いや、ちょっと違うところが主張してますから。

 

「じゃあ、何かあったのか」

 

テレビの回答で悩んでいなければ、何なのか。

 

「うーん、ちょっとね」

 

歯切れの悪い返答をする由比ヶ浜。

 

「どした」

 

「ミスコンなんだけど…」

 

「ミスコンでるのか」

 

由比ヶ浜は可愛い。これは相対的にとかではなく普通に。それに性格も真面目で友達に対しても真摯に取り組むなど悪い面が見当たらない。由比ヶ浜とは大学が違う。その為、大学にどんな女の人がいるかとかは知らないが、大学内でもトップクラスであるのは間違いない。

 

だが、由比ヶ浜の性格上、自分からミスコンに出たいと言うだろうか。たぶん、違う。おおかた、友達に他薦をされて、断りきれずに保留にしてるんではないか。

 

「いやいや、違うよ。私はどちらかと言えば出たくないかな。友達に出ればって言われて」

 

やはり、そうか。由比ヶ浜は昔と比べて友達にも自分の意見を言えるようにもなったが、甘い部分は残っているようだ。

 

「はぁ、やっぱりそうか。断ればいいと思うが」

 

「そうなんだけどね。笑顔で言われると」

 

「どーするんだ」

 

こうなれば、由比ヶ浜のことだ。少し強くおされて、出場するだろう。

 

「まぁ、募集期間はあと一週間あるから」

 

「そうか」

 

俺はお茶を飲みにキッチンに向かった。由比ヶ浜はテレビの方に体を戻すと、え!!16じゃないの!!と嘆いていた。

 

次の日、大学で2限が終わると、ズボンのぽっけの辺りが揺れた。ぽっけの中にあるスマホを取り出すと、一色からLINEがきていた。

 

『先輩!!』

 

『5号館で待ってます♪♪』

 

一緒に学食に行こうという提案だろう。

 

『分かった。』

 

すぐに既読が付く。

 

『待ってまーす♪』

 

席を立ち上がり、5号館に向かう。

 

5号館のいつも一色がいる場所に辿り着くと、一色が男の人と話しているのが見えた。まぁ、邪魔しちゃいけないし、時間を置いてから行こうと近くのベンチに座る。

 

その男は色白で痩せていて、髪を染めていた。それも、茶髪や金髪等ではなく青く染めているから、全体を見ると、まるでネギのように見える。

 

雰囲気もチャラチャラとしていて、うぇーい!!やワンチャン!!が口癖のような男だ。

 

一色の腕を掴んで、顔を近づけている。一色の方はTHE苦笑いと行った感じで嫌がっていた。うーむ、これはナンパといったものでしょうか。大学内でもそんなことをするやつがいるもんなんだな。とある意味感心しながら、見ていると一色がこちらに気付いたようで駆け寄ってきた。

 

「先輩!何、ベンチに座ってるんですか。いろははここにいますよー」

 

あざとく、ぷくっと頬を軽く膨らましながら、顔を寄せてくる。

 

「いや、何か話してたみたいだったし」

 

「別にいいんですよ」

 

そんなことを話していると、ネギ男が近付いてきた。

 

「ねぇねぇ!いろはちゃん、どこいくのよ急に。昼飯一緒に食べようよ」

 

テンション高めに語りかける。そんなテンション上げてどーするの。もっと上げて、はやぶさ切りでもするの。

 

「ごめんなさい。先輩と約束してたので」

 

ネギ男は俺の方をジッとなめまわすように見てくる。美術品の気持ちが今なら分かる。

 

「いろはちゃん。この人と付き合ってんの」

 

「え!!付き合ってないですよ」

 

全力の否定。右手をブンブンとハエを払うように振る一色。てか、最近の大学生は少し二人で会ってたりすると二人は付き合ってる認定を出すのかね。昨日のさ、さ、部長さんといい、ネギ男といい。付き合うってことに対してチェリーボーイだから、俺には分からんが付き合うってそんなものなのか。

 

「なら、俺と食べようよ。俺、いろはちゃん好きだし」

 

「いや、だから!!先輩と食べるんですよ!!」

 

一色は俺の方を仔犬のような目で見てくる。はぁ、リアルガチでやばいよやばいよ状態っぽいので助けるか。

 

「まぁ、今日は引いてくれ。…一色も困ってるみたいだし」

 

ネギ男は目をつぶり、腕を組む。五秒間ぐらいしっかりと悩むと分かりましたと引いてくれた。良かった、良かった。ん?何に俺はホッとしてんだ。

 

「いろはちゃん、今度は俺と食おうね」

 

一色はため息を吐く。それでも、次の瞬間には笑顔になり、きゃるんといつもの一色に戻った。

 

「分かりましたぁ。食べましょうねぇ」

 

甘ったるい声でそう言うと、5号館を出た。食堂への道中、一色が動きを止めた。

 

「ん、どした。時間なくなるぞ」

 

振り向き、一色を促す。一色はとことこと俺の隣に来ると、にやけながら言う。

 

「先輩って意外と独占欲強いんですねー」

 

「は?俺が独占欲強くなるのは戸塚だけだぞ」

 

「いや、さっきあの人にナンパされてたとき、凄い顔でしたよ」

 

そんなわけない。俺は冷静にあの場を仕切れたはずだ。

 

「嘘つけ、そんなわけないだろ」

 

「あと、あの人が引いてくれたときなんかは凄いホッとしてましたよね」

 

む。確かに否めない。え、ホントに俺、一色がナンパされてるの見て嫉妬してたの。いや、違うだろ。あれは、所謂小町なんかに変な虫が付かないかどうかに似ているような心配だ。一色は小町に何か似てるし。

 

「してない。してても、それは嫉妬ではない」

 

一色は呆れたのか、肩の辺りに手のひらを上向きにし、アメリカンな反応をする。

 

「分かりました。そーゆうことにしときますね。先輩、何ぼっーとしてるんですか。ご飯食べる時間なくなりますよ」

 

そう言うと、小走りに食堂のなかに入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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