ソードアート・オンライン《かさなる手、つながる想い》   作:ほしな まつり

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すみません、今月は投稿お休みします宣言したんですけど、やっぱり感謝の
キリ番投稿は早めにしたくて……。
だって800ポチですよっ(単位これでいいのか?)
小学校の新入生だって友達100人でっきるっかなーっ、てくらい難易度高めの
ミッションなのにっ(比較対象これでいいのか?……そして新一年生に100人は
かなりの無茶ぶりだと思う)
PC画面(基本、作業はPCなので)の向こう側にとっても優しいキリアス好きなヒトが
800人以上もいらっしゃるーっ、と思うと幸せいっぱいになります(照れ)
幸せいただいたお礼になれば嬉しいのですが……今回のキリ番感謝投稿は
キリトとアスナがアンダーワールドから生還した後のお話です。


【「お気に入り」800件突破記念大大大大大大大大感謝編】〈UW〉どこへでも

二〇二六年八月初旬、STLのジェルベッドから今は所沢防衛医大病院のベッドへ寝具を替えた和人だったが、明明後日の夜は懐かしくも川越にある自宅のベッドで横になれる予定となっている。

「若いっていいわね」と退院の日を告げにきた安岐はついでのように言っていたが、そんな台詞を笑顔で口に出来る喜びを噛みしめているような笑顔だった。それでもまだ完全復活には一割ほど足りていない、と判断したのは本人以上に和人の事なら「なんだって知っている」明日奈の言だ。

 

「うーん、まだ標準キリトくんの九割くらいかなー」

 

さささっ、と腕や背に触れただけでそんな僅かな違いがわかってしまう発言の理由を苦笑で受け流した和人は内心で「それならオレもアスナの回復度合いを触診してもいいのか?」と思ったもののここが病室なのを考慮して声にはせず、すぐに彼女が持って来てくれた見舞いのバラの色に意識を持って行かれる。その色に刺激された郷愁も隣に座り触れてくれた存在のお陰で痛みを伴うことはなかった。

浮遊城アインクラッドの崩壊を二人で見送った時も、妖精郷の世界樹の上で再会した時も、アンダーワールドで覚醒した時だってこうやってアスナと額同士を触れ合わせると不思議と不安は薄らいで安らぎを覚えるのだ。そんな二人だけの時間もメガネの元役人が強襲してきたせいで終わりを告げたのだが、再び病室に二人きりになると彼女は大胆な提案をしてきた。

なんとこれからALOで開かれる九種族合同会議にこの病室からダイブすると言うのである。「しょーがない」という言葉とは裏腹にトートバッグの中にはアミュスフィア一式がちゃっかり入っていて、それを取り出す手に一切の躊躇はない。けれどそれを指摘すれば「念の為だもん」と少し照れた口調とそれを誤魔化すみたいに尖らせた唇に続き「細かいこと気にしない!」などと生真面目な元KoBの副団長サマと同一人物とは思えない声が勢いよく飛んでくる。

ここまで整ってしまえば明日奈が今すぐ世田谷の自宅まで戻っても会議の開始時間に間に合わないのは確定だし、その内容がアンダーワールドにコンバートしてくれたプレイヤー達への事実報告となればキリト一人だけの参加というわけにもいかない。

彼女の思惑通り、と取れなくもないがこれはもう流れに身を任すしかないだろう、と真っ白なミュールを些か雑に脱いで覆いかぶさるように胸に飛び込んで来た明日奈を和人は当然のように柔らかく受け止めた。

久しぶりだが何の違和感もなく、むしろこれが本来の有り様なのだと思えるほど自然に全ての隙間を埋めて互いの呼気を分け合う。あまり深くなりすぎないようストッパーをかけつつ少しだけ舌で翻弄して明日奈の気を向けさせ、さっきのお返しとばかりにこっそりと肩や背中、腰周りに触れて確かめれば和人も内心で「うーむ」と唸った。

細いな、と思う……誰と比べて、と言うわけではないけれど標準の明日奈なら細いけれどしなやかな筋肉とか弾力のある肌を感じられるのに、今はとにかく細い。

折れない…か?……折れない、よな?……などと冗談としか思えない思考が半ば本気で頭を占拠しそうになる所を「ンっ…っあ」と跳ねた甘声に聴覚が刺激されて一気に己を取り戻した。どうやらうっかりいつものように明日奈の弱い部分を集中的に擦ってしまっていたらしい。すぐさま彼女の舌を解放して「ご、ごめん」と謝罪を口にしたが明日奈の方は上がってしまった息のせいで唇は煽情的に小さく開いたままだし、頬は色づき、潤んだはしばみ色はそれでも和人を見つめていて……その表情は中途半端な触れ合いが不満なのか、はたまたやり過ぎた和人を責めているのか、どちらにしても向けられた方としては理性を総動員するしかない状況になっている。

ここは病室、ここは病室、という呪文で頭をいっぱいにして、とりあえず上に乗っかっている明日奈を抱きかかえたまま、よっこらせ、と一緒に九十度回転し隣に横たわらせた。

そこで、やっぱり軽いな……と思う。

未だ標準に達していない(らしい)和人が楽に受け止めてしまえる明日奈も三日前に退院したとは言え未だ「標準のアスナ」には至っていない。

約二ヶ月前、自分を庇い和人が昏睡状態に陥った時からずっと心配が続き睡眠も食事もまともに取れないまま今度はアンダーワールドにダイブしたのである。そこで自らログアウトを拒みキリトと共に限りなく死に近い状態で三週間が過ぎた後の覚醒……和人と退院のタイミングがずれたのは彼のような外傷がなかったからで明日奈もまた完全に復調したわけではないのだが、ただ、それに気づけるのは通常の明日奈のあれこれを知り尽くしている和人だからで……。

「オレの、せいだよな……」と思ってみても、明日奈がジョニー・ブラックに害されるくらいならやはり何度思い返してみてもあの時はあの行動しかなくて、それでも万が一自分ではなく彼女がオーシャン・タートルに運び込まれアンダーワールドにダイブしたとして、同じようにユージオと出会ったとしたら、と仮定すれば想像でも胸がもやっとし「やっぱりオレでよかった」と確信する。

退院後は全く手つかずの夏休み課題の処理に追われそうだが、それでも一日くらいなら外出する時間はあるだろう、甘い物ならアスナも喜ぶだろうし……と少しでも早く元の彼女に戻って欲しいと考えているとアミュスフィアを持ったままの明日奈が胸元から「キリトくん」と呼びかけてきた。

 

「ん?」

「あのね、出来ればそっち側がいいんだけど……」

 

ベッドに並ぶ位置を入れ替えて欲しいと言われた和人も自分の右側にいる明日奈と何もない左側を交互に見て、そうだな、と納得する。

わざわざ決めたわけではないけれど旧SAOでも森の家の寝室ではキリトの左側がアスナの定位置だったし、それから《現実世界》でも一つのベッドで横になっている時は自然とそうなっていた。

 

「よし、それじゃあっ」

 

言うほどの勢いは必要としなかったが改めて明日奈の腰と肩をしっかり引き寄せた和人が今度はぐるんっ、と半回転して彼女を右側から左側に、まるで太陽が東から西へ移動するように運べば「きゃっ」と一瞬驚きの声が飛び出たもののベッドに着地すると、ふぅっ、と吐いた息が首元を掠める。ただ位置を逆にしただけなのにもうずっとそれが当たり前のように思えて和人は妙な安堵感に戸惑いながらも明日奈と同じように、ふっ、と力を抜いた。

 

「うん、やっぱりしっくりくるな」

「……そうだね」

 

明日奈に回していた腕を解き仰向けになると視界にはそっけない病院の天井しかないのに、いつもの温もりがいつもの位置と思える場所にあるだけでなんだか心が落ち着くと言うか、欠けていた部分が優しく補完されて魂が綺麗な形になった気がした。

それは明日奈も同じで、和人の選んだ移動方法について一言物申したかったらしいが自分の居場所と感じる心地良さに負けたのか、つい笑みを零して、すりっ、と頬を寄せ「きっと……」と目を瞑る。

 

「アンダーワールドでもずっとこうしてたんだよ」

「ああ、あのベッド、やたら大きかったもんな」

 

ベッドに天命と言うべき耐久値があったかどうかは分からないが、それでもまぁ、多分、二百年という気の遠くなるような時間を毎晩こんな風に二人並んで横たわったに違いない……いつも横たわっていただけかどうかはさておき。

旧SAOで虜囚となった時は森の家で二週間という短い期間だったが、アンダーワールドの白亜の塔では二百年というありえない単位で、けれどどちらの時間でも互いの想いがより深く、強くなった事は間違いないだろう。

だからこそ、今こうして当たり前のように明日奈が隣に寄り添ってくれるのは奇跡のようなもので、覚えているだけで何度も彼女を失いそうになったのだから記憶の無い二百年の間だってそうした場面はあったはずだと思い至り、ぶるり、と肩が震える。

しかしちょうどその時、病衣から伸びている和人の裸足の指にちょんっ、ちょんっ、とノックのリズムで触れてくるのは明日奈の右の素足だ。

 

「大丈夫だよ、キリトくん。私はどこへだって付いていくから」

 

一番に明日奈に相談したかった……けど明日奈には一番言い出しにくかった……そんな葛藤すら全てお見通しだといわんばかりに穏やかな声が流れてきて、一瞬呼吸を止めた和人はすぐに降参の溜め息を吐き出し、今度は甘えるような仕草で明日奈の足先に己の足先をこすりつける。

 

「いいの……か?」

「いいも何も、私が一緒じゃないとダメ…でしょ?」

 

キミ、一人の時は泣き虫さんだし……と続く心の声が聞こえた気がしたが、ここで強がりの言葉を返す気もおきなくて和人は再び身体の向きを変えて肯定の代わりに明日奈を思いっきり抱きしめ、「ありがとう」の代わりに微笑んでいる彼女の唇を塞ぎ、肝心の進路変更先の話は後でいいか、と頭の隅に追いやって彼女の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

帰還者学校を卒業した後も明日奈がそばにいなければ自分はダメなんだと情けなく告げたくせに、このぬくもりを感じられないまま二百年間をアンダーワールドで過ごそうなどと一時でも考えた己の浅はかさと、それを何も言わないままで察してくれた彼女の聡明さに、この分だと一生敵わないんだろうなぁ、と嬉しい諦めが内を満たす。

だけど一生一緒にいられるなら、一生敵わないままでいい。

ずっと、どこまでも一緒だと言質を取っているくせに明日奈に触れる時はいつだって余裕なんてなくて、まるで初めてみたいに彼女の全てを欲っしてしまう和人は「いいよ」と受け入れてくれる優しさに甘えてさっきよりも濃厚に舌を絡める。反射的に跳ねる肩、一瞬縮こまる彼女の小さな舌、その両方を逃がさない、と伝える為に押さえつけ、角度を変え、のしかかるようにして閉じ込めた。

きっともう自分から手を離すのは無理だと本能が告げている……彼女がいない世界の自分なんてただ生きているだけの存在になり下がるだろう。それでもアンダーワールドで二年間キリトが自分らしく生きられたのは芯が強く面倒見が良くていつも優しく笑っている、どこかアスナと似通った部分を持っていた親友の存在があったからだ。

和人の手が確かめるように栗色の髪を梳き頬をなでて首筋を辿り肩をつかむ。

引き留めるようにしがみついてくる和人の手に気付いた明日奈は咥内の熱に翻弄されつつも両手を持ち上げてそっと黒髪に指を這わせた。もう何度も「私はキミのものなんだよ」と伝えているのに失う絶望を知ってしまった彼は時折こうして臆病な手ですがるように明日奈を求めてくる。

入院中は毎日のように面会時間に会いに来られるけれど退院後は夏休み中とあってそうそうリアルで様子を見ることは叶わない。今は病院の中という一種の非現実的な空間に身を置いているが、桐ヶ谷家に戻れば否応なくここが《現実世界》なんだと突きつけられるだろう和人を思い明日奈は退院の日の夜は特に彼を見ていて欲しいと直葉へのお願いを心に決める。

今はまだ不安定な瞳を見せる和人の髪にゆっくり手を動かせば触れるかどうか微量の隙間まで一旦口づけを解いた和人の掠れた声が「アスナ」と小さく開いたままの口から内に注がれるが、応えるよりも早く再び唇が重なりがむしゃらに彼女を強請ってきた。

流石にベッドの上とはいえ場所が病室だというのは頭から抜けていないのか、それ以上の触れ合いに発展する気配はないもののだからこそ和人はこの唯一の行為に没頭する。角度を変える為のほんの一瞬に上がる「あっン」と鼻にかかった声に煽られてすぐさま噛みつくように合わせる唇と貪るように動かす舌、もはや愛撫とは呼べない蹂躙に近い接吻にもかかわらず彼女は健気に応え続けてくれた。

それからどのくらい経っただろうか、和人の髪にあった明日奈の両手はいつの間にか病衣の襟を必死に掴んでいて、きつく瞑っている眦からは幾筋もの涙が流れ落ちている。余すことなく夕焼け色に染め上げられた顔には不似合いなギュッと寄せられた眉。胸元の上下運動と連動して閉じる事を忘れてしまった口ではいつもより数段早い速度で呼吸が繰り返されており、極めつけはさっきまでの行為で桜色から薔薇色へとトーンアップしている少々膨らんでしまった唇。

 

「……ごめん、アスナ」

 

何をどう考えても自分の責任だと、やり過ぎた反省が出来るくらいまで自分を取り戻した和人がしおれた表情で謝ると、むぐっ、と口を閉じて首を横に振った明日奈だったがすぐに鼻呼吸では追いつかず「ぷはっ」と息苦しさから口呼吸に戻ってしまった。

罪悪感ましましである。

和人は襟を掴まれた状態のまま彼女の隣に横たわると肩で息をしている姿に思わず手が伸びてその背中をゆっくりと撫で始めた。薄手の白いカットソーごしに手の平に伝わる背骨や甲骨の感触から彼女の細さを再確認させられる。

 

「背中、もっとなでて」

 

整いきらない息継ぎの途中の彼女からのおねだり……もちろん否はない。

襟を握りしめていた手から力が抜け首の後ろでからめ引き寄せるように和人の胸元に明日奈がおでこをくっつける。

 

「頭も」

「うん」

 

行き場がなかったもう片方の手で腕の中にある小さな頭を抱え込むように包んで撫でれば「髪にキスしたい」と衝動が膨らんだその時「時間、平気?」と胸元から籠もった声が耳に届いた。

ハッ、と急いで時計を確認すれば九種族合同会議まであと少しで、和人はベッドの端っこに置き去りにされていた明日奈のアミュスフィアをその頭に装着してやり、それから身体を捻ってベッドサイドにある自分のそれに手を伸ばし同じようにセットすると、ようやく落ち着いてきた彼女をもう一度しっかりと抱き寄せてから「じゃあ行くか」と声をかけ、「リンクスタート」の起動コマンドを唱えるべく二人揃って唇を動かしたのだった。




お読みいただき、有り難うございました。
このシーン、アニメ版では結構省略されてまして、ご本家(原作)様では菊岡さんが
帰った後、キリトとアスナは病室からログインして九種族合同会議に参加するんです。
キリト(和人)はそれまでもALOの森の家に一週間ほど前から毎日訪れているので
病室でアミュスフィアの使用はOKなんですね。
更に退院後、進路変更を家族に申し出る際も「まだアスナにしか言っていない」と
書かれてあるので一番最初に伝えていたようですよ。
で、同時にALOにログインした二人が目撃されていたとしたら……
「うっわ、あいつら絶対同じ場所にいんだろ」とか
「同時ダイブって……リアルでどういう状態だよっ」って言われるだろうな。
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