ソードアート・オンライン《かさなる手、つながる想い》 作:ほしな まつり
『SAOアリブレ』のキービジュ(?)二枚見たらどうしても何か創作したくてっ。
ご存じない方は「アリブレ 新衣装」で検索してください。
【時の代表剣士】キリトの後に【新時代の架け橋】アスナをご覧いただいた後
お読みいただけるとわかりやすいかと。
アスナ視点です。
隣を歩くキリトくんの口から出た「ふぁっ…疲れた」のくたびれた声につい苦笑を漏らしそうになる。戦闘となると自分も含めてメンバーもみんな全力で戦っているんだけど、どうしても【時の代表剣士】であるキリトくんの剣戟がメインになってしまうから……さっきの戦いでも彼は終始前線で攻撃を続けていたので「疲れた」と言いたくなるのも無理はない。
それなら今は二人だけだし、他の人達は後から追いついてくる約束だから急ぐ必要もないし、と周囲を見回して、あっ、と気付く。
前方、道から少しはずれた木々の奥に立派な巨木が一本あって、その幹を囲む地面には柔らかそうな芝草が生い茂っており丁度良く日影になっている。
「ちょっと休憩していこっ」
私はキリトくんの手を掴んでお目当ての場所までぐいぐいと引っ張った。
先に木の根元にペタリと座り両手を伸ばして「んっ」と伸びをする。枝葉の間を通り抜ける爽やかな風が運んで来た草木の匂いを思いっきり吸い込んだ。《現実世界》だったら草の上に直接座ればチクチクしそうだけど、この世界では逆に芝草の葉がクッションとなって座り心地も悪くない。
「キリトくんもっ」
早く座って欲しくて誘いをかけると、私の目の前に立っていた彼の顔がニヤッとする。
あ…これはなにかダメな事を思いついた時の、と気付いたものの声を出す暇もなく、キリトくんは「それじゃ」と言いながら素早く身体を横にした。「え!?」と驚いている私の膝の上に柔らかな黒髪の感触。悪戯が成功した時のような得意気な笑みが私を見上げている。
「もうっ、キリトくんったら」
「ここが一番疲れがとれるんだ」
そう言われると何も言えなくなってしまう。
嬉しさで緩んでしまいそうな唇にちょっと力を入れて「しょうがないなぁ」と声を繕って、染まった頬を見られないように彼の前髪を指で整えて視界を遮る。でもきっと本心はバレてしまっているだろう。その証拠にキリトくんも穏やかな笑顔で私の肩から滑り落ちた髪の一房を手にとって弄っている。
ここはゲームを楽しむための世界なんだからこんな風に二人きりで何でもない時を過ごすのは違うのかもしれないけど、ゲームであっても遊びではない世界で二年間も過ごしてきた私達はそれが《仮想世界》でも《現実世界》でも、その時間そこで生きている事に変わりはない。だからゲームを進める為に必要な事じゃなくて自分がしたい事や相手にしてあげたい事を一番に考える。
今はキリトくんを休ませてあげたいし、私も二人きりでいられるのは嬉しいから……もう少しこのままでいいかな。
そして何が面白いのか、私の髪を指に巻き付けて遊んでいるキリトくんを眺めていたら「そうだっ」と前から考えていた事を思い出した。
「この髪の色、変えるとしたらキリトくんは何色がいいと思う?」
彼はどんな世界にいても黒、黒、まっ黒だ。それについては「また?」とは思うけど、同時に「キリトくんだもんね」とも思う。
だから「変えればいいのに」なんて思った事はないし、もし本人が「変えようと思う」って言ってきたら……うーん、どうしよう、他の髪色のキリトくん……想像出来ない。
だけど私は新生ALOでは髪も瞳の色も水色になっている。ウンディーネのデフォルト設定によるものだけど、それはそれで悪くない気がしているしアバターの私しか知らないプレイヤーにはこの栗色の髪がカスタマイズだと思われているみたいで、《現実世界》の色そのままだからたまには違う色もいいかな?、と思ってたんだけど……
「髪の毛、カスタマイズするのか?」
私からの質問が意外だったのか、キリトくんが真っ黒な目をまん丸にして驚いている。
「する、って決めたわけじゃないけど……」
例えば黒……か黒に近い濃い茶とか……普通の日本人っぽい髪色だったらなぁ、って小さい頃に思った時もあったし、今回のこのゲーム世界ではキリトくんとのお揃いが指ぬきグローブだけだから、これだと他の人とも被っちゃうのよね。そこで髪色を同じにするのもいいかなって思って試しに聞いてみたけど、なんだかキリトくんの反応が……薄い?
何色がいいか、を考えている感じでもなくて何か言うのを躊躇っているような視線に私が「キリトくん?」と問い返すと、彼は困ったように笑ってから「あのさ」と口を開いた。
「アスナがどうしても、って言うんじゃないなら……」
そう言って私の髪を指で挟み陽にかざすようにして見つめている。
「オレはこの色のままがいいな。綺麗だし、オレにとってはアスナの色だしさ」
収まっていた頬の熱が再燃して顔全体に広がったのがわかった。
もうっ、どうしてキミはそういう事を平気な顔で言うのっ……まるで宝物のように漆黒の瞳に私の髪が煌めいて映っている。両手で顔を隠したいのに彼が髪に触れているせいで身動きが取れない。
この髪、そんなにいいかなぁ……生まれつきだからよく分からなくて、隠せない顔の代わりに少しでも気を紛らわせる為に自分でも一房を手で摘まむ。自分の髪なのにキリトくんの方がこの色を気に入ってるなんて、なんか不思議…、とくすぐったい気分でいると膝の上の黒髪に目がいって、そっか、と納得できた。
私もキリトくんの髪はやっぱり黒がいいって思うのと一緒なのね。
栗色の髪を手放して愛しさを込めて真っ黒な前髪をさらり、と撫でる……と、その指先を見て「それなら」と自然と声が出ていた。
「爪は?、キリトくんは何色が好き?」
「へ!?」
キリトくんの持っていた一房がふさり、と落ちた。
《現実世界》だと淡いベビーピンク色しか塗ったことはないけど、アバターならもうちょっと冒険してみたい。
今の衣装に合わせるならストロベリーレッド?、パリスピンク?、はちょっとありきたりかな……差し色のマスタードイエローとか、キリトくんの衣装からダークグレーを持って来るとか……。
色々候補を考えていると今度はキリトくんも「うーん」と思案してくれているみたいで「指、見せて」と積極的な反応。
はい、どうぞ、と片手を彼の顔の前に突き出すとグローブ越しに私の手の平を優しく掴んでしげしげと指先を眺めている。
でも……えっと…爪の染色を考えるのに爪を見る必要ある?、とは思ったけど、まあ、いいかな、ってキリトくんの好きにさせていたら、ちぅっ、と軽く指先に唇が押し付けられた。
「ちょっ、キリトくんっ」
「手のサイズは当たり前だけど爪の形まで《現実世界》のアスナの指とほとんど変わらないな」
「それはキリトくんも同じでしょっ」
どの世界で手を繋いでも指を絡めても違和感はほとんど存在しない。
「爪の色、爪の色ね……」
私が諦めて口を噤んだとわかったのか、キリトくんは「爪の色」を呪文のように繰り返し言いながらまるで猫がじゃれつくように私の手に唇を落としたり頬を擦りつけたりしてきて、最後には甘噛みまでされた。
ううっ、くすぐったい……本当に色、考えてくれてる?、と確認しようと口を開きかけた時、さっきまで私達が歩いていた道の方から複数の足跡が聞こえてくる。少し遅れて話し声も聞こえてきたからリズ達だとわかって、休憩はおしまいね、と手を取り戻そうとしたら……うそ、キリトくん、寝ちゃってる…………。
そんな私達に一番に気付いたリズがみんなをその場に待たせて一人こっちまで歩いてきてくれた。
「ちょっと、そんなとこでなにやって……」
芝草を踏む足音がピタリと止まる。
ごめんね、リズ、もう少しだけキリトくんをこのままにしておいてあげて、の意味を込めて私はキリトくんの頬の下敷きになっていない方の手の人差し指をピッと立てた。
お読みいただき、有り難うございました。
言い訳のように何度も言いますけど、ゲームは全くしないので
「アリブレ」の世界観が全然わからないっ
とりあえず「活動報告」に載せるにはボリュームがありすぎだし
通常投稿にするほどの内容ではないのでゲリラしました(苦笑)
ゲームタイトルの『アンリーシュ・ブレイディング』……意味は?
アンリーシュとは「解放する、または制限がなくなる」だけど
ブレイディングって……なに?、刃物の意のブレイドの変化形?、造語?
知識のなさを晒しますが、よく分からないまま今回のタイトルはもじって
ブライド「新婦・花嫁」をアスナとして「アスナに対して制限がない」キリトって
意味で『アンリーシュ・ブライディング』にしました。
(これがウラ話ってことで)