ソードアート・オンライン《かさなる手、つながる想い》   作:ほしな まつり

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今月は『血の誓約』のみと思っていたのですが、ふと今日UPするしかない
ネタが浮かんでので……。


【超短編】その2

「これね、ここに来る前にクラスの子から貰ったんだけど」と言うアスナの手にはポッキーの小袋がひとつ。

いつものように《秘密の庭》でアスナ手製のランチを食し終えたところで目の前に現れたそれにキリトは今日が何の日だったのかを思い出す。

 

「貰った時、何か言われたか?」

「うーん…私がお昼ご飯をキリトくんと食べるのを知ってるからかな?、『是非っ、桐ヶ谷くんとっ、食べてねっ、そんでもって勝敗の様子を教えて貰えると嬉しいなっ』って……このお菓子食べると勝敗が別れるの?」

 

と素直に質問をしてくるところを見るとアスナは今日という日にポッキーを食べるイベントの存在を知らないのだろう。当然、今まで誰とも、いわゆる《ポッキーゲーム》をした事がないと判明して思わず安堵の笑みを零した和人は普段なら「やらないぞっ」と突っぱねるだろうこの手のお巫山戯に珍しくもやる気をみせた。

 

「勝敗って言うか…アスナとオレじゃ勝負にならないと思うけど……やってみます?」

 

そう誘われれば「うんっ」と好奇心が返事をする。しかも自分とキリトとでは「勝負にならない」とまで言われたのだ、内容はわからないが元来の負けず嫌いもむくむくと頭をもたげた。

キリトの指示に従い袋を開けて中のポッキーを一本取り出し渡すと、彼はチョコの付いていない方の先端を唇で咥え、反対側をアスナに向ける。

何がしたいのかわからず小首をかしげれば、少し困ったような笑顔のキリトが器用にも反対側のポッキーの端をアスナの唇のあわいに差し込んだ。

キリトがポリッと音を立ててポッキーを囓りながら「こうやって両端からポッキーを落とさないように食べ進めるんだ」とルール説明をしてくれるので、アスナもなるほど、と小ぶりな唇をもぐもぐと動かして小動物のように咀嚼を始める。彼女のペースに合わせているのかキリトは少しずつポッキーを消費しながらその様子を堪能しているが、アスナの方は唇からお菓子を離さずに食べるという初めての行為に全神経を集中させていてポッキーしか目に入っていない。

だから徐々に自分からキリトに近づき、同時にキリトの顔も近づいてきているのだがそれを指摘してくれる第三者はどこにもいなかった。

そうして軽く唇に力を入れたまま、口の中のポッキーを噛み砕き飲み込み、またちょっとだけ唇をうにっ、と動かしてポッキーを招き入れ噛み砕き、を夢中で繰り返していると突然、ふにゅっ、と唇全体に当たる柔らかなよく知る感触。

えっ!?、と思った時には顔をいつもの角度に傾けてアスナの唇にキリトの唇が押し当てられていた。

「ンん゛っ?!」とくぐもった声と同時に残っていたポッキーがキリトの口の中に収められ、代わりに「入れて」とばかりに舌で唇をノックされる。

もう数え切れない程経験した熱を分け合う口づけの合図だ。

けれどアスナは「だめっ」と両腕を突っぱりキリトの肩を押し遠ざけた。

 

「アスナ?」

「まだ口の中にポッキー残ってるの……ちゃんと飲み込んでから、ね」

 

話す時でさえきちんと口の中にある食べ物がなくなってから、のアスナらしいお願い。逆を言えば飲み込んでからならいくらしてもいいんだ、と都合良く解釈したキリトは小さく「な、オレ達だとゲームにならないだろ」とアスナにポッキーを渡したというクラスメイトに呟いたのだった。

 

 

 

 

 

放課後、アスナにポッキーを渡した女子は教室を出ようとしていた彼女の腕を掴んで引き留め耳元に話しかけてきた。

 

「明日奈ちゃん、お昼に桐ヶ谷くんとポッキー食べた?」

「え?、あ、うん。食べたよ、ありがとう」

「ちゃんとゲームしながら食べた?」

 

間近にある彼女の顔が好奇心でウズウズピカピカしている……いや、ギラギラハァーッ、ハァーッと言った方が正しいかもしれない。

 

「食べた……けど」

 

そう言えばポッキーを貰う時、彼女に勝敗の行方を教える約束だったと思い出したアスナだがルールはキリトに教えてもらったもののどうすれば勝ちだったのかは把握していなかった。

キリトからも勝ち負けを示唆する言動はなかったし、実はポッキーを一本食べ終えた後昼休みが終わるギリギリまでキリトに翻弄されていたから息を整えたり乱れた髪や着衣を直すのに必死で勝負の事はすっかり忘れていたのだ。

 

「どう、だった?、か……聞いてもいい?」

 

一旦唾を飲み込んだクラスメイトの顔がちょっとこわい。

これは何か答えないと絶対離してくれないパターンだ。

ゲームして食べて、どうだったか、を答えればいいのよね、とアスナは数時間前の《秘密の庭》での事を思いだして顔全体を薄桃色に染めながらそっと打ち明けた。

 

「キリ…和人くんがね『甘くて美味しい』って……」

 

途端、級友は教室の床に崩れ落ち両手で顔を隠しながら「ご馳走様でした」と悩ましげな吐息と共に吐き出したのだった。




お読みいただき、有り難うございました。
《ポッキーゲーム》はゲームであっても遊びではない……わけない。
まあ、他の方々が既にUPしつくしてるネタですので(苦笑)
そして何を期待してたんだろうね、級友。
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