ソードアート・オンライン《かさなる手、つながる想い》 作:ほしな まつり
急遽変更となりました(嘘じゃないよ、とか言っておいて嘘になってしまった)
ごめんなさーい。
野良猫キリトはいつもの巡回コースをスタスタと歩いている。
歩道から塀へ、次に植木の枝に飛び移り太い幹を軽々と登って高い屋根にストッと着地。ずっと歩道を行かないのは人間達にあまり遭遇したくないからだ。だいたいはみんな同じ反応をする。
「うわっ、黒猫っ」
「縁起わるぅ」
「本当に真っ黒だねぇ」
笑顔を向けられたことがない……けどまぁ気にもしていない。彼には特上の笑顔を見せてくれる相手がいるから。
二階建ての大きな家の大きな屋根を危なげなく移動して端から音も立てずに出窓の外側に設置してあるプランターの端に降りる。すると中ではずっと窓の外を眺めていたのか、お日様の光で黄金に輝いて見える毛並みの愛らしいメス猫が嬉しそうにニャアと鳴いた。
「こんにちは、キリトくん」
「よ、アスナ」
窓ガラスを挟んで真っ黒な野良猫と胡桃色の家猫が挨拶を交わす。何が楽しいのかキリトが訪ねると決まってアスナは零れんばかりの笑みを浮かべてくれるから彼はこれさえあれば十分で自分の中では一等なのだ。
「雨、大丈夫だった?」
そう、昨日まで雨が降り続いたお陰でキリトがアスナの家を訪れるのは久しぶりで……野良猫だから雨の日だって外を歩くのは全然構わないのだが、前にずぶ濡れで窓辺に立ち寄ったらアスナが今まで聞いたこともないくらい大きく「きゃーっ!!」と悲痛な声を上げたから、それ以来雨と雪の日は来ないことにしている。本当は雨でも雪でも来たいけど。
雨くらい何でもないのにすごく心配そうな声で聞かれたのでキリトは小さく「うん」と答えた。自分一匹くらい雨粒を凌ぐ場所はいくらでもあるし、なんなら濡れてもどうってことないのに、と思いながら。
「ほんとに?、ちゃんと乾かしてから毛繕いした?」
ギクッ、と身体が跳ねて、それをアスナに目聡く気付かれる。
「キ、リ、ト、くん」
はしばみ色の瞳がすごく細くなっていて口元がつーん、と前にすぼまって、キリトはあわあわと慌ててほとんど冗談でニャハ、と笑った。
「だったらアスナが毛繕いしてくれよ」
「……いいわよ。しょーがないなぁ」
「へ?!」
まさかの了承に思考も何もかもが止まってしまったキリトの目の前で「よいしょっ」と言いながらアスナが出窓の一画を器用に動かす。
「は?、え?、アスナがオレの毛繕い?…っていうか……窓、開けられるのかっ!?」
ひょこり、と顔だけ出したアスナは「いいから、こっちに来て」とキリトを招き、開いた窓で二匹は相対した。
今まではずっとガラス越しで、それでもアスナがもの凄く綺麗な猫なのはわかっていたのに、隔てる物がなくなってみるとそれだけではなかったのだと改めて実感する。風にゆっくりとそよぐ毛並みは軽くて柔らかそうで、直接耳に入って来る「キリトくん」という声はどこまでも甘い。
「ほら、こっちに顔むけて」
「う、うん」
言われるがままに顔を近づけると耳の後ろをペロリと舐められた。ついでに小さな鼻とかふわふわの頬とか、彼女が舌を動かす度にぐいぐいとキリトの頭に押し付けられて、すっかり気持ちよくなってしまったキリトはゆっくりと目を閉じる。
「あ、ここ、絡まっちゃってる。自分だとちょっと届きにくいのよね」
毛繕いなんて他の猫にした事もないしされた事もない……けど、アスナにしてもらうのは全然嫌じゃなくて、むしろとっても嬉しい行為なのだと認めてキリトは珍しく「ふっ」と笑った。
「アスナ、窓、開けられたんだな」
「うん、ここだけね。そういう造りになってるんだけど、小さいし私が開けられるの誰も知らないからいつも鍵かかってないの」
「だったら外に出てくればいいのに」
そうしたら一緒に色んな所へ行かれるかも、と期待するキリトには気付かず、真面目に毛繕いをしながらアスナ「んー」と渋り声を出す。
「外は怖いし……それに昼間、勝手に出ると佐田さんが怒られちゃうでしょ」
佐田さんと言うのはこの家の通いのお手伝いさんだ。アスナの飼い主はこんな大きな家を持っているのにほとんど帰ってこないから昼間はいつもアスナはひとりぼっちで、彼女の身の回りの事はお手伝いの佐田さんが面倒を見てくれている。このアスナ専用の広い部屋を掃除をして、綺麗な水と美味しい餌の補充をして、最後に彼女を抱き上げて異常がないかを確かめるのが日課だ。ちゃんと部屋に入る時は「失礼します」と言うし、抱き上げる手つきは丁寧だし、いつも「アスナちゃんはいい子ね」と話しかけてくれる優しい人なのでアスナも懐いているが佐田さんはやる事がたくさんあるので必要以上に構ってくれたりはしない。
結局、猫一匹に対しては十分広いけれどアスナはずっとひとりでこの部屋から出られないのである。
「本当はお部屋に入れてあげたいけどキリトくんの毛が落ちると困るから、ごめんね」
急いでぶんっぶんっ、と顔を横に振ったら「あっ、動かないでってば」としょんぼりした声はすぐにいつもの調子を取り戻した。
アスナの部屋に黒い猫毛なんて落ちていたらこの窓の鍵も厳重に施錠されてしまうだろうし、もしかしたら窓越しにだって会えなくなるかもしれない。
「ここで十分だよ、アスナ。オレ、いつも汚いし…」
道なき道を行くのが野良猫の醍醐味である。むしろ良い感じの茂みとか藪を見たら後先考えずにとりあえず突っ込んで行くのが信条だ。
「そんな事ないよ。キリトくんの毛並み、ちゃんとお手入れすればツヤツヤでとっても綺麗な黒だもん……ほら」
見えるように、と脇腹を何度も舐めてくれたアスナがまるで自分の毛並みを自慢するように言う。
アスナが毛繕いをしてくれたから自分の身体から彼女の匂いがして、にっこり笑う彼女の顔が今まで一番近くにあって、何も言えなくなってしまったキリトの様子に首を傾げながら「キリトくん?」という声が耳に届くと全身がピリリっ、と痺れて「うぅっ」という呻き声しか出せなくなる。
そんなキリトを見て、まだ毛繕いが足りないのかな?、と思ったらしいアスナは再び真っ黒な毛並みにふにゅっ、と顔をくっつけたのだった。
「うぅっ」……という妙な呻き声を耳にしてリズは飲もうと思って持ち上げたカップを妙な位置で停止させた。
ここはキリトとアスナが「暮らしている」と言っても過言ではない二十二層の森の中にあるログハウスだ。折角あのデスゲームから解放されたのにそれでもまた浮遊城が実装された時、二人はこの家の存在を確かめる前から購入資金を貯めていて、それだけでキリトとアスナにとってはとても大切な場所だと分かる。
もっとも今ではすっかり仲間達にも居心地の良い場所認定になってしまっているが、今夜はリズだけがお邪魔しておりアスナのオリジナルブレンド茶をご馳走になっているところだ。そしてもう一人の家の主であるキリトはいつもの定位置である揺り椅子でリズが来た時には既にぐーすかぴーすか気持ち良さそうに寝息を立てていた。
そんなキリトはついさっきまで随分とリラックスした様子だったのに、今の声は……うなされてる?、といぶかったリズはその寝顔を見て即座に、違うわね、と判断した。強いて言うなら向こうは全く意識せずに「どうしたんだ?、リズ」とか言いながら気安く肩にぽんっ、と手を置いてくるもんだからこっちはどう対処していいのかわからず適当な返事ができない時のアレの声……と随分具体的な情景が出てきてしまったけれど、とにかく心配するような声ではない。
気にせず美味しいお茶をいただこう、とカップの移動を再開した時、またもや困惑気味のキリトの声。
「…アスナ、くすぐったい」
はぁ?!、カップは止まり眉間に深い皺が複数発生する。
一体どんな夢を見てるのよっ、と問いただしたいような、けど聞いたら最後聞かなきゃよかったと後悔するようなちくはぐな感情が渦巻いて、まずはそれを宥めようと飲みかけのカップを静かにテーブルに戻し、「はぁーっ」と呼吸をしてないはずのアバターから大きな溜め息を吐き出す。
けれど間の悪い事にキッチンから戻ってきたアスナがそれを見て驚いた顔で駆け寄って来た。
「どうしたの、リズ。そのお茶、不味かった?」
「違うのよアスナ。お茶は最高に美味しいわ……ただ、今、ヘンな寝言が聞こえてきてね」
キリトを見て口をへの字にする。なんとなく自分の口からは言いたくない。
「へぇ、珍しい。いつもはむにゃむにゃ言ってるだけなのに」
眉間の皺がググッと深さを増した。
いつも、ってなに?……咄嗟にそう思ったがこのログハウスにいる時のキリトは寝ているか食べているかのほぼ二択だから、そうよね、そういう姿を見る機会が多いのは当然アスナだしね、と荒ぶりそうな感情に自分でフォローを入れる。
旧SAOでも迷宮区に行かずに草むらで昼寝をしているキリトを見つけてアスナが呆れたという話は聞いていたし、ただその真似をしようとしたら主街区のベンチで寝ていたキリトにはすぐ気付かれて全然近寄れなかったのが未だに納得できないのだが、再びスヤスヤと眠っているキリトの寝顔を見て「うぬぬ」と眉間に力が籠もった。
『悪い、リズだったのか』『そりゃ《索敵スキル》で接近警報くらいはセットして寝てるさ』……その時はそう言われて、それもそうね、と納得してしまったけど、今にして思うと、だったらなんでアスナは近づけたのよ、とせっかく穏やかさを取り戻そうとしていた心の中で小さな疑問はむくむくと膨張し続け眉はどんどん中心に寄っていく。
そんなリズのクレーターばりの眉間の皺をキリトの不可解な寝言のせいだと思っているアスナは自分も聞いてみたくて、そっと揺り椅子に近づいた。覗き込んで寝ているのを確認してからウンディーネの長い耳を寄せてみる。
すーぅ、すーぅ、すーぅ……寝息しか聞こえない。
なんだか親友が聞こえたのに自分には聞こえないのが悔しくて、あどけない寝顔を「もうっ」と睨み付けた。
だからもの凄い至近距離である。めっちゃ近い。見方によっては周囲の人は目を背けるべきの、恥ずかしい誤解を生む角度だ。ただ残念な事にリズの場合は見慣れた光景である。
昔はこうじゃなかったわよねぇ……と遠い目をしながら、アスナが急接近しただけで挙動不審に陥っていたキリトや、キリトとの約束時間前のそわそわしてるアスナを懐かしく思い出し、今更「ちょっと、近すぎでしょ」なんて野暮を発せられるはずもなく、やっと落ち着いて飲めるわ、と眉間の皺はそのままにリズはテーブルの上のカップを持ち上げたのだった。
「そう言えば、少し先の原っぱ、とうとうなくなっちゃうんだってね」
お返しにアスナの顎下を舐めていたキリトはそれを聞いて「むっ」と口を閉じた。
「キリトくんのテリトリーでしょ?」と少し心配そうな目をしているアスナに「あそこは他のヤツらも来るし」と暗に自分だけの場所ではないと伝えつつも「何で知ってるんだ?」と声が尖る。
アスナはこの部屋からさえ出る事がない。唯一、定期的に通っている動物病院に行く時だけ車の窓から外を眺められるのを知っているキリトとしては、そこそこ新しいその情報源が気になって仕方ないのだ。
「アルゴさんが教えてくれたの」
「ああ…なんだ、アルゴか」
同じ野良だがメス猫だとわかってホッとする。ちなみにアスナが飼われているこの家は当然丸々キリトのテリトリーだ。
「この窓の近くまで来てくれるのはキリトくんとアルゴさんくらいだもん」
よしよし、とキリトが頷く。
「もっと他の猫さんも遊びに来てくれればいいのに、って言ったらね、アルゴさん、にゃはははっ、て大笑いしたのよ。なんでかしら?」
少しの罪悪感からキリトのヒゲの先がぺろんっ、と落ちた。
「『そいつは無理だな、アーちゃん』って言うだけで理由は教えて貰えなかったけど」
タラタラと汗をかきそうになるが折角アスナが毛繕いをしてくれたんだから汚れるわけにはいかなくて、ぶるるっと身体を震わせる。特にこの家を中心に周辺は念入りにマーキングをしているのだ。間違っても他のオス猫が入ってこないように、絶対アスナと遭遇しないように……という独占欲丸出しがあの情報屋猫にバレているのは……マズい。そもそもメス猫だって普通は侵入してこないくらい完全にテリトリー化してあるのに、あの巫山戯た笑い方をする猫の度胸の良さには舌を巻く。
ネズミ……は最近いないんだよな、トカゲとか最悪バッタでもいいか……今度獲物が捕れたらアルゴに渡しておこう、と袖の下的な企てを考えていた矢先、そうだった、と思い出す。そういうのがいる場所は……「あの原っぱがなくなるのはイタいな」と呟くと、ジッと自分の顔を心配そうに見つめているはしばみ色に気付いた。
「私のゴハン、少し食べていく?」
どうやら原っぱがなくなる事でキリトの食糧事情が大幅に困窮すると勘違いしたようだ。さっきは部屋に通せないと謝罪したのに、それでもキリトの為ならと色々考えてくれる優しさが嬉しくて「大丈夫」と微笑む。
「お腹、空いてない?、私は毎日もらえるから平気よ」
そう言われてもアスナの飼い主はきっちりした性格で、栄養バランスと人間が思う理想的な体型の維持を考えた量しか餌を与えないからキリトに分けてしまったら彼女だって空腹を我慢することになるのに、それでも「ここに持って来てあげようか?」と心配をやめない姿に堪らずペロリと頬を舐め上げた。
「キリトくん?」
不思議そうに小首をかしげるもう片方の頬もペロリ。それから目の周りもペロリペロリ。ああ、もうっ、と、どこもかしこも愛しくてペロペロ舐め回しているとアスナの方も段々心配よりも違う感情がのし上がってきたらしく、小さく「私も」と口元に触れてくるキリトに舌で応える。じゃれ合うようにして互いの身体を摺り合わせていると心も体もポカポカとしてきて自然と「ふふっ」と笑いが零れた。
「ふふっ」……と随分嬉しそうな声にキリトを観察していたアスナは「あっ、笑った」とようやく宝箱が開いたようなスッキリした気分になって、つられて自分まで「ふふっ」と笑う。
「どんな夢見てるんだろうね。起きたら教えてくれるかな?」
寝顔にくっつきそうな位置にアスナの顔があるのに、小声ではあるが呟いてさえいるのに、当のキリトはまったく変わらず意味不明の寝言を呟いていて熟睡モード継続中だ。
確かにここはキリトにとって自分の家と言ってもおかしくない場所だし、アスナの顔や声がすぐ傍にあるのももはやそれが平常。同じようにアスナも…だから容赦なくキリトのほっぺたをつんつん突いたり、ぷにぷにと指先を押し込んでみたり、そんな事が出来るのは自分だけなんて知るはずもなく、ちょっかいをかけているその姿にリズは嘆息をもらすが今のアスナは目の前の寝顔に夢中だ。
「キリトくん…キリトくんの好きなナッツ入りブラウニー焼き上がったよ。起きて一緒に食べよ」
キリトの好物があり、そしてアスナと一緒にお茶をする。起きないはずがない絶対条件が揃ったところで「…ぅ、にゃ」と言う謎言語を漏らしながらよろよろと瞼が半分ほど持ち上がった。「……アスナ?」と見間違えるわけない名を口にしつつその存在に心底嬉しそうな笑顔を向けて彼女が返事をする間も与えず両手を伸ばし、むぎゅっ、と抱きかかえる。
慣れた動作で膝の上に横抱きにし、細い腰を引き寄せて、サラサラの髪に顔をうずめ、どこもかしこも密着させて、ついでに深く彼女の匂いを吸い込んで外も中もアスナでいっぱいにしたキリトはもう一度「ふふっ」と笑った。
「ふぇ?、キリトくん?、寝ぼけてる?」
驚いた顔でキリトの腕の中に収まっているアスナだが、別段焦りも困惑もないので……そこから導き出せる二人の日常に再びリズが大きく脇息する。ただ、くんくんと鼻先を押し付けてアスナの匂いを嗅ぎ、その後ごそごそと彼女の髪を鼻で掻き分けて首元や耳下を唇で撫でる仕草は自分のテリトリー内に隠しているとっておきを大切に愛でている野生動物みたいで大変に目の毒だ。
そこはアスナも気になるのだろう「キリトくん、リズもいるから」と宥める言葉は、ならいなかったらどうなるの?、と親友も妙な方向に想像力を刺激してくれる。なるほど、確かに同じ部屋の中、こんなに近くにいるのにリズの存在を認識していないのならキリトに気を許してもらっているとも取れるけれど……これってアスナしか見えてないだけね、と真理に辿り着いてしまったリズは椅子からガタンッ、と立ち上がった。
警戒されても、されなくてもほとんど違いがなかった事にうんざりしながらこれ以上キリトのテリトリー内にいても忍耐力が削られるだけと英断したリズが「それじゃあまた明日、学校でね」と素っ気なく手を振る。
「えっ?!、リズっ、もう帰っちゃうの?」
アスナの手作りブラウニーはとても魅力的だが、きっと、多分、今、ここで強引に二人をひっぺがしてそれを出されても噛みつきそうな真っ黒い目に睨まれてたんじゃ味なんて全然わからないに決まってるから。
「ブラウニーは今度食べさせて。私はナッツじゃなくてドライフルーツが入ったのが好きだから。よろしくね、アスナ」
せめてもの意趣返しに、と自分のリクエストを添えて視線すら寄越さない寝ぼけたままのキリトと自分の退室を惜しんでくれている親友を残してリズはバタンとログハウスの扉を閉めたのだった。
一方、キリトの膝の上で「え、うん、また明日ね、リズ」と戸惑いつつも見送ったアスナは視線を切り替えて唯一見える真っ黒な髪の毛に向け「どうしたの?、キリトくん」と呼びかけた。今日のブラウニーはキリトがとても楽しみにしていたお菓子だ。
「お腹、空いてない?」
その言葉にピクッと反応したかと思うと、キリトの顔がちょっとだけ離れてとろーんとふやけた瞳がようやくアスナを見る。なんだか旧SAOで短い間だったけれど夫婦として一緒に暮らしていた頃のキリトを思い出して、ぷっ、と笑ったアスナは「楽しい夢、見てたの?」と問いかけた。
「んー……いつまでも味わっていたいような、美味しい匂いのする夢だった気がする」
「なぁにそれ。食べ物の夢?」
「よく覚えていないんだ。ただ……」
「ただ?」
今までふわふわとした嬉しそうな声が一転してどんよりする。
「アルゴにトカゲかバッタを渡さなきゃ、っていうのだけは覚えてる」
お読みいただき、有り難うございました。
なんだか定期的(不定期的)にニャンコネタやりたくなるんですよね。