ソードアート・オンライン《かさなる手、つながる想い》   作:ほしな まつり

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《ALO》事件が解決し、アスナも普通にログイン出来るように
なっている頃のお話です。


レクチャー

空中都市《イグドラシル・シティ》……メインストリートから一本入った通りにある、キリトやアスナがログアウト時によく使っている宿屋の一階ドアを開ければあちらこちらのテーブルに固まって思い思いに過ごす妖精達の姿がある。

宿屋の一階が飲食フロアになっているのはよくある事で、ここも例に漏れず食堂兼カフェとなっているのだ。

キリトは店内に足を踏み入れると迷うことなく一番奥の巨大テープルを目指した。

 

「よっ」

「あ、キリトさんっ。遅かったですね」

「ちょっと他で用事を済ませてきたんだ」

 

キリトの到着に一番に反応したのは火妖精族の少女だ。

既にテーブルについているアスナは眼前に広げたウィンドウを一心不乱に見つめブツブツと呟きながら人差し指を高速で動かしている。その隣にはアスナの集中を邪魔しないよう息すら止めているのか?、と思えるほど真剣な面持ちの猫妖精族の少年が耳も尻尾もピンッと立てて彼女の手元を凝視していた。

これは気付いていないな、とキリトは嘆息して静かにアスナの隣の椅子に腰掛ける。

見れば彼女がオーダーしたと思われるコーヒーは一口分ほどしか減っておらず、ただこの世界は耐久値が切れるまでホットドリンクは飲みやすい温度に保たれている為キリトは当たり前のようにそのカップに手を伸ばし、うっすらと湯気の立っている中身をゴクゴクと半分ほど頂戴した。

 

「キリトさんっ!、それ、アスナさんの!」

 

さっきの火妖精族の少女の驚きを、まぁまぁ、となだめるように手を動かしてからそっと隣を確認する。

わかっていた事だがこの程度の騒ぎで今のアスナの集中力が途切れることはない。

手を上げてNPCウェイトレスを呼びアイスコーヒーを注文する。

一息ついてテーブルにいる仲間達と最近知り合ったプレイヤー達の顔ぶれを見てキリトはあれ?、と首を傾げた。

 

「クラインは?」

 

近くにいた火妖精族の少女に問いかけたつもりだったが、彼女が答えるよりも早くリズが口を開く。

 

「今日は急遽残業ですって」

「間に合いそうにないのか?」

「多分ね」

 

なるほどだからか、と今回の攻略の司令塔であるアスナが今の今になってウィンドウとにらめっこをしている理由に納得しているとアイスコーヒーが到着した。

最初にアスナのカップのあった位置にそれをそそーっ、とスライドさせるとほぼ同時に、振り切ったような晴れ晴れとした声が「うんっ」と飛びあがる。

 

「取り敢えず陣形と戦術の修正はこれでいいかな」

 

一仕事終わったとばかりに伸びをしたアスナが自然な所作で傍にあるカップに口を付けた。

 

「ん?!……冷たい」

「集中した後はいつもアイスだろ?」

「キリトくん!、いつの間に……ごめんね。気付かなくて」

「いや、来たばかりだし」

 

それより最初にアスナがオーダーしたホット、もらうぞ、と目で伝えてからキリトがコーヒーを味わっているとキリトとは反対側にいた猫妖精族の少年が目を輝かせ興奮で抑えきれない声をあげる。

 

「アスナさんすごいですっ。こんなに幾つもの戦闘パターンを考え出すなんてっ」

「すごくないよ。これだって実際の戦闘になったらうまくいかないかもしれないし」

「……そうなったら、どうするんですか?」

「切り替えのタイミングが大切かな。その為にも常に全体を把握して、戦闘中もモンスターをよく観察するの。仲間を信じて、ちょっとの違和感も見逃さないこと」

「なるほど。僕達、今までのモンスター戦はとにかく皆で一斉攻撃だったんで。クラインさんにもそれじゃあダメだって言われたんですけど、何をどう変えれば上手くいくのかわからず……」

 

低級のモンスター相手ならそれで問題なく倒せただろうが中級以上になるとそうはいかない。

同じ戦い方ばかりを繰り返していたせいでザコモンスターは楽に勝てるのにそれ以上には全く勝てず、パーティー内の雰囲気もぎこちなくなりついに言い争いが勃発したタイミングでモンスターが出現し、そこを通りかかった《風林火山》のメンバーに助けてもらったそうなのだ。

 

「《風林火山》の皆さんってカッコイイですよね。『助太刀するぜっ』って現れてあっと言う間にモンスターを倒してくれたんですよ。それなのにドロップ品は受け取らずにアドバイスまでくれて」

 

その時の情景を思い起こしている少年の目はキラキラと輝いているが、アスナとそれに同じく話を聞いていたキリトは揃って生やさしい目をしている。自分達の口からは絶対出てこないセリフもそうだが、格好良くドロップ品を辞退したように思われている点も旧SAOで攻略組にいた《風林火山》のメンバー達なら中級モンスターのドロップ品はよほどレア度が高くないと魅力的に映らないからだ。

そこでしばらくは行動を共にして『俺達を手本に己の腕を磨きたまえ、若人よ』となったらしいのだが……ほんの数日前『すまねえっ、キリト』と両手の平をぺたりと貼り合わせて見るからに初心者の集団を連れてきた本人が残業とは……と社会人の苦労の一端を垣間見る。

 

「他のメンバーはいきなりの短期出張にぎっくり腰だっけ?」

 

キリトが声を潜ませてリズに問いかければ、こちらもやるせない溜め息をひとつついた。

 

「みたいね。あそこはメンバー全員社会人だし。でもだからってなんでこっちに……」

 

リズだってゲーム初心者には優しく接するべし、の信条は持っている。特に今の新生ALOは浮遊城が実装されたせいで古参のALOプレイヤーと旧SAOプレイヤーの摩擦が少々問題になっていて新規登録に二の足を踏む者もいるくらいだ。

聞けばクライン達が助けた少年少女はMMORPGはこのALOが初めてらしく正真正銘、ビギナーオンリーパーティーなのである。

『お前達になら安心して任せられるっ』などとバンダナの端を揺らして言っていたが、どう見てもこの子は……とリズはキリトの背後でもじもじしている火妖精族の少女に視線を移した。

 

「キっ、キリトさんっ、あのっ、私、長剣の扱い方を教えて欲しいんですっ」

「……いいよ。まだ時間もあるから」

「ありがとうございますっ」

「ちょっと、キリト!、あの子の剣は細剣でしょっ。それならアスナに…」

「リズ」

 

それ以上の発言を遮るようにキリトが声を被せすぐに少女へ振り向く。

 

「今日はリーファがいないし……同じ剣でもオレのとは大きさが違うから突き技なんかは無理だけど。基本的な事が中心でいいかな?」

 

火妖精族の少女は「突くのってあまり使わないから大丈夫ですっ」と嬉しそうに頷いて、それとは反対に、ぐぬぬっ、と口と眉に力を込めたリズの元へ小柄な風妖精族の少女がおずおずと近づいてきた。

 

「リズさん、武器のメンテについて教えて欲しいんですけど、いいですか?」

「へ?、私に??……い、いいわよっ、何でも聞いてっ」

 

慕われて嬉しいのか途端に特大の笑顔へ豹変したリズが空いていた隣の席を勧めている。その向こうでは火妖精族の少年二人が今回の戦闘に備えたポーションのチェックをしていて、そんな仲間達の様子を見ていた猫妖精族の少年は隣のアスナに笑顔を向けた。

 

「僕達も今回の戦い、すごく楽しみにしてるんです」

「うん、わかるよ。初めてのモンスターってちょっと不安だけど楽しみの方が大きいよね」

「はいっ。今まではリメインライトの回収すら間に合わない事もあって。僕達のパーティーって前衛ばかりだから、アスナさんのような後方支援の人がていくれると安心って言うか心強いです。シノンさんみたいな弓矢か投擲武器が扱えれば後方から全体が見えやすいのかなぁ」

「前衛でもキリトくんみたいに周りをちゃんと把握する事はできると思うけどな。とりあえず今日は初戦だからたくさんデータを取って、でもいけそうなら皆でモンスター倒そうねっ」

 

アスナの意気込みを後ろで聞いていたキリトはかつて絶対に死者を出さないと誓って作戦を立てボスモンスターに挑んでいた副団長サマが今は純粋にゲームを楽しんでいるのがわかり優しい笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

そして戦闘終盤……もとよりアスナは自分をヒーラーとしか紹介していなかったので最後方からの支援に徹していた。他のキリト、リズ、シリカも基本少年少女パーティーのサポートに注力している。

アスナの戦術が功を奏したのか初戦にもかかわらず誰一人脱落する事なく戦いを継続していたが、相手も中級モンスター、狼に類似した固体が三体いて動きも素早いため全く気が抜けない。

それでもこのまま押し切れるか?、と思ったところで一体が顔を仰け反らせ唸り声のような咆哮をあげると残りの二体もそれに倣い次々と耳を塞ぎたくなる程の大音声を放った。

 

「一旦距離をとってっ!」

 

アスナの警告が響くなり全員がモンスターから離れる……と、ぶるりっ、と身体をゆすったモンスター達は体毛を膨らませ、口を大きく開けて鋭い牙を見せつけてきた。それに……

 

「アスナさんっ、めっ、ヤツの目が!」

「移動してる!?」

 

今まで狼然としていた顔面のあちこちに無感情の目が現れては消えを繰り返しているのに気づき少年少女パーティーが一様に愕然とした表情で戦意を喪失しかけた時、最初に吠えた一体からずっと目を離さず観察をしていたアスナが冷静に「大丈夫」と全員に告げた。

 

「移動してるんじゃない。最初から多眼だったのよ。これまではずっと二つだけを使っていたけど今は全部を閉じたり開いたりしてるんだわ」

 

目が現れた場所全てを正確に把握した上での判断だ。

 

「となるとそこが急所だろうな」

 

モンスターを睨みながら視線を外さずにキリトが呟くと、アスナは後方で同意の頷きをみせる。急所がわかったものの複数あってしかも開閉しているとなればそれはそれでやっかいなのだが顔に集中攻撃をしかければ勝機はあるはずだ。

ただ今までのように少年少女のパーティーを三つに分けて個々のモンスターと戦っていたのでは倒せないと再びアスナの声が飛ぶ。

 

「最初に吠えたモンスターはキリトくんがっ、リズとシリカちゃんは右側のモンスターをっ、残りの一体は君達全員で倒してっ」

 

戦闘力で言えば少年少女達全員でもキリト一人には及ばない。けれど戦いの前にキリトから自分のヒールは最低限でいいからと言われている為、アスナはこの戦闘中、前衛で必死に戦っていた彼らを最優先でヒールしていた。よってHPだけを見れば一番優位なのは彼らだ。

アスナの指示に従い全員がそれぞれのモンスターに切り込む。

少年少女達は当然手数の多さでモンスターの目をめがけ次々と技を繰り出した。それでも正確性の低さから何度もはじかれるがアスナからレクチャーを受けていた猫妖精族の少年が目の出現する規則性を覚えて徐々にではあるが急所を潰していく。

リズとシリカは見事な連携プレーでモンスターからの攻撃を避けつつ確実にひとつひとつの目を狙った攻撃を繰り出していた。

一方キリトの方はHPにあまり余裕がないこともあり一撃で同時にふたつの目を切り裂く軌道で長剣を振るっている。

アスナもまた、ここまできたら《風林火山》の代役とはいえ彼らに全員揃って勝利を味わって欲しいとヒールをかけ続けながら戦況を見守っているとモンスターの目が最後のひとつになった時、キリトに剣技を教わっていた火妖精族の少女が「やぁーっ」と細剣を振り下ろした。

最後の目が切り裂かれた途端、崩れるように地に伏したモンスターが光の粒子となって散っていく。

続いて少し離れた場所で戦っていたリズの声が耳に飛び込んできた。

 

「こっのぉーっ!、これで最後ぉー!!」

 

見れば尻餅をついた状態のシリカに飛びかかろうとしているモンスターの独眼をリズの片手棍が見事突き刺している。

こちらのモンスターもシリカのすぐ傍にドッシーンッ、と倒れ込み、あっと言う間に霧散した。

そして最後の一体、皆の視線がキリトに向かう。

 

「うおぉぉっ」

 

HPは既にレッドゾーンだがこの一撃で終わるっ…と誰もが思った瞬間、全ての目に深い斬撃をくらったモンスターが断末魔の叫びとばかりに哮り立つ。その声にハッとした様子のキリトが最後の力を込めて強撃のソードスキルを叩き込み叫んだ。

 

「スイッチ!!」

 

と同時にモンスターの顔に新たな目が生まれる。

予想外の展開にその場の全員が仰天した。既に倒された二体と同じ数の目をキリトも一人で屠ったはずなのだ。

しかしキリトが相手をしていたモンスターは形態変化を先導したリーダー格、目の数がひとつ多かったのである。

その事に咄嗟に気付いたからこそ「スイッチ!!」と叫んだのだがさっきまで冷静にパーティーメンバー達へ指示を出していた猫妖精族の少年はもちろん、リズやシリカも反応できずにいると、後方から光の如き早さで何かが通り過ぎた。

 

「はぁぁぁっ!」

 

突進してくるその声にモンスターの目が閉じきるよりも早く一閃が突き刺さる。

 

「グワァァ−ッ」

 

ひときわ大きな呻き声を上げたモンスターはついに力尽き巨体を地に叩きつける勢いで横倒しになるとキラキラと砂が崩れるようにその形を溶かしていった。

 

「……か、勝ったの?」

「そう…だよね?、勝ったんだよね?」

「やったー!、本当に倒したんだっ」

 

最後のモンスターが消えた後、茫然としていた少年少女達パーティーメンバーの顔に徐々に興奮が宿り、勝利を実感すると仲間同士で喜びを分かち合っている。同性同士抱き合ったり拳をぶつけあったり、果ては大声で叫ぶ者や泣き出す者まで出て大騒ぎだ。

そんな様子をニコニコと眺めていたアスナとキリトの元へパーティーを代表して猫妖精族の少年と火妖精族の少女がやって来た。

 

「すごかったですっ、キリトさんの剣っ。一人であのモンスターと戦うなんて。私達じゃ全員で一体を倒すのがやっとだったのに」

「まぁ、結局一人じゃ倒せなかったけどな」

 

視線を隣に向ければすかさずアスナが首を横に振る。

 

「それはHPがほとんど残ってなかったからで、いつものキリトくんだったら目が増えても倒せてたと思うよ」

「アスナさんも、ヒーラーなのにまさか剣が扱えるなんて、ビックリしましたっ。それに反応速度とか突き技もあんな早いの見た事ないですっ。どうして最後のモンスターだけ目が多いって気付いたんですか?」

「目の増えた時、三体同時じゃなかったでしょ?、だからもしかしたら最初の一体だけは他の二体と違うかも、って警戒してたの。もしそうならキリトくんは対応できるって思ってたし」

 

少年と少女が「うわぁ……」と声を合わせた。

 

「でもさすがに初戦で三体は無理かな、と思ってたから倒せなかった時は君達が再挑戦するなら付き合うつもりだったのにキリトくんがスイッチって言うからつい飛び出しちゃったよ」

 

「えへへ」と笑うアスナにキリトがちょっと不満げな顔を近づける。

 

「オレが言うまえに駆け出してただろ?」

「だって……キリトくんの背中見てたら絶対言うってわかったし」

 

後方にいたアスナの動向をモンスターとの戦闘中でも察知できるキリトと、その背中だけで自分が請われるのがわかるアスナ、この二人のコンビネーションまで自分達は辿り着くことが出来るのだろうか?、と思わず少年と少女は顔を見合わせた。

結果、サポート以上の働きをさせてしまったが勝利は勝利だ、今まで対峙したモンスターとは比べものにならないレベルだけにドロップ品も期待できるだろう。

 

「これからどこかの店で祝杯挙げてドロップ品の分配もっ」

「そうですよっ、あ、あ、あ、あとっ、アスナさんっ、アスナさんの剣、見せてもらえませんか?、それに突き技のやり方とかもっ…」

 

さっきの最後の一撃ですっかり虜になったらしい火妖精族の少女が思いっきり瞳を輝かせて鼻息も荒くアスナに迫ってくるが、その突進をかわすように彼女の身体を己の傍へ引き寄せたキリトは穏やかとはほど遠い笑顔で言い放った。

 

「悪いな、オレ達はこれから予定があるんだ。今日の戦い、本来ならお前達だけじゃ初戦で倒せるレベルじゃなかったけど……わかっただろ。モンスター戦に油断は禁物だってことが。あとは仲間達との連携をもっと強化しろ。そうすれば今回程度のヤツなら二、三回目の挑戦で倒せる。ってことでオレ達との共闘は終わりだ。あとは自分達でがんばれよ」

 

引き留める間さえ与えずにその場から離れようとしているキリトに手を引かれながらアスナが振り返る。

 

「今までありがとう。ドロップ品、私達抜きで皆で分けてね」

「アスナ、早くしないと約束まで時間ないぞ」

「うん。キリトくん、あのお部屋、借りられそう?」

「とりあえずオレのサインで仮押さえしてある。あとはアスナが…」

 

喋りながら仲良く手を繋いで飛び去ってしまった方向をポカンと口を開けっぱなしで見送っている二人の元へ「しょうがないわねぇ」とリズの呆れ声が近づいてきた。

 

「お疲れさま。私達もドロップ品はいいわ。もともと貰うつもりもなかったし」

「リズさん…あの、アスナさんが言ってた部屋って…」

 

聞いていいのかな?、という顔だが好奇心は抑えきれなかったらしい。

 

「あの二人、《イグ・シティ》にプレイヤールームを借りるのよ。その為に随分頑張ってユルドを貯めてたみたいだし」

「《イグ・シティ》にっ!?」

 

驚くのも無理はない。実装されてまだ数ヶ月、しかも空中都市《イグドラシル・シティ》はそれほど大きくないせいかプレイヤーホームは存在せずプライバシー空間が欲しければシティ内の建造物の中でプレイヤールームに設定されている部屋を借りるしかない。しかもその賃料が噂では目が飛び出るほど高額らしいのだ。

 

「と言うわけで短い間だったけど私達も楽しかったわ。またどこかで会えるといいわね。さ、シリカ、帰りましょ」

 

リズらしくさばさばとした笑顔でシリカと共に手を振り去ってく姿が見えなくなると、火妖精族の少女が我に返ったのか目を剥いて少年に詰め寄った。

 

「えっ?!、なに?!、どういうこと?!」

「それ、何に対しての疑問?」

 

少年の方は既に冷静さを取り戻しているようだ。

 

「あーっ、もーっ、わかんないっ!、色々いっぱいあり過ぎてっ!!……えっと、私達、中級モンスターを倒したのよね?、うん、それはすっごく嬉しいっ。色々手伝ってもらっちゃたけど」

「そうだね」

「それで、これからはキリトさん達にサポートをしてもらえない、てこと?、よね?」

「そのとおり」

 

キリトやアスナが大丈夫だと判断したのなら《風林火山》のメンバー達もこれ以上は付き合ってくれないだろう。

少女のウキウキが途端に萎んだ。

 

「やれるかな、私達だけで」

「そこは頑張らないと。僕もアスナさんから教わった事、ちゃんと考えて実践で使えるようにならないとなぁ」

「そうっ、それっ、アスナさん!!、アスナさんってヒーラーじゃなかったのっ?!」

「ヒーラーだろ。それもかなり腕のいい」

「そうだけどっ、でもっ、さっきのアレ!!」

「スゴかったよな。スイッチって迷いもなく叫んだキリトさんもだけど、タイミングも絶妙だったし、何より瞼が閉じかけた目を射貫くなくて」

「私聞いてないっ、アスナさんがあんなに凄い細剣士だなんて!」

「僕だって知らなかったよ。でもさ、噂、知ってるよね?、旧SAOで《閃光》っていう二つ名を持つ細剣使いの少女がいたって話」

「あたり前でしょ。それ聞いて私、細剣選んだくらいだし」

「じゃあこの噂は?、その《閃光》さんの名前を男性が馴れ馴れしく呼ぶと《黒の剣士》に睨まれるって」

「なにそれ?」

「クラインさんにアスナさん達を紹介してもらった時、名前は呼び捨てでいいよ、って言われたんだけどキリトさんがもの凄い目で僕のこと見たんだよね」

「だからなに?」

 

まぁこれだけだとただの彼氏としての牽制とも取れたが行動を共にしていくうちに見えてきたキリトの強さとアスナの司令塔としての能力に「もしかして」が濃くなっていき、決定打は先程のアスナの細剣使いとしての突出した腕前とキリトとのコンビネーションだった。

かの《閃光》と《黒の剣士》も作戦会議では随分衝突していたらしいが実際の攻略戦となると他者では真似できないほどの連携を見せたらしい。

 

「僕達、本当に凄い人達からレクチャー受けてたんだな」

「それにしても、なんでアスナさんが細剣士だって教えてくれなかったんだろ?」

「アスナさんの負担が倍になるから、だろうね」

 

それはキリトと過ごす時間が更に削られることを意味している。

 

「でも憧れるよね、《イグ・シティ》のプレイヤールームなんて。二人で借りれば家賃半分になるんだから、私達もパーティーメンバー全員で一部屋借りられないかな?」

 

無邪気な発言を聞いて猫妖精族の少年は、キリトとアスナは家賃を折半したくて二人で借りるのではない事も、自分が誰にも負けないくらい守る力を手に入れたくてここまで努力している理由もわかっていない様子の火妖精族の少女に対し大きな耳も長い尻尾もぺたり、と垂れ下がり自然と大仰な溜め息をついた。

 

「気付かなかったの?、二人の薬指、あれ、ペアリングだよ……ホント、君って鈍感だよね」




お読みいただき有り難うございました。
《イグ・シティ》に借りた部屋ってあまり登場しないので
かなり適当に設定してます。
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