ソードアート・オンライン《かさなる手、つながる想い》 作:ほしな まつり
本当に、本当に有り難うございます!!!!!
以前、「100」件突破の際も感謝の気持ちで投稿しましたが、更に100人の方が
この作品を気に入ってくださるなんて……芸の無い事ですが……本当に感(激)謝の
言葉しかありません。
そこで今回もまた急遽、感謝とお礼の気持ちを溢れるほどに詰め込んで【大大感謝編】を
用意させていただきました。
直接の登場はありませんが、キリトやアスナと同じ高校に通うオリキャラ男子生徒が
三名でてきます。
(詳しくは今までの作品を振り返って読んでみてください)
では、初心にかえって二人のほのぼのイチャイチャ話をどうぞ。
『桐ヶ谷 和人(キリガヤ カズト)』
姿・形は非情に中性的で全体の印象は細身であるが、その外見に似合わず筋力・
握力・瞬発力等は平均以上の数値を保持している。
特に好奇心が旺盛で、魅入った物(者)への執着とこだわりは他の追随を許さず、
飽くなき追求心に真心を添えて真実、及び深層へ辿り着こうという強い意志を常に
抱いている。
平時においては「うっかりやさん」「のんびりやさん」と評される事が多々あり、
言葉によるコミュニケーション能力の低さを自己評価として下すほど「言わなくて
いい事」をすべらせる場面も珍しくない。
日常の生活能力においては可も無く不可も無く、やろうと思えばそこそこの水準に
達した成果を上げられるが、当の本人にその気がない事と、すぐ傍らに高水準を
難なく披露する存在がいるため、ほぼ依存状態となっている。
以上のように、興味のある事項とない事項への温度差は歴然で、広く他者への
関心が強いとは言いがたいが、反面、心を許した物(者)への愛着心はすさまじく、
諦めることはまずない。
気持ちの良い秋空の下、吹く風は頬を撫でるように通り過ぎ、心地よさのみを残していく。
人目を遮蔽するために低木の茂みを前衛に配置し、その奥の陽当たり良好の草地の上に
寝転んで食後の休憩を取っていたジャージ姿の和人の元へサク、サク、と草葉を踏む足音が
近づいてきた。
目を開けなくてもわかる……と言うより目を瞑っている事でより敏感になった嗅覚が、耳が
足音を捉えるのとほぼ同時に好ましい香りに反応していた。
だからこそ、何の警戒心も抱かずにそのままの状態で香りを堪能し、これから耳にする
だろう優しい声を待ちながらまどろんでしまいたい誘惑にかられた時だ、予想に反した呆れ
声が随分と懐かしい物言いで上から降ってくる。
「こんな所でなにやってるの?……他のみんなはもうグラウンドに戻ってるよ」
あの時はなんと言われたんだっけ?……、と、かけられた言葉の内容よりふとした疑問が記憶を
掻き回す……あれは五十九層のダナクの主街区で……「攻略組のみんなが必死に迷宮区に挑んで
いるのに、なんでのんびり昼寝なんかしているのよ」……とかなんとか……と言う事は、今の
状況に置き直すと……「クラスのみんなが必死にスポーツ大会に挑んでいるのに、どうして
のんびり昼寝なんかしてるの」……あたりだろうか?、と言葉の変換を吟味するあまり瞼さえ
動かさずにいると、更に甘い匂いが強くなり、同時に自分の顔の上を何かが覆って日光を
遮った。
「ホントにもうっ、君ってばこういう場所を見つけるのは天才的なんだから」
随分とトーンが柔らかくなって、望んでいた声に近くなる、と同時に和人の額にぴとり、と
薄い手の平がのっかった。
「気分……悪いの?」
その気遣うような言葉と声音に驚いて、ぱちり、と和人が目を見開く。
目の前には少し不安げな明日奈の顔がもうあと数センチで触れてしまいそうなほど接近して
いた。どれほどの至近距離で見つめてもその美しさは損なわれず、いや、ゼロ距離でその
感触を何度も味わっている身だというのに、目を開けた途端いきなりの彼女の顔には思わず
どきん、と心臓が跳ね上がる。
形の良い眉、長く整った睫毛にはしばみ色の瞳、まっすぐ通った鼻梁の両脇には薄紅色の
柔らかそうな頬、艶やかな桜色の唇の下の細いおとがいに手を伸ばしたいのを懸命に堪えて
「大丈夫だよ」と安心させるように微笑んだ。
「なら、いいんだけど」
ほっ、と息を吐き出しながら、彼女の顔が遠ざかっていくのが少し寂しくて、せめて、と
額から離れていく手を掴む。
「キリトくん?」
一転して今度は不思議そうに首を僅かに傾けるが、嫌がる素振りはないので、そのまま
離さずに「何でそう思ったんだ?」と問い返した。
今日は全校上げてスポーツ大会が執り行われている。
「体育祭」と銘打つほど大がかりな内容は時間的にも予算的にも無理だったが、「球技
大会」とするには経験者が少なすぎて試合にならず、更に男女比に著しい差がある本校と
しては一番無難な運動系の学校行事という事で競技内容はほぼほぼ小中学校の「運動会」の
それに近い「スポーツ大会」という名で落ち着いたというわけだ。
天候にも恵まれ、屋外で身体を動かすには最適の気象条件の下、大したケガ人も出ず午前の
部を消化し終えて昼食休憩を挟み、もうそろそろ午後の部が始まろうかという頃である。
明日奈は問われた内容から口にするべき言葉を選んでいるのか、少し考えてから返答を
ぽそり、と口にした。
「さっきみんなで食べたお弁当、ちょっとキリトくんが苦手な味付けがあったかな?って
思って……」
その指摘に一瞬驚いた表情をした和人だったが、すぐさま眉尻を下げて曖昧な笑みを
浮かべる。
「敵わないな、アスナには……ここだって絶対バレない自信があったんだけど」
それを褒め言葉と受け取った明日奈がふふっ、と笑った。
「キリトくんがこういう場所を見つける天才なら、私はキリトくんを見つける天才だもの」
そう言って、自分の脇に置いてあった水筒を取り出しキリトの前に置く。
「アイスコーヒー、少し飲む?」
「ありがとう、もらうよ。サンドイッチの方はあっという間になくなったもんな」
「うん、みんな美味しそうに食べてくれてよかった」
「オレはいつも食べてるんだからって、伸ばした手を佐々にはたかれた」
「えっ?、そうだったの?……うーん、でもキリトくんにはいつでも作ってあげられるから。
今日は仕方ないよ」
不満げに口を尖らせた和人を見て、明日奈がほわり、と微笑む。
その笑顔を向けられたら納得するしかないのか、と渋面を作ったまま和人は上半身を起こした。
コーヒーをもらうために明日奈の手を解放すれば、すぐに水筒から香ばしい液体がカップに
注がれる。
「アイスなのにいい香りだよな」
「そう?、豆から挽いて時間をかけて抽出してるからかな」
今の時期だと持参する飲み物の温度に悩む所だが、今日は身体を動かすし天気予報でも風は
穏やかと言っていたのでアイスを仕込んできて正解だったと明日奈は笑顔を添えて和人に
カップを差し出した。
受け取った和人は香りを嗅ぐと話題をコーヒーからさっきの昼食のおかずにうつす。
「それにさ、アスナが作ってくれる南蛮漬けならツンッ、てしたことなかったんだけど……
今日のは……誰が持ってきてくれたやつだったのか……」
「ああ、あれね。やっぱりキリトくんにはちょっとキツかったんだ」
「正直、あれは一瞬ウッ、ときた」
「うーん、女子はあれくらい何ともないけど、やっぱり梅干しやレモンと違うもんね。男の
人だとあんまり強いお酢は苦手かな?、って思って、いつものお弁当には一旦煮立てて味を
丸くしてるの」
その説明を聞いて、口に含んだコーヒーをゆっくりと飲み込みながら和人は納得で頷いた。
このコーヒーの渋みと酸味のバランスもいつの間にか和人好みの配分になっている。
注いでもらったコーヒーを飲み干してすっきりとしてから和人は難しい顔で腕組みをした。
「こんな時くらい、大勢で食べるのも楽しいかと思ったけどさ……」
今日はスポーツ大会という事で誰の発案だったか、女子は明日奈に里香、珪子、男子は和人と
同じクラスの佐々井と久里が同席して中庭での持ち寄り昼食会となったわけである。
和人の言葉を受け、明日奈が尋ねた。
「楽しくなかったの?」
「いや、楽しいことは楽しかったけど……やっぱり弁当はアスナの……」
和人の話の途中で校内放送が流れる。
それは午後の部の開始と参加者の招集を促すものだった。
一発目は出し物とも言うべき教師陣による仮装リレーだったが、その次は注目の男女ペア
での二人三脚である。
女子が極端に少ない為に全クラス、女子は全員参加の競技だった。
「アスナ……集合かかってる」
「あ、うん……でもね」
「茅野さんと組むんだろ」
「それなんだけど……」
「ほら、遅れるなんてアスナらしくないし、みんなに迷惑や心配かけるぞ」
「キリトくん……」
「オレなら大丈夫だから」
「キリトくんてばっ」
話を取り合ってくれない和人に痺れを切らして明日奈が声を跳ねかせる。
女子は全員参加だが、男子は女子の人数分しか競技に参加できない。
スポーツ大会の準備が始まった頃、明日奈のクラスでは誰が男女ペアの二人三脚に出るのか、
更には誰が「姫」とまで呼ばれている結城明日奈と組むのかで血を見る騒ぎにまで発展したと
校内ではもちきりだった。
本当のところは公平にジャンケンにすべきだ、とか、くじ引きにしようと、といった意見が
飛び交って興奮の余り鼻血を出した生徒がいたり、最初の立候補者を募った段階で我先にと
あげた手が当たって引っかき傷を作った生徒がいたり、とまあそんな具合だったのだが
結局のところ、クラス内でさえ「姫」とペアを組めるたった一人の男子生徒は嫉妬と羨望の
的になるのだ、その名前が校内に知れ渡ったらどれ程の恨みや嫌がらせを受けるか計り
知れないと悟った明日奈のクラスの男子達は我が身かわいさで次々とあげた手を下ろしたのだ。
逆にそれらの敵意をものともせず、あるいは敵意さえ起こさせないほど説得力のある人間、
という事で「茅野聡」に白羽の矢が立てられた。
前々から時折噂になっていたカップリグに校内はざわめき、様々な憶測が飛び交う中、当日を
迎えたわけなのだが……多分一番面白くないのは和人だっただろう。
クラス単位での参加競技では文句をつけるわけにもいかず、さりとて全く面識のない男子
生徒が明日奈と組むよりは、と思ってみても明日奈の隣に立つ男として周囲からの反発を
加味した上でクラスの男子生徒らが「茅野聡」を選んだと聞けば、常日頃から「もったい
ない」だの「不相応」といった言葉を頂戴している身としては複雑なものがある。
だから本番の二人の姿は見ずにおこう、と昼食を済ませた後、雲隠れを決め込んだのだが当の
明日奈は全く気にしていないのか「クラスの応援、しなくていいの?」とまで聞いてくるの
だから返答に困る事このうえない。
ハッキリと正直に「クラスの応援よりアスナと茅野さんが二人三脚で走る姿なんか見たく
ないんだ」とでも言ってしまえればいいのだが、さすがにそれは子供じみているというか、
言われたアスナが困るだけだろうと考えて和人は「ああ……ううん……」と曖昧な返事を繰り
返し、果てには「やっぱりちょっと調子が悪いかも」などと口走った。
目の前の恋人のそんな態度を観察していた明日奈は空になったカップを受け取り、水筒と
一緒に片付けるとふんっ、と珍しく鼻から空気を押し出していきなり両手を伸ばし、和人の
頬を挟みこむ。
「キリトくんっ」
「うわっ」
突然のスキンシップに明日奈と茅野の二人三脚で思考を巡らせていた和人は驚声をあげた。
そんな和人には構わず、明日奈はずずっ、と顔を寄せる。
「忘れちゃったの?……あのログハウスで言ったこと。私は《現実世界》でもキリトくんと
もう一度会って、好きになるって」
「忘れて……ません」
両頬をむぎゅっ、とされたまま神妙な顔つきで和人は答えた。
まさに今のような状態で二人向かい合ったままアスナは真剣な瞳でキリトを見つめて言って
くれたのだ。
「なら、わかるでしょ。茅野くんはクラスの男子が選んだ相手。私が決めたわけじゃないよ」
「それって……」
「私が選んだ私の相手はキリトくんだけってこと」
そう言って明日奈は目を閉じながら自らの唇を和人のそれにそっと合わせた。
触れただけですぐに離れようとすると、その気配を察知した和人がすかさず明日奈の
後頭部と細腰に手を回す。
「ぁ……ふっ」
そこから先の主導権は簡単に和人に奪われて、いつものように彼の舌が明日奈を翻弄した。
二人の世界に溺れそうになる意識を再びの校内放送が引き戻す。
名残惜しそうに明日奈から離れた和人は視線を合わさずに「ほら、明日奈」と促した。
しかし彼女はその場を離れようとせずに、クスッ、と微笑んで和人の頬を人差し指でつん
つん、と突く。
「なっ……」
「拗ねてるキリトくん……かわいい」
「ちょっ……オレは別に……」
焦る和人を置き去りにして、明日奈は言葉を続けた。
「あのね、私、二人三脚、棄権なの」
「はっ?」
「だから、茅野くんとは出ないの」
和人の頬をちょんちょんと押しながら「さっきから言おうとしてるのに、キリトくん、全然
聞いてくれないんだもん」と楽しそうに口を尖らせている。
明日奈に頬を弄られ続けていることさえ気づかない様子の和人は、思考の働かない頭は
放棄して単純な言葉で思っている全てを表した。
「……なんで?」
「午前の騎馬戦でね、なんだか茅野くんボコボコにされちゃって」
そうは言っても茅野は大将騎でもなければ、あまつさえ騎手でもないただの馬だ。
ところが戦開始の合図と共に敵方の騎馬が一斉に彼の騎馬へと突進してきたのだ。
味方の大将騎が唖然とした事は言うまでも無い。
大将騎を囲んでいた守りの騎馬達が慌てて茅野の騎馬の救援に向かったのだが……よく
見れば、味方とはいえ他のクラスの騎馬との連合軍である、茅野達を助けようとしていた
ようには思えたが、どさくさにまぎれて……「やっちゃってるわね、あれは」とは戦いを
明日奈と一緒に観ていた里香の言だ。
幸いなことに単身、自由に動けた味方の大将騎が敵の大将騎の後ろを取って勝敗は
あっさりと決まったのだが……。
「二人三脚に出られないほどのケガでもしたのか、茅野さん?」
説明を聞いていた和人が心配そうな声で聞くと明日奈は苦笑いですぐさま首を横に振った。
「うううん、騎手が馬を攻撃することは高低差があって無理だから、馬同士がみんなで
団子状態になって足で蹴り合ってただけで大事にはなってないんだけど、茅野くんがね
『このまま二人三脚に出たら、今度は何をしかけてくるかわからないよ』ってすっかり後ろ
向きになっちゃって。『僕は仕事もあるし、育児もあるから、悪いけど棄権させてね』って
騎馬戦が終わった途端、大会本部に言いにいっちゃったの」
「なんだ、それ……」
口を半開きにしたまま固まった和人はもう一度、心の中で「なんだよ、それ」と繰り返す。
明日奈が茅野と二人三脚に出ると知った時からの自分の時間を返して欲しい、とまで思った。
しかし、それならば、と当たり前の考えが浮かぶ。
「なら、他の誰かが茅野さんの代わりに出るんじゃないのか?」
「うーん……普通ならそうなるんだろうけど、誰も代役をやりたがらなくて」
午前中の騎馬戦で敵味方入り交じって襲いかかってきた騎手や馬達の血走った形相は明日奈の
クラスの男子達にすっかりトラウマを植え付けたようだ。
「だから、私も棄権届け、出しちゃった」
そう言って安心させるよう胸に飛び込んできた明日奈を受け止めながら、生真面目な彼女に
しては珍しいことだ、と和人は内で思う。
とは言え自分にとっては嬉しい状況だ、覆すような提案をするつもりはさらさらなく、やっと
気を抜いて腕の中の彼女の感触とその香りを味わった。
「なら、オレと出ればよかったな」
余裕を取り戻した発言に明日奈が瞳をぱちくり、とさせてから悪戯っ子を優しく叱るような
笑みで無言のまま頭を横に振る。
「なんで?、クラスが違うからか?。別にアスナのクラスの助っ人扱いでいいぞ」
そのふざけた提案に明日奈はやはり表情はそのままで頭を振った。
「アスナとなら練習してなくても、何とかなりそうな気がするけど……」
色々な意味を兼ねて「やっぱり無理か」と呟くと、我慢出来なかったふうに明日奈がきゅっ、
と和人の首にしがみつく。
「逆だよ。キリトくんと私が組んだら、練習なんか必要ないでしょ。それこそみんなから
恨まれちゃう」
即席で組んだベストカップルがいきなり優勝をさらったとなれば、これまで練習してきた
ペアからはもちろん、全生徒を敵に回しそうだと言いたい明日奈に「それもそうだな」と
和人は笑って彼女の腰を引き寄せた。
だったら集合要請に従う必要はなくなったんだし、と考え二人三脚に出る生徒達には申し訳
ないと、一瞬心の中で手を合わせてから日差しを浴びてほんのり温かい栗色の髪に顔を埋める。
「なら、もう少し、ここで一緒に……」
その誘い文句を最後まで口にする前に、明日奈の両腕が更に強く和人を抱きしめた。
お読みいただき、有り難うございました。
「100件突破」の「超S級な存在」はキリトにとってのアスナだったので、今回は反対に
アスナにとってのキリトを表すサブタイにしてみました。
色々とキャラ名はでてきましたが、終始登場しているのはキリアス二人のみ、というのは
久々でしたね。
そして企んだわけではないのですが【感謝編】になると一番の被害者になる茅野くん。
心底、もうこの二人には関わりたくないと思っていることでしょう。