ソードアート・オンライン《かさなる手、つながる想い》 作:ほしな まつり
保育園に通うまでに成長した頃のお話です。
ある日の夕方、職場から帰宅しようとしていた明日奈の元にやってきたのは……。
夕方の五時を過ぎ、勤め先の事務所があるオフィスビルのエントランスホールからオートドアをくぐり抜けた明日奈はいつもなら気づかないだろうビルの谷間から僅かに見える夕陽にふと足を止める。
懐かしい色によく似た黄昏の陽射しに目を細めていると、背後から「明日奈先輩っ」と元気の良い声と共に軽やかなヒールの音が近づいてきた。
人の動きが多い時間帯、同じように一日の勤めを終えたと思われるスーツ姿の男性やかっちりとした服装の女性、逆にこれからが本番、と言いたげに気合いの入っている私服姿の若い女性陣といった人混みをかき分けて、明日奈と同じ職場で働く『莉々花(りりか)・リンドグレーン』が肩までのゆるいパーマをふわふわと揺らしながら駆け寄ってくる。
明日奈より十センチほど小柄な彼女は隣に辿り着くと息を弾ませたまま「珍しいデスね」と大きな瞳を向けて来た。
かけられた言葉の意味が分からず首を傾げると、にこり、と笑った後輩は「だって」と続ける。
「うちの職場、フレックスタイム制なのに明日奈先輩ったら必ず五時に退社して一目散に帰っちゃうじゃないデスか。こんな所で立ち止まってる先輩、初めて見ました」
そう告げられて初めて明日奈も「そうだね」と自分の行動に苦笑した。
確かに、よほどの理由がない限り明日奈はいつも同じ時刻に出社をし、やはり同じ時刻に退社をする。
それは明日奈自身の性格も理由の一端ではあるが、根本的な理由は共働きの為、一人息子の和真を保育園に預けているからだ。
時折、思い出したように夫である和人が「たまには俺が送り迎えをしようか?」と言ってくれるが、研究・開発部門で働く彼は明日奈より時間の自由が効く代わりに突発的に呼び出される場合も少なくなく、「お父さんが迎えに来てくれる」と喜んでいた息子をガッカリさせたくなくて和真の送迎は自分の担当だと明日奈はとうに割り切っている。
そのお陰で自然と出社時間、退社時間も定刻になるわけだが……今日に限っては保育園に急ぐ必要がないせいで目に入った夕陽の色に魅入ってしまっていたのだ。
「今日はね、息子のお迎えを私の母がしてくれて、そのまま外食したいって。だから少しのんびり気分だったのかも」
いつまでも出入り口で立ち止まっていては邪魔になるだろう、と、後輩を誘うように端に移動した明日奈は自分が立ち止まっていた理由を莉々花に明かした。
今日の昼間、母の京子から急に時間が空いたので和人の母の翠と一緒に和真と三人で晩ご飯を食べる段取りになった旨の、ほぼ決定事項の確認書のような文章のメールが届いたのだ。
既に翠も了承している話ならば異を唱える理由もなく、自分の結婚後、知らない所で随分と親交が深まっている母と姑の関係はむしろ歓迎すべきものなのだろう、和真のお迎えもしてくれると言うのでその言葉に甘え、すぐに園へ連絡を入れたついでに画面越しに息子へ事の次第を話した時も父親譲りのニヤリ、とした笑みを浮かべていたから安心して二人の母に任せて自分は久々に時間に追われることなく職場からの帰路につこうとしていたのだが……これでは自分の夫ばかりを『のんびり屋さん』と評してはいられないと心中で苦笑いをしていると、目の前の後輩は途端に日本人離れした瑠璃色の瞳を輝かせて明日奈の片腕を両手で捉えた。
「ならっ、今日はこれからご飯食べに行きませんかっ?」
「ええっ?」
「だって明日奈先輩、いくら誘っても食事会や飲み会に参加してくれないじゃないデスか」
不満を表すように軽く桃色の頬を膨らませた莉々花はジッと上目遣いで明日奈を睨んでくる。掴んでいる明日奈の腕に離すまいと力を込め「それに、先輩、お昼ご飯はだいたいいつもお弁当だし」と更に非難の色を濃くした。
毎回誘われる度に申し訳ないと思いつつも二人分のお弁当作りは既に習慣のようになっている明日奈は、夫が出張などで数日間家を留守にする時は職場の女性陣の誘いにのってランチを楽しんでいるのだが、どうやら莉々花としてはその程度の頻度では満足していないらしい。
一時も視線を外さずクリクリとした瞳で懇願の表情をされると職場でも自分のサポートを勤めてくれている彼女の願いを無下には出来ず、明日奈は考え込むように唇をギュッと引き締めた。
息子の事は既に母達に任せてある、そして夫はここ数日帰宅すらままならない程仕事が大詰めを迎えており、今夜は仕事の関係者と食事の予定だ。ここはひとつ彼女のお誘いに応じようか、と唇を動かしかけた時、前の大通りを挟んだ向かい側に建つショッピングビル外壁に取り付けられた大型モニターから流れてくるニュース映像の音に明日奈の意識はひっぱられ、思わず顔を向ける。
明日奈の視線を追うように莉々花もモニターを見上げると「ああ、発表会見、今日だったんですね」と軽く頷いた。
画面には今日の昼過ぎに全世界へと生中継された最新の次世代型VRマシン発表会見の録画映像が映し出されている。
ずらっ、と長テーブルの向こう側に横一列、中央に座している中年の男性は発売元の社長だ……世界中に配信されている事を意識してか常に穏やかな笑みを湛えているが額にはうっすらと汗が滲んでいた。
両隣には販売担当者と開発担当者が控え、更に画面の隅に近い場所に開発プロジェクトのチームリーダーがワイシャツに白衣を羽織ったラフな格好で幾分眠そうな表情を晒している。
今は開発担当者がこれまでの経緯を熱く語っている場面だが、ちょうど隣のチームリーダーの口がふわぁ、と大きく開きかけた。
すると、すかさず画面の端から鋭角な肘だけが映り、彼の脇腹に素早く食い込めば、「ぐぇっ」という小さな呻き声をマイクが拾う。
開発担当者の発言が終わると、そんな緊張感の欠片もない白衣姿のチームリーダーに向け進行役が事前に用意されていた質問用紙を読み上げた。
「では続きまして、今回、開発プロジェクトの中心となった桐ヶ谷和人さんにお聞きします、二十代という若さでチームを率いる才能は、あの茅場晶彦の再来とも言われていますが、それについてはどう思われますか?」
中継カメラのこちら側にいるであろう関係者や取材陣達の視線が痛いほど集中したのが感じられる。
しかし渡されたマイクを左手で受け取ると和人はまさに欠伸をかみ殺した顔で訥々と質問に答え始めた。
「茅場晶彦氏に関しては、ある部分、尊敬もしていますが、オレは彼の後ろを追うつもりはありませんし、彼のようになりたいとも思っていないので『再来』という言葉には正直、違和感しか感じません。だいたいこんな仕事をしてますが、それほど《仮想世界》にのめり込んではいないですよ、《現実世界》に一番大事な人がいますし……」
特に表情も変えず言い放つとまたもや急に画面の横から腕が伸びてきて、和人が握っていたマイクを強引にかっさらいながら囁くように「お前な、全世界にのろけ配信をする気かっ」と密やかながらも鋭い叱責の声がそれこそマイク越しに全世界配信されて会場が生温かい雰囲気に包まれる。
そのやりとりをフォローするように進行役がフレーム外の人物紹介を求めた。
「えっ……と、画面には映っていませんが、桐ヶ谷さんのお隣の方は……?」
固定されているメインカメラが和人の隣を映す事はなかったが、その場の全員が顔の向きを一方向に動かす。
一拍間を開けて渋々といった表情で販売担当者が自分の前に置かれているマイクを持ち上げ、かなり無理矢理な作り笑顔を浮かべた。
「ああ、彼は普段営業部の人間なのですが、今回は広報として動いてもらってるんです。主に桐ヶ谷君のサポートとして」
「つまり、桐ヶ谷さんの付き人のような存在、という事でしょうか?」
進行役の発言を聞いた途端、ぷっ、と吹き出す音と「ええっ」と驚く声が同時にマイクに集音される。
口元を隠しつつふるふると肩をふるわせている和人の隣からはまたもや「勘弁してくれよ」と弱々しい声が拾われていた。
その場の雰囲気を正すように販売担当者が早口で「それで、発売時期についてですが……」と視聴者がもっとも聞きたいネタで本来の会見内容へ軌道修正すると、すぐさま進行役が興味を移す。
そうして会見内容は再び商品の詳細説明へと戻っていった。
「……桐ヶ谷和人って人、初めて見ました」
莉々花が何かを探るような視線でモニターを眺めながら、ふと感想を漏らす。
その言葉を受けてほんのりと頬を染めていた明日奈は「そうだね」と同意を示した。
「あまりメディアに出ない人だから……」
すると今度は逆に莉々花が堰を切ったように興奮気味の口調で明日奈に語り始める。
「そうデスよね、前々から電子新聞やウェブニュースなんかでは騒がれてましたけど、画像とか一切出回ってないし……私、半分都市伝説かと思ってました」
「と……都市伝説って……」
「だいたい私と同じ二十代であれだけのプロジェクトを背負うなんてありえないデスよ。どんだけ天才なんだって感じで……」
「そう?、意外と努力の人……なのかもよ?」
「それにVRマシンの開発なんて絶対ネット中毒の孤独なアブナイ感じの人だと思ってたのに、なにあれっ、見ました?、明日奈先輩っ」
「えっ?、何を?」
「指輪デスよっ、指輪。マイクを持ってた左手の薬指っ。会見場で堂々と。それに全世界中継で『一番大事な人』って……奥さんの事でしょう?」
「そ、そう……かも……ね」
「あーんな事さらっと言っちゃって、しかも結構顔の造りも良いじゃないデスかっ」
「とりあえず落ち着いて、莉々花ちゃん」
鼻息も荒く桐ヶ谷和人について語る後輩の肩を宥めるようにさすると、莉々花がふぅっ、と息を吐き出してしみじみと言葉を落とした。
「……世の中にはいるんデスね、桐ヶ谷和人みたいに容姿と才能と、天から二物を与えてもらってる人って……」
その言葉に肯定も否定も出来ず、明日奈がそっとフワフワの髪をなでていると、莉々花は少し照れたように笑って「そう言えばここにもいました」と明日奈を見つめる。
「ハイレベルな美貌と頭脳を兼ね備えている人」
「……私!?……そんな事ないよっ」
明日奈が慌てて首と手を振って否定を表すと莉々花は半眼になって再び明日奈の腕を捉えた。
「先輩、それ謙遜を通り越して嫌みに聞こえまえから素直に肯定してください」
「それなら莉々花ちゃんだってとっても可愛いよ。綺麗な瞳だし」
「ここだけはどうしてもハーフのせいで北欧系の色なんデスよね」
一層見開いて明日奈を見つめる双眸は深い瑠璃色の瞳に淡緑の虹彩が瑞々しく輝いている。
「それに職場でだって、私の補佐をしながらちゃんと自分の仕事だってしてるじゃない」
「それは私がフォローしやすいように明日奈先輩が仕事を振ってくれるからデスよ。研修で付いた水嶋さんの時はそりゃあ大変だったんデスからっ」
「ちょっと、職場のビルの出入り口で人の悪口言わないでくれないかな?」
ふいに二人の背後から呆れ声が飛んできた。
「ぎゃぁっ……みっ、水嶋さん……な、なんでっ?」
「いや、俺も帰るトコなんだけど……珍しいね、結城がとっとと帰らずに立ち話してるなんて」
「うん、今日は急いで帰らなくても大丈夫なの」
「それで莉々と一緒に俺の悪口言い合ってたのか。同僚なのにひでぇ」
「水嶋さんこそ人聞きの悪い事、言わないでください。だいたい悪口なんて言ってませんから。私は真実を明日奈先輩に言っていただけデスっ。それに私の名前は『莉々花』デス、勝手に省略しないでっていつも言ってますよね」
「日本じゃ莉々花でも、むこうでのファーストネームは『リリー』なんだろ。いいじゃないか、呼びやすいし」
「明日奈先輩だったらむしろ呼ばれたいデスけど、水嶋さんは駄目です」
「お前って、ほんとーに結城のこと好きだよね」
「そうデスっ、明日奈先輩は綺麗だし、優しいし、仕事も出来る私の憧れの先輩デス」
勢い込んで言い切った後輩の言葉に明日奈が苦笑を浮かべる。
かたや同僚である結城明日奈との差をハッキリと断言された水嶋は鞄を持っていない方の手でずり落ちそうになる眼鏡を軽く直した。
長身とは言いがく、明日奈よりこぶし一つ分ほど高い背丈だが小顔のせいで均整の取れた体格をしている。短く刈り込んだ髪とハッキリとした目鼻立ちから実年齢より若く見られる事が多く、口調の柔らかさも手伝って人受けは非情に良いのだが、本当に気を許した相手にはかなり砕けた言葉使いになる癖の持ち主だ。
「莉々花ちゃん、水嶋君の業績ってうちの事務所のトップクラスなの、知ってるよね?」
「でもでもっ、お陰で研修期間中、水嶋さんの仕事量が膨大すぎて、私、朝から晩までつきっきりだったんデスよっ」
「それは、研修中のお前の要領が悪かったせいだから」
そう言い返されて莉々花は悔しそうに口を噤んだ。その表情を見て再び後輩の頭を撫でながら僅かに眉尻を下げた明日奈も、莉々花がまだ研修生だった頃、水嶋の補佐に付くのは大変だろうな、と思っていた一人である。確かにあの時はいつ見ても二人は一緒だったが、とにかく水嶋の指示についていくのが精一杯で余裕など全くなかった莉々花に対し、水嶋の眼差しは意外にも新人の指導役といった厳しいものばかりではなかった事に気づいていたのは明日奈と所長くらいだろうか。
もっと素直に好意を示せばいいのに、と思いながら入社当時から色々と世話になっている同僚のフォローを試みる。
「水嶋君はね、入社したての頃、既に結婚が決まって式の準備で忙しくしていた私を気遣ってくれたし、出産前後、一年以上も仕事を休んでしまった時も代行を引き受けてくれたり、とっても親切で頼りになる人だよ」
いくら大好きな先輩からの言葉でも、これだけは受け入れられない、と言いたげに噛みつきそうな顔で後輩から睨まれている水嶋はひらひらと手を振って陽気に応えた。
「あれは結城の結婚披露宴に呼んでもらった事でチャラどころかお釣りがくるくらい人脈が広がったから気にしなくていいって。逆にこっちが感謝したいくらいだよ。あんなハチャメチャな披露宴パーティー、初めてですっごく面白かった。年齢も職種もてんでバラバラの人間があれだけ集まるって君達夫婦の恐ろしさが身に染みたけどさ」
喜ばせたのか怖がらせたのか判断のしづらい感想をもらい、明日奈はひくり、と頬を引きつらせる。
しかし水嶋の発言に敏感に反応したのは明日奈だけではなかった。
「ええーっ、水嶋さん、明日奈先輩の結婚披露宴にお呼ばれしたんデスかっ!?、なら先輩の旦那さんも見たことあるんデスよね?」
「まあ、そりゃあね」
「どんな人なんデスか?、明日奈先輩、いくら聞いても教えてくれないんデス。職場では旧姓のままだから、私、名前すら知らないのにっ」
「どんなって……まあ、この結城と結婚するくらいの御仁だから……」
「やっぱり天から二物を与えられてるような人なんデスか?」
ぐいぐいと迫ってくる莉々花に気圧されるように半歩後ずさった水嶋は質問の内容が飲み込めず「はぁっ?」と間の抜けた声を発する。
もどかしさを両手の握り拳にこめて上下にシェィクした後、莉々花は「あれデスよ、あれっ」と目の前のショッピングビルの上方を指さした。
大型モニターには未だ会見の録画映像が流れている。
ふと画面端の黒髪の人物に気づき「おや、珍しい」と小さく呟いてから、再び「リアルで会見なんて今時珍しい事をするなぁ」と言葉を重ねた。
そこに明日奈が「そうだね」と微笑む。
つられて莉々花もうんうん、と首を動かした。
「普通は《仮想空間》に用意した会見場所へ関係者や取材陣がダイブしてそのまま流すのが主流なのに、今日の会見場所は……うわっ、あの最高級ホテルだしっ」
更に興奮度を高めた莉々花の瞳が一層キラキラと輝いて画面下隅に表示されているホテル名を見つめている。
それは、今、明日奈達がいる場所から電車で二区間先にあり、古くから国内外の要人を何度も迎え入れてきた日本を代表する老舗ホテルだった。
「すごい……私、入ったこともないデス。あのホテル、お部屋も素敵でルームサービスのお料理ももの凄く美味しいって、友達の間でも憧れのホテルなんデスよ」
「……だってさ、結城」
水嶋から意味ありげな視線を送られるが、明日奈は淡い微笑みでスルーする。
しかし莉々花は夢から覚めたようにパッ、と顔を上げると水嶋に向かって眉を吊り上げた。
「じゃなくてっ、私は明日奈先輩の旦那さんの事を聞きたいんデス」
再度、ピシッと人差し指で大型モニターに映し出されている桐ヶ谷和人をロックオンすると、真剣な表情で水嶋に向かって「あの人、桐ヶ谷和人なんデス」と唸るような声で告げる。
それに反してさして感動することもなく「ああ、そうなの」と軽い反応を見せると、それが気に入らなかったのか莉々花は「水嶋さんっ」と声を跳ねかせた。
「知ってますよね?、桐ヶ谷和人。都市伝説級の人デスよっ」
「……だってさ、結城」
微笑んでいる明日奈の眉尻がほんの少し困ったように下がる。
そんな大好きな先輩の表情の変化には気づかず、莉々花はまくしたてた。
「私、今さっき初めてあの映像で顔を見たんデスけど、想像してたより何倍もカッコイイし、しかもあの若さでプロジェクトリーダーなんデス。『天は二物を与えず』って言葉がありますけど、ちゃっかり『二物』持ってる人じゃないデスか。だから明日奈先輩の旦那さんもそんな感じなのかなっ?、て……」
「ああ、なるほどねぇ……うーん……」
水嶋は口の端をひくひくと痙攣させながら何かを懸命に堪えて真面目ぶった表情をキープしつつ思考を巡らせた。
結城明日奈の披露宴パーティーを思い出してくれているのだろう、と次に出てくる言葉を期待に満ちた表情で待っている莉々花を見下ろし、何かを内包した意味ありげな笑みを贈ってから一言一言を言い聞かすようにゆっくりと告げる。
「莉々、残念ながら、結城の旦那さんはね……『三物』持ってる人、だな」
「ええーっ!」
莉々花が場所も忘れて叫んだ時だ、突然、明日奈の背後に人影が現れたかと思うとギュッ、と彼女を後ろから包み込むように腕ごと両手で抱きしめた。
いきなり身体の自由を奪われた明日奈は一瞬、息を飲んで硬直したがすぐに大声をだそうとして寸前でその声を飲み込む。
自分の髪に押し付けられた鼻先、背中に密着している細身ながらも芯のある身体つき、守るように自分の手に絡ませてくる指、それら全ての感触は鼻腔をくすぐる背後からの匂いと共に明日奈の一番大切な人のものだったからだ。
お読みいただき、有り難うございました。
が……すみませんっ、ついにやってしまいました……かっ、書き上がらなかったデス(平身低頭!)。
落とすよりはマシかと思い、前編と称して切りの良い所まで投稿させていただきました。
もともと前後編の構成で、とは考えていなかったのでほとんどイチャコラ出来ず
申し訳ありません。
次回、後編まで見捨てずに待っていて下さいっ。