ソードアート・オンライン《かさなる手、つながる想い》   作:ほしな まつり

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ようやく助っ人が「たち」になる後編です(苦笑)
アスナのハイスペックぶりを知って、やる気に満ちている
トウマ(桐ヶ谷和真)と仲間達はいよいよボスモンスター戦に挑みます。


最強の助っ人……たち・後編

「うーん……みんな、無茶するなぁ……」

 

困っているような内容とは裏腹にその口調はのんびりとしていて、そんな後方から聞こえてきたアスナさんの声に俺はボスモンスターと対峙したままの体勢でクスッ、と同意の苦笑いをこぼした。

確かに、これは文字通りメンバー全員が「思う存分やりたい放題」という戦い方だったからだ。

アスナさんの桁外れのステータスを頼りに俺達はとにかく攻撃して、攻撃して、攻撃しまくっている。当然向こうからの反撃もあるのだが、この場に居る全員が完全に大船に乗ったつもりになっていて、いつもより防御を気に掛けていないのは明かだった。

確かに敵の攻撃パターンも一発でHPが消し飛ぶような物はないみたいだし、アスナさんの回復魔法はポーション並みに効果絶大だから気が大きくなるのもわかるけどね、と自分を含めかなり強引な戦闘に持ち込んでいる仲間達を見て知らずに軽い溜め息は漏れるが、それでも今まで一緒にALOを楽しんできたメンバーだけあって連携が崩れることはないし、何より皆、本気で倒せると思ってラスボス戦に挑んでいる。

けれど相手も今までの雑魚モンスターとは比べものにならないレベルで強いし、いくらこっちのHPやMPが補充され放題状態でも向こうのHPがほとんど減りを見せず時間ばかりが過ぎていて、本来なら弱気な憶測が首をもたげそうだが俺達は誰一人として諦めの色を見せることはなかった。それどころか今、このメンバーで戦えるこの時間を心から楽しんでいて、必死な形相の中にも全員が瞳を輝かせ口の端に笑みを浮かべている。

多少無謀な挑戦だったが、こんな展開になれたのもアスナさんのお陰、と後方支援の一環なのか涼しげな声援まで送ってくれている彼女の期待に応えるべく気合いを入れて風属性魔法の大技、サイクロン・ソードをお見舞いすると顔面にヒットした後、突然ボスモンスターがうずくまった。見ればHPバーの一本がようやく消滅して、ついに最後の一本となる。

となるとこれは形態変化の準備動作か、と全員が固唾を呑んでボスモンスターを見つめていると頭部を覆っていた帯状の布がはらはらとほどけていき、ダークカラーの頭髪が徐々に現れて……と認識していた俺は大きく目を見開いた。多分メンバー全員がほぼ同じ反応だっただろう。髪の毛と思われたソレは不気味にうねるたくさんのヘビだったのだ。

 

「うぇっ……きもわるー」

「メデューサ的なやつか?」

「見たら石になるっつー、あの?……ってか、もう全員見ちゃってるだろ」

 

期待充分に現れておいて、見たらNGのヤツってどんだけセコい設定なんだ……さすがにそれはないだろうと全員慌てる事なく蛇頭を晒して立ち上がるボスモンスターに警戒する。

 

「だいたいメデューサって女だろ?、あのモンスターどう見ても女には見えないし」

「ターバン巻いてたからインドの蛇使いとか?……蛇使いが出てくる話、なんかあったかなぁ?」

「ヤマタノオロチって可能性もあるんじゃね?」

 

各々が思いつく蛇関連の神話・伝承を口にする。

そうなのだ、このALOのクエストは古今東西、無国籍で昔語りやメジャー小説のごった煮を元に生成されるので、蛇ひとつで……いや、実際にはドレッドヘアよろしく数十匹が今までターバンの中で抑圧されていた胴をほぐすように生き生きと蠢いていて、こいつらの出典元はいくつも浮かんでくる。

元ネタがわかれば少しは敵の出方が読めるのだが、俺達が脳内で蛇伝承を検索している間に時間切れを告げる攻撃魔法が蛇達の口から弾丸のように飛び出して来た。

 

「しょえっ」

 

俺の一番近くにいたコータが奇妙な声を上げつつ咄嗟に横に飛びすさる。いくらアスナさんの存在があっても真正面からまともに攻撃を受ける度胸はないらしい。今までコータが立っていた場所にはねっとり感のある紫色の液体がこびりつき、じゅわっ、と煙を上げていた。

 

「えっと……硫酸的なやつかな?」

「えーっ、これ浴びたら溶けんのかよっ!?」

「ビジュアル的にも受け入れがたいダメージだ……」

 

次々に飛んでくる紫色のスライム唾弾をかわすだけで全員が精一杯になってしまい、なかなか攻撃に転じる隙が生じない。だいたい見るからに痛そう、熱そう、HPすんごく減りそうと三拍子揃った毒系魔法弾だ、痛みこそ感じない《仮想世界》とは言えかなりの衝撃と不快感は受けるに違いなく、俺も治癒魔法はそこそこ使えるがこの攻撃を避けつつ仲間のケアなど超高速詠唱が出来なければ無理なので、ここは自分を含め己の対処能力で乗り切るしかないだろう。とりあえずタンクの奴らに攻防ラインを守ってもらうがこのままではメデューサもどきボスモンスターの最後のHPバーを削るべく接近戦に持ち込む機会は永遠に来ない気がしてくる。

それでもスライム弾をかわしながらその合間になんとか遠距離攻撃をしかけてみるが、その程度ではHPが1ミリも減る気配がなく、それどころか攻撃体勢に入ったタイミングで飛んでくる唾がクリティカルではないものの飛沫で俺達の装備を溶かしていく。自らの装備が変色し僅かに上がる煙から異臭が漂った。

 

「これ……この煙……麻痺毒だっ」

 

さっきまで小物モンスターから散々かがされていた麻痺成分を含んだ煙に俺達は咄嗟に鼻を手で覆う。どうやらプレイヤーの装備品か装着品、もしくは直接皮膚に接触した場合のみ麻痺毒が発生する仕組みらしい。ここで身体の自由を奪われたらいくらアスナさんが付いているとはいえ、さして時間をかけずにゲームオーバーの結末を迎えるのは間違いない。今回のクエスト攻略の助っ人を頼む時、アスナさんには後方支援のみで絶対に細剣を握らないようお願いしてあるから正真正銘、自分達で活路を開かなければならない崖っぷちの局面だ。

全員がこれまでとは表情を一転せて状況を打破する糸口を探している。前線を後退させ持久戦に持ち込むべきか、全員で一気に攻め込むべきか、どちらがより勝算が高いかを誰もが判断しかねていた時だ、後方から少し申し訳なさそうなアスナさんの声が響いた。

 

「えっと……ごめんね、さすがに私のMPもそんなに保ちそうになんいだけど……」

 

全員のケアをたった一人で担当してくれていたのだ、なんとなくアスナさんのHPやMPは無尽蔵なのかも、と錯覚していたのは俺だけではなかったようでその場の悲壮感に拍車がかかる。

とは言え平均的な数値から見れば彼女のそれはほぼ底なしと表現して問題ないのだろうが……。

とにかく、そういう事なら必然的に持久戦の線は消え、俺達は覚悟を決めて各々の武器を握る手に力を込めた。

それでも、と闇雲に全員が突っ込んでも玉砕は目に見えているから少々の小細工はさせてもらおう。

 

「俺を含めたフォワードが囮になってヘビの気を引くから、その間に一番敏捷力の高いコータがアイツに近づいて……」

「ふぉめーん、とーまー」

 

この緊迫場面に思いっきり不似合いな力の抜けた声がすぐそばから弱々しく流れてきた。訝しげに声の主へと振り返れば両手で鼻を押さえたコータが涙目で俺に何かを訴えている。

 

「はな……もげそう……」

 

はあああっっっ!?…………そうだ、そうだった、このグループで唯一の猫妖精族(ケットシー)のコータは当然敏捷度ナンバーワンだが、同時に嗅覚もナンバーワンで……さっきまでの雑魚モンスターからの麻痺毒は無臭だったのだが、このヘビからのスライム唾弾の着弾地点からは汚臭とも言える臭煙が立ち上っていて、俺達ですら臭いに辟易して顔をしかめるのだからコータに及ぼす効果は絶大だった。

麻痺状態からの回復魔法ならばアスナさんにお願いできるが、自らの嗅覚が拾ってしまう臭いまではどうにもならない。まさかケットシーの動きを封じる意味もあっての悪臭効果付きスライム唾弾なのか?、と妙な方向に深読みしそうになる思考をどうにか振り払う。

となると全員で波状攻撃をしかけるしか……俺と同じように戦況を見つめていたリーダー格の仲間に視線を走らせると、どうやら同じ事を考えていたようで、俺に向け小さく頷いてから一陣、二陣とメンバーへ再構成の指示を飛ばす。後方のアスナさんが一瞬にして全員のHPを回復させ、続けて麻痺状態からの復活呪文を唱え終わると自然と全員がメンバー同士の顔を見回した。

どうあがいても最終局面、このメンバーで戦えるのももしかしたら最後かもしれない。程よい緊張感と高揚感が全体を包む。

互いが互いを鼓舞し合うように挑戦的な視線を送り合えば誰もがその瞳に闘志を宿し不敵な笑みを浮かべた。

最後に大きく息を吐き出し、視線を動かして倒すべき敵を睨み付ける。

最初は記念クエストみたいな軽い気持ちで挑戦した戦いだったが、もう誰一人として、負けてもいい、なんて思っていないことはメンバーの顔を見ればわかりきっていて、その一体感を胸に吸い込んでから「突撃っ」と鋭い一言をきっかけに第一陣の俺達は走り出した。

コータ程ではなくとも先駆けメンバーは俺も含めて敏速に動ける奴らで構成されていたが、それでも完全に弾を避けきることは出来ず、飛沫がHPを少しずつ削っていく。俺の剣でも弾に当てる事は出来るが、粘着成分が含まれているせいか跳ね返したり、叩き落とす事が不可能で、逆に刃に付着したまま耐久値を奪っていくから、これはもうひたすら避け続けるしか防御の手段がない。

そうやって大方の蛇達がすばしっこく動き回る俺達一陣に向け執拗な攻撃を続けている間に二陣が数人がかりで一匹ずつ確実に蛇の頭数を減らしていこうという作戦なのだが、蛇髪の多さのせいでなかなかボスモンスターのHPバーが減っていかないのが現状だ。

そもそも蛇頭ひとつを落としてもボス本体を倒さなければ、一定の時間が経つと再生してしまうのだから段々と俺達の焦りは色濃くなっていって、それでもなんとか敵に立ち向かえているのはこの過酷な状況下で全員のHPバーが常にイエローを示すことのないようアスナさんがヒールを頑張ってくれているからだろう。

さすがラスボス、と言うべきか、スライム弾にかすると直撃ではなくてもかなりのHPを持って行かれるから、先程のようにHPがある程度減るまで放置ではなく、こまめに一人一人面倒を見てくれている。その姿はまるで妹の芽衣が昔大好きだったアニメ番組にでてくる、踊るようにステッキを振りながら魔法をかける妖精のようだ。

それでも攻撃を交わしながら常に蛇達の注意を引き付ける為に跳躍し続ける俺達、再生の間を与えないよう猛攻を続ける仲間達、なかなか活路を見いだせず疲弊していくのはアスナさんも同じだったようでほぼ全員のHP量が安定したのか、束の間、ふぅっ、と桜色の唇から気の抜けた息を吐き出したその時だ、ボスモンスターの蛇髪たち全てが一つの意志を持ったように一斉に頭をもたげ、口を開けた。

 

「全員回避!」

 

ヘビを攪乱する為、メンバー同士の間隔はかなり広くとってある。各々が自己判断で回避行動に移ろうとすると、そんな有象無象など眼中にないと言いたげな蛇達の顔が俺達の存在など全くの無視で不気味なほど同じ方向に向いた。

その蛇眼の視線が集中する先は…………。

 

「アスナさんっ!!」

 

まさか最後方にいるヒーラーの位置まで攻撃が届くと思っていなかった俺達は完全に油断しきっていた。

気を緩めていたアスナさんの反応が一瞬遅れる。

まずいっ、全ての蛇からあのスライム弾を浴びたら、いくら無効化のアクセを装着しているアスナさんでもHPがレッドゾーンに食い込むのは確実で……間違いなく最悪の展開だ。

俺の焦りをあざ笑うかのように容赦なく蛇達の口から一斉にスライム弾が放たれる。

俺達メンバー全員がスタンしたように一歩も動けず彼女に向かって一直線に飛んでいくつもの魔法弾をただ見つめることしか出来ずにいると、弾が近づくにつれ、まるでスローモーションのようにアスナさんのアトランティコブルー色の瞳が驚きで徐々に大きくなっていく。

けれど蛇達から放たれた多弾が一点に集結して大きなひとつの魔法弾となり、その大きさに俺達の視界に映るアスナさんがすっぽりと隠された時だ、いきなり真っ黒な突風が彼女の前に滑るように割り込んできて巨大な葡萄ゼリーの塊でも切るかように一刀で弾を分断した。

続けて聴覚と視覚に届いたのは、ジュゥッ、と何かが焼けるような音と同時にはじけ飛ぶような細かい光の粒、そしてその場を覆い隠す程の煙と共に焦げ臭い匂いが辺り一面に漂う。

思わず顔をしかめた俺がすぐさま風魔法でその大量の煙と焦臭を追いやれば、流れていく煙の向こうからはアスナさんの嬉しげな笑顔とは真逆に固い表情のまま、それでも彼女にピタリと寄り添っている黒衣の影妖精族(スプリガン)が現れた。

突然の出来事に俺達の思考はもちろん、ボスモンスターさえ現況に戸惑っているのか、この場の全員が固まる。

しかし、その凍り付いた無音の時を溶かしたのは場違いな程柔らかなアスナさんの声だった。

 

「ありがとう、キリトくん」

 

ほんの少し前までの驚きと焦りの張り詰めた空気は霧のように薄らいでいって、そこに存在するのは互いの絶対的な信頼感しかない。HP回復効果さえあるのではないか、とメンバー達が密かに噂しているアスナさんの笑顔を一身に受け、強張っていたスプリガンの表情が小さな溜め息と共に崩れた。

 

「……オレと一緒じゃなきゃ助っ人はやらないんじゃなかったか?」

 

少し咎めるような視線にアスナさんは笑顔をキープしたまま僅かに眉尻を下げる。そこでようやく俺はあわあわと多種多様な感情が入り交じって震えが止まらない口からどうにか声を絞り出した。

 

「とっ……キ、キリトさんっ」

 

さっきの蛇頭達同様、相手にするつもりもない十把一絡げの雑魚を見る視線だけがチラリ、と一瞬だけこちらを射貫く。

 

「お前との話は後だ」

 

アスナさんと同じく青年型に移行してあるキリトさんのアバターはそれでも《現実世界》とは違いアスナさんとの身長差があまりない。だからこそ、なのだろうが未だ居心地悪そうに戸惑いの色を浮かべているアスナさんの額へと頷くように頭を下げれば、すぐにこつん、とキリトさんの額がくっつく。その僅かな接触にも反応するアスナさんの声は妙に色を纏っていて、それで幾分気が晴れたのかキリトさんの声が穏やかなものに変化した。

 

「大体の事情はユイから聞いてる。で、そのユイからなんだけど、芽衣がベッドから落っこちて頭にたんこぶ、こしらえて泣いてるって」

「えっ?」

「ええっ!」

 

アスナさんとオレが驚嘆の声をあげたのはほぼ同時……でも、その中身は微妙にずれている。

可能だったらあの二人の間に割って入り声を大にして「ちょっと待ったっ」と会話を遮りたいところだが、残念ながらそんな度胸も勇気も1バイトだって持ち合わせていない俺はただ酸欠の魚みたいに口だけをはくはくと動かした。

周囲の困惑と疑問と畏怖をこね合わせた理解不能の状況に陥っている空気をものともせずアスナさんはいまだキリトさんとおでこをこっつんこしたまま、少しおろおろとしながらも上目遣いに黒ずくめのスプリガンへ「どうしよう」と助言を求めている。一方、キリトさんは慌てることなく、それどころか少し悪役ぶった笑みさえ浮かべて顔を上げると手にしていた長剣を勢いよくザクッと足下に突き立てた。

 

「アスナはすぐにログアウトしろよ。その代わり…………」

 

キリトさんが今度こそ身体ごと向きを変えて堂々と俺達の視線を正面から受け止める。

 

「こいつらの助っ人はオレが交代するから」

 

トレードマークと言っていいキリトさんが愛用している黒のロングコートの裾がはためき、同じく真っ黒な少し長めの前髪がふわり、と風に煽られた。と、その闇色の奥からは今の今までアスナさんを見つめていた色と同色とは思えない底光りする瞳の黒輝がメンバー全員を射殺すように突き刺さってくる。

なぜだろう、俺達が今まで剣を向けていた先にはボスモンスターがいたはずなのに、今度は背後から正真正銘の最強モンスターが現れた錯覚に囚われているのは……。

キリトさんが出現してから凍結したままの俺達と蛇頭モンスターを見事にスルーしたままアスナさんは、ぱっ、と花咲くような笑顔を取り戻し、近所の八百屋さんまでおつかいを頼む気軽さで「ホントに?、じゃあ、お願いしちゃおっかな」と言うが早いかワンドを掲げて残りのMP全てをほぼ使い切ったのだろう、一瞬で俺達全員のHPに無詠唱の回復魔法をかけた。その手際を間近で見たキリトさんは目を見開いたがすぐに微笑んで「相変わらず見事なもんだな」と賛辞を送る。

その言葉に微笑で応えてからアスナさんは素早く短杖を仕舞うと左手を振ってウインドウを開いた。今にもログアウトボタンを押しそうなアスナさんに向かってオレは「あー……っ、あー……っ」と全く意味を成さない間延びしたような唸り声を吐くのが精一杯だが、心中では必死に母を引き留めようと心の声を発している。

 

『ちょっ、ちょっと、待ってっ、母さんっ。落ち着いてよーっく考えてみてよっ。あの芽衣だよっ。そりゃあ夜中にベッドから落っこちるのなんて日常茶飯事だし、それに気づくのがユイ姉なのもいつも通りだけど、芽衣はたんこぶくらいで泣いたりしないからっ。むしろ落ちた事すら気づかず、そのまま寝てるに決まってるからっ。父さんの言うままにログアウトしないでっ。俺達を見捨てないでっ』

 

多分、オレが事態の真相に気づいている事をキリトさんは見抜いている。だからこそ、オレがアスナさんを呼び止める言葉が出せないよう、もの凄い目でこちらを睨んでいるのだろう。オレの必死の視線だけの訴えをアスナさんは隣にいる最愛の存在に気を取られていて気づかない。

これまでの経緯、この状況、どう考えてもキリトさんが俺達に対し好意だけで助っ人を買って出てくれたはずはなく、ここでアスナさんという制御装置的存在がいなくなったら……終わる……色々な意味で。

だいたいさっきの一振り……あれだけの多弾が集中して一気に質量を増したはずのスライム弾をたったの一振りで両断したキリトさんの剣には俺達が切ることを躊躇っていた原因の粘つきが一欠片も付着していない。多分、剣を振り下ろす速度が尋常ではないレベルなのだ。だからあのスライム弾でさえ剣に絡みつく前にその摩擦熱で焼け焦げ、蒸発してしまったのだろう。閃光を目にした後に漂った焦臭と煙に麻痺毒の成分は含まれておらず、純粋な消滅に伴うエフェクトだったのだと分析して、助っ人としてはアスナさんと同格に頼りになるが、今ひとつそれを素直に喜べない自分の直感は間違っていない、と混乱していた思考がようやく落ち着きを取り戻した頃には既にアスナさんの姿はメンバー達に手を振りつつ徐々に光の粒に包まれている。

その隣では少し名残惜しそうな眼差しでログアウトしていくパートナーを見送りながら、そっと「オレもすぐにそっちに戻るから」と囁いているキリトさんの姿。しかしアスナさんの姿が完全に消滅してしまうと、一変してスッと冷徹さのオーラを纏ったキリトさんが真っ直ぐオレに視線を合わせてきた。

 

「さて、トウマ……オレに何か言いたいことは?」

 

そう問いかけられると逆に何から話していいのか順番を決めかねてしまい、迷いの思考を置き去りに引きつった口元からは意志とは関係ない言葉がこぼれ落ちる。

 

「えっと……久しぶりだね、キリトさん」

「そうだな、《この世界》で会うのも、だが、《現実世界》でもオレが忙しかったのは知ってるよな?」

 

それはもう、と重々承知を示すため小刻みに頭を上下に振り続ければ、いつの間に硬直状態から抜け出したのか背後からペタリ、と俺の両肩に手を乗せたコータがおぶさるように張り付いて、小声で震える口を耳元まで伸ばしてくる。

 

「トウマ、あのスプリガンって……もしかして…………」

 

そっか、アスナさんほど顔の造作は似せていないけど、やっぱりアバターの持つ雰囲気でわかるのか……いや、違うな、コータはそこまで察しの良い奴ではなかったはず。だとすればアスナさんに対するあの密着度合いからか、はたまたアスナさんが身を委ねきっていたからか、総合して他の介在を許さない二人だけの鉄壁領域を展開していたせいか。

いずれにせよコータの推測は間違っていない事を振り返らずに軽く頷くだけで伝えると、途端に俺の背中に向かって「うわっ、マジで親父さんかよ……」と驚きとも恐れともとれる呟きを落としてくる。

一方、キリトさんの方は俺を盾にしつつ恐る恐るも顔の半分だけを出して親子のやりとりを傍観しているケットシーの正体など気にもしていないのだろう、少しじれた様子で再び「トウマ」と俺の名を呼んだ。

 

「さっきのアスナへの攻撃、受けていれば確実にHPはレットゾーンだったな」

 

その言葉にオレの混迷していた思考はもちろん、アバターの心臓さえピタッ、と止まる。

そうなのだ、キリトさんはアスナさんのHPがレッドゾーンになる事を絶対に許さない。それは俺が初めて《仮想世界》にダイブした時に申し渡された何よりも優先される重い約束だった。

 

「……ごめん……」

 

俺だってあの距離までモンスターの攻撃が届くなんて夢にも思わなかったのだ。けど、そんな言い訳は口に出来ない。アスナさんはたとえ自分がリメインライトになったとしても気にせず最後まで諦めずに戦ってね、と言ってくれていたが、これは俺がアスナさんと一緒に《仮想世界》を楽しむ為の大原則。

俺はキリトさんの目を見つめ返してもう一度謝罪の言葉を口にした。

 

「ごめん、キリトさん……俺の考えが甘かった。モンスターの情報収集も十分とは言えなかったし」

「でもっ、それは時間が足りなかったからで……」

 

コータが俺の肩越しにフォローの言葉をくれるが、その気持ちだけ有り難く受け取って片手で奴を声を遮断する。

 

「そもそもキリトさんに内緒でアスナさんを巻き込んだのだって謝らなきゃ、だし……」

 

今夜までは父さんが帰宅しないと踏んでいた事自体が甘かった……この人が予定通りの日数をかけずに早めに仕事を終わらせる可能性なんて充分考えられたのに。

あの時は母さんの助っ人参戦の了承をもらって、かなり浮かれてたからそこまで考えが及ばなかった……と、自分の迂闊さを悔いているとキリトさんがイライラとした口調で追い打ちを掛けてくる。

 

「ああ、そうだな。やっとアスナに会えると思っていたのにログイン中だし、しかも《A.L.O》でお前の助っ人だって?、オレは何も聞いてない」

「それについては本当に……何と言っていいか……けど、どうしてもヒーラーの助っ人が欲しくて……今回だけは……このクエスト挑戦だけは特別なんだ」

 

俺だっていつものお遊びクエストだったら、自分の母親まで引っ張り出したりはしない。今回はこのメンバーで挑む記念のクエストだったから、可能な限り善戦できる体勢で望みたかったんだ…………けど、そんな事をキリトさんにわかって欲しいと言うのは虫が良すぎる、と思い直した時、キリトさんが少し諦めたような呆れたような溜め息を吐き出してから一転、柔らかな声と眼差しで「わかってる」と俺の頭を撫でるように言葉を落としてくれた。

 

「基本、アスナは一人だと助っ人は受けないしな。それにユイからも大体の事情は聞いてる……しばらくこのメンバーでは集まれないんだろ?。そういう事ならアスナは絶対加勢するだろうし…………昔、やっぱり同じようにアスナに助っ人を頼んできたギルドリーダーの女の子がいたよ。ここに自分達が一緒にいたっていう証を残したいって言ってな……」

 

懐かしむような瞳の色はここではない遠い過去を映していて、泣きそうな笑みを浮かべたキリトさんは、ザッ、と地面に突き立てていた長剣を片手で軽々と引き抜くと、それをくるり、と回して肩に担ぐ。それから周りのメンバー達にも伝わるように低く力強い声を響かせた。

 

「一回だ」

「えっ?」

「一回だけ、チャンスを作ってやる」

「キリトさん……」

「オレがあの蛇達の頭を斬り落とすから全員で突っ込め」

 

あの数の蛇頭を一人で斬り落とす…………そんな事が可能なのか、問いかけるだけ無駄だと思わせる自信に満ちた笑み。キリトさんがこの顔をする時はただ信じればいいって事を俺は幼い頃から知っている。

キリトさんの言葉を聞いて静観したままだった仲間達が改めて武器を持ち直し、瞳を期待とやる気で輝かせてボスモンスターに身体を向けた。何の躊躇いもなく自分の後を任せたアスナさんの信頼の高さと、何より集中魔法弾を一刀両断したその剣技を見てキリトさんの言葉を疑う人間は誰もいない。

メンバー全員が攻撃の姿勢に入ったのを見て最後にキリトさんが少し意地悪気に笑いながらエールをくれた。

 

「蛇どもが再生する前に勝負を決めろよ」

 

それからスタートダッシュの為、俺達より前線位置に出たキリトさんがゆっくりと膝を落とし剣を脇構えで水平に伸ばす。スプリガンという比較的小柄な種族でありながらキリトさんが操る長剣は見た目以上に重いから筋力値がかなり高くないと出来ない構えだ。計算しつくされたように綺麗なバランスを保っていて久々に見る剣士としての姿に溜め息が出そうになる。それは他の奴らも同様のようで、キリトさんが剣を構えると皆の視線が集中したのがわかった。しかし実は更にもう一段階上の構えがある事を知っているのはごく限られた人間だけだ。

それはキリトさんが二振りの剣を構えた時。それはもう「静の美しさ」としか言いようがなく、それとは対照的に「動の美しさ」と言えばアスナさんが細剣を振るう姿だろう。

今回、アスナさんには剣士としての腕は封印してもらっていたし、キリトさんにおいてはアスナさんの為にしか二本目の剣を実体化させる事はないのでその神聖性すら漂わせる二つの「美しさ」を目にする事は叶わなかったが……それでも伝説級の黒の剣士の本気が一瞬でも見られる幸運に俺は身を震わせた。

僅かもぶれることのない剣先……二刀流の時はあの剣を片手で操るのだから当然といえばそうなんだけど、前に俺が持たせてもらった時は上段の構えですら少し時間が経つと剣先が揺れてしまって、完全に剣に振り回された。

なのに今のキリトさんは蛇達を連続で斬り落とす為にそのタイミングが来るまでの間、まるで時を止めたかのように静止したままだ。

じっ、とボスモンスターを睨む漆黒の眼光だけでヘイトが高まっていくのか、蛇達が次々に頭を巡らせてキリトさんに向かい視線を固定し始める。

全ての蛇がまず一番に倒すべき相手とキリトさんを認識した後、タッ、と耳に届いた微かな音が地を蹴ったものなのだと気づいた時には真っ黒な疾風が数多ある細長い蛇首全てに一筋の光の線を引いていた。

 

 

 

 

 

早朝の桐ヶ谷家の二階、夫婦の寝室でベッドサイドのコンパクトテーブルに置いてある和人の携帯端末がヴー、ヴーと振動する。一定の呼び出し時間を終えると留守電応対に切り替わるがメッセージを残すことなくすぐにプツッ、と回線が切れてすぐさま着信のランプが点滅し、再度ヴー、ヴーと振動が始まった。

端末がその動作を何回か繰り返していると、振動音が伝わったのかベッドで眠っていた明日奈が「んぅっ……」と覚醒の気配を見せる。

すると音速の速さでベッドの中から端末に片手を伸ばした和人がちょうど呼び出し振動中の端末の通話ボタンに触れた……通話相手の表示名を見て瞬時に回線を切る。

当然のように再び振動し始めた端末に向かい和人は寝ぼけた小声で「ユイ、頼む」とだけ告げるとテーブルの定位置にそれを戻し、改めてもぞもぞと布団を被りなおした。

後を任されたユイが『仕方ないですね』と小鼻から息を抜き、飽くことなく接触を試みてきている相手に『はい、桐ヶ谷和人の端末です。麻倉(あさくら)さん、どうしました?』と通話を開始すれば、相手は少し戸惑った声で躊躇いがちに「えっとぉ……」と言葉を探して口ごもった。

 

「……すみません、お電話口、奥様ですか?」

『いいえ、私は娘のユイです』

「あ、お嬢さんですか。朝早くからすみません。オレ……いえ、僕は桐ヶ谷さんと同じ研究所の麻倉と申しまして……」

 

既にユイが「麻倉さん」と呼びかけたにもかかわらず、律儀なのかテンパっているのか麻倉が丁寧に名乗るとユイは明日奈を手本にした愛らしくも軽やかな声を返した。

 

『はい、パパの職場の後輩さんですね』

「そうです、そうです。こんな時間に非常識なのは承知の上なんですけど、どうしても桐ヶ谷さんの手をお借りしたい事態になってまして……」

『今は無理です』

 

キッパリと、いっそ清々しさまで感じる端的な言い切りに麻倉の言葉が詰まる。

 

「っ…………と、申しますと?」

『パパの手はママを抱きしめてますから』

「あー……それは……また……羨ましいと言うか何と言うか、だなぁ」

 

一瞬、気が遠くなりかけたせいか、麻倉の口調が普段使いに戻ってきた。

 

「えーっと、そこをなんとかお願いしたいんで、桐ヶ谷さんに代わってもらえます?」

『それも無理です』

「どーして?」

『パパは通話相手が麻倉さんだとわかっていて私に託しました。それは麻倉さんとの会話よりママを優先するという意志表示です。加えて麻倉さんからの度重なるコールで一緒に寝ていたママが起きてしまいそうになったんです。まだまだママと一緒にいたいパパは今、少しご機嫌がよくありません』

 

懇切丁寧な回答に端末の向こうから「う゛う゛っ」と呻き声だけが流れてくる。

 

「……もしかして、さっき一瞬通話が繋がって切れたのは偶然じゃなくて?」

『はい、振動音を止めるためにパパが瞬殺しました』

「あぁーっ、もぉーっ…………あれ?、って事は今、ユイちゃんは奥さんを抱きしめてる桐ヶ谷さんを見てるってこと?」

『そうです』

 

桐ヶ谷家の家族であれば誰でも端末でユイとコンタクトが取れる為、先程和人に呼ばれたユイは「頼む」と言われた時点で両親の状態を把握済みだ。

 

「桐ヶ谷さんも娘さんの前で大胆だなぁ」

『パパとママは私が娘になった時からいつもこんな感じですよ』

「赤ん坊の目の前でもいちゃいちゃしてたのか、つくづく羨ましい…………って桐ヶ谷さん家の夫婦関係を聞きたくて連絡したわけじゃなくてですね。なら、ユイちゃんから頼んでもらえないかな」

『何をですか?』

「桐ヶ谷さんに今すぐ研究所に来て欲しいんだよ」

『事情を説明して下さい』

「実は数時間前に桐ヶ谷さんが組み上げたばかりのプログラムのゲスト用アクセスキーを新人が無限海という名のサイバースペースに落っことしてくれましてね。下っ端全員で今まで探したんだけど、どうにもサルベージ出来ないんだ。だから今現在はプログラムマスターである先輩のバイメト認証しか受付ない状態で……」

『パパは週明けまでずっとママと一緒に過ごす予定になってます』

「はい、そうでしょうとも、そうでしょうとも、三徹四日ぶりのご自宅だからね。一泊だって外泊がお嫌いなのは十分存じ上げてるんだけど、このままだとオレ達も仕事が終わらないしっ。新人は後でオレがきっちりシメておきますから、って伝えてもらえないかなぁ……」

 

既に語尾が涙声になっている。

 

「ホントに、一瞬だけ、指紋認証、声紋認証、虹彩認証さえ通してもらえれば、すぐにご自宅まで送るから」

 

事の次第を聞いてユイはふむ、と腕組みをした。和人がユイに「頼む」と言ったのだから、これはどんな手段を使ってもいいという事なのだと解釈して、多分、麻倉の後ろで和人の承諾を待っているだろう研究所の若手所員達の為にも、と自信に満ちた声で『わかりましたっ』と和人の代役を引き受ける。

 

『パパが構築したプログラムなら一回だけ使える裏コード設定があるはずです。それを使って防壁をこじ開けますから、麻倉さんはその間にアクセスして下さい』

「へっ!?」

『あまり長時間は保たないので侵入のタイミングはこの端末で指示します。そのまま切らないで下さいね』

「待って、待って、ユイちゃんっ。それってハッキング!?、うちの研究所にハッキングかけるの!?」

『大丈夫です。こういうのは得意ですからっ』

「えーっ」

 

麻倉が素早く背後に「おいっ、リンクのスタンバイっ。隙間が空いたら滑り込むよっ」と指示を飛ばす声が聞こえた。どうやら端末の向こうに控えていたらしい、いわゆる下っ端の所員達がバタバタと慌てふためく声と音が混じり合って聞こえてくる。以前、和人から麻倉がとても優秀な後輩だと聞いていたユイはその技量を疑うことなく、自分は研究所の回線に潜り込み裏コードの探索に集中した。

和人が手がけたプログラムならば必ず不測の事態に対処できるようユイだけに使用可能なコードを埋め込んでくれているはずなのだ。既に設定されているコードを使用するのだからハッキングとは違う気もするが、外部回線から接触するのでこれも広義ではハッキングと解釈するのかもしれない、と、このデータ処理が終わったらハッキングについての定義を詳細に調べてみようと思っていると目当ての裏コードを発見する。

 

『麻倉さん、みつけました。カウントスタートしますっ』

「いつでもどーぞっ」

 

ーーーーー可愛らしい数字のかけ声がゼロを告げ、麻倉のパーソナルアカウントが無事にブログラム内にアクセスするのを見届けてからユイは再び桐ヶ谷家に戻ってきた。データ処理という休眠に入る前に家族の様子をチェックしようとそれぞれの寝室を覗く。

芽衣は枕に足を乗せて気持ち良さそうに眠っていた。

ベッドから落っこちている姿をユイが発見した時タイミング良く和人が帰宅したのだが、芽衣にとってはいつもの事なので苦笑いをしながら和人がベッドの上まで運んでくれたのだ。ちょうど明日奈が和真の助っ人で《A.L.O》にダイブしていたので事情を説明するとすぐさま自分達の寝室に走って行ったから、多分和人もダイブしたのだろうと予想がついた。

和真は少し前にログアウトしていて、随分と疲れているのかピクリとも動かずに熟睡している。

覚醒した時『クエストは楽しかったですか?、和真くん』とユイが訪ねたら、こちらも苦笑いで「うん、渡航する奴も含めてみんなで笑いながら、ある意味もの凄く思い出に残るクエストになったよな、って言い合ったよ」と報告してくれた。

最後に和人と明日奈の眠る寝室を訪れたユイは二人がいつものように仲良くくっついて寝ている姿を見て微笑んだ。

さっきは早々に一人でログアウトしてきた明日奈に驚いたが「芽衣ちゃんが泣いてるって」と聞いて、素直に『芽衣ちゃんは泣いてませんよ、ママ』と答えてしまってから明日奈の目がどんよりと変化したのに気づいたユイもだいたいの経緯が想像でき、苦笑いをこぼした。

ほどなくしてログアウトしてきた和人に対し、最初は拗ねた様子の明日奈だったが数日ぶりに会えた嬉しさには抗いきれなかったようで結局二人でベッドに入り、和人の腕の中に収まって安心しきった寝顔で眠りについている。

和人の方も一度は麻倉からのコールで起こされたが、明日奈が目覚めなかったのを幸いに再び愛しい妻を抱きしめたまま深い眠りに落ちているようだ。

週末の今日は学校も仕事も全てお休みの桐ヶ谷家。少しくらい目覚めが遅くとも誰も困ることはないだろう。家族全員がスヤスヤと寝入っているのを確認したユイは『みんな、おやすみなさい』と小さく口にしてから自分もまた静かに眠りについたのだった。




お読みいただき、有り難うございました。
助っ人とは言えメンバーが途中で交代できるのか?、といったあたりは深く
追求しないで下さい(懇願っ)
独自設定ですが、アスナのHPがレッドになるのをキリトが嫌がるのは
『金色の羽根』を、和人の後輩・麻倉くんは『肌恋しい』をご参照ください(苦笑)
結局、最後の最後で見せ場を持って行ったのは……ユイ?

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