ソードアート・オンライン《かさなる手、つながる想い》 作:ほしな まつり
TVアニメ「SAOアリシゼーション編」第一話を見た勢いのままに
書き上げたので内容うっすーいデス(笑)
時間を置いてしまうと投稿できなくなっちゃうヤツなので、惰性がついて
いるうちに上げてしまいます。
「放送、見られないんですけどっ」の諸事情を抱えている方には
ゴメンナサイ!
ゴタンッ、ガガガッ…………一体いつまでこんな道なき道を走行するつもりなんだ?、痛みを感じないVRワールドとは言え尻に響く不快感はどうにも慣れないよなぁ
こんな状態があと十分以上続くのなら、トラックの荷台を下りて走ったほうがマシだな、とキリトは内で呟いて、けれどそんな単独行動は絶対にお許しがでないだろうと諦め、溜め息に混ぜて吐き出した。続けて隣にいるパートナーの様子を盗み見る。
ピックアップトラックの荷台の後方にちょこん、と荷物よろしく進行方向とは逆向きに座っている美少女ははしばみ色の瞳をワクワクと輝かせ、車のスピードに合わせて流れていく周囲の風景をキョトキョトと眺め……つまりキリトとは真逆の表情でどうやらこの状況を楽しんでいるらしい。
だいたい今回共闘する他のメンバーのアバター衣装は全員アーミーグリーンをベースにしているし、自分は前回と同様、黒基調のGGOアバターなのに、なぜ彼女だけ見事なまでに鮮やかなホワイトとワインレッドのツーカラーベースなんだ?、とキリトは初めてその姿を眼にした時の感想をもう一度頭の中でこねくり回した。
しかもあっちこっち肌が見えてるし……
似合うか似合わないか、で論じれば、一片の迷いもなく「似合うっ」と強く頷くだろう。ALOで見るアトランティコブルーの髪や瞳の色、アクアホワイトを基調にオメガブルーのラインがアクセントになっている衣装だってもちろん似合っていると思うが、栗色の髪にはしばみ色の瞳、そしてかつて最前線で戦う攻略組の中で最強ギルドと謳われた『血盟騎士団』の副団長を彷彿させる色合わせの衣装はアスナに言わせると「あの頃カラー」でもありキリトにとっては「アスナの色」として認知されているものだ。
その彼女が再びそのカラーリングのコスチュームを纏い自分の隣にいてくれる事がこんなにも心落ち着かないのはなぜなのか?、とそこでキリトは自問を始める。
浮かれている?…………うん、それはあるな、確実に
神妙な顔つきで自己分析を試み、出てきた結果のひとつに肯定のマークを付ける。
何せGGOでは初めての共闘だ。予想通り、アスナの主武器はキリトと同じフォトンソード。GGOのプレイヤーの中では保有者さえ珍しいとされるオマケ的な武器をメインとしてこれからツートップで戦うのである。アスナとの連携がどういう展開になるのか、不安は欠片もなく期待しかない。
今日の日を迎えるにあたり事前に数回、アスナとは、このGGOで実践を見据えての演習を行ってきた。剣のバランス感覚さえ掴んでしまえばもともとキリトより軽い細剣を操っていたアスナだ、その順応性は舌を巻く早さだった。
キリトの光剣による銃弾斬りの技も一度間近で見てから「ふーん」と少し考え込んだ後「こうかな?」と言って、シノンに撃ってもらった弾をいきなり当ててのけたのだから言葉も出ない。そして初めて光剣で実弾を弾いてから数時間後にはアスナらしく剣舞と言えるレベルのしなやかな動きで四方から飛んでくる撃弾を無効にしたのである。
それと…………グロッケンでアスナを遠巻きに見ていた男達の視線への苛立ちがまだ残ってる?
次の分析で出てきた結果には三角マークを付ける。
当然と言えば当然だ。アスナの顔立ちとスタイルに加えこのコスチュームで中央都市を移動すればただでさえ女性プレイヤーが少ないGGO内、衆目を集めるのは必至だった。しかしキリトにとっては今更と言えば今更なのである。旧SAOで多分最初にアスナから眼が離せなくなった男は自分だろう、という自負があるから奴らの気持ちは十分理解できるし、当のアスナが気にしていなければ多少面白くはないが、それ以上どうこうしようとは思わない。
だったら、やっぱり…………あれ、かな?
自分の心を素直に肯定してみれば、そこには堂々の二重丸マークが付いた。
そこで相変わらず派手にゴトンッ、ゴトンッと揺れ続けている荷台に手を突き隣のアスナへ身を乗り出す。
「アスナ」
「ん?、なあに?」
トラックの荷台に並んで腰掛けている二人だったが、初めて見るGGOの世界観に目を奪われていたアスナがようやく視線を周囲からすぐ隣のキリトへと向けた。予告もなしに車が跳ねる事もあるので絶えず振動に合わせて身体を揺らしつつ衝撃を分散させる。
「結構揺れてるけど、大丈夫か?」
「うん、宮城のお祖父ちゃんの家に行く時もこんな感じだったの。なんだか懐かしくなっちゃった」
確かアスナの母方の祖父母の家は宮城県内の自然豊かな場所だと聞いていたので、そこに辿り着く道も平坦ではないのだろう、と一瞬、納得しかけたが、いやいやいや、ちょっと違うだろ、と流されそうな自分を引き留める。
「確かに道っぽい所を走ってないせいもあるけど、単純にクラインの運転が荒いんだとオレは思う」
わずかに振り返ってみるが運転席でハンドルを握っている様子までは見えない。
「でも、シノノンが合流地点に指定した場所まで最短で行かなきゃ、でしょ?」
「そりゃあ、そうなんだけどさ」
今回の作戦はシノンの立案だった。もっと言えばキリト達は共闘を依頼され、それに応じたからGGOにいるのだ。既に一人で先行しているシノンはそろそろ標的としている敵チームに遭遇する頃合いだ。うまく合流地点まで誘導し、同時にこちらも遅れずに到着しなければ作戦自体に変更が生じてくる。
それにしてもこの乗り心地はないだろう、とキリトはドライバーを任せたクラインに届くはずのないジト目を送った。
銃砲を据え付けたテクニカル仕様のピックアップトラックを用意した時、真っ先にドライバーに立候補したのはクラインだった。キリトもGGOではバギーを運転した経験がある為、自分が運転手役になるだろうと予想していたのだが、別にどうしても運転をしたかったわけではない。
ハンドルを握りたいのなら快くドライバー席に座る権利を進呈しよう。その代わり……
『ならオレとアスナは荷台に乗るよ』
クラインが名乗りを上げるやいなや、キリトはすぐさま自分の隣に座る人物を特定したのである。いや、クラインの隣に座る人物候補からいち早くアスナを除外させた、と言うべきか。幸いだったのは《現実世界》でもトラックの荷台になど乗った事のないアスナがその提案を大変乗り気で受け入れてくれた、という点だ。
結果、荷台にセットした重機関銃を担当するシリカは自動的に助手席候補者から外れた為、クラインは自然な流れで「んーじゃ、ナビはリズ、頼むわ」と声を掛けて乗車場所が確定したのである。
「げっ」と濁音を発したリズだったが、その後、小声で「キリトがナビすればいいじゃない。私達は女三人、荷台でお喋りしたかったのにっ」と恨みがましい目で見つめられたのは気づかないふりでやり過ごした。
こうして各々、所定の位置に乗車して予め聞いていたシノンの指示通りトラックのエンジンをかけ走り出した数十分後、キリトは未だ見慣れないアスナの髪型を凝視していたのである。
「ど、どしたの?」
流石にあまりに近くから発せられる熱心な視線に耐えきれなくなったアスナが僅かにつっかえながらその理由を尋ねてくる。
「やっぱり印象が大分変わるなって思ってさ」
「あっ……髪?」
「ああ、今まではどんな戦いの時も敢えて髪型をカスタマイズすることってなかっただろ?、どういう心境の変化なんだ?」
「別にあまり深い意味はないんだけどね。ほら、GGOだとキリトくんも長いから……」
「へっ?、オレ??」
まさかアスナが髪型を変えた理由の一端を担っているとは思っていなかったキリトは思わず自分の人差し指で自分の顔を指した。キリトの場合はアスナ達と違ってキャラクターの外見データは全くのランダムで引き当てた結果だ。
それでもかなりのレアアバターである事は間違いないらしく、その気になれば高値で売れるらしいがコンバートでもあるので今更変更する気にはなれない。けれど自分の見た目と恋人の髪型の関係が理解出来ないキリトは驚きで寸時集中力が途切れた。
「うおっ」
狙ったようなタイミングでトラックが跳ねる。
片手を無造作に浮かせたまま一瞬呆けたキリトが尻から受けた衝撃を殺せず、身体ごと大きく浮き上がって勢いそのままアスナに体当たりをかけた。
「きゃぁっ」
「っごめん!」
二つ同時の叫び声に同じ荷台にいたにも関わらず、最後の総復習とばかりに自分が操作する重機関銃のマニュアル画面に集中していたシリカが顔を上げ、ビックリしたように二人を見るが…………そこにはペッタリ、とアスナに抱きついているキリトがいて、途端にシリカの大きなストロベリーレッドの瞳がうんざりと下りてきた瞼で半分ほど隠れる。「大丈夫ですか?」と声を掛けるのも馬鹿馬鹿しくなって、すぐにシリカは視線を画面に戻した。
「キ、キ、キ、キリトくんっ」
「わざとじゃない、わざとじゃないんだ」
「わかったから……」
だから、離れて……と続けようとしたアスナは耳のすぐ近くでキリトが、すんっ、と鼻を鳴らす音を拾ってピクリと肩を揺らす。その動きを押さえつけるように、片側の肩に軽い負荷がかかった。キリトの顎だ。続けて腹部と背部から腕を回され完全に身動きが取れなくなる。
「うん、こうしてくっついてた方が揺れないな」
より快適に荷台に乗る方法を提案しているような言い方だが、アスナとしては「こっちの方が落ち着かないわよっ」と声を荒げようとして、つい真横にいるキリトを間近に見てしまい、うっ、と言葉を飲み込んだ。
つぶら、と言う表現に値する瞳が長い前髪からこちらを純粋に見つめている。このアバターでいる時の平時のキリトにはなぜか強い態度に出られないアスナは抵抗を諦め、肩の力を抜くついでに、ふぅっ、と細い息を吐いた。
どうやら大人しく腕の中に収まってくれるのだと判断したキリトが彼女の見えない所で小悪魔的な笑みを浮かべる。高さのある立ち襟に顔を寄せれば普段は長い髪に隠れているはずのうなじが外気に晒されており、更にそこからスッキリと伸びている白い首元にはコスチュームと同じワインレッドのチョーカーが巻き付いていてその細さを強調していた。今までアスナの首筋を堪能できる男は自分だけだと思っていたのに、という独占欲とそこを守るように装着されているチョーカーに自分の接触さえも拒絶されているようで心が波打つ。
やっぱり落ち着かない最大の原因はこれだな、と確信すると邪魔なチョーカーとアスナの首との境界に軽く歯を当てた。
「ひゅっ」
言いようのない感覚を首元に覚えてアスナが息を飲む。続けて少し不機嫌そうな声、と言うよりは吐息のような低い息がうなじを刺激した。
「アスナ……このチョーカー……」
「だって……GGOだと、指輪ってないから……」
「え?」
これまた予想もしていなかった「指輪」という単語を聞いてキリトの脳内は大混乱に陥り、一旦顔を上げる。
「悪い、アスナ。さっきから髪型にしても、このチョーカーにしても、全然話が見えないんだけど」
あまり追求されたくない話題だったのか、アスナが唇を尖らせ顔ごと視線をキリトとは反対方向へ逸らせば結果的に、どうぞ、と言わんばかりに彼女の首筋がキリトの目の前に差し出された。話をしてくれないのなら本能のまま行動するだけだけど?、とチョーカーを避け遠慮無くキリトの唇がそこに吸い付く。きつめに吸っても《仮想世界》で痕は残らないが相応の疼きを感覚パラメータはアスナに与えるわけで……。
「んぅっ」と声を堪えたアスナだったが、そのまま離してくれそうにないキリトの行為に根負けをしたのか、降参の意を含んだたどたどしい声がキリトの名を呼んだ。
「……で?」
狙ったわけではないが、どうもこのアバターでは「可愛らしい」に分類されてしまう仕草が自然と出てしまうキリトは、こちらに向き直ったアスナに、こてん、と首を傾げ話の続きを求めた。再び、あぅっ、と声を詰まらせるアスナ。
呆れたような、諦めたような目でキリトを見つめてから一旦表情を引き締めるが、いざ説明する為に唇を開くと今度は声より先に眉尻が下がる。
「……別にね、それほど意識して選んだわけじゃないの。だから、リズに言われて気づいたくらいで……」
「リズに……何て言われたんだ?」
「『GGOだと薬指じゃなくて、そこに輪っかをはめたのね』って。あと『今度は髪型まで似たもの夫婦するの?』とも……」
リズのやつ、変なところに目聡い、と言うか予想外の部分で想像力が働くよなぁ、と感心するというよりは多少勝手な憶測に近い感想に苦笑いが出た。アスナがコンバートする前に自分が髪型をカスタマイズするべきだったか、と振り返り、ほぼ同時にGGOでの初顔合わせの時に散々クラインやリズに髪で弄ばれた記憶が蘇る。
アスナが髪をいじった事によって見ず知らずの男性プレイヤー達が鼻の下を伸ばす理由を増やしたのだから、キリトにとっては恋人の新鮮な髪型がなかなか素直に喜べないのも道理だった。
けれど、むむっ、と眉間に刻まれた深い皺も、少々恥ずかしげに飛び込んできたアスナの言葉によってすぐに消し去られる。
「だから髪型はちょっと変えてみようなかって。でもこのチョーカーは……無意識にキリトくんとおそろいにしたかったみたい」
照れくさそうにうっすらと頬を薄紅色に染めたアスナがキリトにふわり、と微笑みかけた時、助手席からリズのハイテンションな声が飛んできた。
「そろそろ目的地に到着するから、サーチされないように二人は隠れてっ」
当初の計画通り事は進んでいるらしい。キリトとアスナは奥の手扱いなので戦闘参加人数を誤魔化す為にも予め用意しておいた布の中に隠れる算段だ。
出番までまだ少しあるな…………落ち着いて考えてみればオレはアスナの露わになった細首やその他の場所だって目で触れる事しか出来ないわけじゃないし……それに、うん、この髪型だと…………
元々フィールドを移動中のトラックの荷台には見知らぬ他者からの俗な色を纏った無遠慮な視線などどこからも飛んではこないのだが、違う意味での視線から守る為、分厚い布の中に自分とアスナを隠して外界からの接触を完全に遮断したキリトは、二人の出番が来るまでアスナに対する自分の特権を行使した。
お読みいただき、有り難うございました。
リズとシリカのコスチュームデザインもなかなか可愛かったですけどね
やはり目を引いたのはアスナです。
ツートップを見越してのカラーリングですよねー。
奇しくも「活動報告」欄の予告通り「全編《仮想世界》モノ」にはなって
いますが……当然、コレの事ではないので……でもコレを手がけてしまったので
スミマセン、定期投稿、遅れます(謝)